プロテインは精子の質改善や精液量の増加に効果的?知っておくべき5つのこと
2023年11月30日更新

執筆者

薬剤師 / 公認スポーツファーマシスト / 研修認定薬剤師 / 健康サポート薬剤師 / アロマテラピー検定1級

大西 剛気

薬剤師免許を取得後、メディカルモール併設の調剤薬局で勤務。複数の店舗で1日400枚越えの処方せんに対応しながら様々な診療科を学ぶ。その後、全国展開の大手調剤薬局にて4店舗の管理薬剤師 、2地区のエリアマネージャーを歴任。新店舗開発にも携わる 。現在は 、新しく調剤事業を立ち上げた企業に仲間入りし 『医療と福祉の融合 』『新時代の薬局 』を目指し日々奮闘中。趣味はキャンプ、サウナ、食べ歩き。2児のパパでもある。

なぜプロテインは精子の質改善や精液量の増加に効果的と言われているのか?

プロテイン、すなわちタンパク質は生命維持に不可欠な栄養素であり、プロテインの摂取が生殖機能に及ぼす影響は近年、研究の焦点となっています。ヘルスコンシャスなライフスタイルを志向する人々にとって、プロテインパウダーはその利便性と栄養価の高さで、重宝されるアイテムです。精子の質や精液量の向上という観点から、タンパク質源として注目される理由は、アミノ酸の豊富な供給にあります。

アミノ酸は精子形成の基盤を築くと共に、生殖ホルモンの合成にも重要な役割を果たします。例えば、精子の成熟と運動性を支えるのに必要な栄養素が、プロテインを通じて確実に供給されることで、生殖機能の向上が期待できるのです。実際、バランスの取れていない食事を改善することで、体内のホルモンバランスが整い、テストステロンレベルが最適化することが科学的研究によって示されています。

南オーストラリア大学の研究では、ホエイプロテインや卵白といった高タンパク質食品が、特にホルモンバランスに問題を抱える肥満男性において、生殖機能の改善に有効であるという興味深い結果が得られました。出典[1]
こうしたデータは、栄養素が体内プロセスに及ぼすポジティブな効果を示唆しています。しかし、プロテインパウダーの摂取がすべての人に同じ結果をもたらすとは限らないことを忘れてはなりません。
実際に妊活を始めたばかりの方、すでに健康的な食生活を送っている方、そして既にプロテイン補給を習慣としている方において、その具体的な影響は他のデータも見ないとまだ完全には分からないと言えそうです。ただ、そうすることで、精子の質や精液量を自然と高め、子宝を望む多くのカップルにとって、理想的な結果につながるかもしれません。次の章から、その影響を一緒に探っていきましょう。
 

プロテインと精子の質・精液量の関係について知っておきたい5つのこと

1.健康な人は残念ながら変化無しとされている

筋トレを日常的に行う健康体の男性にとって、プロテインパウダーは筋肉の回復と成長を助ける重要なサプリメントとして広く利用されています。特にジムで汗を流す男性たちは、トレーニングの一環として、筋肉の構築を目的にプロテイン摂取を心がけています。しかし、プロテインの摂取が直接的に精子の質や精液の量を改善するわけではないことが研究から明らかにされています。

40名の健康な成人男性を対象とした研究では、12週間のトレーニング期間中に毎日15gのプロテインパウダーを摂取してもらったところ、精子の質や精液の量に有意な変化は見られませんでした。出典[2]
これは、適切なプロテイン摂取が、健康な男性の生殖機能に対して既に最大限の効果をもたらしている可能性を示唆しています。既にバランスのとれた食生活を送っている男性にとっては、プロテインの追加摂取が精子に直接的な利益をもたらすという証拠は限られているのです。

また、プロテインパウダーの摂取が筋トレの効果を最大化することは間違いないものの、精子の質を向上させるためには、他の生活習慣の改善がより重要であることをこの研究は示唆しています。ストレスの管理、禁煙、節度あるアルコール摂取、十分な睡眠、そして栄養バランスの取れた食事など、全体的な生活習慣が生殖健康に深く影響を及ぼしています。

さらに興味深いことに、プロテインパウダーを使用する健康体の男性が増えている現代において、プロテインの摂取が生殖健康に与える長期的な影響については、今後さらに多くの研究が必要であるとも指摘されています。精子の質と精液の量は多くの要因によって影響を受けるため、単一のサプリメントの摂取が全ての男性に同様の効果をもたらすとは限らないのです。
 

2.プロテインの飲み過ぎは明らかに精子・精液量に悪影響

タンパク質は生命維持に不可欠な栄養素であり、適量を摂取することは健康を維持する上で重要です。しかしながら、過剰なプロテイン摂取は、男性の生殖健康にとって意図しない副作用を引き起こすことが研究により示されています。特に、高タンパク質ダイエットが長期にわたって行われた場合、体内のアンモニア量が増加し、これが腎臓に余計な負担をかける結果となります。腎臓は体内の廃棄物処理を担っているため、腎臓という重要な臓器への負担は健康に悪影響を及ぼします。

腎臓の過度なストレスは、ホルモンバランスに影響を及ぼし、特に男性ホルモンであるテストステロンの生成に悪影響を与える可能性があります。テストステロンの低下は、精子の質と量の低下性欲の減退筋力の低下など、多くの問題を引き起こすことが知られています。このように、プロテインの摂取量と精子の健康の間には、慎重なバランスが求められるのです。

実際の研究では、タンパク質を摂り過ぎた結果、テストステロンが低下するという事実が確認されています。出典[3]
これは、体がタンパク質の分解に多くのエネルギーを割くことにより、その他の生理的プロセスが犠牲になることを意味しているかもしれません。男性にとってテストステロンは、単に筋肉量を維持するだけでなく、全体的な健康状態と生殖能力において中心的な役割を果たしています。

この研究結果は、体づくりや健康維持を目指してプロテインサプリメントを利用する男性たちにとって重要な警鐘です。精子の質や精液の量の保持に加えて、全体的な健康を維持するためにも、タンパク質の摂取量には気をつける必要があることを強調しています。プロテインサプリメントは有益なサポートツールである一方で、摂取量の適正化とバランスの取れた食事の重要性が、再び注目されているのです。
 

3.ソイプロテインもイソフラボン量に注意

タンパク質サプリメントとしてのソイプロテインは、特に乳製品を避ける人々に人気があります。しかし、ソイプロテインが含むイソフラボンには注意が必要です。イソフラボンは、植物由来の化合物でありながら、女性ホルモンであるエストロゲンに似た作用を持ち、男性ホルモンのバランスに影響を与えることがあるからです。

特定の研究では、ソイプロテインを含む食品の摂取が、男性のテストステロンレベルに変動を引き起こすことが示されています。たとえば、一日に120mgのイソフラボンを摂取した男性群では、短期間にテストステロンの減少が観察されました。出典[4]
この結果は、生殖ヘルスに直接的な影響を及ぼす可能性があり、特に妊活中の男性にとっては、その摂取量と影響を慎重に考慮する必要があることを示唆しています。

しかし、全てのソイプロテインが問題を引き起こすわけではありません。イソフラボンの摂取量が1日あたり75mg以下であれば、男性ホルモンへの負の影響は認められないことがわかっています。市販されているソイプロテインの多くは、一食分でイソフラボン50mgから70mgを含むのが一般的であり、これは推奨される安全な範囲内です。出典[5]
この事実は、ソイプロテインを利用する際の安心感を提供し、適切な量ならば、バランスの取れた栄養補助として有効であることを示しています。

生活の中でソイプロテインを取り入れる際には、含有されるイソフラボンの量を常に意識し、摂取量を管理することが肝心です。特に、自身の健康状態や目的に応じて、ソイプロテインの選択と摂取計画を練ることが重要になります。過剰摂取を避け、バランスの取れた食生活の一環としてソイプロテインを利用することで、その利点を最大限に活用し、不要なリスクを回避することが可能になります。健康な生殖機能を維持しながら、植物由来のプロテイン源を上手に取り入れたいと考える男性にとって、適量が鍵となるといえるでしょう。

 

4.海外製品はアナボリックステロイドの混入もあるので特に注意

フィットネス愛好者や妊活を支援するサプリメントとして利用される海外製プロテイン製品ですが、安全性に関する懸念が表面化しています。実施された国際調査では、複数の国から供給されたプロテインサプリメントの中に、ラベルに記載されていないアナボリックステロイドが含まれていた事例が報告されています。特に、13ヶ国以上から集められた634種類の栄養補助食品の約15%に、未申告のアンドロゲンステロイドが含まれていたとのことです。出典[6]

アナボリックステロイドは筋肉増強剤として知られていますが、不正確な使用はホルモンのバランスを崩し、健康問題を引き起こすリスクがあります。特に、妊活中の男性にとっては、自然な生殖能力に影響を与えかねません。未申告のステロイドの混入は、消費者が知らぬ間に健康を害することに繋がる可能性があるため、製品選びには細心の注意が必要です。

さらに、不純物が含まれたサプリメントの摂取は、肝臓や腎臓への負担を増大させ、慢性的な病気を誘発することさえあります。そのため、妊活中のカップルは、国産のプロテインサプリメントや、品質管理が徹底された信頼のおけるソースからの製品を選択することが望まれます。

選択する際には、サプリメントが第三者の機関によってテストされ、不純物が含まれていないことが証明されている製品を探すことが重要です。また、クリーンラベリングが進んでいる製品を選ぶことも、透明性と安全性を確保する上での一つの手段となります。健康を第一に考えたプロテインサプリメントの選択は、将来の子どもを願う夫婦にとって、責任ある一歩となるでしょう。
 

5.不妊男性は一度中止を検討した方が良いかも…

生殖に関する悩みは多くの男性にとって深刻な問題です。タンパク質サプリメントが筋力増強やボディビルディングに好影響を与えることは広く認識されていますが、不妊に関しては別の側面があります。研究が示す通り、生殖機能に問題を抱える男性がタンパク質サプリメントの摂取を控えた場合、精子の質に改善が見られるケースがあります。出典[7]このケースでは、サプリメントに含まれる特定の成分が、男性の生殖ホルモンや精子生成に影響を及ぼす可能性があることを示唆しています。

不妊治療を行っている夫婦にとって、この情報は特に重要です。子どもを授かることを希望しているにも関わらず、日々のサプリメント摂取がその可能性を遠のかせる原因の一つである可能性があるのです。汚染がなく、精子に対する直接的な影響がないとされるプロテインであっても、個々の体質や既存の健康状態によっては、影響が出ることも否定できません。

健康なライフスタイルと妊活をサポートするためには、プロテインサプリメントに依存するのではなく、バランスのとれた食生活適切な運動を心がけることが大切です。必要であれば、医師や栄養士と相談し、パーソナライズされた栄養計画を立てるべきでしょう。また、プロテインサプリメントを摂取する際には、清浄な成分、適切な量、信頼性の高い情報に基づいて選択することが、健康で豊かな家族を築く上での賢明な選択と言えます。

精子の質や精液量の観点では別の栄養素を検討した方が良さそう

多くの男性がプロテインサプリメントに頼り、筋肉増強や日々の栄養補給を期待しています。しかし、精子の質や精液量に関しては、タンパク質のサプリメントだけに頼るのではなく、他の栄養素に目を向ける時が来ています。たしかに、高品質なプロテインは栄養摂取の一助となり得ますが、生殖健康に直接的なプラスの影響を与えるとは限りません。

健康な精子の生成と優れた生殖能力を望むならば、特定の天然成分に注目し、その摂取を考慮するべきです。例えば、ムクナの摂取は精子濃度を劇的に増加させ、精子濃度を206.4%、運動性を28.9%、精液量を17.5%向上させました。出典[8]
このようなデータは、男性の生殖健康において、プロテインよりも有益である可能性があることを示唆しています。

同様に、プリマビエのようなサプリメントも、総精子数を61.4%、精液量を37.6%も増加させたデータがあり、総精子数と精液量の増加に貢献することがわかっています。出典[9]これらの成分は、精子の質を改善し、子孫を望むカップルにとって希望の光となり得るのです。

結論として、健康的なライフスタイルとバランスの取れた食事は、あなたの生殖健康をサポートする基盤となります。さらに、生殖機能を向上させたいと考えるならば、精子の質や精液量に直接的な影響を及ぼす可能性のある天然成分の摂取が、有効な戦略となるでしょう。

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