ビタミンKとは?3つの効果と適切な摂取方法
2022年8月26日更新

執筆者

管理栄養士

西村 俊司

給食施設や食品メーカーなどを経て、現在は老人福祉施設で栄養士として勤務。専門学校卒業後18年のブランクを経て、管理栄養士国家試験に初挑戦し、一発合格。食のプロフェッショナルとしての知識と経験を生かしながら、心も体も喜ぶ「食の提案」を多くの人に届けたいと思っている。家では妻と2人の子供との4人暮らし。食べることや料理を作ることが大好き。趣味は自転車とキャンプとDIYなオジサン。

​​ビタミンKとは

まずはビタミンKの基本情報についてご紹介します。

ビタミンKってどんな栄養素?

ビタミンは、ヒトの機能を正常に保つために必要な栄養素です。糖質や脂質、タンパク質といったエネルギーを産生したり、体を作ったりする栄養素に比べて必要な量はごくわずかですが、ヒトの体にとって大切な働きをすることがわかっています。

厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準2020年版」において、掲載されているビタミンは12種類です。「ビタミンA」「ビタミンB群」(7種類)「ビタミンC」「ビタミンD」「ビタミンE」と規則正しくアルファベットが並んでいますが、ビタミン「K」と一気に飛ばされた名称に違和感を覚える方も少なくないのではないでしょうか。

ビタミンKは1929年に、デンマークで発見されました。コレステロールの代謝に関する研究をしていた「ヘンリク・ダム」教授がある日、脂質を含まない餌をヒヨコに与えていたところ、採血した血液が凝固しにくいことを発見しました。その後の教授の研究により、この凝固しにくい血液が、すでに発見されていたビタミンの投与によっても改善されなかったことから、脂質に「血液の凝固に関わる新しい栄養成分がある」と考え、ドイツ語で「凝固」を意味する「Koagulation」から名付けられたのがビタミンKなのです。

ビタミンは、水に溶けやすい「水溶性ビタミン」と、油に溶けやすい「脂溶性ビタミン」に分けられます。ビタミンKは脂溶性のビタミンです。ビタミンKには多くの種類があるのですが、天然に存在するビタミンKは2種類のみです。一つは「フィロキノン」と呼ばれるビタミンK1で、主に植物の葉緑体で生産されています。もう一つが「メナキノン類」と呼ばれるビタミンK2で動物性食品や油脂類に含まれています。

また、ビタミンK2は食品が発酵するときにも多く生産されます。納豆やチーズなどの発酵食品には非常に多くのビタミンKが含まれる他、実はヒトの腸管内に存在する微生物によってもビタミンKは生産されています。ヒトはビタミンKを食事から摂取するだけではなく、腸管内で生産されたビタミンKも吸収して活用しているのです。
 

体の中でどんな働きをする?

転んで擦りむいたり、ナイフで指を切ってしまったりしたときに、血が出ます。血液は体にとっては酸素や栄養分を運ぶ大切な物質なので、早急に血が体外に出ることを止めなければいけません。そのため、血液は血管が傷ついたときに固まる性質があるのですが、この「固まる」ために必要なタンパク質である「血液凝固因子タンパク質」の合成に、「ビタミンK」が必要なのです。

また、ビタミンKは骨で産生されるタンパク質である「オステオカルシン」を活性化させるという働きもあります。このオステオカルシンは、血中のカルシウムを骨に取り込む働きがあるため、骨の代謝の中でも、特に「骨を作る」作用に大きく関わっているのです。

 

不足するとどんなリスクがある?

このように、大切な働きをするビタミンKですが、不足すると、血が止まりにくくなったり、鼻血が出やすくなったりする他、慢性的な欠乏では骨折や骨粗鬆症のリスクが上昇します。

ただし、日本において、通常の食生活をしている中で、欠乏のリスクは非常に低いと言われています。日本人の食事摂取基準 2020年版によると、成人におけるビタミンK摂取の目安量は男女とも150μg/日とされていますが、最近の国民生活・栄養調査によると、20歳以上の男女でビタミンK摂取量の中央値は197μg/日でした。

これは、比較的多くの食品に満遍なく含まれている栄養素であることが考えられます。また、日本を代表する発酵食品である「納豆」には、大量のビタミンKが含まれています。小さめの納豆1pc(40g)で1日の目安量をクリアする240μgのビタミンKが含まれています。その他、ブロッコリーやほうれん草、海藻など、濃い緑色の野菜にも含まれていて、比較的普段の食事で摂取しやすいのもその理由です。

また、ビタミンKはヒトの腸管内の微生物も生産しています。しかし、長期間にわたる抗生物の服用などにより、腸内細菌が減少している場合は、ビタミンKが体内で生産されず、欠乏する恐れがあります。また、ビタミンKは脂溶性のため、肝臓や膵臓機能低下や胆汁の分泌不足により脂質の吸収が阻害されている場合は欠乏のリスクがあるといえるでしょう。

特に生まれたばかりの新生児は腸内環境が整っておらず微生物によるビタミンK産生が不十分である上、母乳から摂取できるビタミンKがわずかであるため、欠乏症である頭蓋内出血や消化管出血の予防として、ビタミンKシロップを飲ませるのが一般的です。

何らかの疾病を持っている方や、今後出産を控えている女性は注意しましょう。
 

 

ビタミンKに確認されている作用や効果3つ

ここからはビタミンKに確認されている具体的な効果についてご紹介します。

1.心臓病の予防

ビタミンKは動脈効果を防ぎ、心臓病を予防する効果があるとされています。

海外の研究によると、ビタミンK2であるメナキノンの摂取量が多いグループは、摂取量が少ないグループと比較して、動脈の石灰化による重度の動脈硬化と心臓疾患による死亡率が減少したとの報告があります出典[1]

現在のところ、どのようにしてビタミンKが動脈硬化予防に対して効果を発揮するかは明らかになっていませんが、今後研究がにより作用の仕組みがわかることが期待されています。

 

2.高齢者の骨粗鬆症&骨折リスクを軽減

ビタミンKは、健康な骨の維持に必要な栄養素です。骨の代謝異常により骨が脆くなる「骨粗鬆症」にはさまざまな原因が存在しますが、その一つがホルモンの一種で、腎臓から分泌される「糖質コルチコイド」であるとされています。

海外の研究によると、腎臓の疾患のために糖質コルチコイドを投与された患者のうち、ビタミンK2を同時に投与された患者グループは、投与されていない患者グループに比べて、骨粗鬆症のリスクが低くなったとの報告がされています出典[2]

高齢者が寝たきりになる原因の多くは、骨粗鬆症が原因の骨折です。いつまでも元気な老後を過ごすためにも、健康な骨を維持したいですね。


3.肝細胞ガンの生存率向上サポート

ビタミンKには、肝細胞がんの再発を予防し、生存の可能性を向上する効果があるかもしれません。

日本で行われた研究によると、肝細胞癌の切除手術後に45mg /日のビタミンK2剤である「メナテトレイン」を投与された患者グループは、投与を受けなかった患者グループと比較して3年後までの癌の再発率が低下し、生存率が向上したという報告がされています出典[3]

この研究では、効果を証明するためには今後より大規模な試験が必要とされていますが、再発率が高い肝細胞癌の治療に、効果的な効果が得られるかもしれません。今後の研究に期待したいですね。
 

ビタミンKの摂取に関する注意点

ビタミンKは脂溶性ビタミンですが、その他の脂溶性ビタミンとは異なり、耐容上限量が設定されていません。この根拠として、骨粗鬆症の治療薬としてビタミンK2が目安量の300倍である45,000μg/日の用量で処方されており、健康被害が報告されていないことが理由とされています。

そのため、食事由来のビタミンKについては、過剰摂取の危険はないと考えて良さそうです。ただし、サプリメント等を使用する場合は、ビタミンK以外の栄養素が含まれていることがありますので、表示をしっかりと確認することが大切です。

海外のサプリメントには、合成ビタミンKである「メナジオン」が含まれている可能性があります。日本やアメリカなどの先進国では、摂取が禁止されていますが、一部発展途上国では使用されている可能性があります。

また、家畜用資料やペットフードにも使用されています。このメナジオンについては、多量摂取により健康障害を引き起こすことが報告されていますので、海外製のサプリを使用する場合は、注意をしましょう。

その他、心臓の手術後や、不整脈などの疾患に処方される「ワーファリン」という薬がありますが、これは血液を固まりにくくして、血栓を予防することで、脳梗塞や心筋梗塞、血栓症などの発症を予防する薬です。

ビタミンKには血液を固まらせる効果があるため、ビタミンKの過剰摂取はワーファリンの効果を弱くしてしまいます。そのため、ワーファリンを服用している患者にはビタミンKを特に多く含む食品である「納豆」「クロレラ」「青汁」などを食べないように指導されています。ワーファリンを服用している方は、ビタミンKの摂取には十分注意しましょう。
 

まとめ

ビタミンのなかではあまりメジャーではありませんが、人にとって大切な栄養素であるビタミンK。食事による摂取と、腸内細菌による生産が大切です。バランスの良い食事と腸内環境を整えることで、ビタミンKだけではなく、その他の栄養バランスも整いますので、一度、自分の食生活を見直してみてはいかがでしょうか。

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