モリブデンってどんな栄養素?5つの働きと適切な摂取方法
2022年10月3日更新

執筆者

株式会社アルファメイル

NP+編集部

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モリブデンとは

モリブデンとは、どのような栄養素なのでしょうか?まずは、モリブデンの概要や体内での働き、モリブデンが豊富に含まれている食材についてチェックしておきましょう。

1.どんな栄養素?

モリブデンは、植物や動物、藻類、菌類、バクテリアなど地球上のあらゆる生命体に含まれているミネラル(微量元素)です出典[6]

炭素や窒素、硫黄の化学変化には、様々な種類の酵素がサポート役(触媒)として重要な働きを担っています。このとき、酵素を働かせるための補因子として機能しているのです出典[2]

 

2.体の中でどんな働きをする?

モリブデンは、糖質や脂質の代謝、肝臓や腎臓での有害物質の分解に働く酵素の補酵素として機能しています。出典[1]

血液中のモリブデン濃度は食事摂取とともに増加し、約1時間後にピークを迎えます。その後、モリブデン濃度は徐々に低下し、元に戻っていきます。ほとんどのモリブデンは尿として排泄されますが、モリブデンの尿中排泄量は、食事でのモリブデン摂取量に大きく影響されています。出典[1]

 

3.どんな食材に含まれている?

モリブデンは豆類や大豆製品、穀類、肉類に多く含まれています。

【モリブデンを豊富に含む食品(豆類、大豆製品)とその含有量(100gあたり)】出典[12]

食品名

状態など

含有量

大豆

枝豆

240㎍

そら豆

150㎍

落花生

炒り

96㎍

納豆

290㎍

木綿豆腐

44㎍

 


【モリブデンを豊富に含む食品(穀類)とその含有量(100gあたり)】出典[12]

食品名状態など含有量
玄米めし34㎍
精白米めし30㎍
そばゆで11㎍
中華麺ゆで5㎍


【モリブデンを豊富に含む食品(肉類)とその含有量(100gあたり)】出典[12]

食品名状態など含有量
豚レバー120㎍
牛レバー94㎍
鶏レバー82㎍
鶏つくね12㎍

モリブデンは尿として排泄されてしまうため、これらの多い食材を食べ過ぎてもモリブデン過剰摂取に繋がる可能性は低いと考えられています。

ただし、モリブデンの過剰摂取は骨密度の低下などの健康被害を引き起こすとされているため、サプリメントでのモリブデン摂取を検討している方は注意が必要です。
 

モリブデンに確認されている5つの作用

モリブデンは、キサンチンオキシダーゼやアルデヒドオキシダーゼ、亜硫酸オキシダーゼなど人体で使われる酵素の補酵素として機能しています。これらの酵素は、尿酸の代謝や肝臓や腎臓での解毒作用、糖尿病や鉄欠乏性貧血の予防、一酸化窒素合成をサポートする働きがあるのです出典[2]

したがって、モリブデンは人間だけでなくほとんどの生物の健康に必要な栄養素といえるのです出典[1]出典[2]

1.尿酸の代謝

アルコール飲料などに含まれているプリン体は、分解され尿酸とキサンチンとして代謝されます。この酵素反応後、尿酸は尿中に排泄されていきます。

尿酸の代謝には、モリブデンが補因子として働く酵素であるキサンチンオキシダーゼが深く関わっているのです

また、モリブデンは尿酸の合成をサポートするため、過剰摂取すると血中の尿酸濃度が上昇し、痛風(高尿酸血症)の症状が現れます。さらに、尿酸値の上昇によって心血管疾患のリスクも増大するため注意が必要です出典[13]

アメリカにおける全国健康栄養調査によると、血液中の尿酸値が59.48 µmol l-1増加するごとに心疾患症状の発生率や心臓病での脂肪率が有意に増加することが分かっています出典[3]

ビールなどのお酒をよく飲む方はプリン体の摂取量も多くなるため、モリブデンが含まれる食材やサプリメントを摂取して血管への負担を軽減させておきましょう。

 

2.解毒作用

肝臓や腎臓での有害物質の分解にも、モリブデンが深く関わっています。モリブデンが補酵素として機能する酵素として挙げられるアルデヒドオキシダーゼや亜硫酸オキシダーゼには、肝臓での解毒作用をサポートする働きがあります。

アルデヒドオキシダーゼは、アルコールや薬物、毒素などの代謝に必要な酵素です。アルコールを代謝するときに生成される酢酸は、体内でエネルギーとして利用されます出典[4]出典[5]

亜硫酸オキシダーゼは、毒性のある亜硫酸イオンから毒性の低い硫酸イオンへの変換や、亜硫酸塩を硫酸塩に変換し、体内に危険な亜硫酸塩の蓄積を防止するなどの解毒作用を持つ酵素です。また、亜硫酸オキシダーゼはミトコンドリアに存在する酵素であり、ATPの合成にも関わっています出典[4]

普段からアルコールや薬を摂取している方には、肝臓の解毒作用は非常に重要です。食事やサプリメントでモリブデンを補給し、肝臓の健康をサポートするのがおすすめです。

 

3.糖尿病の予防

モリブデンは血糖降下作用があり、糖尿病の予防に役立つと考えられています。

24名の被験者にモリブデンでバイオ強化したレタスを12日間補給したところ、空腹時血糖値やインスリン抵抗性が大幅に低下し、インスリン感受性が有意に増加したことが分かりました出典[14]

将来糖尿病になってしまうことを防ぐためには、モリブデンを始めとした栄養素をバランス良く摂取することが大切です。

 

4.鉄欠乏性貧血の予防

血液の赤血球を作るのに必要な鉄が不足すると、モリブデンは肝臓に蓄えられている鉄の運搬をサポートします。つまり、モリブデンは鉄欠乏性貧血を予防する効果があると考えられています。

また、モリブデンと銅の排泄を促す働きがあります。銅の不足は鉄の吸収率や利用効率の低下に繋がるため注意が必要です出典[6]

鉄不足による貧血が気になる方は、モリブデンが含まれる食材やサプリメントを摂取して血管への負担を軽減させておきましょう。

 

5.一酸化窒素合成のサポート

モリブデンは、亜硝酸塩を一酸化窒素へ還元させる機能をサポートすることが明らかになっています。この働きは、体内の細胞も低酸素などの困難な状況から守るために重要です出典[7]出典[8]

ビールなどのお酒をよく飲む方はプリン体の摂取量も多くなるため、モリブデンが含まれる食材やサプリメントを摂取して血管への負担を軽減させておきましょう。

 

モリブデンの摂取方法や注意点

健康な人の場合は、モリブデンの不足はめったに起こらないといわれています。また、モリブデンは尿として排泄されやすいため、モリブデンの摂り過ぎも起こる可能性は低いと考えられています。

しかし、モリブデンの過剰摂取は骨密度の低下や男性の生殖機能の低下などの健康被害の原因となることが分かっています。そのため、サプリメントでモリブデンの摂取を考えている方は注意が必要です。

1.どのくらい摂取すればいい?

1日あたりのモリブデンの摂取推奨量は以下の通りです。

ちなみに、0〜11ヶ月の乳児の場合は、主に母乳を与えられた乳児において観察されたモリブデンの平均摂取量を目安量として反映しています出典[1]

【モリブデンの1日あたりの食事摂取基準(推奨量)】出典[13]

性別/年齢男性女性
0~5ヶ月2㎍(目安量)2㎍(目安量)
6~11ヶ月5㎍(目安量)5㎍(目安量)
1~2歳10㎍10㎍
3~5歳10㎍10㎍
6~7歳15㎍15㎍
8~9歳20㎍15㎍
10~11歳20㎍20㎍
12~14歳25㎍25㎍
15~17歳30㎍25㎍
18~29歳30㎍25㎍
30~49歳30㎍25㎍
50~64歳30㎍25㎍
65~74歳30㎍25㎍
75歳以上25㎍25㎍

また、モリブデンの1日あたりの平均摂取量は男性が109㎍、女性が76㎍とされています。授乳婦の場合は、推奨量がそれぞれ3㎍プラスされます出典[1]出典[13]

 

2.健康上限摂取量は?

1日あたりのモリブデンの健康上限摂取量は、以下の通りです。

【モリブデンの1日あたりの食事摂取基準(耐容上限量)】出典[13]

性別/年齢男性女性
0~5ヶ月
6~11ヶ月
1~2歳――
3~5歳
6~7歳
8~9歳
10~11歳
12~14歳
15~17歳
18~29歳600㎍500㎍
30~49歳600㎍500㎍
50~64歳600㎍500㎍
65~74歳600㎍500㎍
75歳以上600㎍500㎍

また、モリブデンの過剰摂取には骨密度の低下や男性の生殖機能の悪化などのリスクが増大する恐れがあるとされています。

1496名の成人を対象とした調査によると、モリブデンの摂取量が増えると、50歳以上の女性における腰椎の骨密度が減少するように見えることが分かりました出典[9]

2ヶ所の不妊治療クリニックを通じて募集された 219 名の男性を含む観察研究では、血液中のモリブデンの増加と精子の数と質の低下との間に有意な関係があることが示されています出典[10]

さらに、血液中のモリブデンの増加が男性ホルモン(テストステロン)レベルの低下と関連していることが分かりました。この結果に加えて、モリブデンが多く亜鉛が少ない男性の場合は男性ホルモン(テストステロン)レベルが37% 減少していま出典[11]す。

 

3.普段の食事で不足することははある?

健康な人の場合は、普段の食事でモリブデンが不足することはめったにないといわれています出典[1]

ただし、先天性の代謝障害であるモリブデン補因子欠乏症を抱えている場合は、注意が必要です。モリブデン補因子欠乏症は乳児が抱えていることがあり、キサンチンオキシダーゼやアルデヒドオキシダーゼ、亜硫酸オキシダーゼなどの酵素の欠乏に繋がるとされています出典[1]

ちなみに、食事によるモリブデン不足の発生は、人間の場合は現在までで 1 例しか報告されていません出典[1]
 

まとめ

モリブデンは、さまざまな代謝反応を行う酵素の補酵素として機能し、人間だけでなくほとんどの生物が生きていくために必要なミネラルです。私たちの普段の生活において、モリブデンの不足や摂り過ぎはほとんどありません。ただし、モリブデンの過剰摂取は骨密度や男性の生殖機能に悪影響を及ぼすことが分かっています。そのため、サプリメントを使用する方は1日の摂取量をしっかり守ることが大切です。

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