執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
キウイってどんな食べ物?
キウイを最近食べた記憶がない、という方も多いのではないでしょうか。スーパーには年中売られているキウイですが、食べようと意識しなければ摂取の機会は少ないかもしれませんね。
まずはキウイの特徴や種類、基本的な栄養価について確認しましょう。
ニュージーランドや中国で主に栽培
キウイはニュージーランドや中国で多く生産されている果物です。中国を原産とするキウイがニュージーランドに持ち込まれ、品種改良されたことで現在のキウイが生まれました。
キウイという名前は、ニュージーランドのシンボルである鳥の「キーウィ」にちなんで命名されています。大きなキウイが歩いているような丸い鳥の姿を、メディアで見た方も多いことでしょう。
スーパーに並ぶキウイは大半が輸入品ですが、日本でもキウイは栽培されています。愛媛や和歌山、福岡など、瀬戸内海や九州で多く生産されているようです。国産のキウイは甘みが強い傾向にあるため、キウイの酸味を苦手とする方は国産のキウイを試してみてもよいかもしれませんね。
緑色と黄色で栄養価がやや異なる
キウイにはグリーンキウイとサンゴールドキウイの2種類があり、それぞれでやや栄養価が異なります。
【キウイ100gあたりの栄養価(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より)出典[1]】
キウイフルーツ(緑肉種) | キウイフルーツ(黄肉種) | |
エネルギー(kcal) | 51 | 63 |
βカロテン(μg) | 53 | 38 |
ビタミンC(mg) | 71 | 140 |
食物繊維(g) | 2.6 | 1.4 |
緑色のグリーンキウイはβカロテンや食物繊維の面で、黄色のサンゴールドキウイはビタミンCの面で優れていることがわかるでしょう。
いずれの成分を重要視するかで食べる種類を変えてみると、よりキウイの効果が期待できそうですね。
男性がキウイを食べることで得られる効果8選
では、男性がキウイを食べることにはどのようなメリットがあるのでしょう。
キウイに特徴的な栄養素をそれぞれ取り上げ、期待できる健康効果について解説します。
クエン酸が疲労回復効率UP
キウイの強い酸味成分のひとつ、クエン酸はエネルギーを作るための代謝ルート「クエン酸回路」の要となる栄養素です。クエン酸の補給により効率よくエネルギーが生成されるため、疲れにくくなったり、疲労からの回復を促したりする効果が期待できるでしょう。
2007年に株式会社創医研ホールディングスでおこなわれた研究では、クエン酸を8日間摂取することで、4時間のサイクリング運動後の疲労感や痛みを評価するVASスコアの数値が14.0減少したとの結果が得られました。
VASスコアにおける「14.0」の減少は非常に大きく、ほぼ全ての人が日常生活での疲労軽減を実感できるレベルであると示されています出典[2]。
キウイはクエン酸を最も効率よく摂れる食品のひとつです。食品に含まれるクエン酸の量を確認してみましょう。
【食品100gあたりに含まれるクエン酸量(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より)出典[3]】
食品 | クエン酸量(g) |
キウイフルーツ(緑肉種) | 1.0 |
レモン(果汁) | 6.5 |
うめ(梅干し・塩漬) | 3.4 |
レモン(全果) | 3.0 |
グレープフルーツ(白肉腫・砂じょう) | 1.1 |
オレンジ(ネーブル・砂じょう) | 0.8 |
レモンや梅干しには、キウイフルーツを大きく上回るクエン酸が含まれていますが、一度に摂取できるレモン果汁や梅干しは多くても10g程度でしょう。1個100gのキウイを食べれば、レモンや梅干し以上の効率でクエン酸を摂取できます。
疲労回復のサポートに、ぜひクエン酸が豊富なキウイを活用しましょう。
ビタミンCが心身のストレスを軽減
キウイはビタミンCの効率的な摂取源としても活躍します。とくにサンゴールドキウイは、スーパーで手軽に手に入れられる果物のなかでもトップクラスの含有量を誇ります。
【食品100gあたりに含まれるビタミンC量(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より)出典[3]】
食品 | ビタミンC(mg) |
キウイフルーツ(緑肉種) | 71 |
キウイフルーツ(黄肉種) | 140 |
レモン(全果) | 100 |
かき(甘がき) | 70 |
いちご | 62 |
レモン(果汁) | 50 |
ビタミンCの補給は、ストレスホルモンであるコルチゾールの増加を軽減するように働きます。激しいスポーツの後に生じる肉体的なストレスにおいても、慢性的な精神的ストレスにおいても、ビタミンCはコルチゾール軽減効果を発揮するようです出典[4]出典[5]。
コルチゾールは筋肉の分解や体脂肪の合成を促したり、睡眠の質を下げたりする作用があります。コルチゾールの量が増えすぎないよう調節できれば、より元気に毎日を過ごせるでしょう。
また、2013年にニュージーランドのオタゴ大学から発表された論文では、若い成人男性がキウイを1日2個摂取することで、活力が34%増加し、うつ症状が34%減少するとの結果が得られています出典[6]。
ビタミンCが豊富なキウイは、過剰なコルチゾールの分泌を抑えたり、精神症状を改善したりするために役立つようです。毎日を元気に過ごすための果物として、ぜひキウイを取り入れてみてはいかがでしょう。
食物繊維が腸内環境を改善
キウイのなかでもグリーンキウイには食物繊維が豊富に含まれています。キウイの繊維は膨潤性と保水性が高いため、腸内で膨らんだり水分を吸収したりする力に長けています。便のかさを増やして腸内を刺激できれば、便秘の解消に大いに役立つでしょう。
キウイの食物繊維のうち、水溶性食物繊維であるペクチンやアラビノキシランは、腸内での発酵を受けて短鎖脂肪酸になります出典[7]出典[8]。短鎖脂肪酸は腸内を酸性環境にして善玉菌を増殖しやすくするため、腸内環境を良好に保つ効果が期待できるでしょう。
たんぱく質や脂質の多い食事や、不規則な生活は腸内に悪玉菌を増やしやすく、腸内環境を悪化させてしまいます。腸内環境の悪化は肥満をはじめ、糖尿病や動脈硬化、大腸がんなどと関係しているため、悪玉菌を減らせるような食事を心掛けたいものです。
善玉菌が増えれば悪玉菌の増殖も抑えられ、腸内環境を良好に保ちやすくなります。キウイから食物繊維を効率よく取り入れて、善玉菌を効率よく増やしましょう。
豊富なカリウムや抗酸化物質が血流を改善
キウイから摂取できるミネラルとしてカリウムがあります。カリウムは余分に摂取しがちなナトリウムを、水分とともに体外へ排出するように働きます。血圧の管理にも役立つため、高血圧を予防する効果が期待できるでしょう。
2013年にノルウェーのオスロ大学から発表された論文では、1日3個のキウイを3週間食べ続けたところ、収縮帰血圧が10mmHg、拡張期血圧が9mmHg、血栓形成を促す血小板の凝集反応が15%減少、血圧上昇を促すアンギオテンシン変換酵素の活性が11%減少したと報告されています出典[8]。
また、キウイには抗酸化物質により血管を若々しく柔軟に保つ効果も期待できます。キウイに含まれる主な抗酸化物質は、ビタミンCのような抗酸化ビタミンや、βカロテンやルテイン、ゼアキサンチンのようなカロテノイドです。
さらに食物繊維であるアラビノキシランにも抗酸化作用があることが確認されており出典[9]、体内に発生した活性酸素の働きを抑えるために役立つでしょう。
過剰な活性酸素が血管にダメージを与えると、修復のために血管が硬くなり柔軟性を失ってしまいます。硬くなった血管では血圧を調節できず、高血圧のリスクが高まったり血流が低下したりしがちです。
血流の改善は、疲労回復効率を高めたり冷えを改善したりするためにも効果的です。カリウムや抗酸化物質を十分に摂取して、血圧や血流の悪化を防ぎましょう。
セロトニンやメラトニンが睡眠の質を向上
キウイには「幸せホルモン」として知られるセロトニンが5.8μg/g、「睡眠ホルモン」のメラトニンが24μg/g含まれています出典[10]。
セロトニンが豊富な食品について調べた研究では、次のように含有量が示されています出典[11]。
【食品中のセロトニン濃度】
食品名 | セロトニン濃度平均値(μg/g) |
キウイ | 5.8 |
クルミ | 87 |
オオバコ | 30.3 |
パイナップル | 17.0 |
バナナ | 15.0 |
プラム | 4.7 |
トマト | 3.2 |
クルミやオオバコなど、セロトニン含有量の多い食品はほかにもありますが、手軽に摂取できる点やメラトニンを同時に含む点において、キウイは優れていると言えそうです。
セロトニンには気分を安定させ不安を解消する効果が、メラトニンには体内の概日リズムを調節したり入眠をスムーズにしたりする効果があります。
2011年に台湾の台北医科大学から発表された論文では、毎晩眠る1時間前にキウイ2個の摂取を4週間続けたところ、不眠の状態を評価するCPSQIスコアが42.4%低下、入眠にかかる時間が28.9%減少し、睡眠効率が5.4%増加、総睡眠時間が13.4%増加したとの結果が得られています出典[12]。
寝付きが悪い方、寝ても十分に疲れが取れない方は、睡眠の質を高めるためにキウイを取り入れてみるとよいかもしれません。
生活習慣病のリスクを軽減
キウイは血圧や血中脂質、血糖のコントロールに適した食品です。生活習慣病や動脈硬化を防ぎ、心血管疾患のリスクを下げる効果が期待できるでしょう。
血圧については、豊富なカリウムと抗酸化物質が血流を改善し、動脈硬化のリスクを下げるように働きます。
また血中脂質を整える働きについても確認されています。2004年にノルウェーのオスロ大学から発表された論文では、1日あたり1~3個のキウイ摂取を28日間続けることで、中性脂肪が15%減少したとの結果が得られました出典[13]。
さらにキウイに含まれる食物繊維は食後高血糖を抑えるように働きます。2016年にニュージーランド植物食品研究所でおこなわれた研究では、朝食用シリアルの代わりにキウイを食べることで、食後の血糖値の上昇を約40%低下させたと報告されています出典[14]
このように、キウイに含まれる栄養素は血圧や血中脂質、血糖をコントロールするために役立ちます。肥満によるメタボリックシンドロームが気になる方や、動脈硬化を予防したい方に、キウイの摂取はおすすめです。
たんぱく質の消化を促進
鮮やかな緑や黄色が綺麗なキウイですが、実は生のままゼリーに使用することはできません。ゼリーのたんぱく質を、キウイに豊富なたんぱく質分解酵素である「アクチニジン」が分解するため、ゼリーが固まらず液状のままになってしまうのです。
アクチニジンのたんぱく質分解作用はこのように強力です。2022年にニュージーランドのマッセイ大学から発表された論文では、キウイフルーツ抽出物が胃での消化中にたんぱく質の分解を強化すること、グリーンキウイの方がサンゴールドキウイよりも高いアクチニジン活性を示したことが報告されています出典[15]。
多くのたんぱく質を摂取するアスリートや、焼肉などで胃もたれを感じやすい方などに、キウイのアクチニジンが役立つ可能性があります。消化をサポートするアクチニジンをぜひキウイから取り入れてみましょう。
ルテインが目の健康をサポート
キウイにはカロテノイドであるルテインとゼアキサンチンが含まれています。ルテインやゼアキサンチンは様々な眼疾患を予防することで知られており、特に白内障や加齢黄斑変性症のリスク軽減に効果的です。
2008年にオーストラリアのシドニー大学で行われた調査では、ルテインとゼアキサンチンの摂取量が最も多い人は、摂取量が最も少ない人に比べて血管新生型の加齢黄斑変性症が65%減少していたと報告されています出典[16]。
加齢黄斑変性症とは、網膜の中心部である黄斑の障害によりものが見えにくくなる眼疾患です。放置すると失明にもつながるため、早期発見はもちろん、発症の予防も重要となるでしょう。
ちなみにルテインとゼアキサンチンの含有量には、グリーンキウイとサンゴールドキウイで大きな差があります。
【キウイ100g中のルテインとゼアキサンチンの合計含有量出典[7]】
ルテイン+ゼアキサンチン(μg/100g) | |
グリーンキウイ | 122 |
サンゴールドキウイ | 24 |
目の健康をサポートする効果をより期待したい場合には、グリーンキウイの摂取が適しているでしょう。
男性がキウイを食べる際のポイント
このように、キウイにはさまざまな健康効果が期待できることがわかりました。
ここからは、実際にキウイを食べる際に気を付けたいポイントについて詳しく解説しましょう。
1日2個を目安に、1~3個で調整
これまで確認してきたキウイの効果のうち、実際に摂取を続けたキウイの数を確認してみましょう。
このように、気分の改善や睡眠の質の向上では2個、生活習慣病の予防においては1~3個の範囲で効果が見られています。
キウイにどの効果を期待するかにもよりますが、1日2個の摂取を継続すればより効果を得やすくなると考えられるでしょう。
もちろん、1個の摂取でも効果が確認できているため、食べられる範囲での継続がおすすめです。2個を負担に感じる場合には調整をおすすめします。
いずれの数でも、毎日続けることが重要です。ビタミンやクエン酸、抗酸化物質などの成分は体内に長期間留め置けないため、摂取を継続して栄養素の恩恵をより多く受けられるようにしましょう。
2つの種類を食べ分けよう
グリーンキウイとサンゴールドキウイは、ビタミンCや食物繊維、βカロテン、ルテイン、ゼアキサンチンなどの含有量に差があります。そのためキウイにどの効果を期待するかによって、種類を食べ分ける必要があるでしょう。
食べ分けの例として、次のような考え方があります。
グリーンキウイ | サンゴールドキウイ |
・腸内環境を整えたい ・目の健康をサポートしたい ・たんぱく質の消化を助けたい | ・ストレスを軽減したい ・気分やうつ症状の改善を目指したい |
グリーンキウイは食物繊維、アクチニジン、ルテインやゼアキサンチンを効率よく摂りたい方に、サンゴールドキウイはビタミンCの含有量に期待したい方におすすめです。
ちなみにカリウムの含有量は両者で差がありません。血圧のコントロールを期待する場合には、種類を気にせず好みで選びましょう。
朝の摂取で心身を健康的に
キウイを摂取するタイミングとして、朝食の時間帯がおすすめです。
キウイに豊富な食物繊維を、朝起きてすぐの食事に取り入れることで、朝食に加え、その後の昼食や間食の血糖値の上昇まで抑えやすくなるという「セカンドミール効果」が生まれます出典[17]。生活習慣病の改善効果をより期待する場合には、ぜひ朝の摂取を心掛けましょう。
ただし睡眠の質を高める効果が確認できた論文においては、寝る前に2個のキウイを食べていました。そのため快眠効果を期待する場合には夜の摂取が適切です。
しかしキウイ2個、200gのカロリーは、グリーンキウイで約100kcal、サンゴールドキウイで約130kcalとなるため、夜遅くに摂ることで体脂肪が増えやすくならないか心配になる方もいるでしょう。その場合にも、やはり朝の摂取がおすすめです。
入眠をスムーズにする効果のあるホルモン「メラトニン」は、セロトニンを材料として合成されます。セロトニンは朝、日の光を浴びることで合成が高まるホルモンです。日中のセロトニンが多いほど夜に作られるメラトニンも増えるため、朝のセロトニン摂取も快眠に役立つと考えられるでしょう。
また、朝にセロトニンを摂ることで活力の向上や気分の改善にもつながり、元気よく1日を過ごしやすくなります。キウイの摂取タイミングに悩んでいる方は、ぜひ朝食にキウイを取り入れてみましょう。
皮ごとスムージーで効果倍増
キウイの食物繊維や機能性成分は、皮にも豊富に含まれています。サンゴールドキウイはグリーンキウイのように表面に長い毛がなく滑らかであるため、皮ごと食べる方法も普及しつつあるようです。
サンゴールドキウイを皮ごと食べると、食物繊維が50%、ビタミンEや32%、葉酸が34%増加します出典[7]。キウイの栄養価をより高めたい場合には、皮ごと食べる方法にも挑戦してみましょう。
皮の質感が気になる場合には、スムージーに活用すると気にならなくなります。好みの野菜とあわせて摂取すれば、さらに多くの食物繊維を摂取できるでしょう。お手軽な朝食のメニューとして、ぜひ試してみてください。
不調が出る場合には摂取をやめる
食品アレルギーといえば卵や牛乳、エビにカニなどが有名ですが、野菜や果物にもアレルギーを生じるものが少なからず存在します。
キウイは果物のなかでもアレルギーを生じやすい種類です。アレルゲン物質が含まれるため、体質上あわない場合がある点に注意しなければいけません。たんぱく質分解酵素であるアクチニジンも、アレルゲンのひとつとして抗体反応を刺激することがわかっています出典[18]。
口内や唇の強い痒み、下痢や皮膚の発疹などを生じた場合には、すぐ摂取をやめて医療機関を受診しましょう。
1日2個のキウイで体調を整えよう!
キウイは非常に栄養価の高い果物であり、ビタミンCや食物繊維など、さまざまな栄養素や機能性成分を豊富に含んでいます。ストレスや疲労の軽減や、生活習慣病の予防、睡眠の質の向上などに役立つでしょう。
1日2個の摂取が効果を発揮しやすい最適の量と考えられますが、毎日継続することを考えて1日1個からの摂取でも問題ありません。またグリーンキウイとサンゴールドキウイで含まれる栄養素や機能性成分の量に差があるため、期待したい効果にあわせて種類を食べ分けることも重要です。
毎日の食事にキウイを取り入れて、心身ともに元気な毎日を過ごしましょう。
出典
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