監修者
管理栄養士
中村友也
新卒で高度急性期病院の管理栄養士として栄養指導や栄養管理に従事。担当した栄養指導件数は300件を超える。現在はフリーランスの管理栄養士としてブログの運営やライター業務、コミュニティの運営など多岐に渡り活動中。
執筆者
株式会社アルファメイル
NP+編集部
「オトコを科学する」をキーワードに男性の悩みや課題の解決を科学的根拠をもってサポート。運動や睡眠、栄養など、健康に関する正しい知識を提供するためにコンテンツを製作中。
テアニンって一体何?
まずはテアニンの基本情報についてご紹介します。
テアニンの正体
テアニンは、1950年に酒戸弥二郎博士によって茶葉から発見された旨味成分のことで、昆布の旨み成分であるグルタミン酸と似た構造をしています。テアニンという名前は、お茶の古い学名である”Thea sinensis”に由来し、“Theanine(テアニン)”と命名されました。日本では1964年に食品添加物として指定されています。
どんな食材に含まれているのか
テアニンは、お茶やキノコ、ツバキなどに含まれています。キノコに関しては、ヨーロッパやカナダなどでしか見られないニセイロガワリという品種のみでしか見つかっていませんし、ツバキは食材として摂取するのは不可能です。そのため、テアニンはお茶に特有の成分と言えるかと思います。
テアニンはお茶に含まれる旨味成分であり、抹茶や玉露など高級なものに多く含まれています。低価格で手ごろに飲める番茶にもテアニンは含まれていますが、抹茶の10分の1程度です。
テアニンの主な働き
テアニンは、脳内でセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の濃度を変化させることで様々な効果をもたらします出典[1]。またカフェインやカテキンとも作用し、脳の働きを活性化します。
テアニンに確認されている機能や効果7つ
ここからはテアニンの効果についてご紹介します。
1.リラックス効果や不安の緩和
テアニンの摂取により、心にリラックス効果をもたらすことが分かっています。テアニンを摂取することで、脳内のアルファ波の発現が大幅に増加します。アルファ波はリラックスしているときに発現する脳波であり、その発現により、眠気もたらすことなく心を落ち着かせることできます。若く健康な16名の被験者に50mgのテアニンを摂取してもらい、摂取後45、60、75、90、105分の脳波を測定しました。比較対象として19名の何も摂取しないプラセボ被験者も同じように脳波を測定しました。その結果、テアニンを摂取した被験者において、時間の経過とともにアルファ波の活動が大幅に増加していることが分かりました出典[2]。
またテアニンには、不安を緩和する効果もあります。40名の統合失調症患者の抗精神病治療にテアニンを1日400mg追加して摂取したところ、統合失調症の陽性数や活性化が抑えられ、不安症状を改善することができたことが示されました出典[3]。
これらの結果から、ストレスや不安で落ち着かない人やリラックス効果を求める人には、テアニンの摂取が有効かと思います。
2.健康的な血圧の維持
テアニンにはストレスや不安の軽減のほかに、血圧上昇を軽減する効果もあります。
14名の被験者を、テアニン200mg摂取群、カフェイン100mg摂取群、プラセボ摂取群の3つに分け、ストレスのかかる作業後の血圧の推移を調べました。テアニン摂取群は、高ストレス反応後の血圧上昇を軽減することが示されました。カフェイン摂取群にも血圧上昇の軽減は見られましたが、テアニンの方がより高い効果が得られました出典[4]。
テアニンは、高いストレスによる血圧上昇が見られる人にとって、健康的な血圧を維持するために重要な成分であると言えます。
3.睡眠の質の向上
テアニンの摂取により睡眠の質が向上し睡眠満足度が向上することが分かっています。
450〜900mgのテアニンを8週間摂取した被験者46名を調べたところ、プラセボ被験者よりも自己申告による睡眠満足度が高いという結果が得られました出典[5]。
テアニンは、機能性表示食品に含まれる成分として睡眠サプリによく利用されており、睡眠障害でお悩みの方に有効な成分と言えます。
4.認知能力や思考力サポート
テアニンには記憶力の低下をサポートする機能もあります。脳虚血注釈[1]によって引き起こされた神経細胞の障害を軽減し、それにより記憶力低下を防止します。
これは、脳虚血で記憶障害が起こっているラットを用いた実験により明らかになりました。繰り返し脳虚血になるラットに1回目の脳虚血後すぐにテアニンを投与し、認知能力の有無を調べました。その結果、2回目の脳虚血後は空間記憶能力の低下を著しく防いだことがわかりました。テアニン投与により、記憶力低下が防止されたと言えます出典[6]。
また、テアニンとカフェインの同時摂取も認知能力の向上や思考力のサポートに有効です。カフェイン50mgを摂取した被験者とカフェイン50mgとテアニン100mgを同時摂取した被験者において、注意の切り替えや注意力散漫の程度を調べました。カフェイン単独摂取の被験者は注意切り替えの精度の向上に90分かかりました。それに比べて、カフェインとテアニンを同時摂取した被験者においては、60分で注意切り替えの精度やスピードが向上し、注意力散漫の程度も減少しました出典[7]。
高齢になるにしたがって低下する認知能力や思考力のサポートにテアニンは有効であると言えます。
5.集中力アップ
テアニンの摂取により集中力がアップし疲れにくくなります。
44名の若年成人男性を対象にカフェイン40mgとテアニン97mgの同時摂取した群とプラセボ群に分け、集中力や疲労感の効果を調べました。その結果、同時摂取によるタスク切り替えの精度や自己申告による疲労感の軽減が示されました。集中力が必要なテストや受験勉強前の学生は、カフェインとテアニンの同時摂取が有効と言えます出典[8]。
6.免疫機能の向上
テアニンには免疫機能を向上させる可能性があります。
例えば、インフルエンザの感染予防にテアニンと茶カテキンの同時摂取は有効です。
2009~2010年に東村山の3つの高齢者医療施設で行われた研究では、98名の医療従事者に1日あたり210mgのテアニンと378mgの茶カテキンを5か月間同時摂取してもらい、インフルエンザ発生率を調べました。比較対象としてプラセボを摂取した医療従事者99名におけるインフルエンザ発生率は13.1%でしたが、テアニンと茶カテキンを同時摂取した医療従事者のインフルエンザ発生率は4.1%であり、テアニンと茶カテキンの同時摂取によりインフルエンザにかかりにくくなり、免疫機能を向上させる可能性が示されました出典[9]。
またテアニンには、胃の手術後の炎症緩和と回復促進の効果もあります。1日280mgのテアニンと700mgのシスチン注釈[2]を10日間同時摂取した被験者33名を調べたところ、プラセボ被験者よりも手術後の体温上昇の抑制やC反応タンパクの減少が見られました出典[10]。 C反応タンパクとは手術後など炎症が起きているときに血中に増加するタンパクのことであり、C反応タンパクの減少は炎症の緩和を意味しています。
これらの結果より、テアニンは感染予防対策や手術後の炎症緩和などにも有効な成分であることが分かります。
7.月経前症候群の改善
テアニンには月経前症候群を改善する効果があります。
排卵日から月経開始日までの約2週間、1日200mgのテアニンを摂取した成人女性17名について、MDQスコアを調べました。MDQスコアとは月経前症候群の程度を数値化したものであり、高いほど強い症状があらわれていることを示します。MDQスコアは月経の3日前に記入され、テアニン摂取期とプラセボ摂取期で比較されました。平均スコアは、プラセボ摂取期は17.6点に対し、テアニン摂取期は10.0点と低く、テアニンの摂取により月経前症候群の症状が緩和していることが示されました出典[11]。
テアニンは、月経前症候群に悩む女性に効果がある成分であると言えます。
テアニンの推奨量や飲み方
最後に推奨量と飲み方についてご紹介します。
推奨量について
テアニンの推奨量は明確には示されていませんが、1日200mgが一般的です。臨床試験でも1日200mg〜400mgの摂取が多いです。
理想の飲み方やタイミングについて
思考力や集中力を高めたい場合は、テアニンとカフェインを一緒に摂取することが効果的です。コーヒーと一緒に摂取することが有効でしょう。
しかし、就寝前のリラックス効果を得たい場合は、カフェインを一緒に摂取しないようにしましょう。カフェインには覚醒や興奮作用があるため、同時に摂取するとテアニンの効果を打ち消してしまうためです。また、リラックス効果を得たい場合のテアニンの摂取は、入眠前が良いでしょう。上記で述べたように、テアニンを摂取してからリラックス効果を得るまでは45分程度かかり、寝る直前に摂取しても効果は感じられにくいためです。
まとめ
テアニンには、リラックス効果や睡眠の質を上げる効果があります。またカフェインとの同時摂取により、集中力をアップさせることもわかっています。女性の月経前症候群を緩和するなどの効果もあり、非常に注目されている成分です。
テアニンはお茶に特有の成分で、抹茶などの高級なお茶には多く含まれていますが、低価格で手に入る番茶などにはあまり多く含まれていません。そのため日々の食事での摂取は難しく、サプリなどで補うことが有効でしょう。
注釈
出典
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