セレンとは?6つの役割と適切な摂取方法
2023年11月21日更新

執筆者

株式会社アルファメイル

NP+編集部

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セレンとは

まずはセレンの基本情報についてご紹介します。

1.どんな栄養素?

セレンは別名セレニウムといい、体内に約13mg含まれる必須微量元素です出典[1]。 多くの食品に存在しており、栄養補助食品としても利用されています。人間にとって栄養的に不可欠なセレンは、生殖、甲状腺ホルモン代謝、DNA合成、および酸化的損傷や感染からの保護に重要な役割を果たす20以上のセレノプロテインの構成要素になっています。

セレンは、無機(セレン酸塩と亜セレン酸塩)と有機(セレノメチオニンとセレノシステイン)の2つの形態で存在し、どちらも優れた食事源になり得ます。土壌には、無機セレンであるセレン酸塩と亜セレン酸塩が含まれており、それらを植物が蓄積し大部分が有機セレンに変換されます。

セレンのほとんどが、動物や人間の組織ではセレノメチオニンの形をしており、体内のたんぱく質に存在しています。骨格筋はセレン貯蔵の主要な部位であり、セレン全体の約28%から46%を占めています出典[2]

 

2.不足するとどんなリスクがある?

日本の土壌は適度にセレンが含まれています。そのため、セレン不足が起きることは少ないですが、不足すると下肢の筋肉痛、皮膚の乾燥などが発生します。土壌のセレン濃度の低いニュージーランドや中国の一部地域では、克山病(中国の風土病の一つでセレン不足による心筋症)といった欠乏症の報告があります出典[1]

セレンが不足し欠乏症が起ると、冠状動脈性心臓病のリスクを高める可能性があります出典[3]

また、認知症患者において、アルミニウムと不安定な形の鉄と銅が増加し、マンガン、亜鉛、セレンが減少していることが分かっています出典[4]。セレンが認知症を予防すると言うにはデータが不十分ではありますが出典[5]、健康な脳の状態を維持するために適切な量のセレンの摂取が必要です。

喘息患者は、セレンや亜鉛、銅の適切な摂取に注意が必要です。喘息患者は、健康な被験者よりも、セレンと亜鉛の濃度が低く、銅の濃度が高くなっています。これら栄養素の摂取過不足は、喘息における酸化的障害と炎症、CD4/CD8リンパ球比率の上昇、肺機能の低下を悪化させる可能性があることが分かっています出典[6]。そのため、喘息症状の悪化を抑えるためにも、セレンや亜鉛、銅などの必須微量元素の摂取に気を付ける必要があると言えます。


3.どんな食材に含まれている?

セレンは、肉類、魚介類、調味料・香辛料類、卵類などに多く含まれています。また、セレン濃度の高い土壌で育った野菜類にも多く含まれています。

【セレンを豊富に含む食品(肉類)とその含有量(100gあたり)】出典[7]

食品名

状態など

含有量

豚 腎臓

240 μg

牛 腎臓

210 μg

豚 肝臓

67 μg

にわとり 肝臓

60 μg

 

【セレンを豊富に含む食品(魚介類)とその含有量(100gあたり)】出典[7]

食品名

状態など

含有量

かつお節

加工品

320 μg

あんこう きも

200 μg

すけとうだら たらこ

130 μg

まがれい

110 μg

くろまぐろ 赤身

110 μg

ずわいがに

97 μg

あまだい

75 μg

めかじき

59 μg

 

【セレンを豊富に含む食品(調味料・香辛料類)とその含有量(100gあたり)】出典[7]

食品名

状態など

含有量

からし

290 μg

ひまわり

フライ、味付け

95 μg

顆粒和風だし

74 μg

マカロニ・スパゲッティ

63 μg

 

【セレンを豊富に含む食品(卵類)とその含有量(100gあたり)】出典[7]

食品名

状態など

含有量

鶏卵 卵黄

47 μg

鶏卵 卵黄

ゆで

36 μg

 

セレンに確認されている機能や役割

ここからはセレンの機能や役割についてご紹介します。

1.抗酸化作用

セレンは、抗酸化作用を有するグルタチオンペルオキシターゼという酵素の構成成分の一つです。活性酸素の分解を助ける抗酸化作用があり、細胞の老化を防ぐのに役立っています。グルタチオンペルオキシターゼには、活性酸素を分解する働きがあり、活性酸素によって不飽和脂肪酸が酸化してできる過酸化脂質の増加を防いでいます出典[1]

ヒト細胞に5.78〜578 nmol / Lの亜セレン酸ナトリウムとSe-メチル-セレノシステイン塩酸塩をインキュベートしたところ、グルタチオンペルオキシダーゼの発現と活性が増加しました。1日200μgの亜セレン酸ナトリウムを12週間摂取した内皮機能障害の冠動脈疾患患者433名を調べたところ、グルタチオンペルオキシダーゼ活性は、37.0 U/gHb (31.3~41.7) から41.1 U/gHb (35.2~48.4) に増加しました。1日500μgの亜セレン酸ナトリウムを12週間摂取した場合のグルタチオンペルオキシダーゼ活性は、38.1 U/gHb (33.2~43.8) から42.6U/gHb (35.0~49.1) に増加しました。 血管内皮機能、酸化ストレスおよび炎症のバイオマーカーには、セレンに関連する変化は観察されませんでした。これらの結果より、亜セレン酸ナトリウムの補給は、内皮細胞および冠動脈疾患患者のグルタチオンペルオキシダーゼ活性を増加させ、抗酸化作用を改善させることが示されました出典[8]

また、433,000人以上の冠状動脈性心臓病患者を含む16の対照研究のレビューでは、セレンを摂取すると、炎症マーカーであるC反応性タンパク質(CRP)のレベルが低下することが示されました。さらに、強力な抗酸化物質であるグルタチオンペルオキシダーゼのレベルを上昇させました。セレンの補給は、冠状動脈性心臓病の酸化ストレスと炎症の軽減にプラスの効果があることが示唆されました出典[3]

年齢とともに減少する抗酸化作用を助けるために、積極的にセレンを摂取し老化を防ぎましょう。

 

2.がんのリスクを低下させる

セレンにはがんのリスクを低下させる可能性があることが複数の文献により示唆されています。

1987~2012年の間にヨーロッパ、アメリカ、アジア諸国を含む世界中で実施された16件の臨床研究(10件は観察研究、6件は放射線療法を受けた癌患者におけるセレンの効果に関する研究)によると、セレンの補給により、患者の一般状態が改善、QOLが向上し、放射線治療の副作用が低減しました。また、これらの研究で使用されたセレンの用量(200〜500μg/日)では、放射線治療の効果は低下せず、毒性も報告されませんでした。

セレンの補給は、放射線療法を受ける癌患者にとって有益な可能性があります出典[9]

1980〜2014年の間に実施された350,000人以上の患者を含む69件の研究レビューでは、セレンの血中濃度の増加により、乳がん、肺がん、食道がん、胃がん、前立腺がんのリスクが低下することが示されています。しかし、大腸がん、膀胱がん、皮膚がんとセレンの関連性は見られませんでした出典[10]

81名の子宮頸がん・子宮がん患者を、39名のセレン投与群(放射線療法の実施日は500μgのセレンを経口投与、放射線療法のない日は300μgのセレンを経口投与)とプラセボ投与群に分け、副作用の程度を調べました。副作用である下痢(グレード2以上)の発生率は、プラセボ投与群は44.5%でしたが、セレン投与群は20.5%と低い結果を示しました出典[11]

セレンが癌のリスクを低下させると断言するにはデータが不十分ではありますが、セレンを適切な量摂取することで、癌の症状が緩和したり副作用が軽減したりすることがあります。

 

3.甲状腺のはたらきをサポートする

セレンは、甲状腺ホルモンを活性化し、その働きをサポートします。甲状腺ホルモンであるT4(サイロキシン、チロキシン)はホルモンとしての活性を持っていませんが、T3(トリヨードサイロニン、トリヨードチロニン)に変換されることで活性を持ち働くことができます。セレンは、この変換を行う酵素の構成成分であり、甲状腺ホルモンの活性化に欠かせない栄養素です。甲状腺の組織には、人体の他のどの臓器よりも多量のセレンが含まれています出典[12]

甲状腺ホルモンは、細胞の新陳代謝を活発にしたり交感神経を刺激したりして、体の機能を調整しています。甲状腺ホルモンの分泌量が増えすぎたり不足したりすると体調に支障をきたすことがあるため、分泌量を一定に保つことが重要です。甲状腺ホルモンが体内で増えすぎると代謝が高まり、落ち着きがない・疲れやすい・動悸がするなどの症状が現れます。頻脈や眼球突出などの症状が出現すると、バセドウ病の診断が下ることもあります。一方で、甲状腺ホルモンが不足すると、エネルギー不足となり体の働きが低下します。疲れやすくなると同時に、汗が出にくくなる・食欲低下・脱毛など多くの不調をもたらします。

甲状腺機能異常が見られ症状が現れないように、適切な量のセレンを摂取するようにしましょう。

 

4.精子を形成する

セレンは精子の形成に関わっており、活発な精子を増やす働きを持っています。

男性の不妊の原因の一つに精索静脈瘤があります。精索静脈瘤とは、精巣の周りにこぶができ血液が逆流することで、精巣の温度が上がる病気です。精子は熱に弱いため、活発な精子ができなくなり不妊の原因となります。 

精索脈瘤患者の精液中のセレン、銅および亜鉛の濃度を調べたところ、セレンの濃度が健常人よりも少ないことが分かりました。精漿中のセレンは、良好な精子濃度、運動性および形態と関連しており、亜鉛レベルと精子数の間にも関連性が確認されました。つまり、セレンの濃度低下により精力的なパラメーターが低下すること、亜鉛とセレン両方の摂取が精索静脈瘤患者の改善に利点があることが示されました出典[13]

不妊に悩む男性は、セレンを十分量摂取することで精子の健康状態を向上させることができます。セレンの入ったサプリメントを摂取し、食事で不足した分を補うのが良いでしょう。

 

5.心臓病のリスク低減

セレンを摂取することで、心臓病のリスクを低下させることができます。

1966〜2005年に実施された25件の観察研究によると、血中セレン濃度が50%上昇することで、心臓病のリスクが24%低下することが示されました。セレンには抗酸化作用もあり、酸化ストレスを減らすことで心臓病のリスクを下げる効果があると言えます出典[14]

心臓を健康な状態に保つためにも、セレンをきちんと摂取しましょう。

 

6.免疫のサポート

セレンが不足すると、ウイルスや細菌による感染症のリスクが増加します。

ウイルスや細菌の感染症は、必須微量元素であるセレンを含む主要栄養素と微量栄養素の欠乏に関連しています。セレン不足により、コクサッキーウイルスとインフルエンザウイルスの良性株が高病原性株に変異する可能性があります。

栄養価の高い適量のセレンの供給は、HIVやA型インフルエンザウイルスなどのウイルス性疾患に苦しむ患者に健康上の利益をもたらすことが示されています。さらに、セレンを含むサプリメントは、HIVと結核菌に同時感染した患者の臨床的およびライフスタイル変数を改善しました。セレン単独または他の微量栄養素との組み合わせによる疫学研究・介入試験・動物実験データは、免疫機能を変化させるための食事性セレンの必要量が示されています出典[15]
 

セレンの飲み方や注意点

 日本人は、セレン摂取量が平均で約100 µg/日といわれており、食事からセレンを十分に摂取できています。日本の土壌は適度にセレンが含まれており、セレン不足は起こりにくいです。その反面、過剰摂取に気を付ける必要があります。サプリメントで栄養を補う場合も多いことから、耐容上限量をきちんと守り健康障害が起こらないように注意しましょう。

また、鉄、亜鉛、銅などの必須微量元素も不足しないように同時摂取することで、セレンの効果を最大限発揮することができます。

 

どのくらい摂取すればいい?

1日あたりのセレンの摂取推奨量は以下の通りです。

【セレンの1日あたりの食事摂取基準(推奨量)】出典[16]

性別/年齢

男性

女性

1~2歳

10 μg

10 μg

3~5歳

15 μg

10 μg

6~7歳

15 μg

15 μg

8~9歳

20 μg

20 μg

10~11歳

25 μg

25 μg

12~14歳

30 μg

30 μg

15~17歳

35 μg

25 μg

18歳~

30 μg

25 μg

妊婦は+5 μg、授乳婦は+20 μgが摂取推奨量となりますので注意しましょう出典[16]
 

健康上限摂取量は?

1日あたりのセレンの耐容上限量は以下の通りです。

【セレンの1日あたりの食事摂取基準(耐容上限量)】出典[16]

性別/年齢

男性

女性

1~2歳

100 μg

100 μg

3~5歳

100 μg

100 μg

6~7歳

150 μg

150 μg

8~9歳

200 μg

200 μg

10~11歳

250 μg

250 μg

12~14歳

350 μg

300 μg

15~17歳

400 μg

350 μg

18歳~

450 μg

350 μg

75歳~

400 μg

350 μg

 セレンの過剰摂取により、脱毛や爪がもろくなるといった症状が現れたり、神経障害や胃腸障害が起こってしまいます。この耐容上限量を超えて摂取しないように注意しましょう。
 

まとめ

 セレンは体内に約13mg含まれている必須微量元素であり、無機セレンと有機セレンの2つの形態で存在しています。骨格筋がセレン貯蔵の主要な部位であり、セレン全体の約28%から46%を占めています。

日本の土壌にはセレンが豊富に含まれておりセレンが不足することはほとんどありませんが、不足した場合には健康被害をもたらします。下肢の筋肉痛や皮膚の乾燥が起こったり、健康な脳の状態が維持できなくなったりします。また、喘息症状を悪化する恐れもあることから、日頃からセレンの十分な摂取を心掛けましょう。

セレンには抗酸化作用があり、老化防止をサポートする栄養素の一つです。また、がんのリスクを低下させることも示唆されています。甲状腺の働きをサポートしたり、活発な精子を作り不妊を防ぐ働きもあります。心臓病や感染症のリスクを低下させる機能も持っています。

セレンの1日あたりの摂取推奨量は、成人男性は30μg、成人女性は25μgです。食事による摂取が難しい場合はサプリメントから摂取することがおすすめですが、取り過ぎには注意しましょう。耐容上限量は、成人男性は400〜450μg、成人女性は350μgであり、これを超えると、体力が低下したり脱毛になったりと健康に悪影響が起ってしまいます。

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