まずはマッシュルームがどんなキノコなのかを解説しましょう。

500年前から用いられるキノコ界の顔役

マッシュルームは16世紀ごろから栽培され始めた、実は新しめな菌類のひとつです。

英語でマッシュルームと言うとキノコ全般を指す語として用いられているなど、いわばキノコの中の顔役。

上品な味わいのホワイトマッシュルームと、野趣あふれる味わいが特徴的なブラウンマッシュルームの大きく2つに分類されています。

フランスではシャンピニオンと呼ばれ、多くのフレンチ料理に用いられる民衆に広く愛されたキノコとなっています。

メロン栽培が生んだ偶然の産物

マッシュルームの栽培は偶発的に実現されたのをご存じでしょうか。

16世紀のフランスでメロンを栽培しようとした際、馬の肥料や藁などを用いた温床での栽培で偶然発生したのがマッシュルーム栽培の始まり。

マッシュルームの原種であるハラタケがメロン用の温床で発生しているのが発見され、それが栽培のきっかけとなったんです。

19世紀以降、アメリカでの大規模栽培によって広く世界へ普及し、明治時代には日本にも到来。

現在では給食にも用いられるなど、市民権を得たキノコとなっています。

ビタミンBやタンパク質を含むうまみの塊

疲労やストレスを緩和するビタミンB群や、人体で生成できないビタミンDなど多くの栄養を含んでいるマッシュルーム。^出典[1]

さらに100gあたり10kcal前後と低カロリーであり、減量したい人にとってはうれしい存在となっています。

具体的にどんな成分が体に良くはたらいてくれるのか、詳細を確認していきましょう。

ここからはマッシュルームの効果を解説しましょう。

1.精神安定効果

メンタル面を力強くサポートしてくれる点が大きな魅力です。

理由は豊富に含まれるビタミンB群によるもの。

パントテン酸はストレスの緩和効果があることで有名です。

人はストレスを感じたとき、副腎皮質からステロイド系ホルモンが分泌され防御的な生理反応が発生。

パントテン酸はこれらのホルモンやプロスタグランジンの合成、神経伝達物質であるアセチルコリンの合成をサポートすることがわかっています。^出典[2]

葉酸はビタミンB9の別名で、ビタミンB6とあわせいずれもビタミンB群に属するビタミンのこと。

南フロリダ大学の報告では、葉酸の摂取量が少ないこととうつ病とに相関があると示唆されています。^出典[3]

さらにヒスパニック系618人、非ヒスパニック系白人251人、計869人を対象に行われた実験では、ビタミンB6の摂取量が少ないとうつ病疑いになる確率が倍増することが判明。^出典[4]

心を健やかに保ってこそ健康でいられる、ぜひマッシュルームを食べて精神を安定させていきましょう。

2.筋肉質な体をつくる

タンパク質が筋肉質な体作りをサポートしてくれます。

タンパク質が筋肉のエネルギーになることは広く知れ渡っている事実。

2015年、カナダのトロント大学の発表では、タンパク質を摂取しないことで骨格筋が減少していくことを明らかにしています。^出典[5]

タンパク質を消化する過程で発生する副産物としてコレシストキニンとGLP1があり、これらは空腹感を抑え食欲を低減させる効果も確認されているんです。

アメリカのデューク大学で2007年に行われた研究によれば、後脳に位置するCCK-1受容体を介してコレシストキニンが相互的に作用することで満腹感が誘因されることを解明。^出典[6]

GLP1はグルカゴン様ペプチドのことで、消化管から分泌されるホルモンを示します。

デンマークのコペンハーゲン大学で行われた実験では、2型糖尿病患者に対してGLP-1を投与したところ、インスリン分泌が刺激され、胃腸の運動性を阻害し食欲を低下させることも判明しています。^出典[7]

さらにパントテン酸は抗肥満効果を保有。

1995年に香港中央病院から出された実験では、パントテン酸の補給によって脂肪酸の分解が促され、ケトン体の生成が抑制されることで肥満を防止する効果があると確認されました。^出典[8]

タンパク質は食事をエネルギーに変換して基礎代謝をあげる効果も見込める3大栄養素の一角。

時間帯としては朝の摂取が効果的なので、起きたらすぐにタンパク質を摂取して体づくりに励みましょう。

3.風邪をひきにくくなる

抗菌作用や免疫機能の向上によって風邪症状を防いでくれるのもありがたいポイント。

食物繊維は身体の免疫機能に深くかかわっている物質です。

2023年、オーストラリアのシドニー大学が公表した事実によれば、食物繊維が不足すると腸内細菌の餌となる体内の短鎖脂肪酸の産生が少なくなり、免疫や腸の恒常性を欠損させてしまうことがわかっています。^出典[9]

βグルカンも腸内環境の正常化に効果を発揮。

重慶医科大学が行ったマウス実験では、腸内炎症が起こっている個体にβグルカンを7日間投与したところ、腸内の炎症を抑え、バリア機能を改善し、壊死性腸炎を防いだ実績があるんです。^出典[10]

マッシュルーム特有のシャンピニオンエキスも免疫に関与している物質。

オーストラリアのウェスタンシドニー大学にて3週間にわたり健常者24名を対象に1日あたり100g量のシャンピニオンを摂取させたところ、分泌型IgAの分泌が促され粘膜免疫が高まったことを観測。^出典[11]

ビタミンDにも見逃せない効力があります。

カナダのマギル大学によれば、ビタミンD欠乏症が細菌やウィルスをもとにする感染症のリスクを上げるとし、予防策としてビタミンD摂取による抗菌ぺプチド活性をあげることを推奨しているんです。^出典[12]

マッシュルームから抽出できるヘキソースを初めとする抽出物も免疫機能の強化に貢献。

日本の会社であるアミノアップルケミカルの研究では、34人の健常者に対し4週間ヘキソースを投与したところ、投与しなかった群と比較し季節的な免疫応答の適応度が高まったことを明らかにしています。^出典[13]

アメリカでは30人の健康な成人を対象にインフルエンザワクチンの摂取後にヘキソースを1日1g投与し3週間後に血液を確認したところ、ヘキソースを与えられた群で免疫細胞のNTK細胞やCD8 T細胞の数値が上昇したことも明らかに！

それだけでなく、B型インフルエンザに対しても抗体の応答力が改善していると判明しました。^出典[14]

免疫力を高め、風邪をひきにくくするだけのパワーが秘められているのがマッシュルームの特徴です。

4.コレステロールを低減

コレステロール値や血圧を下げることで生活習慣病の予防効果を発揮してくれます。

コレステロール低減に寄与するのがシャンピニオンエキス。

2010年に糖尿病になったラットを対象にした実験では、シャンピニオンの粉末を3週間投与したところ、血糖値や総コレステロール、LDLコレステロールの値が緩和されたことを確認。

HDLコレステロールも改善されており、高脂血症や糖尿病の予防に効果があることがわかっています。^出典[15]

2013年には中国の揚州大学から、マウスに30日間にわたりシャンピニオンエキスを投与したところ、血液や肝臓、心臓などの抗酸化酵素の活性化が見られ、抗酸化作用があると明らかに！^出典[16]

食物繊維もコレステロールを下げてくれる優秀な物質。

1999年にアメリカで行われたメタ分析によれば、植物由来の食物繊維を摂取することで総コレステロール値とLDLコレステロール値を減少させる効果があると解析によって判明しているんです。^出典[17]

コレステロール値や血糖値が上がると脳卒中や高血圧になる確率を上げ、体に悪影響をもたらすのは周知の事実。

コレステロールをうまく管理するためにも、マッシュルームを上手に活用していく必要がありそうです。

5.若々しい肌を保つ

美しい肌を作る効果も期待できます。

まずはパントテン酸の効果。

パントテン酸にはニキビを防ぐ効果があると多くの実験で証明されているんです。

1995年、香港中央病院よりニキビの原因のひとつにパントテン酸の不足があり、パントテン酸を摂取することがニキビ予防に効果的だと評価。^出典[18]

キシロースにも保湿効果が期待できます。

キシロースは植物に含まれており、加工されたプロキシレンは化粧品などによく用いられる単糖類。

中国の広西大学ではキシロースのポリマー構造が強い抗酸化反応を起こすことを明らかにしており、肌にプラスの影響があることがわかっています。^出典[19]

同じく単糖類であるマンノースも肌にプラスの効果をもたらします。

フランスではマンノースとリン酸の複合体が真皮のコラーゲンネットワークを再編成し、皮膚の生体力学特性を改善して目じりのしわの数の減少、首のしわの深さやサイズを減少させたという報告もあるほど。^出典[20]

グルクロン酸も肌の若返りに間接的な貢献を見せてくれます。

肌の潤いを保つ物質として有名なヒアルロン酸は、実はこのグルクロン酸をベースに構成されているんです。

ヒアルロン酸の粘弾性や潤滑性、水和性などはグルクロン酸によってもたらされているところが大きいのは知られざる真実。^出典[21]

きわめつけはβグルカンです。

多糖類の一種で、ヒアルロン酸以上の保水効果を持つとして化粧品業界で注目されている菌類由来の成分。

抗しわ作用、抗紫外線硬化、保湿効果などが認められており、これからさらなる研究が望まれています。^出典[22]

見た目の印象を決定づけるほど肌は重要な要素、ぜひ衰え知らずの肌をマッシュルームで育てていきましょう。

6.がん予防に効果的

βグルカンはガン予防にも効果的に作用します。

βグルカンは腫瘍微小環境、つまり腫瘍の中で免疫細胞を活性化させる機能を持つと見込まれているのが注目の理由。

βグルカンの持つ生得的な免疫的アームと適応的アームを橋渡しし、免疫抑制細胞の表現型を免疫刺激的に調節することで、がん細胞の増殖をβグルカンが阻害する可能性が期待されています。^出典[23]

東京理科大学の研究でも、食品に含まれるβグルカンを摂取することで大腸がんの発生原因となるデクチン1シグナルを阻害できると発表。^出典[24]

今後の研究次第では、マッシュルームの栄養素ががんの救世主となりうるのかもしれません。

7.疲れを癒す

疲労回復効果の期待値も高いです。

まずはビタミンB1による効果。

ビタミンB1は疲労回復や予防に効果があることで知られる人体に欠かせないミネラル。

2023年に台湾の国立台湾体育大学で男女32名を対象に行われた実験では、ビタミンB1のサプリを28日間摂取してから運動を実施したところ、疲労困憊になるまでの時間が1.26倍にまで伸びたことを明らかにしています。^出典[25]

さらにグルクロン酸も疲労回復に効果を発揮。

主成分であるグルクロノラクトンが肝臓のはたらきを助け、体内にある毒に対して解毒効果を促進することを示す実験がマウスによって証明されているんです。^出典[26]

さらに骨格筋など筋肉疲労の改善への効果を示唆する研究もあるなど、その期待値は今後より一層高まると見られるほど。^出典[27]

疲れ切った現代人の体に必要な栄養素を備えているマッシュルーム、積極的に摂取していきましょう。

8.不妊を改善する

男性の不妊への改善効果も期待が高まっています。

理由はミネラルによるポジティブな効果によるもの。

セレンや亜鉛、銅には精巣の発育や精子の形成に関わる成分をふんだんに含有しています。

セレンは精子の運動率に関与するミネラルのひとつ。

1998年、イギリスのグラスゴー王立診療所で行われた実験によれば、セレンのサプリを定期的に摂取することで被験者の半数以上に精子の健康状態の向上が確認されています。^出典[28]

さらに亜鉛は精子の産生や運動改善効果があることが知られる物質。

亜鉛は男性ホルモンであるテストステロンの分泌に関わるミネラルであり、亜鉛が欠乏することで下垂体の性腺刺激ホルモンやアンドロゲンの減少、精子の産生にネガティブな効果を与えることで知られています。^出典[29]

亜鉛の摂取によって精子尾部と先体の運動性の活発化が見られることも、イスラエルのバルイラン大学が公表している事実。^出典[30]

加えて銅も雄性配偶子の生産に必須の微量元素です。

2017年 にもヤギエロンスキー大学より、銅の不足によって精巣を含めた体細胞の組成に影響が出るなど、銅が男性生殖機能の構築に大きく貢献していることを発表。^出典[31]

不妊に悩む人がいたら、ぜひマッシュルームをおすすめしてみてください。

9.体内への不老効果

セレンには老化防止効果の期待も持てます。

抗酸化作用によって過酸化脂質を分解してくれるのがその理由。

過酸化脂質は活性酸素により酸化した脂質のことで、体の内で蓄積されることによって血管や細胞の老化を招く厄介者。

2012年、オーストリアのウィーン医科大学から出された報告では、セレンの摂取不足によってセレンを必須成分とする過酸化脂質を分解してくれる抗酸化グルタチオンペルオキシダーゼの産生が抑えられていまい、結果として過酸化脂質が蓄積していくことを報告しています。^出典[32]

体の内側から老化を防いでいくことが長く健康でいられる秘訣かもしれません。

10.味覚の維持を実現

亜鉛には味覚をキープする効能があります。

舌に存在する味を感じる器官、味蕾細胞の生育を亜鉛がサポートしてくれるのがその真相。

2004年にブラジリア大学から出された報告によれば、生後8か月から5歳の塩分食品を拒否した子供20人を6カ月調査したところ、亜鉛キレートを投与された子供たちの実に85%が塩分食品に対しての食欲改善がみられたと報告しているんです。^出典[33]

美味しいものを食べれば精神も健やかに保たれるため、味覚は人生のQOLを高める重要な要素だと認識しておきましょう。

11.二日酔いが抑えられる

亜鉛は二日酔いダメージを軽減する効果も見込まれています。

アルコールを分解する際、脱水素酵素の栄養素として欠かせないのが亜鉛。

1997年にスペインのバルセロナ大学でラットを対象に行われた実験では、アルコールを与えたラットに亜鉛を投与したところ、血中のアルコール濃度が下がったことが確認されています。^出典[34]

お酒を次の日に残さないためにも、飲みすぎた日は亜鉛を摂るようにしましょう。

12.血流を改善する

きのこのうまみ成分には血液をサラサラにする効果があります。

きのこのうまみ成分の主要素であるグアニル酸は、グルタミン酸やイノシン酸に次ぐ第3のうまみ成分として有名。

グアニル酸は別名「グアノシンリン酸」とも呼ばれます。

1985年に日本で行われた実験では、グアノシンリン酸を摂取することで血漿の凝固時間に変化が見られ、血小板の凝集作用を司っていることを明らかに。^出典[35]

マッシュルームに含まれるカリウムも塩分を体外に排出する効果によって血圧が上がりすぎないよう調節する名バイプレイヤーなんです。

カリウムは血中のナトリウム濃度を一定に保つ効能を保有しており、ナトリウムが増えすぎたときは尿として体外に排出するよう促してくれる必須のミネラル。

イタリアの環境遺伝栄養疫学研究センターで高血圧患者にカリウムを補給したところ、ナトリウム摂取量の多い高血圧治療を受けていない人に対して、高い血圧低下効果を示すことが明らかになっています。^出典[36]

高血圧は大病のもと、ぜひマッシュルームで血管をいたわってあげましょう。

13.高密度な骨を形成

骨を強くする効果も期待できます。

まずはカルシウムの吸収に欠かせないビタミンDの存在。

ビタミンDは腸管からカルシウムの吸収を促し、血液中のカルシウムを骨まで運んでくれる役割を担っています。

アメリカのハーバード公衆衛生大学院が5人の高齢者を対象にビタミンD補給の有効性を確認したところ、経口でのビタミンD補給が股関節や非脊椎骨折のリスクを下げることを確認。^出典[37]

またカルシウムが骨の強化に貢献してくれるのは公然の事実。

2012年にアメリカで慢性腎臓病を患う高齢女性610人を対象に行われた実験によれば、カルシウムを与える群とそうでない群で2年間にわたる対照実験を行ったところ、すべての被験者において骨密度の減少率を低下させる結果となっています。^出典[38]

これはカルシウムが骨密度をキープしてくれる数あるエビデンスの一角。

頑健な体をキープするためにも、マッシュルームで強い骨を作っていきましょう。

14.質の高い睡眠を提供

高品質な眠りを求める人は、マッシュルームがおすすめです。

マグネシウムはメラトニンの合成に必須なミネラルで、良質な睡眠にメラトニンは不可欠。

高齢者46名に対してマグネシウムを与えたところ、不眠の症状が改善したことがわかっています。

さらには151名を対象にした実験でも、マグネシウム摂取によって入眠が17分早くなる効果があると明らかに。^出典[39]

ほかにもアミノ酸の一種であるトリプトファンが眠りの質向上に寄与します。

マッシュルームはアミノ酸を豊富に含有するきのこ。^出典[40]

2022年にシンガポール国立大学理学部食品科学工学科より発表された研究では、世界中の論文から18件の論文を選出してメタ分析を行ったところ、19歳以上を対象とした実験においてトリプトファンを1g以上摂取した場合、入眠後の中途覚醒の割合が0.017と有意に減少することを発表しています。^出典[41]

能率高く仕事や育児をするうえで、マッシュルームは睡眠を助けることで効果を発揮してくれそうです。

マッシュルームが健康に効果的な理由を14個、一挙に紹介してきました。

自炊をする人の中でも、どんな料理に使えばいいのか想像できず、スーパーでマッシュルームを購入して調理に用いる人はあまり多くないのではないでしょうか。

しかしミートソースやグラタンに入れたり、そのままソテーして食べることもできるなど調理方法はさまざま。

ぜひ敬遠せずに1度手に取ってみて、自然からの栄養をしっかりと体内に取り入れてみることをおすすめします。