太ると決めつけないで!寝る前のうどんの真価と食べ方を解説
2023年11月14日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

寝る前のうどんが太ると言われる理由

夜中に小腹が空いたときの夜食や、仕事が長引き夜遅くに帰宅した後の食事として、簡単に用意できる麺類を食べる方も多いことでしょう。

うどんは茹でられた状態のものや冷凍のものも手軽に購入できるため、夜食用に自宅へストックしておけばすぐに食べられて非常に便利です。

半面、寝る前のうどんは太りやすいとも言われます。体を引き締めたい方はうどんを食べることに抵抗感があるのではないでしょうか。

ではうどんの太りやすさとはどういったところにあるのでしょう。まずはうどんの性質に注目し、太りやすいと言われる理由を紐解いてみましょう。

過剰な炭水化物は体脂肪合成を促進する

当然ながら、必要以上のエネルギー摂取は太るもと。加えて、うどんが太りやすいと言われる理由は、成分の大半がインスリン分泌に直結する「糖質」であることに由来します。

うどんの糖質は速やかに分解されてグルコースとなり、体内に吸収されて血糖値を大きく上昇させます。血糖値の上昇に伴い分泌されるインスリンは、余った血中のグルコースを肝臓や筋肉、脂肪組織に蓄えるように働きかけます

インスリンは、筋力トレーニング前においては筋グリコーゲンを効率よく蓄えるために重要ですが、同時に中性脂肪の合成も促進します。就寝中は中性脂肪を燃やせるだけの運動を行えないため、体脂肪が溜まる一方となるでしょう。

脂質やたんぱく質よりも速やかに体脂肪合成に繋がりやすい糖質が豊富である点において、うどんは摂取に注意すべき食品であると言えそうです。エネルギー消費量が少ない就寝前には、過度の糖質摂取は厳禁と考えておきましょう。

 

天ぷらや肉などのトッピングにより高カロリー食品に

実は、うどん自体はそこまでカロリーの高い食品ではありません。しかしボリュームアップのために加えられる天ぷらや肉類によって、あっという間に高カロリー食品となってしまうのです。

トッピングに加えられる肉類は多くが柔らかいバラ肉であり、肉類の中でも脂質量がトップクラスに高い部位です。高カロリーであることはもちろん、脂質量の多さから消化器系に負担をかけてしまいます。

天ぷらもまた言わずと知れた高脂質食品であるため、消化に時間がかかります。睡眠中に胃腸が活発に動き続けている状況では、体を十分に休めることができません。

また、揚げ物からは過酸化脂質を多量に摂取することになります。

揚げ物の摂取は酸化ストレスの増大を招きやすく、ストレスホルモン「コルチゾール」の分泌を促進します。コルチゾールは私たちの意識を覚醒させるように機能するホルモンであるため、睡眠の質を大きく下げることになるでしょう。

高エネルギーで密度の高い食べ物を好むと睡眠時間が短くなる可能性が、2012年にブラジルから発表された論文により示されています出典[1]

また、コレステロールの過剰摂取による高コレステロール状態は睡眠の質や睡眠時間に悪影響を与える可能性も、2010年にニューヨークのコロンビア大学から発表された論文から報告されています出典[2]

もちろん、普段の食事においても体重管理のため、天ぷらやバラ肉などの高脂質食品の多用は避けるべきです。睡眠中は睡眠の質を落とし睡眠時間を短縮させる可能性を考え、高脂質食品のトッピングにはより慎重になる必要があるでしょう。

 

実は夜食に最適?寝る前のうどんにおけるメリット3選

寝る前の過剰な炭水化物は太るもととなり、脂質やカロリーは睡眠の質や睡眠時間に悪影響を与えることが分かりました。一方で、うどんは食べ方を工夫すれば、夜食として適している可能性があります。

たとえば仕事や作業により夕食が遅くなる場合や、夕食後にトレーニングを控えている場合などは、夜遅くに強い空腹を覚える場合があるでしょう。

強い空腹は寝つきを悪くし睡眠不足を招く可能性があります。

睡眠時間の減少により食欲を抑制するレプチンが減少し、食欲を増進させるグレリンが増加するのです。食欲のコントロールが崩れるため、食事量や体重の管理がより難しくなるでしょう。

睡眠不足は疲労の蓄積を招くばかりでなく、ホルモンバランスを乱して食べ過ぎを誘発する可能性もあるのです。

食べ過ぎは厳禁ですが、適切な量を食べて空腹を紛らわせることは睡眠の質の維持や正常な食欲の調整のため、非常に重要です。以下では夜食として、うどんが活用しやすい理由を解説しましょう。

穀類の中では比較的低カロリー

うどんは高糖質食品であり太りやすいと考えられていますが、穀物全体で見ると比較的低カロリーな食品でもあります。日本でよく食べられている米や麺類と、うどんの成分を比較してみましょう。

【主な穀類100gあたり(茹で・炊飯後)の栄養素(日本食品標準成分表2020年版)】出典[3]

 エネルギー水分糖質
うどん95kcal75.0g21.4g
白米156kcal60.0g38.1g
パスタ150kcal60.0g31.3g
中華めん133kcal65.0g27.7g
そば130kcal68.0g27.0g

ほかの穀類が130~150kcalであるのに対し、うどんは100kcal以下。うどんは水分量が75%と高く、ほかの麺類や米と比較すると糖質の密度が低いため、100gあたりのカロリーを低く抑えられているのです。

うどんを1食分、250g食べると238kcal。そば1食分、茹でた状態250gのカロリーは325kcalであり、うどんに切り替えれば100kcal弱のカロリーカットが実現できるでしょう。

同じ250gの主食を食べて、よりカロリーを抑えたい場合には、うどんは最適な選択肢と言えそうです。

 

脂質が少なく胃に負担をかけない

うどんのような主食の脂質量はごく僅かであるため、天ぷらやバラ肉などのトッピングを加えない場合には消化に負担をかけることがありません。

一般的な健康食として人気の高いそばや玄米も低脂質な主食ではありますが、食物繊維を多めに含んでいる点がうどんと異なります。

食物繊維は血糖値の急上昇を抑えたり便秘を改善したりと、さまざまな健康上のメリットに関係しています。

しかし消化されない成分であるため、胃腸への負担がかかりやすいとも言えます。より胃腸にやさしい夜食を意識するのであれば、食物繊維の少ないうどんがおすすめです。

なお、ラーメンやパスタも低脂質であり、食物繊維の量も少なめですが、スープやソースに多量の脂質が使われています。

摂取カロリーが増えやすく、胃腸にも負担をかけることになるため、夜食向きとは言えないでしょう。

その点うどんスープには脂質がほとんど含まれないため、消化に優れた麺のメリットを損なうこともありません。

低脂質かつ食物繊維も控えめな麺と、同じく脂質が控えめなスープの組み合わせは、消化に負担をかけない最低な組み合わせと言えるでしょう。

 

適度な糖質補給により睡眠の質が向上

糖質は体重管理において悪者にされがちですが、必要に応じたエネルギー補給は疲労回復効果を高めるために重要。

糖質の摂取がないままに眠ると、エネルギー不足により疲労回復効率が下がり、スッキリと目覚めることが難しくなるでしょう。

また、食事由来の糖質摂取により、トリプトファンの血中濃度が増えやすくなることも分かっています。

トリプトファンは幸せホルモンであるセロトニンや、睡眠ホルモンであるメラトニンの合成に欠かせないアミノ酸。メラトニンやセロトニンの合成をサポートすることで、入眠をスムーズにする効果も期待できるでしょう。

2007年にオーストラリアのシドニー大学から発表された論文においては、就寝前の高GI食(糖質含有量の多い食事)は、低GI食と比較して睡眠までの時間を約8.5分短縮する効果がある可能性が指摘されています出典[4]

もちろん食べ過ぎは禁物であるものの、空腹を満たせる適量のうどんは、睡眠の質を高めるために適しているとも考えられそうですね。

 

こう食べよう!寝る前のうどん活用法

夜食としてうどんを食べる際には、うどんの太りやすさや高カロリーなトッピングを避け、睡眠の質を高めるために一工夫加える必要があるでしょう。

体脂肪合成を高めず、睡眠の質をなるべく落とさない食べ方の例をいくつか紹介します。以下を参考に、寝る前のうどんの食べ方を見直してみましょう。

温める場合は素うどんやかき玉うどんで

うどんの低脂質で消化によいというメリットを最大限に活かすには、やはりトッピングを何も加えない、素うどんで食べるようにしましょう。温かい食品は満腹感を高めやすいため、少量で満足したい場合の選択肢としてもおすすめです。

もし1日のたんぱく質摂取量が少ないと感じる場合には、比較的消化によい卵を活用してみましょう。卵黄由来の適度な脂質により血糖値の上昇を緩やかにできるため、体脂肪合成を抑える効果も期待できます。

また、卵は食欲を効率よく抑制し、食欲を増やすホルモンであるグレリンの血中濃度を低下させることが分かっています。

2022年にアメリカのコネチカット大学から発表された論文においては、卵の摂取により食欲が減少し、その後24時間の食事で摂取カロリーを低く抑えられたと報告されています出典[5]

消化への負担を最小限に抑えたい場合には素うどんを、より満足感を高めて食欲をコントロールしたい場合にはかき玉うどんを、それぞれ活用してみましょう。

 

冷やしうどんで満足感UP

温めた素うどんは麺が柔らかいため、よく噛まずともするりと食べられてしまいます。噛むことによる満足感の向上を期待したい場合には、醤油うどんやぶっかけうどんなど、冷やした状態で食べるのも選択肢のひとつです。

茹でたうどんを冷水で「しめる」操作を行うと、麺がやや硬くなり、コシが出るためよく噛んで食べる必要が出てきます。噛むことにより脳内でヒスタミンが放出され、より早く満腹感を感じやすくなります。

より少ない麺の量で満足感を得るための方法として、冷やしうどんを試してみてもいいかもしれません。

 

高脂質食品はNG

天ぷらやバラ肉などの高脂質食品は、当然ながらカロリーの過剰摂取を招きます。また過剰な脂質は消化に大きな負担をかけるため、寝る前の食事に加えるのは避けましょう。

ナスやシソの天ぷらはうどんのトッピングとしてよく用いられますが、夜に食べたい場合には揚げ調理されていないものを選びましょう。

ナスを柔らかく煮たものは繊維質も少なく、消化によいため満足感を高めるために役立ちます。シソも香りがよいため、刻んでネギや生姜とともに醤油うどんに加えれば、よりおいしく食べられるでしょう。

 

繊維質の多い野菜の多用も避けよう

低カロリーかつ満足感を高めやすい食品として、野菜を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

確かに食物繊維が豊富な野菜類は満足感を高める面では有効です。一方で多量の食物繊維は消化に負担をかけるため、多用は避けた方がよいでしょう。

白菜やニンジンであれば繊維質が比較的少ないため、満足感を得るための野菜として適しています。とろとろに煮込んだ白菜は消化にもよいため、卵とあわせてあんかけ風にすればおいしく食べられるでしょう。

逆にゴボウやさつまいもなどは食物繊維が豊富であるため、夜の摂取は控えましょう。ごぼう天やさつまいもの天ぷらはもちろん厳禁です。

 

まとめ

うどんは糖質量が豊富であり、体脂肪合成を促すリスクの高い食品に分類されます。しかし適量の摂取により睡眠の質や疲労回復効率を高める効果が期待できるため、量や具材を工夫すれば夜食としても役立ちます。

低脂質かつ食物繊維の少ないうどんのメリットを活かすため、高脂質食品のトッピングは厳禁です。素うどんや冷やしうどん、消化によい卵を使ったかき玉うどんなどで夜の空腹を解消し、ぐっすり眠れるよう工夫してみましょう。

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