執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
男性が豆乳を飲むことで得られるメリット3選
豆乳は女性に人気の飲料であり、女性の健康や美容をサポートするものというイメージが強いかもしれません。しかし豆乳の成分は男性の健康や若々しさの維持にも役立ちます。適量を毎日摂取することで、さまざまなメリットが得られるでしょう。
豆乳を飲むことで期待できる健康効果について、豆乳の成分に注目しつつ解説します。
メリット1.サポニンやイソフラボンの抗酸化作用で若々しく
豆乳には大豆由来のサポニンやイソフラボンが含まれています。どちらも抗酸化物質として機能する成分であり、体内の活性酸素の働きを抑えるように機能します。
活性酸素とは、体内で酸素を消費しエネルギーを生成する過程で生じる物質のこと。活性酸素は血管や皮膚など、体のあらゆる組織を酸化してダメージを与えます。疲労感や肌荒れ、免疫機能や睡眠の質の低下といったさまざまな不調の原因となるため、いかに酸化を抑えるかが健康や若々しさのカギとなります。
サポニンやイソフラボンのような抗酸化物質は、体内の血液成分や細胞に先んじて酸化されます。体を酸化から防ぐ効果が強いため、疲労を溜め込まない体づくりに役立つでしょう。肌や血管へのダメージを防ぐことで、アンチエイジング効果も期待できます。
日頃の疲労感や睡眠の質に悩んでいる方、肌を若々しく保ちたい方は、豆乳からサポニンやイソフラボンを摂取してみましょう。
メリット2.テストステロンの変化を抑えて肌荒れや薄毛を防止
イソフラボンにはもう一つ、男性にとって非常に嬉しい効果があります。男性ホルモンであるテストステロンの変化を抑えて肌荒れや薄毛を防ぐように働いてくれるのです。
テストステロンの一部は、体内にある酵素「テストステロン5α-レダクターゼ」の作用を受け、「ジヒドロテストステロン」と呼ばれるものに変化します。ジヒドロテストステロンが過剰生成されると、脱毛や薄毛、ニキビなどの原因となるほか、前立腺肥大症のリスクを上げることにもつながります。
テストステロンは男らしさや活力を保つために欠かせないホルモンですが、ジヒドロテストステロンの生成はなるべく抑制したいところです。
2012年に韓国から発表された論文において、イソフラボンにテストステロン5α-レダクターゼの活性化を阻害する作用が確認されたと報告されています出典[1]。イソフラボンの摂取には大きな副作用がないことから、過剰な男性ホルモンによるトラブルを改善するために役立つと考えられているのです。
イソフラボンは大豆製品全般に含まれています。中でも豆乳は場所を選ばず摂取でき、手軽に手に入る飲料です。毎日の豆乳で、肌荒れや薄毛を防止しましょう。
メリット3.大豆たんぱく質やオリゴ糖で腸内環境を良好に
大豆には良質なたんぱく質が豊富に含まれており、僅かながら糖質も摂取できます。大豆たんぱく質やオリゴ糖は腸内の善玉菌を増やすように働きます出典[2]。継続摂取により善玉菌が優位な状況を作り、腸内環境を良好に保つ効果が期待できるでしょう。
腸内環境の改善は便秘や肌荒れの防止のみならず、ミネラル類の吸収率を高めるためにも効果的です。筋肉の機能を保つためのカルシウムやマグネシウム、エネルギー代謝に関わる亜鉛、貧血防止の役立つ鉄などを吸収しやすくする効果が確認されています。
また、リラックス効果のあるホルモンであるセロトニンは、ほとんどが腸内で合成されています。セロトニンは夜間には睡眠ホルモンであるメラトニンの合成に使われ、入眠をスムーズにするように働きます。
栄養素の吸収効率を高めたり、睡眠の質を高めたりといった働きにより、良好な体調の維持に役立つでしょう。便秘や肌荒れ、不眠に悩んでいる場合には、豆乳の利用が役立つかもしれません。
こう飲もう!豆乳の効果的な摂取法3選
大豆成分を手軽に摂取できる豆乳は、毎日続けやすい食品です。ではどのように飲めば、豆乳の効果を適切に得られるのでしょう。
豆乳を飲む際のポイントについて、3つ解説しましょう。毎日の食生活に豆乳を取り入れたいと考えている方は、ぜひこの章を参考に、摂取のタイミングや量を調整してみてください。
調整豆乳よりも無調整豆乳を選ぼう
スーパーやコンビニで見かける豆乳のコーナーには、カラフルなパッケージにさまざまなフレーバーのものが並んでいます。飲みやすく、飽きずに続けやすそうに見えるかもしれませんが、より多くの効果を豆乳から得たい場合にはあまりおすすめできません。
飲みやすく味が整えられたり、ほかの食品を連想させる味付けがされていたりするものは全て「調整豆乳」です。大豆のみで作られた「無調整豆乳」とは異なり、糖類や植物油脂、食塩などが加えられているため、大豆成分はやや控えめです。
調整豆乳の方が無調整豆乳よりも低エネルギーであることも多く、調整豆乳の方がヘルシーなのではと考える場合もあるでしょう。しかし無調整豆乳から豊富に摂取できる脂質「大豆レシチン」には、脂質代謝を活発にして肝機能を保護したり、体脂肪の蓄積を防いだりする効果が期待できるのです。
残念ながら、調整豆乳の糖類や植物油脂からは目立った健康効果が得られません。大豆成分の代わりに摂取した糖質や脂質により、体脂肪増加のリスクを高めることにもなりかねません。習慣的に豆乳を飲もうと考えている方は、無調整豆乳を選ぶ癖を付けておきましょう。
1日コップ2杯まで
豆乳はコップ1杯(200mL)あたり約90kcalであり、決して低カロリーな飲み物ではありません。1日にコップ4杯も5杯も飲んでいると、カロリーオーバーによる体脂肪合成を招きかねないため、飲みすぎには注意が必要です。
また、抗酸化物質として機能し、肌荒れや薄毛の防止に効果的とされるイソフラボンも、過剰摂取によりテストステロン量に影響を及ぼす可能性があります。イソフラボンとテストステロンの関係を調べた8つの研究中、2つにおいて、1日100mg以上のイソフラボンの摂取により総テストステロンが減少したケースが確認されているのです出典[3]。
1日100mg以上の摂取が必ずテストステロンを減らすとは断言できませんが、テストステロンへの影響を防ぎたい場合には、イソフラボンの摂取を1日100mg以下に留めるとよいでしょう。
一般に販売されている無調整豆乳には、コップ1杯(200mL)あたり約40~50mgのイソフラボンが含まれています。そのため1日に飲む豆乳はコップ2杯までがおすすめです。
また、イソフラボンは豆乳のほか、豆腐や納豆、蒸し大豆にも含まれます。大豆製品を食べる際には、その分豆乳を飲む量を減らして調整するとよいでしょう。
朝の摂取で腸内環境を良好に
豆乳はたんぱく質や脂質を適度に含むため満足感を高めやすく、空腹感の強い夜間の摂取や、間食としての利用もおすすめです。しかし腸内環境を良好に保つ効果を高めたい場合には、朝の摂取を心掛けるとよいでしょう。
2020年に日本で発表された論文において、大豆たんぱく質を摂取するタイミングにより、腸内細菌の改善されやすさに変化があることが分かりました出典[2]。乳酸や酪酸のような、腸内を酸性に保ち善玉菌の増殖を促進する効果は、夕食よりも朝食の摂取で多く確認されたのです。
朝食時にコップ1杯の豆乳を飲むことで、便秘や肌荒れの改善、快眠効果がより高まる可能性があります。毎日の習慣としてどのタイミングで豆乳を飲めばよいか悩んでいる場合には、ぜひ朝食への利用を検討してみましょう。
豆乳に関するよくある質問
これから豆乳を習慣的に飲もうと考える方の中には、継続摂取による影響がないか、より効果を高める方法がないか、気になるところではないでしょうか。
この章では豆乳に関する質問の中で、よく寄せられるものを回答します。不安や疑問を解消した上で、豆乳の利用を始めてみましょう。
豆乳の飲みすぎで女性的に?
豆乳を始めとする大豆製品の摂りすぎは体つきを女性的にする、という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
事実、イソフラボンの摂りすぎにより総テストステロンが減少するケースは確認されています。たとえば2003年にイギリスで発表された論文では、大豆イソフラボンをスコーンの形で120mg、6週間摂取し続けると、総テストステロンが約5%減少したと報告されています出典[4]。
ただし、この試験により減少したのは総テストステロン量です。男らしさや活力を増加させたり、筋肉の合成を促進したりする「遊離型」のテストステロンは減少していませんでした。
豆乳の飲みすぎにより男らしさや活力が失われるという研究結果は現状得られておらず、女性的になるといったリスクはないと考えられるでしょう。
豆乳を飲むと男性の顔つきは変わる?
イソフラボンがテストステロンを減少させることにより、男性の顔つきも変化するのでは、という話を耳にした方もいるかもしれません。
テストステロン量は、成長にともなう顔つきの形成に影響を与えるようです。出生前や思春期のテストステロン量が多い場合、顔の幅が広くなったり彫りが深くなったりといった、いわゆる男らしい顔つきに育つ傾向にあることがいくつかの研究により示されています出典[5]。
一方、成人男性においては、テストステロン量と顔の幅の広さにおける相関はないことが、2018年にドイツから発表された論文において述べられています出典[6]。顔の形成が完了している大人においては、顔つきはテストステロン量の影響を受けないことが分かりますね。
また、2021年にポーランドで行われた研究においても、ヒゲなどの体毛の成長とテストステロン量に相関がないことが示されています出典[7]。
このように成人以降の骨格や体毛の変化が見られていないことから、イソフラボンの摂取によるテストステロン量の変化と顔つきには関係がないと考えられます。
イソフラボンの摂取で女性的に、という話が多いのは、女性に効果的な側面が多い特徴から結びつけられたイメージが強いためでしょう。男性においてデメリットを発揮するわけではないため、摂取を避ける必要はありません。飲みすぎには気を付けて、毎日効果的に摂取しましょう。
相性のよい食品は?
無調整豆乳を飲みづらいと感じる場合には、甘さを加えられる食品を追加してみましょう。
朝食に豆乳を飲む場合には、エネルギー源としても活用できるバナナや、強い甘味を持ち砂糖よりも低エネルギーであるはちみつの活用がおすすめです。バナナと豆乳をミキサーにかけたり、温めた豆乳にスプーン1杯のはちみつを加えたりすることで、適度に甘さが出て飲みやすくなるでしょう。
抗酸化物質を強化してアンチエイジング効果を期待したい場合には、カカオポリフェノールを摂取できるココアを加えてもよいでしょう。純ココアには甘さがないため、温めた豆乳とはちみつを合わせるか、砂糖が添加されたものを選ぶと飲みやすくなります。
また、豆乳は料理にも活用しやすい食材です。ニンジンやカボチャなど、抗酸化ビタミンが豊富な食材とあわせてポタージュにしたり、豆乳鍋を作ったりしてもおいしくいただけます。豆乳を飲み物以外の形で楽しみたい場合には、料理への活用も検討してみましょう。
まとめ:1日1~2杯の豆乳でいつまでも若々しく!
豆乳は男性が飲んでも、さまざまな効果を得られる優秀な食品です。大豆由来の成分を手軽に摂取できるため、肌荒れや薄毛を改善したり、若々しさを保ったりする効果が期待できます。
豆乳による、男らしさや活力の維持に欠かせない遊離テストステロンの減少は確認されていません。しかし飲みすぎによる総テストステロンの減少の可能性が気になる方は、1日コップ2杯までの摂取に留めておきましょう。
飲みやすいように、はちみつなどお好みの甘味料を加えるとさらに続けやすくなります。豆乳を毎日飲んで、若々しい体づくりに役立てましょう。
出典
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