鉄とは?不足により引き起こされる10個の症状
2022年8月25日更新

執筆者

株式会社アルファメイル

NP+編集部

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鉄とは

鉄とはいったいどのような成分なのでしょうか。ここでは、鉄の働きや不足した場合の健康への影響、ヘム鉄と非ヘム鉄の違いなどについてご紹介します。

1.どんな栄養素?

鉄は、人体に最も多く含まれている「必須微量栄養素」であり、金属元素ともいわれています出典[15]体内には約3〜5gの鉄が蓄えられており、約70%は血液中に、他は肝臓や骨髄、筋肉に含まれています出典[16]

 

2.体の中でどんな働きをする?

鉄は、全身の細胞に酸素を運ぶ血液の成分である赤血球を作る働きを担っています出典[2]。その他にも、エネルギー産生のサポートや、ヘモグロビンやミオグロビンの生成にも関わっているのです出典[9]

私たちが生きていくために必要な酸素やエネルギーが体内で使われるためには、鉄が必要不可欠であり、鉄が不足すると貧血などの症状を引き起こします出典[3]


3.ヘム鉄と非ヘム鉄

栄養素としての鉄には、ヘム鉄と非ヘム鉄と呼ばれる2種類が存在しています。

肉類や魚介類に含まれるものを「ヘム鉄」、ひじきなどの海藻類や葉物野菜、プルーンなどに含まれるものを「非ヘム鉄」といいます出典[23]。最近の研究では、体内でのヘム鉄の吸収率を50%、非ヘム鉄の吸収率を15% と算出しています出典[22] 。このように、非ヘム鉄はそのまま摂取すると吸収率が高くないことが大きな特徴です。

非ヘム鉄はビタミンCと一緒に摂取すると吸収率が上がるため、非ヘム鉄の多い食材とビタミンCの多い食材を合わせて食べることがおすすめされています。

 

4.どんな食材に含まれている?

鉄はレバーなどの肉類、魚介類、大豆製品、小松菜などの葉物野菜、海藻類に多く含まれています。肉類や魚介類にはヘム鉄、大豆製品、小松菜などの葉物野菜、海藻類には非ヘム鉄が豊富に含まれています出典[22]

ただし、非ヘム鉄はそのままだと体内での吸収率が高くありません。そのため、非ヘム鉄の吸収を助けるビタミンCの多い食材と一緒に摂取することがおすすめです。鉄分の豊富な肉料理を食べるときは、レモンなど酸味のある食材を使ったサラダと合わせると効果的ですね。
 

鉄欠乏により引き起こされる10個の症状

鉄が欠乏すると、貧血や筋肉疲労、倦怠感などを引き起こします。また、頭痛や口内炎、脱毛症、むずむず脚症候群などの病気と関連があるともいわれています。

1.貧血

鉄の欠乏は、貧血の原因として世界中で最も多く、20億人に影響しているといわれています出典[5]出典[9]。鉄の欠乏は、妊娠・大量の月経出血・失血・腎疾患・炎症性腸疾患・癌など様々な理由で起こります出典[1]出典[5]出典[24]

鉄は、体中の細胞で免疫応答やミトコンドリア内の酸化代謝、ヘモグロビンやミオグロビンの生成に必要な栄養素です出典[9]。そのため、貧血が起こると運動機能や免疫機能の低下などの症状が現れます。

鉄欠乏による貧血の目安としては、ヘモグロビン量が女性で12mg/dl未満、男性で16mg/dl未満とされています出典[13]

また。鉄の欠乏による貧血は、運動量が多い人や若い女性にも多くみられます出典[4]。特に、トレーニングによる鉄の欠乏を防ぎたい人には、鉄サプリメントの摂取が有効です出典[4]

 

2.運動パフォーマンスの低下

鉄が欠乏すると、筋肉に酸素が供給されず、運動パフォーマンスの低下に繋がるとされています。

20名の若い女性を、鉄を投与する群とプラセボ摂取群の2つに分け、膝の曲げ伸ばし運動後の筋肉疲労の推移を調査しました。その結果、鉄を投与した群は、膝の曲げ伸ばし後の筋肉疲労を改善することが示されました出典[6]

トレーニング中の女性アスリートにおいては約15〜35%、男性アスリートでも5〜11%が鉄欠乏症を抱えているといわれており出典[2]、運動パフォーマンスを高めたい人にとって鉄欠乏の改善は重要な課題といえます。

 

3.気分の低下

鉄の欠乏により気分の低下や心理的苦痛、うつ病の発症に繋がることが分かっています。

11876名の日本人に対して鉄欠乏による貧血の有無とうつ病の病歴について自己申告によって調べたところ、鉄欠乏による貧血の自己申告の病歴と自己申告による気分うつ病の病歴の関連が高いという結果が得られました。さらに、鉄欠乏による貧血の自己申告の病歴は、高い心理的苦痛との関連がみられることが分かりました出典[7]

また、鉄欠乏が妊娠中のうつ病の発症と関連しているとされています。2009年から2016年において、オンタリオ州の女性の健康懸念クリニックで医療記録を使用した研究が行われました。妊娠中期から後期の142名と鉄欠乏とそうでないグループに分けて調査した結果、鉄欠乏の妊婦の出生前うつ病の発症率がそうでないグループに比べて2.5倍高いことが分かったのです出典[8]

これらの理由により、気分の落ち込みで悩んでいる方や妊娠中期から後期の方には、鉄のサプリメントの摂取が有効といえるでしょう。

 

4.疲労感や倦怠感

貧血のない場合でも、鉄欠乏の成人に鉄分を補給すると、倦怠感や疲労感が減少するとされています出典[9]出典[11]

鉄が欠乏しているが貧血ではない18歳以上の人714名を対象とした調査によると、鉄を補給した人は、自己申告による倦怠感が減少していることが分かりました。ただし、鉄の補給は身体能力の改善には関連していないという結果となりました。食事やサプリメントによる鉄の摂取は倦怠感を改善させ、鉄が影響するミトコンドリアの酸化能力などの働きを通じて結果的には身体能力の低下を抑えていると考えられます出典[9]

また、鉄の欠乏や貧血のある人は、うつ病になりやすく疲労感が高い傾向があるとされています。炎症性腸疾患の患者98名を調べたところ、炎症性腸疾患による貧血のある人は健康な人に比べて倦怠感や不安、うつ病の発症率が高いことが分かりました出典[10]

疲れが取れない・倦怠感があるという方は、鉄の多い食品や鉄サプリメントを取り入れることを検討してみましょう。

 

5.肌が青白くなる

血液に赤色を与えているのは、赤血球に含まれるヘモグロビンです。ヘモグロビンは鉄からつくられるため、鉄の欠乏でヘモグロビンが少なくなると、血液の赤みが弱くなり、肌が青青白くなってしまいます出典[12]

顔色が悪く見える方は、鉄を多く含む食品や鉄サプリメントの摂取で改善できる可能性があるのです。

 

6.頭痛

鉄には片頭痛の予防や改善に役立つともいわれています。

片頭痛の発生に関与しているのが、ストレスなどにより分泌されるセロトニンと呼ばれるホルモンです。セロトニンには血管収縮作用があり、その収縮した血管が一気に拡張することで片頭痛が起こります。鉄はセロトニンの合成を助ける働きがあるため、鉄の欠乏を防ぐことで脳血管の緊張を緩和し、片頭痛による痛みを予防することができるのです。

2017年にシラーズ医科大学で実施された調査によると、平均年齢38歳の患者100名のうち、片頭痛グループでは、鉄欠乏による貧血を起こしている割合が高いことが分かりました出典[13]

このため、定期的な片頭痛に悩まされているという方には、鉄の補給はおすすめの対処法といえるでしょう。

 

7.脱毛のリスク増加

鉄には脱毛症の予防や改善への効果も期待されています出典[14]

脱毛の治療をしておらず、6ヶ月以上の脱毛の症状がある人(女性113名、男性97名)と健康な人 (女性113名、男性97名)に対して調査を行ったところ、脱毛のある女性の場合は健康な女性と比べて血液中の鉄の含有量が有意に低いことが分かりました出典[25]

こうした理由から、鉄は、脱毛症に悩む方にとって不可欠な栄養素であるといえるのです。

 

8.口の中が腫れたり痛んだりする

鉄の欠乏は、口内炎や口角炎、舌炎など口の中が腫れたり痛んだりする症状にも繋がります出典[16]。これらの症状は、鉄やビタミンの欠乏など、栄養状態が悪化しているときのサインとしても知られています出典[26]

75名の鉄欠乏による貧血患者を調査したところ、患者のうち76%に口腔粘膜の灼熱感、56%に舌の静脈瘤、49.3%に口渇、26.7%に委縮舌炎が見られました出典[27]

このため、口内炎がよくできる方や、口の中に腫れや痛みがあるという方は鉄やビタミンの摂取を意識してみましょう。

 

9.むずむず脚症候群

脚の不快な感覚や落ち着きのなさを伴う症状をむずむず脚症候群と呼び、鉄欠乏との関連が明らかになっています出典[17]出典[18]

1995年から2017年にかけて、合計428名に対して2週間から16週間追跡調査したところ、鉄の補給を行ったグループに対してむずむず脚症候群の症状が改善したという報告が挙げられています出典[17]

また、鉄欠乏による貧血がみられる人は、一般の人に比べてむずむず脚症候群になる可能性が6倍も高いことが分かっています。2017年から2018年にかけて上海嘉通大学医学部神経内科で行われた研究によると、貧血のない196名のむずむず脚症候群患者を検査したところ、42.3%の患者に鉄の欠乏がみられました。さらに、鉄の欠乏による貧血のあるむずむず脚症候群患者は、貧血のない患者に比べて日中の倦怠感や眠気が強く現れていることが分かりました出典[18]

これらの理由から、むずむず脚症候群に悩んでいるという方は、食事やサプリメントによる鉄の摂取がおすすめされています。

 

10.食欲の増加

鉄の欠乏による貧血を抱えている人には、食欲不振が現れていることが多くあります。食欲を調整しているのが、消化管でつくられるグレリンと呼ばれるホルモンです。グレリンが分泌されると、食欲が低下することが知られています。

イスラエルの2つの医療センターにおいて、鉄の欠乏による貧血患者56名と健康な人51名の食欲とグレリンの活性を比較する研究が行われています。その結果、鉄の欠乏による貧血患者は、健康な人に比べて食欲が有意に低下しており、グレリン活性が上昇していることが分かりました。また、鉄の欠乏による貧血を治療すると食欲が増加し、グレリン活性が低下することが明らかになっています出典[19]

食欲がないという方は、まずは鉄のサプリメントを取り入れることがおすすめです。
 

不足しやすい人

鉄の欠乏は、一般の男性よりも、出産可能年齢の女性に多くみられています。ただし、男性の場合でも胃腸障害や栄養障害のある人やベジタリアンなどは鉄の欠乏を起こしやすいため注意が必要です出典[18]

また、トレーニング中の女性アスリートにおいては約15〜35%が鉄欠乏症を抱えているといわれており出典[2]出典[4]、日頃から激しい運動をしている女性は特に気を付ける必要があります。
 

鉄の飲み方や注意点

鉄は、全身において多くの生体反応に関わったり、様々な生活習慣病の対策に効果があるといえます。そのため、鉄を多く含む食べ物や、必要に応じてサプリメントを摂取するなどして必要量を満たすようにするのがよいでしょう。

ただし、サプリメントは基本的には安全に摂取できますが、過剰に摂取したり誤った飲み方をすると逆効果になる恐れがあるため、注意が必要です。

1.どのくらい摂取すればいい?

1日あたりの鉄の摂取推奨量は以下の通りです。

【鉄の1日あたりの食事摂取基準(推奨量)】出典[22]

性別/年齢男性女性
0~5ヶ月--
6~11ヶ月5.0mg4.5mg
1~2歳4.5mg4.5mg
3~5歳5.5mg5.0mg
6~7歳6.5mg6.5mg
8~9歳8.0mg8.0mg
10~11歳10.0mg10.0mg
12~14歳11.5㎎10.0mg
15~17歳9.5mg7.0mg
18~29歳7.0mg6.0mg
30~49歳7.5mg6.5mg
50~69歳7.5mg6.5mg
70歳以上7.0㎎6.0mg

さらに、過多月経で月経血量が 80 mL/回以上の場合、18 歳以上では鉄の推奨量は 16 mg/日以上となっています出典[22]

妊娠中の方は、月経があれば19.5mgが推奨量として設定されています。また、妊娠初期は+2.5㎎、妊娠中期から後期は+15mgと変化していきますので摂取不足には注意が必要です。
 

2.健康上限摂取量は?

安全に摂取できる、1日あたりの鉄の上限摂取量は次のように定められています。

【鉄の1日あたりの食事摂取基準(耐容上限量)】出典[22]
 

性別/年齢男性女性
0~5ヶ月--
6~11ヶ月--
1~2歳25mg20mg
3~5歳25mg25mg
6~7歳30mg30mg
8~9歳35mg35mg
10~11歳35mg35mg
12~14歳50mg50mg
15~17歳50mg40mg
18~29歳50mg40mg
30~49歳55mg40mg
50~69歳50mg40mg
70歳以上50mg40mg

鉄は体内から排泄されることがほとんどないため、摂り過ぎると内臓に蓄積されてしまう恐れがあります。特に、サプリメントや薬剤などを利用している場合は過剰摂取にならないよう、1日の摂取量を超えないようにしましょう。

 

3.相性の悪い成分は?

緑茶や紅茶などに含まれているカテキンは、鉄、特に非ヘム鉄の吸収を阻害する働きがあるとされています。

30名の鉄分不足の健康な女性に8日間にわたりカテキン(結晶性エピガロカテキンがレート)を150㎎、300㎎、プラセボのグループに分けて投与したところ、カテキン150㎎投与したグループは14%、カテキン300㎎投与したグループは27%の非ヘム鉄の吸収が阻害されていることが示唆されました出典[20]

これらの理由から、鉄サプリメントを飲むときは緑茶や紅茶と一緒に飲まない方が効果的と考えられます。

 

4.理想の摂取方法やタイミングはある?

鉄を体内に吸収しやすくさせるためには、鉄を摂取するタイミングが重要となります。

男性10名、女性6名に対して午前と午後それぞれ90分間のランニングを行い、運動終了30分後に鉄を多く含む食事を摂取した際の鉄の吸収率を調査しました。その結果、午前中に摂取した鉄の吸収率が最も高いことが分かりました。また午前中の安静時よりも、午前中に運動した後に食事摂取した際の鉄の吸収率の方が有意に高いことも判明しました出典[21]

こうした理由から、効率よく鉄を摂取したい場合は、午後よりも午前中に摂取することが有効とされています。また、鉄の摂取は、身体を動かした後に行うとより効果的です。

また、コーヒーに含まれるタンニンは、非ヘム鉄の吸収を妨げるといわれています。しかし、ヘム鉄の場合は吸収率に変化がないといった報告もあるようです出典[23]

 

まとめ

世界の人口の3分の1が貧血とされており、その大部分は鉄の欠乏によるものといわれています[12]。また、鉄欠乏による貧血は様々な病気の原因になるほか、身体的にも精神的にも疲労感を上昇させ、日常生活の質を大きく悪化させるのです。[15]。

鉄は全身に必要な栄養素ですが、非ヘム鉄は吸収率が高くありません。そのため日々の食事やサプリメントなどで鉄を効率よく摂取し、体内での吸収率を高めることが大切です。
 

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