監修者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。
執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
アーモンドと精力の関係とは?
アーモンドはナッツのなかでも、性欲や性機能を高める効果が強い食品です。精力を高めて男性特有の悩みを解決したい場合、アーモンドの摂取が役立つかもしれません。
本記事では精力増強のカギとして、血流、精巣、テストステロンの3つに注目し、アーモンドから得られる効果について学術的視点から解説します。
血流を整えて勃起をサポート
勃起は性的刺激により、陰茎の血管が広がり血液が大量に流れ込むことで起こります。つまりスムーズな勃起には血管の柔軟性と、通りのよいサラサラの血液が重要と言えそうですね。
アーモンドからは抗酸化物質として知られるビタミンEやポリフェノールを摂取でき、とくにビタミンEの含有量なナッツのなかでもトップクラスです。脂質の酸化を防いで血管壁へのダメージを抑え、血管の状態を良好に保つ効果が期待できるでしょう。
【ナッツ100gあたりの栄養素(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より出典[1] 】
食品 | ビタミンE(g) |
アーモンド(無塩・いり) | 29.0 |
らっかせい(小粒種・いり) | 10.0 |
ピスタチオ(いり・味付け) | 1.4 |
くるみ(いり) | 1.2 |
カシューナッツ(フライ・味付け) | 0.6 |
たとえば1999年にドイツでおこなわれた臨床試験では、高コレステロール血症かつ喫煙習慣のある患者が4か月にわたるビタミンE補給を補給したところ、最大血流が約7.8ml/min/100mlから約15.7ml/min/100mlへ増加しました。さらに動脈硬化のリスクを高める酸化LDLの自己抗体も3割以上減少し、血管の柔軟性にも改善が見られています出典[2]。
また、アーモンドと心血管疾患のリスクについて複数の研究を分析した論文では、1日30~100gのアーモンドを摂取することで血中脂質が改善されることが確認されました。とくにアーモンド45gの摂取の習慣化により、総コレステロールが約8.2mg/dL、LDLコレステロールが約5.1mg/dL減少するとも報告されています出典[3]。
このように、アーモンドには血液と血管、両方の状態を改善して血流を良好に保つ効果が期待できます。勃起力の低下の原因のひとつである血流不全を解消するため、アーモンドの摂取が役立つかもしれません。
テストステロン分泌を促して性欲を高める
男性ホルモンのテストステロンは、やる気や活力、筋肉量の合成効率を高めることに加え、性欲や性機能の高まりにも強く関係しています。テストステロンは20代をピークに減少し始め、40歳を超えると減少が急激になります。
40歳以降に性欲や性機能の低下を強く感じている場合、テストステロンの低下が原因のひとつであるかもしれません。
テストステロンに関わるミネラルとして、亜鉛やマグネシウムがあります。アーモンドはナッツ類のなかでも亜鉛やマグネシウムがともに高いレベルで含まれており、テストステロン量の改善に役立つと考えられるでしょう。
【ナッツ100gあたりの栄養素(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より※1】
食品 | 亜鉛(g) | マグネシウム(g) |
アーモンド(無塩・いり) | 3.7 | 310 |
カシューナッツ(フライ・味付け) | 5.4 | 240 |
らっかせい(小粒種・いり) | 3.0 | 200 |
くるみ(いり) | 2.6 | 150 |
ピスタチオ(いり・味付け) | 2.5 | 120 |
亜鉛にはテストステロンの分泌を促すホルモン「黄体形成ホルモン(LH)」の合成をサポートする働きがあります。またマグネシウムはテストステロンと性ホルモン結合グロブリン(SHBG)との結合をブロックして、遊離テストステロンの割合を増やすことが確認されています出典[4]。
体内のテストステロンの98%以上は、ほかのたんぱく質と結合した結合テストステロンであり、血中にある遊離テストステロンは僅か1~2%です。
しかしこの遊離テストステロンこそが、やる気や活力、性欲に性機能などを高める重要物質。マグネシウムの十分な摂取により遊離テストステロンの割合を増やせれば、テストステロンの効果をより発揮できるようになるでしょう。
酸化ストレスを減らして精巣を保護する
ビタミンEやポリフェノール、マグネシウムなど、アーモンドに豊富な成分のなかには抗酸化物質として機能するものが多くあります。
抗酸化物質は血管や血液に加え、精巣の状態を良好に保つためにも欠かせない存在です。
精子の製造やテストステロンの合成を担う精巣は、いわば性欲や性機能の要。抗酸化物質により精巣を保護することで、性欲や性機能を高める効果が期待できるでしょう。
ラットを用いた動物実験にて、ビタミンEによる精巣保護の効果が確認されたケースを紹介します。
2012年にイランのアラク大学から発表された論文では、亜ヒ酸ナトリウムによる精巣へのダメージで、精巣容積が約17%減少するところ、ビタミンEの投与により減少幅を約10%まで抑えられたと報告されています。
また精子細胞の減少量は約39%のところを約29%にまで、精子を作るもとになる精母細胞の減少量も約37%のところを約3%にまで抑えられており、ビタミンEの精巣機能を保護する効果が高いことが読み取れるでしょう出典[5]。
また、酸化ストレスを増やす要因のひとつに、高糖質食品の摂りすぎによる高血糖状態があります。食後の高血糖状態が精子の濃度や運動性に悪影響を及ぼすことが、糖尿病のラットを用いた動物実験において確かめられています出典[6]。
そこで活躍するのがアーモンドの食物繊維。食物繊維には血糖値の上昇を緩やかにする効果が期待できるのです。アーモンドの摂取による食後高血糖の改善は臨床試験でも確認されており出典[7]、高血糖が生む酸化ストレスを抑えるためにも役立つでしょう。
精力増強に役立つアーモンドの食べ方
アーモンドに含まれる成分には血液や血管に有効なものが多く、勃起のサポートに役立つ可能性があります。
また酸化ストレスの精巣への影響を減らすことでテストステロンが増え、性欲が高まったり精子の状態をよくしたりといった効果も期待できるでしょう。
性欲や性機能の向上のため、アーモンドを取り入れたいと考える方も多いのではないでしょうか。
そこでここからはアーモンドの効果を発揮するための、食べ方のコツについて詳しく解説しましょう。
1日30gまでを目安に
アーモンドのカロリーは100gあたり608kcalとかなり高めです。カロリーを押し上げる原因となるのは、アーモンドに豊富な脂質。ナッツの脂質の大半は不飽和脂肪酸であり、体脂肪の合成リスクが比較的低いとされているものの、摂りすぎればやはりカロリーオーバーにつながります。
脂肪組織が増えすぎると、体内のテストステロンを女性ホルモンのエストラジオールに変換するように働く酵素「アロマターゼ」の活性が高まると考えられています出典[8]。テストステロンの量を維持するためにも、カロリーの摂りすぎには十分注意しましょう。
アーモンドによる効果を得るための量として、血中脂質の改善効果が認められた最低量である30gを目安にするとよいでしょう出典[3]。30gであれば摂取カロリーを200kcalに収められるため、一般的に推奨されている1日あたりの間食量としても適切です出典[9]。
少量の摂取を継続して、性欲や性機能の向上に役立てましょう。
無塩・素炒りのものを選ぶ
近年、健康意識の高まりからナッツを用いたお菓子が広く販売されるようになりました。よりおいしくナッツを食べられるよう、砂糖や食塩を添加したり、油で揚げたり、チョコレートやはちみつをコーティングしたりしたものも人気を集めていますね。
しかし性欲や性機能を高めるためにナッツを食べる場合、これらの「おいしい」チョコは控えるべきです。
油やチョコレート、砂糖の添加は摂取カロリーを増やして肥満のリスクを高めます。また食塩が添加されたものは食欲を増しやすいため、つい食べ過ぎてしまいやすくなるでしょう。
アーモンドの摂取が太る原因とならないよう、無塩かつ素炒りのものを選ぶことをおすすめします。
幸い、アーモンドは嗜好品として加工される機会が少なく、素炒りでの販売が多めです。しかし食べやすさの向上のために食塩が添加されることが多いため、パッケージを確認して食塩不使用のものを選びましょう。
間食や食前のタイミングに
アーモンドは小腹が空いたときの間食としておすすめです。
硬いアーモンドをよく噛んで食べることで、満腹中枢を刺激して満腹感を高めやすくなります。余分な間食を防いだり、その後の食事量を抑えたりする効果が期待できるでしょう。
また、アーモンドは低糖質であるため、単体で摂取しても血糖値の急上昇が起こりません。ケーキや大福などの菓子類をアーモンドに置き換えて食べれば、肥満の改善にも役立つでしょう。
食前のアーモンド摂取もおすすめです。食物繊維の多いアーモンドを摂ることで、白米や麺類など、高糖質食品の摂取による血糖値スパイクを抑えやすくなるでしょう。
ほかのナッツとの組み合わせもおすすめ
性欲や性機能の向上を期待する場合には、アーモンドに加えてほかのナッツをあわせて食べる方法もおすすめです。
たとえばクルミは抗酸化物質として知られる「α-リノレン酸」の含有量がナッツのなかでもトップクラスです。クルミの摂取は血中脂質のバランスを改善したり、テストステロンを増やしたりするように働くため出典[10]、勃起力や性欲の強化に役立つかもしれません。
また、ブラジルナッツには同じく抗酸化物質として知られるミネラル「セレン」が豊富に含まれています。セレンにはテストステロンを増やす効果が確認されているため出典[4]出典[11]、セレン不足の解消手段として非常に効率的です。
セレンの摂りすぎを防ぐため、ブラジルナッツの摂取は1日1~2粒が適切です。1日1粒のブラジルナッツを加えることで、性欲や性機能を高めやすくなるでしょう。
ほかのナッツを加える際には、ナッツの全体量が30gを超えないようにする必要があります。摂りすぎはカロリーオーバーにつながり太るリスクを高めるため、期待したい効果や摂りたい栄養素にあわせてそれぞれのナッツの量を調節しましょう。
間食のアーモンドで精力をサポートしよう!
アーモンドにはビタミンEやポリフェノール、食物繊維などが豊富です。ビタミンEやポリフェノールには血液や血管の状態を改善する能力が強く、血流を改善して勃起力をサポートする効果が期待できるでしょう。
また、アーモンドの摂取は体の抗酸化能力を高めるためにも効果的です。酸化ストレスから精巣を保護することで、テストステロンや精子の質を保ちやすくなるでしょう。
アーモンドは高カロリーであるため、1日30gまでの摂取をおすすめします。余分なカロリーの摂りすぎを防ぐために素炒りかつ食塩不使用のものを選び、間食や食前に取り入れましょう。
クルミやブラジルナッツのような、ほかのナッツとあわせて摂ることもおすすめです。全体量が多くなりすぎないよう、30gを目安に摂り、性欲や性機能を効率的に高めましょう。
出典
LINEで専門家に無料相談
365日専門家が男性の気になる疑問解決します