テストステロンは男性ホルモンの代表格であり、筋骨隆々とした男らしい体を作るだけでなく、勃起や精子形成などの男性機能、性欲やモチベーションなどの精神面にも関わります。

そのため、男性が心身ともに健康的な生活を送る上で欠かせないホルモンです。

実はテストステロンは「匂い」にも関わるホルモンです。

2011年にオランダのフローニンゲン大学が発表した論文では、テストステロンの値が高い人ほど女性の交際人数が多くなることが示されています^出典[1]。同様の研究報告はいくつもあり、テストステロンとモテの関係が示唆されており、その要因の1つとして考えられるのが「匂い」です。

理由はテストステロンが増えることで、「体臭が変わったり、フェロモンが出たりすることで女性を惹きつけるのではないか」と考えられるからです。

一方で、テストステロンは男性らしさを形作るホルモンであるため、増やすと男臭い匂いになってしまうのでは？という懸念もなされています。

次の章でテストステロンと匂いの関係について詳しく解説します。
 

テストステロンは男性機能や男らしい体作りに関わるだけでなく、匂いにも関わるホルモンです。

匂いは男性の魅力とも関係しており、テストステロンが高いことで発生する匂いはテストステロンが高い男性が女性を惹きつけやすくなる要因の1つです。

また、女性を惹きつける以外にも嗅覚機能にも関わることも知られています。

テストステロンと匂いの関係を5つ論文を基に紹介します。

テストステロンは匂い成分の材料となる

1つ目はテストステロンは匂い成分の材料となることです。

テストステロンは匂いの原因となる3つの物質、アンドロステノール・アンドロステロン・アンドロスタジエノンの材料となります^出典[2]。

3つの物質の特徴はそれぞれ次の通りです。

• アンドロステノール：麝香や女性のつけるおしろいのようなにおいをもつ成分。女性はアンドロステノールを好む傾向にある。
• アンドロステロン：尿、汗のようなにおいをもつ物質。男性の腋の下に多く分泌され、男性を特徴付けるにおいのひとつ。女性は排卵期にこのにおいをより強く、より良く感じることで男性をより魅力的に感じている可能性がある。
• アンドロスタジエノン：アンドロステノンと極めて似たにおいをもつ。精巣などに貯蔵されている男性ホルモン前駆体のプログネノロンの代謝物。男性をネガティブな気分にさせる一方で女性をポジティブにさせる成分。

いずれも「匂う。臭い」と言うよりも、フェロモン様の働きをして女性を惹きつける効果があります。

男性の匂いと言うと加齢臭など臭いものを想像する人も多いかと思いますが、加齢臭の原因成分ではないので勘違いしないでください。

女性はテストステロンの匂いがわかるかも...？

2つ目は女性はテストステロンの匂いがわかるかもしれないことです。

女性はテストステロンの匂いを感知している可能性があると言われています。

多くの研究で、独身男性はパートナーのいる男性よりもテストステロン値が高く、テストステロン値が高いほど体臭が強くなる傾向にあります。

2019年にオーストラリアのマッコーリー大学で行なわれた研究では、女性にとって、独身男性の体臭はパートナーのいる男性よりも強く匂い、独身男性の顔はパートナー男性の顔よりも男性的と評価されることが明らかにされました^出典[3]。つまり、女性はテストステロンが高い男性(独身男性)を見分けられていることになります。

特に妊娠の可能性が高い時期(排卵期)にある女性はテストステロンを嗅ぎ分けられる可能性が高いです。

2013年にアメリカのニューメキシコ大学が行った研究で、排卵期にある女性はテストステロン値が高い男性の匂いを好むことが明らかにされています^出典[4]。この傾向は妊娠の可能性が高い女性ほど高くなる傾向にあります。

テストステロンがいい匂いか否かは不明ですが、本能的に女性は男性のテストステロンの匂いを見分けられていると考えられるのです。

勝負に敗北するとテストステロンが下がり匂いも悪くなる？

3つ目は勝負に敗北するとテストステロンが下がり匂いも悪くなってしまうことです。

テストステロンは性格に影響を与えることが多くの研究で知られており、勝負師的な性格をもたらします。また、テストステロンは勝ち負けにより変動することも知られています。

2018年にイギリスのケンブリッジ大学の研究では、38人のボート選手を対象に勝敗後のテストステロンを測定したところ、テストステロンは勝つと上がり、負けると下がることが明らかとなりました^出典[5]。

また、2020年にチェコのプラハ大学が発表した論文では勝負に負けると体臭の魅力度が低下することが示されています^出典[6]。

これらのことから、勝負に敗北するとテストステロンが下がり匂いも悪くなると考えられるのです。

テストステロンが低いと男性の匂い感知能力は低くなる

4つ目はテストステロンが低いと男性の匂い感知能力は低くなることです。

実は、男性の匂い感知能力にテストステロンが関係しています。

2021年にトルコの健康科学大学が発表した論文で、テストステロンが低いと、嗅覚能力が低下することが明らかにされています^出典[7]。

テストステロンがどのようなメカニズムで嗅覚機能に影響を与えているかは不明なので、今後の研究で明らかにされるのが待ち遠しいです。

特定の匂いは男性のテストステロンを増やすかも

これまではテストステロンが匂いに与える影響を紹介してきました。

5つ目はこれまでと逆パターンです。　

特定の匂いが男性のテストステロンを増やす可能性についてです。

2007年に奈良教育大学で行われた研究で、ムスクの匂いを嗅ぐことでテストステロンは低下するが、逆にフローラルで上昇することが示されています^出典[8]。

また、女性の匂いがテストステロンに与える影響を調べた論文もあり、排卵期の女性の腋窩と外陰部の匂いはテストステロンを上昇させるが、黄体期の腋窩の匂いはテストステロンを低下させることが報告されています^出典[9]。

テストステロンが高くなるためには嗅ぐ匂いも大事になるのです。

今回はテストステロンと匂いの関係を紹介しました。

テストステロンが高いことで発生する匂いが臭いかどうかは議論の余地があります。

テストステロンが高まると女性を惹きつける匂いが発生している可能性は考えられます。

不明な部分はいくつかありますが効率的にパートナーを獲得するための戦略かもしれません。

モテたい男性は特にテストステロンを高めることを意識してみましょう。

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