副作用に注意?男性機能低下のリスクがある医薬品7選
2024年10月16日更新

執筆者

株式会社アルファメイル

NP+編集部

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男性機能低下のリスクがある医薬品7選

風邪薬や胃腸薬、鎮痛薬(痛み止め)など、皆さんが何気なく使用している医薬品。

高齢化や生活習慣病の増加などからその普及率は拡大しており、国内の医薬品市場は2年連続で過去最高を更新しています。

Gll(株式会社グローバルインフォメーション)の調査レポートによると、2029年までに日本の医薬品市場規模は13兆7910億円に上ると予想されており、年間1170億円以上の市場拡大が見込まれています出典[1]

このような需要の拡大に伴い人々の生活の一部となりつつある医薬品ですが、当然ながら副作用のリスクも存在します。

副作用の中には、男性にとって非常にクリティカルな性欲減退やEDなどの男性機能の低下を引き起こすものもあります

医薬品の使用開始と同じタイミングで男性機能の低下を感じ始めたといった場合には、医薬品が男性機能に悪影響を及ぼしている可能性も考えられます

もちろん、病気を治療するなど良い側面もある医薬品ですが、今回はあえて副作用に焦点を当てて男性機能低下のリスクがある医薬品7つをご紹介します。

 

男性機能低下のリスクがある医薬品7選

それでは男性機能低下のリスクが確認されている医薬品について、その種類やメカニズムを含めて見ていきましょう。

 

鎮痛薬

頭痛や肩こり、腰痛が原因で日常的に服用している方も多い鎮痛薬ですが、実は男性機能を低下させてしまう可能性があることをご存じでしょうか?

鎮痛薬と言ってもいくつか種類があり、中でも一般的な薬局でも入手が可能な非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)では男性機能の低下が示唆されています。

非ステロイド性抗炎症薬には、体内で痛みや炎症を引き起こす物質(プロスタグランジン)の生成を抑制する働きがあります。

プロスタグランジンには血管を拡張し、平滑筋(血管内の筋肉)を収縮・弛緩させるなどの働きがあるため、生成が阻害されることで血流が悪化し、スムーズに勃起が行えなくなる可能性があるのです。

実際に、アメリカの泌尿器科ジャーナルに掲載された研究では、3か月間にわたり非ステロイド性抗炎症薬を服用した男性は、そうでない男性と比較してEDになる可能性が1.4倍以上高いことが報告されています出典[2]

ちなみに、この数値は年齢や体重、疾病など、別の要因も考慮したものであることから、単純な薬の影響が強いと結論づけられています。

鎮痛薬の一時的な服用で男性機能を低下させたというデータは確認されていませんが、常用している方で明らかな男性機能低下を感じられている方は、お医者さんと相談のうえ、量や種類の見直しをしてみるのも良いかもしれません。

 

睡眠薬

ストレスやプレッシャーを感じやすい現代人。

厚生労働省のデータによると、日本では成人の30~40%が何らかの不眠症状を有しており、5%が不眠のため睡眠薬を服用しているようです出典[3]

このように現代人には広く使用されている睡眠薬も、男性機能を低下させるリスクがあります。

中でも「ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬では、性欲や勃起力の低下が生じるため要注意。

ベンゾジアゼピン系の薬は脳の中枢神経を抑制する作用があり、興奮や勃起の信号が伝わりにくくなるリスクが生じる可能性があります。

実際に、イランのセムナーン医科大学を中心に行われた研究では、ベンゾジアゼピン系の薬を服用している患者において性欲減退や勃起不全、望まない性衝動などの男性機能障害が確認されています出典[4]

さらに、睡眠薬の副作用欄には男性機能への影響が記載されていない場合もあるので気をつける必要があります。

睡眠薬を使用し始めてから明らかに活力の低下を感じられる方は、一度お医者さんに相談してみるのがいいかもしれません。

 

抗うつ薬・向精神薬

さて、睡眠薬についてご紹介しましたが、睡眠薬と一緒に処方されることも多いのが抗うつ薬や向精神薬です。

実際に、うつ病と不眠症は関連が認められており、うつ病患者の77~90%が入眠困難や中途覚醒などといった不眠症状を抱えていることが確認されています出典[5]

抗うつ薬・向精神薬は、脳内でホルモンを増やすはたらきがありますが、特定のホルモンが増加しすぎると男性機能に悪影響をもたらすことが知られています。

今回は、特に男性機能への影響が危惧されている抗うつ薬・向精神薬を3つご紹介します。

 

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

SSRIは最も使用されている抗うつ薬で、気分や食欲、性欲などに関わる神経伝達物質(セロトニン)の濃度を高めることで興奮を鎮め、リラックス効果を発揮します。

一方で、体内のセロトニン濃度が高まることで、男性機能に重要な神経伝達物質(ドパミン)の活動が抑制されてしまいます。

また、プロラクチンと呼ばれるホルモンが増加することで男性機能に重要な働きを持つ男性ホルモン(テストステロン)が低下してしまう可能性があり、これらの作用が男性機能を低下させてしまうと考えられます。

スペインのサラマンカ大学病院が344人のSSRI服用患者を対象に4種類のSSRIと性機能障害の関係を調査した研究では、いずれのSSRIでも性機能障害の発症率が有意に上昇することが確認されました出典[6]

さらに、同研究においてSSRIの投与量と性機能障害の発症率には正の相関関係があることSSRIの投与量を減らすことで性機能障害が改善したことも報告されています出典[6]

この他にも、シャヒド・ベヘシュティ大学泌尿器科を中心にSSRIを使用している患者の精子を調査した研究では、SSRIが精子の質を低下させ、精子DNAを損傷させる可能性があると結論づけています出典[7]

 

三環系抗うつ薬

三環系抗うつ薬は古いタイプの抗うつ薬で、SSRIと比較すると効果は強力だが副作用が大きいという特徴があります。

SSRIと同じくセロトニンを増加させることで興奮を抑制する一方で、ドパミンを低下させ性的興奮や性欲を低下させてしまう可能性があります。

また、三環系抗うつ薬は、血管収縮作用を持つノルアドレナリンを増加させますが、この血管収縮作用が陰茎への血流を悪化させてしまう可能性が示唆されています。

実際に、アメリカのミズーリ大学とカンザス大学が行った研究では、三環系抗うつ薬がプロラクチンレベルを大幅に上昇させ、精子の質を低下させる可能性があることを報告しています出典[8]

 

定型(従来型)抗精神病薬

定型抗精神病薬とは、比較的古いタイプの向精神薬で、興奮作用を持つ神経伝達物質(ドパミン)の活動を抑制することでリラックス効果を発揮します。

一方で、ドパミンは性欲を高める、勃起を促進する、射精をコントロールするなどの役割を担っているため、抑制されることで男性機能が低下してしまう恐れがあります。

イタリアのパルマ大学を中心に、向精神薬の使用が勃起や射精に与える影響についての研究をまとめたものでは、向精神薬、特に定型抗精神薬において男性機能障害に影響を及ぼすことが報告されています出典[9]

このように、抗うつ薬ではSSRIや三環系抗うつ薬、向精神薬で定型抗精神病薬において男性機能の低下が示唆されています。

 

AGA治療薬

いつまでもカッコよくありたいという男性を悩ませるのが薄毛や抜け毛ではないでしょうか?

特に、最近はテレビCMや電車など、街のいたるところでAGA治療の広告を目にしますよね。

良い側面にばかり目が向けられがちなAGA治療ですが、AGA治療薬も男性機能の低下に関与している可能性があります。

AGAは、テストステロンと呼ばれる男性ホルモンが5α-リダクターゼという酵素によってジヒドロテストステロンに変換されることで進行すると考えられています。 

そのためAGA治療薬では、5α-リダクターゼの働きを抑制することでAGAの進行を阻止します。

しかし、テストステロンと同様にジヒドロテストステロンも男性機能のへの影響があると考えられているため、ジヒドロテストステロンの生成が抑制されることで男性機能が低下する可能性があります。

延世大学原州医科大学がフィナステリドとディタステリド(AGA治療薬)による性機能への影響をまとめた研究では、性機能障害のリスクを1.57倍に高めたことが報告されています出典[10]

また、ジョージ・ワシントン大学がフィナステリドの使用中止後の性的副作用の持続期間を調査した研究では、被験者の20%が6年以上持続する性機能障害を報告しており、治療中止後も男性機能障害などの後遺症が残るケースも報告されています出典[11]

一方、フィナステリドなどとは異なるメカニズムを持つミノキシジル(外用薬)は、男性機能への影響がほとんど確認されていないため、お医者さんと相談のうえ、検討してみるのもいいでしょう。

 

降圧薬

AGA治療薬についてご紹介しましたが、食生活やストレスなどとの関係も強く、現代人では特に多くの人の悩みとなっているのが高血圧ですよね。

このような高血圧を改善する目的で使用され、男性機能にも良さそうな降圧薬ですが、降圧薬も男性機能に悪影響を及ぼす可能性があります。

同じ降圧薬でも複数のメカニズムがあるため、特に男性機能の低下が示唆されているものを3つご紹介します。

 

利尿薬

利尿薬は、腎臓で尿の生成を促進することで体内の水分やナトリウムを排出することで血圧を低下させます。

一方で、血圧が低下しすぎると勃起に必要な血液が不足し、勃起が不十分になる可能性があります。

また、利尿薬を長期的に使用することで、利尿薬に含まれるアルドステロンというホルモンが身体のホルモンバランスが乱し、男性機能に重要な役割を果たすテストステロンを低下させてしまう可能性もあります。

テッサロニキのアリストテレス大学の研究では、利尿薬が性機能に有害な影響を及ぼすことが報告されています出典[12]

 

β遮断薬

β遮断薬は、高血圧以外にも狭心症や不整脈などにも使用される医薬品で、交感神経の受容体をブロックすることで心臓の働きを抑制し、血圧を低下させます。

このβ遮断薬も利尿薬と同様に、血圧が低下させることで勃起に必要な血液が不足してしまう可能性があります。

また、ホルモンバランスが乱れることでテストステロンが低下する可能性や交感神経に作用することで性的興奮や性欲に影響を及ぼす可能性があります。

実際に、ギリシャのアスクレピオン総合病院の研究は、利尿薬やβ遮断薬といった降圧薬が勃起機能において有害な影響を及ぼすことを報告しています出典[13]

 

カルシウム拮抗薬

カルシウム拮抗薬は、カルシウムイオンの流入を阻害することで平滑筋(血管内筋肉)や血管を拡張し、血圧を低下させます。

一方で、強力な血管拡張機能や血圧低下が、陰茎への血流を悪化させてしまうことで勃起が不十分になる可能性があります。

ミズーリ大学とカンザス大学の研究では、カルシウム拮抗薬が男性の生殖機能に悪影響を与え、男性不妊を引き起こす可能性を示唆しています出典[14]

このように、あくまでも可能性レベルではありますが、いずれの降圧薬においても男性機能の低下が示唆されています。 

 

前立腺肥大治療薬

年を取るにつれてトイレが近くなり、残尿感が残るといったことが増え、前立腺肥大治療薬をすすめられた方もいるのではないでしょうか?

それもそのはず、前立腺肥大は50歳以上の男性に最もよく見られる泌尿生殖器の合併症の1つで国内でも数百万人規模の患者がいると推定されています。

一方で、いくつかの前立腺肥大治療薬では男性機能の低下が示唆されており、その中でも代表的なもの2つをご紹介します。

 

α1遮断薬

α1遮断薬は下半身の筋肉や血管を弛緩させることで、排尿をスムーズにする薬です。

しかし、勃起に必要な筋肉や血管のはたらきまで緩めてしまうため、勃起力の低下や射精障害につながるリスクがあります。

アメリカのストーニーブルック大学の研究では、α1遮断薬などの前立腺肥大治療薬がEDや性欲減退、オルガスム障害、射精障害などいくつかの有害な性的副作用があることを報告しています出典[15]

 

5α還元酵素阻害薬

5α還元酵素阻害薬は、AGA治療薬と同様にテストステロンがジヒドロテストステロンに変換されるのを防ぐことで前立腺肥大を抑制する作用を持っています。

しかし、男性機能にとって重要な働きを持つジヒドロテストステロンの生成を抑制することで性欲や勃起機能などを低下させてしまう恐れがあるのです。

韓国の全北国立大学の研究では、5α還元酵素阻害薬が単体でEDのリスクを高めるなど、男性機能障害を引き起こす可能性があることを報告しています出典[16]

このように、α1遮断薬や5α還元酵素阻害薬などの前立腺肥大治療薬は、男性機能を低下させてしまう可能性があります。

 

脂質異常症治療薬

現代人は高脂質・高糖質な食事や運動不足、ストレスなどが原因で脂質異常症の割合が非常に高くなっています。

日本生活習慣予防協会(厚生労働省)の調査では、2017年時点で220万5000人の脂質異常症患者がいると推定されています出典[17]

血液中のコレステロールを低下させることで動脈硬化を予防する脂質異常症治療薬ですが、その中でもスタチン系の脂質異常症治療薬は、男性機能を低下させてしまうかもしれません。

なぜなら、スタチン系の脂質異常症治療薬は、男性機能に重要なホルモン「テストステロンの原料であるコレステロールの合成を阻害するからです。

そのため、コレステロールの生成が阻害されることでテストステロンが減少し、男性機能が低下してしまう可能性があるのです。

実際に、カターニア大学の研究では、スタチンの投与がテストステロンの低下と関与していることが報告されています出典[18]

 

その他

ここまで、使用者数が多く、副作用を調査した臨床試験が豊富に行われている医薬品7つをご紹介してきました。

最後にデータは少ないものの、一部の試験では機能性低下の副作用が確認されている医薬品についてご紹介いたします。

・抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)

・抗てんかん薬

・抗潰瘍薬

・ADHD治療薬 

 

医薬品の使用と同時に男性機能低下を感じるならお医者さんに相談を

今回は、男性機能低下のリスクがある代表的な医薬品の種類やメカニズムについて解説しましたが、ご理解いただけたでしょうか。

このように、いくつかの医薬品では副作用として男性機能の低下が確認されているため慎重に検討する必要があります。

最近では、インターネット等で安価に医薬品を個人輸入できてしまう環境も整ってきています。

特に、周囲に相談しづらいストレスやうつ対策、AGA治療などの医薬品は人気の製品となっています。

ただし、医薬品の使用には今回ご紹介したような男性機能への副作用以外にも様々なリスクが想定されます。

医薬品を検討する際は、医師に相談のうえ、判断を行うようにしましょう

 

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