栄養ドリンクは勃起に役立つ?成分の効果と注意点を解説
2024年11月5日更新

監修者

NP+編集長/NESTA-PFT

大森 新

筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

栄養ドリンクと勃起の関係とは?

栄養ドリンクは主に疲れを取ることを目的とした有効成分を摂取できる、医薬品または医薬部外品(指定医薬部外品)として販売されています。精力増強効果が期待できることから、飲むことで勃起力の向上に役立つのでは、と考えている方もいるかもしれませんね。

実際、栄養ドリンクには勃起力を高めるために役立つ成分が複数含まれています。まずは栄養ドリンクに期待できる勃起力の向上効果について解説します。

タウリンがテストステロンの分泌を増やす可能性

栄養ドリンクの有効成分として有名なものにタウリンがあります。タウリンを豊富に含むことをうたった栄養ドリンクは、疲労回復効果が高いとして、古くから働く社会人の間で広く親しまれていますね。

そんなタウリンが勃起に役立つ理由は、勃起をはじめとする性機能や性欲に関わるホルモン「テストステロン」を増やすように働くためです。

テストステロンが減少すると、脳の視床下部から下垂体へ、そして下垂体から精巣へと、テストステロンを分泌するようにさまざまな指示が出されます。

このうちタウリンが関わるのは、脳下垂体前葉に働きかけ、脳下垂体から精巣へと指示を出す「黄体形成ホルモン」です。タウリンが黄体形成ホルモンの分泌を刺激することで、テストステロンの合成効率が高まることがわかっています出典[1]

加えてタウリンにはテストステロンの合成場所、精巣のライディッヒ細胞に作用して、テストステロンの合成を直接増やすように働くことも確認されています出典[1]。テストステロンを高めるためのアミノ酸として、タウリンがとくに重要であることがわかるでしょう。

さらにタウリン自身は抗酸化物質としても機能します出典[2]。テストステロンの主な合成場所である精巣は、酸化ストレスに非常に弱い組織出典[3]。タウリンにより精巣を保護できれば、テストステロンの分泌能力はもちろん、同じく精巣で合成される精子の量や質を守ることにもつながるでしょう。

妊活の目的で勃起力の向上を考えている方にも、タウリンを含んだ栄養ドリンクは有効と言えそうですね。

 

アルギニンが血流を改善

勃起力を高めるためにはテストステロンの増加に加え、血流の改善も重要。栄養ドリンクに含まれることの多い遊離アミノ酸のアルギニンは、血管拡張作用のある一酸化窒素(NO)の合成に欠かせません。

アルギニンは体内において、同じく遊離アミノ酸であるシトルリンとの反応過程でNOを生成します。NOは血管内皮細胞を弛緩させる働きがあるため、血管を広げて血液の通りをよくする効果が期待できるのです。

勃起は興奮状態により生じますが、この興奮をシグナルとしてNOの分泌も盛んになります。勃起においては血液が一気に陰茎へと集まり硬さを持つため、NOにより血管が拡張されていれば、より多くの血液をスムーズに陰茎へと集められ、十分な硬さを得られるのです。

血液を陰茎へ集められなければ、陰茎を硬く保つことも難しいでしょう。NOは勃起の硬さを高めるためのカギとなる物質。アルギニンの不足を解消できれば、NOの合成効率も高まるでしょう。

軽度から中等度の勃起不全患者を対象とした臨床試験を分析した論文によると、1.5~5g/日のアルギニン摂取を続けた7件のケースにおいて、すべてに症状の有意な改善があったと述べられています出典[4]

血流改善効果を期待する場合には、アルギニンが含まれている栄養ドリンクを選ぶとよいかもしれません。

 

有効成分で効率的に疲労を軽減

栄養ドリンクに期待する効果といえば、やはり疲労回復。栄養ドリンクから摂取できる糖分やビタミンB群は、疲労回復に重要なエネルギーを効率よく生成します。また、カフェインは疲労感を軽減させ活動のパフォーマンスを高めます。これらの成分は元気が出る感覚を即座に得たい場合に活躍するでしょう。

さらにタウリンやアルギニンにも抗疲労効果があることで知られる成分です。タウリンは抗酸化物質でもあるため、運動により筋肉で発生した酸化ストレスを減らし、疲労を軽減するように働くでしょう。

アルギニンには成長ホルモンの分泌を促す作用が確認されています。成長ホルモンは疲労により体が受けたダメージを修復するように働くホルモン。運動による筋肉の損傷を軽減したり、疲労からの回復を促したりする効果を得られそうですね。

2008年にアメリカのシラキュース大学から発表された論文では、アルギニンを1日あたり5~9g経口摂取した場合、安静時の成長ホルモンが増加することが約2倍に増加すると述べられています出典[5]

貧血や糖尿病など、疲労や体の怠さを感じやすい疾患においては、勃起不全によるテストステロンの減少が見られやすいとのデータも存在します出典[6]。栄養ドリンクで効率的に疲労や体の怠さを取り除ければ、勃起しやすい体質を維持できるかもしれません。

 

生薬のなかには勃起に役立つものも

栄養ドリンクのなかには生薬が配合されているものもあり、滋養強壮や疲労回復など、さまざまな効果が期待できます。今回は勃起力を高める効果が期待できる成分として、高麗人参ローヤルゼリーを紹介しましょう。

まず高麗人参には、サポニンによる強力な抗酸化作用が期待できます。血液や血管の状態を良好に保ち、血流を改善するように働くでしょう。

2007年にブラジルでおこなわれた臨床試験では、勃起不全患者60名が1日3回、1000mgの高麗人参を12週間にわたり摂取したところ、国際勃起機能指数(IIEF-5)にて勃起能力や自信などを示すスコアが、30点満点中16.4±2.9から21.0±6.3へと増加していました。偽薬(プラセボ)の摂取では17.0±3.1から17.7±5.6と変化がほとんど見られなかったことから、高麗人参に勃起力を高める効果があることが示唆されています出典[7]

ローヤルゼリーはミツバチの分泌物であり、自然界では女王バチのための食物として生成されているようです。体内の抗酸化酵素の活性を高めるように作用するほか、ローヤルゼリーの摂取ではテストステロンが増加する例も確認されています

2012年に岐阜大学から発表された論文では、健康な男女30名がローヤルゼリー3000mgの摂取を6カ月続けたところ、偽薬(プラセボ)を摂取した場合と比較して、男性の総テストステロンが1.52±0.05 log ng/mLから1.58±0.03 log ng/mLへと増加し、約4%の改善が見られたとの結果が得られています出典[8]

栄養ドリンクを選ぶ際には、このような生薬が配合されているものを試してみてもよいでしょう。

 

栄養ドリンクを飲む際の注意点

栄養ドリンクからはタウリンやアルギニン、生薬など、エナジードリンクには含まれていないさまざまな有効成分を摂取できます。適切に飲用すれば勃起力の向上に役立つ可能性がありそうですね。

しかし医薬品または医薬部外品(指定医薬部外品)である栄養ドリンクを飲む際にはいくつか気を付けるべき点があります。ここからは勃起力を高めるために栄養ドリンクを飲む際の注意点について解説します。

商品の目安量を必ず守る

栄養ドリンクを飲む際には、商品に記載されている目安量を守りましょう

栄養ドリンクはさまざまなメーカーから販売されていますが、多くの場合1日1本までの記載がされています。

1日に4本も5本も飲むことで懸念されるのは、まず糖分やカフェインの摂りすぎです。糖分の摂りすぎはカロリーオーバーにつながり、肥満や糖尿病の原因となる可能性があるでしょう。

カフェインの摂りすぎによる緊張や不安、不眠などにも注意すべきです。またカフェインには依存性があるため、大量のカフェイン摂取が常習化すると、カフェインが体から抜けたときに体の震えやめまいなどの離脱症状を生じる可能性もあります。

栄養ドリンクの機能性や安全性は、1日1本の摂取において確認されているものです。必要以上の大量摂取でより高い効果を得られるものではないため、飲み過ぎには十分注意しましょう。

 

睡眠前の摂取にはノンカフェインのものを

栄養ドリンクに含まれるカフェインには強い覚醒作用があります。夜間に飲むと就寝時まで覚醒作用が続き、寝付きが悪くなる可能性があります。

長時間の運転や夜遅くの作業を控えている場合には重宝しますが、いつも通りに寝る場合には、夜間の栄養ドリンクは避けるべきでしょう。

睡眠不足は疲労回復効率を下げることに加え、テストステロンの減少にもつながります。平均年齢24.3歳の男性10名が1日5時間の短時間睡眠を1週間続けると、血清テストステロン濃度が10~15%低下したとのデータが存在します出典[9]

テストステロンが十分に合成されているはずの若い男性でさえ、睡眠不足により大きなテストステロンの減少が起こるというのは驚くべきことですね。

勃起力を高めるための栄養ドリンクで睡眠不足になり、勃起に重要なテストステロンを減らしてしまっては本末転倒です。カフェインを含む栄養ドリンクは夕方までに飲み終えるようにしましょう。

疲労回復効率を高めるために栄養ドリンクを飲みたい場合には、ノンカフェインの栄養ドリンクがおすすめです。カフェイン以外のタウリンやビタミンB群、生薬などは十分量含まれているため、十分な疲労回復効果が期待できるでしょう。

 

各成分の含有量が少ない場合も

栄養ドリンクをタウリンやアルギニンを効率よく摂取できるドリンクとして使用したい場合には、各商品の含有量をチェックする習慣を付けることをおすすめします。

栄養ドリンクのなかには、これらの有効成分が十分量含まれていないものも存在します。有効成分による効果を期待して常飲していたにもかかわらず、実は効果が期待できる量を摂れていなかった、というケースもあり得るのです。

たとえば一般的な栄養ドリンクでは、アルギニンは300~500mg含まれています。しかし勃起不全の改善効果が認められた研究で摂取していたアルギニン量は、1日あたり1.5~5g。1本あたり500mgのアルギニンを含む栄養ドリンクでも、この量を満たそうと思うと最低5本の摂取が必要との計算になります。

もちろんそのような飲み方は推奨されていないため、アルギニンを栄養ドリンクのみで十分量摂ることは難しいと言えそうですね。

特定の有効成分を十分量摂りたい場合には、その成分に特化したものを選ぶ必要があります。タウリンやアルギニンといった有効成分を多めに含む商品もあるため、成分表をチェックする習慣を付けましょう。

より効率的に有効成分を摂りたい場合には、成分が規格化されたサプリメントもおすすめです。糖質やカフェインの摂りすぎを避けて、特定の有効成分のみを摂りたい場合には、ぜひサプリメントを活用してみましょう。

 

まとめ

勃起力を高めるためのカギとなるのは、テストステロン血流です。また疲労や倦怠感が強い状態でも性的興奮が難しくなるため、体調を整えることも重要となるでしょう。

栄養ドリンクからはタウリンやアルギニン、ビタミンB群、生薬など、勃起力を高めるために役立つ可能性のあるさまざまな成分を摂取できます。とくにタウリンからはテストステロンを増やす効果を、アルギニンからは血流を改善する効果を得られます。

適切な量とタイミングを守り飲む分には、栄養ドリンクは勃起力を高めるサポートアイテムとして活用できそうですね。

有効成分をより効率よく摂りたい場合には、サプリメントの使用も検討するとよいでしょう。

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