

執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
私たちは何のためにセックスをする?

セックスは本来、生殖のための行為です。パートナーとの子どもが欲しい場合には、男性の精子を女性の卵子まで届ける必要があり、そのための手段として一般的にはセックスがおこなわれますね。
より生物として本質的なところでは、生殖は子孫を残すための行為であり、動物である私たちにおいては本能的な欲望と考えられます。極端な話でいうと「セックスしないと絶滅する」ということになるため、子どもを作るための行動が男女間でおこなわれるのは自然なこととも言えるでしょう。
一方で、妊活中でなくともセックスをしている男女も多くいます。妊娠を目的にしていない場合、男女間のセックスでは避妊がおこなわれるのが常です。男性ではコンドームが、女性ではピルの使用が現在は主流とされていますね。
パートナーとのセックスはコミュニケーションの一環であり、一般には親密さを求めておこなわれることが多いもの。セックスにおけるより強い親密さを求める感情は「性欲」という言葉にも置き換えられるでしょう。
一般に若い方ほどセックスへの欲求が強く、また男性は女性よりも性欲が強いことで知られています出典[1]。性欲という言葉が男性の間で多く用いられやすいのはこのためかもしれませんね。
同棲している親密なカップルでさえ、一般的な交際をしているカップルよりも使用頻度は落ちるものの、コンドームやホルモン剤による避妊がされています出典[2]。セックスは生殖以外にも、親密さや快楽を得る手段として、カップルの間で頻繁におこなわれているようですね。
セックスに期待できる効果とは?
男女間のセックスは必ずしも生殖を目的とするものではなく、コミュニケーションの一環として、また快楽を得るための手段として、頻繁におこなわれることがあります。セックスには妊活以外にもさまざまな効果が期待できることは、なんとなく感じている方も多いのではないでしょうか。
ここからはセックスに期待できる効果として、考えられるものを10種類紹介します。
パートナーとの親密性が高まる

私たちは親密さを得るために、手を繋いだり、ハグやキスをおこなったりして肌を触れ合わせます。セックスでは肌の接触がとくに多く、相手への愛情や親密性が高まりやすい行為であると考えられるでしょう。
このような身体的な接触は、文化の異なる世界中のどの国でも普遍的におこなわれており、接触頻度が高いほどパートナーへの愛情を感じやすくなるとの関係も明らかになっています出典[3]。
パートナーとのポジティブなセックスで親密感が高まりやすいことや、パートナーと性交する人はより親密な関係になる可能性が高いことも分かっています出典[4]。
愛情を深めるための行為として、セックスが機能しているケースが多いようですね。
生活の満足度を高める

セックスには生活の満足度を高める効果も期待できます。パートナーとのセックス経験が定期的にある人では生活の満足度が高く、人生の楽しみを感じやすい傾向にあるとの結果がいくつかの研究で得られているのです。
1,033名の男性を対象としたオンラインのアンケートによる調査では、過去1か月以内に性的パートナーがいることが、全体的な性的満足度の上昇と関連していたと報告されています出典[5]。
また男性3,045名と女性3,834名を対象とした調査では、過去1年間に何らかの性行為があったと報告した男性と女性は、性行為を行っていない人に比べて、人生の楽しみの平均スコアが有意に高かったというデータも得られているようです出典[4]。
さらに性的な健康と幸福感との関係について63件の研究を分析した論文では、男女ともに、パートナーとの性行為をたまにしかおこなわない人は、頻繁に行う人よりも生活満足度が有意に低いとの結論が出されています出典[6]。
ただしこの分析では、性行為の頻度と幸福感の上昇は週1回の頻度で打ち止めされ、より頻繁にセックスをおこなっても幸福感は有意には上がらないとの結果も得られています出典[6]。
生活の満足度や幸福感を高めるにおいては、週1回程度のセックスが効果的である可能性が高そうですね。
自尊心が高まる

セックスの際の快楽や幸福感、パートナーとの親密な関係性の構築などにより、自尊心が高まりやすくなる可能性もあります。また、自尊心を保つための手段として性行為が取られることもあり、肯定的なサイクルを生み出しているとも考えられています出典[7]。
海外を中心とした研究では、性行為をしたことがない状態での自尊心の低下は、主に女性に見られると報告されています。これは女性の方が、男性から性的に求められる機会が多かったり、性行為をすべきという圧力を受けたりする機会が多いためであると考えられています出典[8]。
しかし青少年においても、性行為を控えていた期間では、性行為を控えた時間が長引くほど「悪い評判を得た」「後悔した」などの報告が増えたことが明らかになっています。また恋人がいる場合、セックスを控えることで恋人の気分を害したという報告も出典[8]。
セックスは自身のみならず、パートナーの自尊心を落とさないようにするためにも有益な触れ合いと言えそうですね。
アンチエイジングに役立つ

セックスは私たちの体を若々しく保つために役立つ可能性もあります。少し突飛な主張に感じるかもしれませんが、セックスにより得られる幸福感や楽しみは、老化の抑制と大きな関係があるのです。
たとえばノルウェー、デンマーク、ベルギー、ポルトガルの4か国の、60~75歳の2,461名を対象に調査したところ、性的関心が高く、性的な喜びを経験している人ほど、老後の生き甲斐の指標となる「サクセスフル・エイジング出典[9]」が高いことが分かっています出典[10]。
この「人生の楽しみ」を高齢になっても得られていることが、老化の抑制や寿命の延長にはとくに重要。
性的に活発な男性と女性は、老化パラメータがより良好で慢性疾患が少ないため、より人生を楽しむ傾向がある可能性があるとの主張もあるほどです出典[4]。
セックスをはじめとする性的な喜びを重要と認識している人の間では、性的な楽しみと寿命との間に弱い相関関係があることが明らかになっています出典[11]。
高齢になってもパートナーとの間に性的な関わりを持つことで、老後の生き甲斐を高め、寿命を延ばしやすくする効果が期待できるかもしれません。
うつ病のリスクを下げる

セックスでの愛撫や性的興奮、オーガズムなどは、愛情ホルモンとも呼ばれるオキシトシンの分泌を増加。抗ストレス、抗うつ、抗不安効果などをもたらす考えられているのです。
さらに性行動とそれに伴う親密さや幸福感は、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの増加を抑えるようにも働きます。コルチゾールが高い状態の持続による、うつ病をはじめとするさまざまな悪影響を緩和できる可能性もありそうですね出典[7]。
50歳以上の男性を対象とした調査では、過去 4 週間に性行為をしたと報告した男性の抑うつの症状は、性行為をしなかったと報告した男性よりも低いとのデータも存在します出典[12]。
さらに異性愛者と同性愛者の両方において、性的な満足感があるほど、うつ病をはじめとする精神病理学的な症状が少ないという逆相関の関係も確認されています出典[6]。
20~59歳の男性15,794名を対象に、セックスの頻度とうつ病との関連性を調べた研究では、性行為が月1回未満の方よりも、月1回以上の頻度で性行為をおこなう方の方が、うつ病のリスクが低かったとのデータが得られました。
さらに統計を取ると、1年に52~103回、週あたり1~2回のセックスで心理的な健康が最も高まりやすく、うつ病のリスクを下げやすいこともわかっています出典[13]。定期的なセックスにより心理的に満たされることで、抑うつ状態を生じにくくする効果が期待できるかもしれませんね。
認知機能が向上する

驚くべきことに、セックスは脳を活性化させて認知機能を高めやすくする可能性もあるのです。
たとえば記憶や情報の維持に関わるものとして、脳の海馬ニューロンがあります。現代社会における男女の性行動は、この海馬ニューロンを新しく生み出す能力を強化して、海馬細胞を増やすように働く可能性が示されています。
海馬ニューロンの新生はストレスにより阻害されやすいもの。しかしセックスはこのストレスを解消するように働くため、成人の海馬ニューロンを増やし、記憶力を高めるために役立つと考えられているのです出典[14]。
マウスを対象とした実験では、性行為により脳由来の神経栄養因子が活性化し、チロシンキナーゼB、cAMP応答要素結合因子など、ニューロンに関わる物質が増えるという結果が得られています出典[14]。
50~89歳の6,833名の男性を対象とした調査でも、性的に活発であるほどに、一般的な認知機能のレベルも高まるといった相関関係が確認されています出典[15]。
高齢者の認知機能はとくに、生活の質や心理状態に影響を受けるものです出典[15]。セックスにより幸福感やパートナーとの親密性を感じる機会が増えることで、認知機能を高めやすくなった可能性がありそうですね。
心血管疾患のリスクを下げる
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セックスによる幸福感が心血管疾患のリスクを下げる、とは荒唐無稽な話に思えるかもしれませんね。
しかし実際に、人生の楽しみや幸福感、ポジティブな感情などが、冠状動脈性心疾患の発症を予防するように働き、死亡リスクを最大35%低下させる可能性が指摘されているのです出典[4]。
とくに仕事をやめて人との関わりが減少しやすい高齢期においては、セックスにより人との親密な関わりを持つことが、死亡リスクの低下につながりやすいと言えるかもしれませんね。
また、セックスでは少なからず体を動かし活動的になるものです。一般的な挿入を伴う性交中のエネルギー消費量は約85kcal、または1分あたり3.6 kcalとも言われており、運動に類する心拍数や血圧の変化などが生じることがわかっています出典[7]。
ウォーキングや階段昇降のような身体活動には、心血管疾患の主な原因となる動脈硬化のリスクを下げるほか、認知機能の低下を遅らせる効果もあります。
定期的なセックスには、運動に似たカロリー消費や心肺機能の向上効果などが期待できるようです。心血管疾患のリスクを下げるというデータにも納得ですね。
不眠を改善する
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セックスによるオーガズムは、入眠をスムーズにして、睡眠の質を高めるように働きます。
セックスの後には筋肉が弛緩したり、オキシトシンの量が増えたり、コルチゾールが減ったりして、一般にリラックスした状態を作りやすくなります出典[7]。そのため緊張で入眠しづらい悩みを抱えている方にとっては、激しすぎないセックスが入眠のサポートとして役立つ可能性があるのです。
男女256名の学生を対象とした調査では、パートナーとの性行為でオーガズムを得られた場合に、入眠までの時間が有意に短縮され、さらに睡眠の質も高まったとの回答が得られています。
一方で、オーガズムを伴わないセックスや、一人でおこなう自慰行為では効果が見られなかったこともわかっています出典[16]。
オーガズム後にコルチゾールが大きく低下することや、愛撫によりオキシトシンが増えやすくなることなどが出典[7]、オーガズムありのセックスでより入眠しやすくなる理由と考えられるでしょう。
セックスでの身体運動には少なからず疲労をともなうものですが、その後の睡眠の質が高まることを考えると、疲れを取り気力や体力を回復する手段として、適切な強度でのセックスは効果的と言えるかもしれませんね。
免疫機能を維持しやすくなる

セックスは免疫機能を維持し、風邪や病気の発症率を抑えるように働く可能性があります。
セックス中の愛撫やオーガズムに増えやすくなる愛情ホルモン、オキシトシン。実はオキシトシンには免疫や炎症に対する効果が確認されているのです。
オキシトシン分泌系が、免疫にかかわる胸腺や骨髄などの発達を促して防御力を強化していることや、オキシトシン自体が抗生物質に類する炎症抑制効果を発揮して、創傷治癒や再生を促すことがわかっています出典[17]。
またオキシトシンには、ストレス関連の免疫障害を抑える効果も出典[17]。ヒトではうつ症状のある男性のおこなうセックスが、うつ病による免疫力の低下からの回復を促すように働くこともわかっています出典[18]、精神的不調により生じる免疫の低下には、オキシトシンがとくに効果的である可能性がありそうですね。
実際の感染症では、新型コロナウイルス(COVID-19)を対象とした調査がおこなわれています。33か国から18歳以上の16,000人を対象にオンラインアンケートをおこなったところ、月に3回以上セックスをする人の方が、3回未満の人に比べて病気の発生率が低く、発症した場合の症状も軽症であったとのデータが得られました出典[19]。
オキシトシンによる免疫や炎症抑制の効果を自然な方法で得る手段として、セックスは効果的と言えるかもしれません。
精子の質が高まる
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最後にセックスのメリットとして、精子の質が高まる点を説明しておきましょう。
妊活に熱心に取り組む方では、セックスの際の射精量を増やすため、事前に長期間の禁欲を設ける場合があるかもしれません。確かに禁欲により精液量は増えやすくなりますが、あまりに長期間の禁欲は精子の質を損なうため要注意。
妊娠を成立させるためには、精液や精子の量に加え、精子の運動率や正常形態率なども重要。不妊に悩む6008名の男性患者の精液サンプルを調査したところ、それぞれ次のようにピークのタイミングが分かれていました出典[20]。
【各精液サンプルにおけるピーク値の日数】
乏精子症 | 正常精子数 | |
---|---|---|
精子濃度 | 禁欲1日目 | 禁欲7日目 |
精子総数 | 禁欲2~4日目 | 禁欲7~14日目 |
精子運動性 | 禁欲1日目 | 禁欲1~7日目 |
総運動精子数 | 禁欲4日目 | 禁欲7日目 |
精子が少ない乏精子症の方では禁欲1~4日目に、精子の量に問題がない方では禁欲7日目に、精子のステータスがすべてピークを取りやすいと推測できそうですね。
禁欲7日目からは精子の正常形態率が有意に低下するとのデータも確認されているため出典[21]、妊娠を目的にする場合には、セックスのタイミングを週に1回は作るようにした方がよいでしょう。
ただしあまりにも頻繁にセックスをおこなうと、精液量の減少から妊娠率が下がる可能性があります。禁欲初日から4日目では、日数を1日延ばすごとに精液量が11.9%増えるとのデータもあるため出典[22]、タイミングを取りセックスをおこなう際には、事前に少なくとも2~3日の禁欲を設けることをおすすめします。
セックスの効果を最大化するためには?
セックスには妊活以外にも、親密さや愛情の構築、精神面の安定、うつ病や心血管疾患のリスクの低減など、さまざまな効果が期待できます。複数の研究で週1回程度のセックスが効果的とのデータが得られているため、パートナーとのセックスのタイミングを設ける目安として、ぜひ参考にしてください。
しかし自身の性機能が十分に機能していなければ、セックスを十分に楽しむことも難しいでしょう。とくに男性では加齢とともに性欲や勃起力などの低下が起こりやすく、思うようなセックスができないことに悩むこともあるかもしれません。
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