

執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
男性に起こるホルモンバランスの乱れとは?
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男性のホルモンバランスの乱れと不調は、一般に、テストステロンの減少と、それにともなう更年期障害の症状として説明されます。
テストステロンは性欲や勃起力といった性機能面のほか、筋肉や骨量、代謝、睡眠の質、やる気、競争心など、肉体面や精神面への作用も確認されているホルモンです。男性のエネルギッシュなたくましさを支える、非常に重要なホルモンのひとつと言ってもいいでしょう。
テストステロンの減少による、性機能面、身体面、精神面への不調は、男性の性腺機能低下症、いわゆる更年期障害の症状としてよく問題になります出典[1]。
性機能面では性欲減退、勃起不全、精子の量や質の低下が起こる場合があります。性行為や妊活を困難に感じる方も増えるでしょう。
身体面では筋肉量や骨量の減少にともなう、筋力の低下、疲れやすさ、骨折リスクなどが問題となります。テストステロンには消費エネルギーを増やす作用や、脂質や糖の代謝をサポートする作用もあるため、テストステロンが減少すると肥満や生活習慣病のリスクも高まります。
精神面では無気力や抑うつ、絶望感、不安、イライラなどが出てくることがあるようです。またテストステロンには体内時計を調整する役割もあるため、不足により睡眠の質が低下する可能性もあるでしょう。
性腺機能低下症の治療として、テストステロン補充療法がおこなわれる場合もありますが、テストステロンは生活習慣のケアにより回復させることもできます。ホルモンバランスの乱れによる不調を防ぐため、まずは毎日の過ごし方を見直してみましょう。
ホルモンバランスが乱れる原因とは?
男性のホルモンバランスの乱れ、とくにテストステロンの減少においては、いくつかの原因があるものです。ここからはテストステロンが減る原因として考えられることを7種類解説します。
対策が可能なものについては効果的な方法についても説明しています。生活習慣のケアでホルモンバランスを整えたい方は、ぜひ参考にしてください。
加齢
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テストステロンの体内量のピークは20歳過ぎと言われています。若いころの活力あふれる健康な体は、テストステロンのおかげでもあるのかもしれませんね。
テストステロンは30歳を過ぎたころから減少が始まるとされており、35~40歳を過ぎたころからは減少率が年1~3%にまでなるとのデータも出典[2]出典[3]。
ただし20~40歳の男性のうち、低テストステロン血症の定義とされる320ng/dLを下回る方の割合はわずか1%程度とも言われています出典[2]。そのため30代ではまだテストステロンの減少による不調を感じることは少ないでしょう。
一方で、50歳以上の男性の50%が低テストステロン血症であるとも言われています出典[1]。テストステロンの減少による不調は、40代以降、とくに50歳以上で顕著に現れてくることが分かりますね。
加齢による身体の変化は防ぎようがなく、テストステロンの減少は多かれ少なかれ誰にでも起こるものです。
一方で、40歳を過ぎると仕事や家庭での役割が複雑化しやすく、忙しさやストレスから生活リズムが乱れる傾向にあります。テストステロンの減少を加速させるさまざまな悪習慣も、40代以降から増えやすくなると言えるでしょう。
テストステロンの減少を抑えて不調を回避するためには、生活習慣のケアを徹底する必要がありそうですね。
体脂肪の増えすぎ
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ホルモンバランスの乱れの原因としてまず有力なものが肥満です。生活習慣病のリスク因子としても肥満は問題視されていますが、テストステロンにも悪影響を及ぼすことが分かっています。増えすぎた脂肪組織が炎症を起こすと、活性酸素やアロマターゼといった、テストステロンを減らすように働く物質の産生量が増えてしまうのです出典[4]出典[5]。
過剰な活性酸素は酸化ストレスとして、テストステロンの合成場所である精巣を傷付けてしまいます。精巣は酸化ストレスにとくに弱い組織のため出典[6]、肥満により増えた活性酸素の影響を受けやすく、テストステロンの分泌能力も落ちやすいと言えそうですね。
また、アロマターゼと呼ばれる酵素はテストステロンを、女性ホルモンのエストラジオールに変換するように働くため、テストステロンがさらに減りやすくなるでしょう。
肥満とテストステロンとの関係について分析した論文では、BMIが高いほどテストステロンが少なくなるという逆相関の関係があることや、減量によりテストステロンが回復することなどが述べられています出典[6]。
一般的にはBMI25kg/m²が肥満とされています。若いころよりも体重が増えた方や、BMIがBMI25kg/m²を大きく上回っている方は、加齢による影響以上にテストステロンが減っている可能性も。食事や運動、睡眠のリズムを見直し、を目指して、緩やかなペースで体重を落としましょう。
ビタミン、ミネラル、抗酸化物質の不足
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ビタミンやミネラルのような微量栄養素、およびポリフェノールやω-3系脂肪酸のような抗酸化物質は、テストステロンの合成や分泌を支える重要な成分。これらが不足すると、テストステロンを減らしやすくする可能性があるのです。
多忙な方や自炊に慣れていない一人暮らしの方では、食事の大半を、牛丼やラーメンのような外食、コンビニやスーパーの総菜、インスタント食品などで済ませる方も多いでしょう。しかしこれらの食品には、ビタミンやミネラル、抗酸化物質が圧倒的に少ないのです。
ビタミンやミネラル、ポリフェノール類の摂取不足は、テストステロンの分泌を促す脳からの指令効率を落とし、テストステロンを増やす力の低下につながることがわかっています出典[7]。
また抗酸化ビタミンや亜鉛などのように、体内の抗酸化力を高める栄養素が不足すると酸化ストレスが増えやすくなるため、精巣が傷付き、ますますテストステロンが減りやすくなるでしょう出典[8]。
亜鉛出典[9]、マグネシウム出典[10]、ビタミンD出典[11]、ω-3系脂肪酸など出典[12]、栄養素の補給によりテストステロンの量が回復したケースも複数報告されています。
ビタミン、ミネラル、抗酸化物質を不足なく摂れるよう、野菜や果物、魚の摂取を意識しつつ、さまざまな食品を偏りなく摂ることが重要ですね。
おすすめは、主食、主菜、副菜の揃った定食形式の和食料理です。魚を主菜とするものが多く、また野菜の小鉢や汁物が付いてくるメニューが多いため、これらの栄養素の摂取源として活躍するでしょう。
運動不足

デスクワークやリモートワークで仕事中に席を立つ機会がほぼない方や、休日には自宅で座ってテレビ視聴ばかりしている方は要注意。活動量が極端に少ない方や運動不足の方も、テストステロンが減りやすい可能性があるのです。
たとえばデンマークの男性1,210名を対象とした調査では、テレビを座って1日5時間以上視聴する男性は、長時間視聴をしない男性よりもテストステロンが低いとのデータが存在します出典[13]。
また、スペインの研究では、運動不足の男性よりも、身体活動量が多い男性の方がテストステロンの体内量が約18.3%多かったとの結果が得られています出典[14]。
座りっぱなしの生活を避け、こまめに体を動かしたり軽い運動を取り入れたりすることで、テストステロンの減少リスクを抑える必要があるでしょう。
運動経験がない方は、まず長時間の座りっぱなしを避けるため、休憩時間に席を立ち、10分歩くようにしてみましょう。1日の歩数が1000歩(成人の歩行で約10分)増えるごとに、総テストステロンが7ng/dL増えたとのデータも存在します出典[15]。テストステロンを増やしやすい体づくりのため、まずは1日10分多めに歩くことから始めてみましょう。
テストステロンを増やすための運動として、筋トレもおすすめです。より多くの筋肉を用いて、より負荷の高い筋トレをおこなうと、テストステロンもより増えやすくなりますが出典[16]出典[17]、慣れていない方は、自宅でもできるスクワットや腕立て伏せなどを継続するところから始めてみましょう。
睡眠不足
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睡眠不足ではさまざまな健康リスクが高まりますが、テストステロンの減少もより起こりやすくなることが分かっています。
実は睡眠中は、テストステロンの分泌量が増えるゴールデンタイム出典[18]。十分な睡眠を取ることができればテストステロンも多めに分泌されますが、短時間睡眠では折角のテストステロンを増やす機会を逃していることに。
また、睡眠中には活性酸素の除去もおこなわれます出典[19]。そのため睡眠不足では活性酸素が増えたままになり、精巣を傷付けてテストステロンの分泌能力を落としてしまうでしょう。
テストステロンの分泌能力が十分にあるはずの若い男性が5時間睡眠を1週間続けただけで、血中テストステロンが10~15%減少するとのデータもあります出典[20]。
また、1日7時間未満の短時間睡眠が習慣化すると、肥満や生活習慣病、うつ病などのリスクが上がるとも言われているため出典[21]、不調を改善するためにも、1日7時間は眠れるようにしたいものですね。
夜更かしをしないことはもちろんですが、睡眠の質を高める工夫を取り入れることも効果的です。就寝前のコーヒーやお酒を避ける、就床1時間半~2時間前に入浴で十分に体を温める出典[22]、などの方法をぜひ試してみましょう。
お酒の飲みすぎ
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アルコールはテストステロンの大敵。大量飲酒を繰り返している方ではテストステロンが減りやすくなるため、不調に悩んでいる方は飲む量を減らすよう心がけましょう。
大量飲酒により、主に次のような問題が生じることが分かっています。
- アルコールの代謝に抗酸化酵素が消費され、体内の抗酸化活性が落ちる出典[23]
- 大量飲酒によりテストステロンを減らす酵素「アロマターゼ」の発生量が増える出典[24]
- テストステロンの分泌を促すホルモンの合成をアルコールが邪魔する出典[25]
ほかにも寝酒により睡眠の質が低下したり、ビールや日本酒のような糖質を含む醸造酒により血糖値が上がり、体脂肪が増えやすくなったりすることも問題となるでしょう。
性ホルモンへの影響を与えないようにするため、純アルコール換算で週あたり140g未満、つまり1日20g未満に抑えることが有効である可能性があります出典[25]。
【一般的な酒類のアルコール度数と適正量の目安】
アルコール度数 | 純アルコール20g相当量 | |
ビール | 約5% | 500mL(ロング缶1本) |
日本酒 | 約15% | 約165mL(1合弱) |
ワイン | 約12% | 約208mL(グラス1杯半) |
ウイスキー | 約40% | 約63mL(ダブル1杯) |
焼酎20度 | 20% | 125mL |
焼酎25度 | 25% | 100mL |
普段飲んでいる量が、純アルコール換算で20gの相当量を超えているようであれば、アルコールの摂りすぎによりテストステロンが減りやすくなっている可能性も。飲酒量を減らして、テストステロンへの悪影響を防ぎましょう。
過度のストレス
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過度のストレスもまた、糖尿病やうつ病など、あらゆる疾患のリスク因子となることで知られています。テストステロンの減少も、過度のストレスにより起こりやすくなるため要注意です。
テストステロンの不足を体が感知すると、脳の視床下部からテストステロンの分泌を指示するためのホルモンが分泌されます。しかし慢性的なストレス状況下では指示役のホルモンの分泌が邪魔されてしまい、テストステロンの分泌を十分に促せません出典[26]。
慢性的なストレスによるテストステロンの減少は、ラットを用いた実験のほか出典[26]、ヒトの調査においても確認されています。
たとえばストレスを受けやすい立場にある病院の研修医のテストステロンは、同じ病院のほかの職種の方の平均値より約42.7%も低いと報告されています出典[27]。
一方で、ストレスによるテストステロンの減少は可逆的であり、ストレス環境を脱することで時間をかけて回復することも分かっているため出典[28]、できる範囲でのストレス管理が非常に重要と言えるでしょう。
ストレスフルな職場や家庭を変えることは難しいため、気分転換やリフレッシュの手段をいくつか用意しておきましょう。
簡単なものではやはり十分な睡眠がおすすめ。睡眠の質の改善により精神的健康が向上し、ストレスも減りやすくなることが分かっているため出典[29]、精神的ストレスに悩んでいる方は、まず十分に眠れる時間を作るところから始めてみましょう。
ホルモンバランスの乱れを改善する最善策とは?
男性におけるホルモンバランスの乱れ、テストステロンの減少は、加齢や生活リズムの乱れにより起こるものです。テストステロンが減りすぎると性腺機能低下症として、さまざまな不調をきたすことも。
食事、運動、飲酒、睡眠、ストレスなど、さまざまな要素を見直すことで、テストステロンの減少を抑えることが重要ですね。
今回はテストステロンの減少リスクが高い習慣とその対策について解説しましたが、課題が複数ある方では、どれから取り組めばよいかと悩む場合もあるでしょう。
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テストステロンは放っておくと加齢により減少するばかり。回復のためにはいち早い取り組みが重要です。ぜひ公式LINEでの相談を活用して、周囲よりも一足早く、テストステロンを回復の波に乗せましょう。
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