システインとは?7つの効果と適切な摂取方法
2022年9月28日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

システインとは

システインという栄養素はあまり聞き馴染みがないかもしれませんが、「L-シスチン」の形でサプリメントが販売されているのを見たことがある方は多いのではないでしょうか。この記事ではシステインが体にもたらす作用や、食事やサプリメントから摂取する際の注意点などについて紹介します。

1.どんな栄養素?

システインはアミノ酸の一種であり、体内で合成が可能であるため「非必須アミノ酸」に分類されます。必須アミノ酸であるメチオニンと、非必須アミノ酸のセリンを材料とし、葉酸やビタミンB6、ビタミンB12などの力を借りて合成されます。体内での合成だけでは必要量に追いつかない場合、食事からも摂取する必要があるでしょう。

システインはサプリメントにも多く含まれる栄養素ですが、サプリメントとして一般的に使われているのは、システインが2分子結合した「L-シスチン」か、システインが安定化した状態の「N-アセチル-L-システイン(NAC)」です。

食品中など、自然界に存在しているシステインは、光学異性体のL体であることを示す「L-システイン」と呼ばれる形をしていますが、この記事においてはシステイン単体を指す場合、全て「システイン」と記載しています。

 

2.体の中でどんな働きをする?

システインの供給ルートは様々ですが、大まかに分けると以下のようになります。

  • 食品に含まれる必須アミノ酸「メチオニン」の摂取によって合成される
  • システイン、もしくはシステイン2分子が結合したシスチンを含む食品の摂取により供給される
  • サプリメントの「N-アセチル-L-システイン」の形で摂取する(この場合、体内でシステインに変換される)

これらによって供給されたシステインは、2分子の結合によりシスチンになったり、酵素の影響を受けてグルタチオンやタウリンに変化したりして、体の様々な場所で機能しています。

  • シスチン
    システインが2分子結合したものを呼びます。ケラチンという弾力のあるたんぱく質の構成成分であり、髪や爪に多く存在しています。シミの元となるメラニンの生成を抑制するなど、肌の健康維持にも関わります。
  • グルタチオン
    システイン、グルタミン酸、グリシンから合成されます。強い抗酸化作用を持ち、酸化ストレスを低減させるため、高血圧や動脈硬化などの生活習慣病の予防にも役立ちます。
  • タウリン
    システインとメチオニンから合成されます。胆汁酸の生成・分泌を促して肝機能やコレステロールバランスを整える作用を持ち、肝臓を保護したり動脈硬化を予防したりするように働きます。

 

3.不足するとどんなリスクがある?

システインは非必須アミノ酸であるため、食事からの供給が少なくとも体内である程度合成することができます。しかしシステインの材料となるメチオニンの摂取不足により、システイン合成が滞るおそれもあるため、必須アミノ酸であるメチオニンの摂取は特に心掛けるべきでしょう。

不足を起こした場合、シスチンやグルタチオン、タウリンなどの合成も滞るため、肌や髪、爪などのトラブル、肝機能障害、筋肉量の減少などを引き起こす可能性があります。コレステロールバランスが崩れたり酸化ストレスが蓄積したりすることにより、高血圧や動脈硬化など、生活習慣病のリスクも上昇するため注意が必要です。

 

4.どんな食材に含まれている?

たんぱく質食品と呼ばれるものにはほとんどの場合、システインがある程度含まれています。特に豊富に含む食品を意識して選ばずとも、極端な偏食や欠食などを起こしていなければ普段の食事から供給できていると考えてよいでしょう。

システインおよびシスチンを多く含む食品は以下のようになっています。主な供給源は動物性食品ですが、大豆製品や一部の穀類にも比較的多く含まれていることが分かります。

なお、システインは酸化によりジスルフィドと呼ばれる結合を作りやすいため、2分子の状態「シスチン」として天然のたんぱく質に存在していることが多いことが分かっています。システインとしても天然に存在しますが、厚生労働省が発表している「食品成分表」においては、システインとシスチンを合わせて「シスチン」として成分計算しています。

食品成分表においては、シスチンの成分値は、システインとシスチンの合計であり、システインは1/2 シスチン量として表されています。

【システインおよびシスチンを含む食品とその含有量(100gあたり)】出典[1]

食品名

成分量(mg/100g)

するめ

850

黄大豆(乾)

630

オートミール

500

豚ヒレ肉(焼き)

450

鶏むね肉(皮なし・焼き)

450

うこっけい卵(生)

390

システインの合成材料となるメチオニンもまた、動物性食品や大豆製品に豊富に含まれています。これらの食品を意識して摂取することで、システインや、システインを材料とする化合物の不足を防ぐことができるでしょう。

【メチオニンを含む食品(動物性食品)とその含有量(100gあたり)】出典[1]

食品名

成分量(mg/100g)

びんなが

750

鶏ささみ肉

690

鶏むね肉

630

豚ロース肉(皮下脂肪なし)

600

プロセスチーズ

590

牛もも肉

580

黄大豆(乾)

520

鶏卵

410

 

システインに確認されている作用や効果

様々な化合物の形で髪や皮膚、筋肉など、体のあやゆる組織に含まれているシステインですが、その働きも様々です。この章ではシステインが体にもたらす作用について、化合物の機能とともに解説します。

1.美肌・美白効果

システインが2分子結合した状態であるシスチンは、髪や爪、皮膚においてケラチンを構成する成分として機能しています。ケラチンは弾力性に富むたんぱく質であり、繊維状の構造をしています。このケラチンが水分を多く含むことで髪や肌のハリや潤いが保たれていると考えられています。

またこのケラチンと、システインを材料として作られるグルタチオンには、シミの元となるメラニンの生成を抑制する効果があります。これはケラチンやグルタチオンに、メラニンを作る酵素である「チロシナーゼ」の活性を抑制する働きがあるためです。

シスチンとグルタチオンを経口摂取して肌の状態を観察したランダム化比較試験によると、シスチンおよびグルタチオンの摂取群にて、肌の美白効果と、顔の黒い斑点のサイズが小さくなる効果が確認されています出典[2]。このように、シスチンとグルタチオンは体内において、皮膚の色素沈着を防ぐ働きがあるとされ、美容サプリメントなどにも使用されています。

 

2.健康的な肌や髪、爪を維持

システインで構成されるケラチンは美肌効果を有するほか、グルタチオンと併せて髪の健康を保つ役割を持っているとも考えられています。またグルタチオンには抗酸化作用もあるため、紫外線を浴びることにより生成される活性酸素を減らし、髪や肌へのダメージを軽減することができます。

N-アセチル-L-システインやグルタチオンの脱毛との関係を調べた動物実験においては、これらとビタミンB6を経口投与したマウスにおいて毛球細胞のアポトーシスが抑制され、脱毛症の進行が遅くなったという結果が得られています出典[3]

また臨床試験においても、びまん性脱毛症の患者に対する二重盲検研究にて、シスチンとゼラチンとビタミンAを投与した群において、毛髪密度の増加髪の成長率の増加などが確認されました出典[4]

これらの研究を踏まえても、システインとビタミン群を摂取することで健康的な肌や髪を維持することができると考えられそうです。特に髪の健康において、システインの十分な摂取は大きな効果を発揮することが期待できるでしょう。

 

3.精子の質を改善

システインからなるグルタチオンは強力な抗酸化物質として機能するため、精巣の状態や精子の質にもよい影響を与えると考えられています。

システインのサプリメントであるN-アセチル-L-システイン (NAC) も、活性酸素を除去し酸化ストレスを低減する働きを持ちます。このサプリメントの投与を行った臨床試験において、精索静脈瘤術後の患者の生殖機能の状態を調べたところ、精液やDNAの異常、酸化ストレスの量などが有意に減少していたという結果が得られています出典[5]

十分にシステインを摂取することで得られる抗酸化作用により、精子中のDNAとたんぱく質の複合体であるクロマチンの状態が正常に保たれやすくなる効果が期待できるでしょう。

 

4.肝機能の改善

システインからなるグルタチオンおよびタウリンは、肝機能を整える作用があります。

タウリンは、肝臓で胆汁酸の分泌を促進したり肝細胞を安定化させたりする作用を持ちます。コレステロールを材料とする胆汁酸が十分にされることで、体内のコレステロール量も調節され、結果として血中コレステロール値が安定化します。血中の脂質成分の量が正常に保たれることで、動脈硬化の予防にも役立ちます。

グルタチオンの持つ強力な抗酸化作用は肝機能の改善においても重要です。脂肪肝を原因とする肝疾患を有する患者においてN-アセチル-L-システインの投与効果を調べたランダム化比較試験において、N-アセチル-L-システインを投与された患者の肝機能が有意に改善されたという結果が得られており出典[6]、酸化ストレスの低減、炎症の抑制の効果が十分に作用していることが推測されます。

また、グルタチオンとタウリンには肝臓の解毒作用を高める効果があります。有害であるアルコールの代謝機能が整うため、飲酒時にかかる肝臓への負担を軽減するように働きます。

更に、システイン自身にも肝機能を保護する効果があります。アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドによる細胞の酸化的損傷が、システインにより減少し、細胞のアポトーシスの速度を低下させることが判明しています。これはシステインがアセトアルデヒドと反応してイミンという無害な物質を生成し、体外へ排泄する作用を持つためであると考えられており出典[7]、肝細胞の保護に有用であると期待されています。

 

5.体脂肪の減少をサポート

システインが体脂肪の減少をサポートする可能性がある、との仮説のもと、いくつかの研究が進められています。ラットを使用した動物実験においては、運動前にシステインの豊富なホエーたんぱく質を補給した群において、徐脂肪体重の増加相対的な脂肪量の減少などが非摂取群と比較してより大きく起こったことが確認されています出典[8]。人を対象とした試験においても、運動前の補充によって同じような効果が得られています。

これらの研究を踏まえると、システイン自身に体脂肪率を減らす効果があるというよりは、運動と合わせることでの減量効果を増大させる働きがある、と考えることができそうです。システインの補給によって運動能率が向上すること、また徐脂肪体重の増加により相対的に体全体に占める脂肪の割合が減少すること、この2点がダイエットに有効な効果をもたらすものと推測されます。

運動前にシステインを補給することにより、運動のパフォーマンスと筋肉量の増大効果が得られるというのは、現状期待できる大きなメリットです。筋肉量が増大すれば基礎代謝量も向上し、より減量しやすい体づくりに繋がります。健康的に減量するための運動、そのサポートとしてシステインの補給を検討に入れてみてもいいかもしれません。

 

6.年齢による筋肉量低下を抑制

髪の毛や皮膚を構成するアミノ酸として知られるシステインですが、筋肉を構成するアミノ酸でもあるため、不足により筋肉量低下を招くおそれがあります。

またシステインに特有の効果として、システインの供給により、炎症性サイトカインであるTNF-αの濃度上昇が抑制されることが分かっています出典[9]

TNF-αは老化と関連が深い物質であり、この増加により老化に伴う筋肉量の低下や、炎症性の癌の発生などのリスクが上昇します。TNF-αを減少させることで筋肉量の低下を防ぐことができるため、システインの投与により筋肉量を維持する効果がもたらされているのではないかと考えられています。

更に、加齢に伴う細胞量の減少についても、抑制効果をもたらす可能性があります。N-アセチル-L-システインによる治療効果として、高齢者および癌患者で大きく減少する体細胞量が増加し、血清アルブミン値など栄養状態を示す指標についても改善が確認されています出典[10]

これらの研究結果より、システインの十分な摂取が、加齢によるサルコペニアやフレイルティの予防に役立つのではないかと推測されています。

システインを含むたんぱく質食品には、体たんぱく合成に欠かせない必須アミノ酸もバランスよく含まれています。そのためシステインのみならず、必須アミノ酸の供給のためにもたんぱく質食品は不足なく摂取する必要があるでしょう。

 

7.年齢による免疫力低下を抑制

加齢に伴う筋肉量の低下と同様に、免疫力の低下もシステインの供給によって抑制できる可能性があります。

体内で発生した活性酸素は免疫を働かせるために欠かせないものですが、過剰に発生することで細胞へのダメージが蓄積し、余分な炎症の発生原因となってしまいます。余分な炎症の処置に免疫細胞が使われることで、本来の免疫機能に割かれるべき免疫細胞の活性が不足し、結果として免疫力が低下する自体を引き起こすおそれがあります。

正常な免疫応答ができる環境を整えるため、抗酸化作用により活性酸素を無害化できるグルタチオンが不足しないよう、システインを十分に摂取しておくことは有効に働くと考えられます。

また免疫に注目した研究においては、HIV感染者が体内の硫黄を喪失することに注目し、化学構造として硫黄を含むシステインをN-アセチル-L-システインの形で補給することで免疫能力に変化が起こるのではとの仮説のもと、ランダム化比較試験が行われました。

この試験によると、N-アセチル-L-システインの補給群において、免疫細胞に関わるNK細胞とT細胞の量、および血清アルブミン値において、プラセボ群よりも有意な改善が見られました出典[10]。予防的にシステインを補給することで、ウイルス感染時の免疫細胞のバランスを保つことに役立つ可能性があると考察されています。

 

システインの摂取方法や注意点

様々な物質の合成材料となり、体内で優秀な作用をもたらすシステインですが、どのように摂取するのが効果的なのでしょうか。以下ではシステインを食事あるいはサプリメントから摂取する際の効果的な方法、および注意点について説明します。

1.副作用はある?

システインは非必須アミノ酸であるため、必要量や耐用上限量などの正式な数値は公表されていません。サプリメントによっても目安量が異なるため、基本的には販売元のサプリメントの「1日目安量」に従うべきであると言えるでしょう。

サプリメントの形で過剰摂取することによる影響として、インスリン分泌不全を引き起こす可能性がある、というものがあります。Ⅱ型糖尿病患者において血中システイン濃度が上昇していること、またマウスを用いた動物実験においてシステインの投与によりインスリンの分泌量が低下したこと出典[11]などから、システインの過剰摂取とインスリン分泌不全との間には関連があるのではと考えられているのです。

また、一般的な市販の鎮痛薬に含まれる成分であるアセトアミノフェンとの関連も指摘されています。アセトアミノフェンを過剰摂取することにより生じるアセトアミノフェン中毒の症例において、肝臓の損傷防止および解毒の目的で投与されたN-アセチル-L-システインにより、副作用として溶血や血小板減少症、急性腎不全などを生じたと報告されています出典[12]

このように、極端な過剰摂取やアセトアミノフェン中毒時という特定の条件下においては、サプリメントの摂取やN-アセチル-L-システインの投与により有害に働く可能性があります。

栄養機能食品として販売されているサプリメントは、1日の目安量以上に摂取することでより多くの健康効果をもたらすものではありません。むしろ消化器官や肝臓などに大きな負担をかけ、代謝のバランスを崩す結果となりかねないため、サプリメントでの摂取は量を守って正しく摂取することが重要となります。

 

2.理想的な摂取タイミングは?

アルコール摂取時の肝臓への負担を軽減させたい場合には、肝機能を保護する効果のあるシステインを含んだサプリメント摂取が効果的です。飲酒前のタイミングで摂取することで、飲酒による二日酔いや吐き気、頭痛、ストレス、不安などの軽減効果が期待できます。

美肌効果や髪質の改善を目的とする場合は、サプリメントを毎日継続して摂取することが重要です。ケラチンによる紫外線ダメージの保護効果を見込めるほか、グルタチオンによる抗酸化作用を常に働かせることで、肌や髪を若々しい状態に保つことができるでしょう。

また、ビタミンCを同時に摂取することで、システインの働きがより活発になります。ビタミンCにもメラニン色素の産生に関わる酵素、チロシナーゼの活性を抑制する働きがあるため、システインと合わせてより強い美肌効果が期待できます。

なお、ビタミンCをサプリメントの形で摂取する場合には、そのサプリメントにシステインが含有されているか確認してみましょう。システインのサプリメントに加えて、ビタミンCのサプリメントに含まれるシステインも同時に摂取してしまうと、システインの過剰摂取を招きかねません。

システインはその高い健康効果から、他のビタミンやミネラルのサプリメントにも含まれていることがあります。複数のサプリメントを摂取している場合には、システインを必要量以上に摂取していないか確認するようにしましょう。

 

まとめ

特定の状況下や極端な過剰摂取によっては体に害を及ぼすシステインですが、量を正しく守ってサプリメントを摂取する分には問題ありません。また日々の食事からシステインや、その合成元となるメチオニンを含む食品を摂取することでも体へのよい作用が期待できます。食事やサプリメントを正しく活用して、健康のサポートに役立てましょう。

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