今日から始める、アンガーマネジメント5選
2022年9月30日更新

執筆者

薬剤師・公認上級妊活マイスター・公認スポーツファーマシスト

牛尾 真智子

製薬会社2社で乳がん・肺がん・大腸がんなど8つの抗がん剤領域を経験。
患者様の人生に携わること・医療業界での知識と経験を生かして、医療と予防医学の懸け橋となる存在になりたいと考えています。また、少しでもお客様のお悩みに寄り添えるよう公認上級妊活マイスター・公認スポーツファーマシスト・メンタルケアカウンセラーの資格を取得。納得感のある、心が軽くなる情報を届けることで、皆様のより良い生活の一助になれるよう邁進いたします。

そもそも怒りってどんな感情?

怒りは、自分の中の「何か」が踏みにじられた心への衝撃であり、一種の「被害体験」ともいわれています。原因のない怒りは存在せず、本人にとって正当な理由があるから怒るのであり、自己(の正義)を守る正当防衛的な感情であるとも考えられます。

怒りの感情は「禁煙区域の路上で(特定の状況)、同僚が(誰)、歩きたばこをしているのが (何をしているのか)、マナー違反なので(どうして)、許せない」と表現できる、つまり説明可能な感情であるともいえます出典[1]。 
 

また、恐怖や痛みが危険回避のために必要であるのと同じように、怒りが必要という考え方もあります。怒りは「不当なことが起こった」と警告する複雑な人間の感情です。つまり全ての人が怒りを抱えるという場面に、頻繁に直面し得るということです出典[2]


ストレス社会において『怒る』ことは仕方のないこと。自分を責めすぎることはなく、存在してしまう『怒り』とどのように向き合っていくのが良いか考えてみましょう。
 

怒ると心臓病のリスクが4.7倍に!?怒りが身体に及ぼす4つの悪影響

健康的な生活を送るために運動、うつ病に続いて怒りをコントロールすることが影響を与える、という報告もあるほど怒りと体は密接に関わっています出典[3]
また、研究の結果から、怒ることで様々なネガティブな症状が現れる可能性が示唆されています。今回は「生活と密接に関係する、怒りによる影響」についてご紹介します。


1、 血圧上昇


感情の中でも『怒り』はストレスと関係し、医学的な意義も大きいとされています。怒りにより血圧は上昇し、すぐには安静レベルに戻らないことが日本人データから報告されています。問題は一瞬血圧が上がるだけではなく、下記に示す、怒りに続く心筋の負荷増大に繋がることです出典[4]

2、 心臓病・心血管イベントの増加


5000例を超えるメタ解析からは、怒ることで心臓病のリスクが4.7倍になり、怒りの爆発の直後に心筋梗塞、脳卒中など心血管イベントのリスクが高くなるという命に繋がる恐ろしい報告があります。大切な命を守るためにもアンガーマネジメントは必要不可欠といえます出典[5]

3、 睡眠の質低下


QOLにも直結することがわかっています。怒りのコントロールが不十分な人は、客観的および主観的に睡眠の質が低下するというのです出典[6]
睡眠不足で怒りっぽくなるという報告もあるため、双方は密に関係していると考えられます出典[7]

4、痛み・腰痛の悪化


更に、怒りや冷笑的な敵意を感じる人は、痛みや怪我の部位近くの筋肉を緊張させる危険性が高くなることも確認されています出典[8]
そんな怒りと敵意が、慢性腰痛の悪化に影響を与えるという情報もあり、自分で自分を苦しめてしまう。。自縄自縛は避けたいものです。 特に現役バリバリで働きたい男性にとって体の要である「腰」を大切にする意味でもアンガーマネジメントは重要なようですね出典[9]
 

アンガーマネジメントとは?

『怒り』は本人の意図とは関係なく、自動的に相手に伝染することがわかっています。自分も周りの人も気持ちよく過ごせる環境「怒りをコントロールする」状況を自ら作ることが大切です出典[10]

日本アンガーマネジメント協会によると『アンガーマネジメントは怒らないことを目指すものではなく、違いを受け入れ、人間関係を良くする心理トレーニング』と定義されていることから、まさに人間関係を円滑にする鍵となります出典[11]

誰でもできる、5つのアンガーマネジメント

一般的に、怒りの対処法として良くいわれるのは「怒りに反応しないこと」です。まず「6秒」待つことで怒りを静めるアンガーマネジメントをお勧めするサイトも多くあります。

今回は米国心理学会出典[12]が発表している「怒りを抑える」方法の一部ならびに論文で効果が確認されている「怒りと向き合う」方法を合わせて5つ紹介致します。
ご自身に合ったアンガーマネジメントはどれなのか?ぜひ心の声に耳を傾けてみてくださいね。

1、 腸の呼吸でリラクゼーション


怒っているとき、どんな呼吸をしているか?意識したことはありますか。
きっと呼吸は浅く、胸式(胸でする呼吸)になっているはずです。
たかが呼吸と侮ることなかれ。
深呼吸やリラックスできるイメージは、怒りの感情を落ち着かせるのに有用です。

ポイントは吸うときに「腸(お腹の奥の方)」から息が上がってくるのを想像すること」です。(ここでは『腸呼吸』とよびます。) 
1、 鼻から息を吸い込み、お腹が膨らむのを手で確認します。
2、 お腹の力を抜いて、口をすぼめてゆっくりと息を吐きます。 (お腹が凹むのを確かめます。)  出典[13]

この2ステップに合わせて「リラックス」「ゆっくり」などの穏やかな言葉と一緒に、まずはゆっくりと繰り返しましょう。
ご自身の呼吸と向き合い「浅くなっているな」と感じた場合は、要注意です。『怒り』を感じたときにも、深くゆっくりした呼吸を実践できるように、ぜひ毎日練習してみてくださいね。

2、自分は神やハエ?ユーモア的な発想をする 


Deffenbacher 博士曰く『怒り』の根底にあるメッセージは「物事は自分の思い通りにならなければならない!」であるそうです。ついつい視野が狭くなり「自分は正しく相手が間違っている」と相手を責めることしか考えられなくなってしまいます。

そんな怒りを感じたときに、自分自身を神または女神である、という壮大なスケールで想像してみてください。(目の前の問題は天からみると、どのくらい重大でしょうか。)
神々しい想像上のシーンに詳細に入り込むことができればできるほど、自分が不合理であることに気付く可能性が高くなるといいます。

また『怒っている自分から距離をおく』という意味では、自分を壁に止まったハエの視点から眺めることで、怒りのレベルが著しく下がったという面白い報告も出典[14]

これはふざけているわけではなく、自分が怒っていることが実際にはそれほど重要でないと理解できればこちらのもの。真剣に考えすぎずユーモアのセンスを磨いていきましょう。

3、『そうだったらいいのにな~』と要求を欲求に変換する


怒っている人は物事を要求する傾向があるといわれています。「こんなに尽くしているのだから、感謝すべきだ!」「私の意見が通るべきだ!」「私のやり方に従え!」などです。

相手にして欲しいことを望むのは当然であり、叶わない場合には傷つき、失望してしまうものです。
しかしながら怒っている人は望むだけに留まらず相手に要求し、要求が満たされない場合に、失望は怒りになってしまう、と考えられます。

怒りは、他人の心無い言葉や想定外の出来事など、自分の外側の物事だけによって生じていると思っていませんか。
実は怒りは自分の心のありようによって発生する感情であり、周りの出来事とは切り離して考えることができます。

例えば部下が自分の思い通りに仕事を進めてくれない時に生じる怒りは、部下が原因ではありません。「仕事を思い通りに進めてくれ」という自身の強い要求によって生じているのです。
実際に「思い通りに進めてくれたらいいな」程度に考えて期待値を下げておけば、部下が多少間違えても怒らないはずです。逆もしかりで、「そんな上司だったらいいのにな」と思うことで、ストレスを軽減できるはずです。

はいだしょうこさんの『そうだったらいいのにな』の歌を思い浮かべてみてください。(分からない方はお読み捨てください。。)サンタクロースを捕まえることも、ママを子供にすることもできませんが、願望を唱えることで穏やかな気持ちになれるのではないでしょうか出典[15]

普段から怒りがちでストレスになっている人は「そうだったらいいのにな~」と考える癖をつけてみるとよいでしょう。

4、自分の顔を鏡で見る


怒っている顔なんて見たくない、と思うかもしれません。人間誰しも怒った顔よりも柔らかい表情の方が魅力的ですよね。そこがポイントです。騙されたと思って鏡を手にとってみてください。今の表情が眉間に皺が寄って目が吊り上がっていたら、思わず顔を緩めたくなりませんか。
実はこの「怒った顔を緩める」ことは脳科学的に良い効果をもたらすことがわかっています。

脳の活動を分析したところ、怒った表情が落ち着いた表情に変わるのを見ると、真顔から笑顔に変わるのを見る時に近い脳の部位が活性化されることがわかりました。

更には、怒りが和らぐ表情を見ると、ご褒美や快楽に関連する部位を活性化させることも示されました出典[16]

つまり、怒っている表情を和らいだ表情にするだけで脳は想像以上ポジティブな刺激を得られるということです。 

怒ったときは、脳に快楽をあげる良いチャンスかもしれません。ぜひ鏡で自分の顔を見て、実際に体感してみてくださいね。

5、 思い切って、相手に伝える


腸呼吸をし、神になりハエになり、そうだったらいいのになで置き換え、そして鏡をみる。。この一連の流れができた貴方の怒りのレベルはきっと下がっているはずです。しかしながら一時的な関係性ではなく、怒りを含む感情は親密な間柄で抱きやすいといわれています出典[17]
「自分が大切にしていること」がきっかけで怒りを生じた場合、怒りの原因が除かれない限り、心にストレスを抱えてしまう可能性もあります。

ここで、吉報があります。怒りを恋人に吐き出す出来事がひとつ増えると、別れる確率が 0.76 倍に抑えられる傾向があり、交際継続が長くなるというのです出典[18]。親密な関係にとって、怒りという負の感情であっても、隠すよりは明かした方がメリットとなることが考えられます。ただし、怒りといっても過激に感情をぶつけるのではなく、比較的穏やかに表現された怒りの場合にのみ成立するという点には注意が必要です。

一方的に言葉をぶつけてしまうと、関係が悪化することが多いようです。
相手の気持ちを考えながら、怒っている思いを伝えると、お互いを理解しようという意識が働きます。そうすることで、相手との関係を改善もしくは保つためにはどうすれば良いか?と前向きになると考えられています出典[19]

『怒り』は第二感情とよばれるため、怒りの奥にある「心配したこと、不安な思い、悲しかった気持ち(素直な気持ち=第一感情)」と向き合い、相手の心に寄り添いながら伝えていくことが大切です。
勿論、すぐに問題解決に導かれるケースばかりではないので、根気よく伝えていくことや一緒に妥協案を見出し、怒りを大切な方との絆を深めるきっかけにしましょう。
 

最後に大切なこと

如何でしたでしょうか。ご自身に合った対処法を試す中で、怒りそのものをなくすことはできない、と認識することも大切です。人生は、欲求不満、痛み、喪失、そして不可抗力の事態で溢れています。しかし、そのような出来事が自身の心に影響を与える方法を変えることはできます。
怒りをコントロールすることで、長い目で見れば『怒り』の状況により自ら不幸の道を選んでしまうのを防いでいるとも考えられます。

最後までお読みくださりありがとうございます。穏やかな毎日を送ることで、貴方にとって心身共に健康な人生が続きますように。
 

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