βアラニンとは?3つの効果と適切な摂取方法
2022年10月31日更新

執筆者

管理栄養士

鈴木 亜子

大学卒業後、主に医療機関に勤務。チーム医療の一端を担い、生活習慣病や腎疾患(透析療法や腎移植後)などさまざまな疾患の栄養管理に取り組む。得意分野は糖尿病で、糖尿病透析予防や特定保健指導(糖尿病重症化予防)なども担当。現在は豊富な栄養相談経験を活かし、健康に関わる分野のライターとして活動中。「なるほど!」と思っていただける、分かりやすい記事執筆を心がけている。

βアラニンとは

たんぱく質を構成するアミノ酸の一つである「アラニン」には「αアラニン」と「βアラニン」が存在します。ここでは、この2つのアラニンの違いや特徴も含め、体内での働きなどについてご紹介します。

1.どんな栄養素?

まずはアラニンについて見ていきましょう。たんぱく質を構成する「非必須アミノ酸」の一つであるアラニンは、筋肉などに含まれるたんぱく質が分解されることでつくられるアミノ酸です。

アラニンのうち、αアラニンはたんぱく質を構成する成分としてあらゆる動植物の細胞に存在しています

一方、たんぱく質の構成成分とはならずに動物の骨格筋内に存在しているのがβアラニン。βアラニンの体内での働きについては、次の章で詳しく解説します。

 

2.体の中でどんな働きをする?

βアラニンは以下のような物質を構成しています。

  • パントテン酸(ビタミンB群の一つ)
  • コエンザイムA(CoA:生体内の多くの代謝に必要とされる補酵素)
  • カルノシン・アンセリン(総称イミダゾールペプチド:疲労軽減などの効果が期待される成分)

たんぱく質を構成しているアミノ酸ではありませんが、体の調子を整えたり筋肉に良い効果をもたらしたりする成分がβアラニンなのですね。主な効果についてはこの後の章で詳しくご紹介します。

参考までにαアラニンの体内での働きもご紹介しておきましょう。αアラニンは筋肉のたんぱく質が分解されることで生成され、血液に乗り肝臓へ移動しグルコース(糖)に変換されます。つまり、αアラニンは糖に変換されることでエネルギー源として利用されるのです。また、αアラニンにはアルコールの代謝に関与したり肝臓を保護したりといった作用もあります。

 

3.不足するとどんなリスクがある?

アラニンは体内で合成可能であることや、動物の骨格筋中に含まれており肉や魚などの食品からも摂取しやすいことを踏まえると、不足することはまれであると考えられるでしょう。

アラニンがどんな食品に含まれているのかについては、次の章でご紹介します。

 

4.どんな食材に含まれている?

ここではアラニンを含む食品をご紹介します。アラニンは肉類や魚介類、豆類などに多く含まれています出典[1]

【アラニンを多く含む食品(可食部100g当たり)】

食品名

加工状態など

アラニン含有量

かずのこ

2,100mg

たらこ

1,800mg

油揚げ

1,100mg

めばちまぐろ

赤身/生

1,500mg

かつお

春獲り・秋獲り/生

1,400mg

しろさけ

1,400mg

ごまさば

1,400mg

鶏ささみ

1,400mg

牛リブロース

赤肉/生

1,300mg

鶏むね肉

皮なし/生

1,300mg

鶏もも肉

皮付き/生

1,200mg

きな粉

1,700mg

鶏卵

全卵/生

720mg

納豆

690mg

プロセスチーズ

680mg

生揚げ

500mg

おから

290mg

 

βアラニンに確認されている作用や効果

βアラニンは筋肉や運動能力に関する効果が期待されている成分です。具体的にどのような効果なのか、研究報告などを元に詳しく見ていきましょう。

1.筋肉疲労を抑制

筋肉が酸性に傾くことは筋疲労の原因の1つであると考えられています。この筋肉内のpH調整に重要な役割を果たしているのが、アミノ酸「Lヒスチジン」とβアラニンから合成される物質「カルノシン」です。カルノシンは骨格筋や脳に多く存在しています。

βアラニンの補給は筋肉中のカルノシン濃度を高めることで、強度の高い運動中の疲労を軽減し、パフォーマンスを引き出す可能性が示唆されています。βアラニンの補給による運動パフォーマンスに関する研究では、高強度の運動を複数回行った場合および60秒以上続く運動を1回行った場合のパフォーマンスの向上が証明されています出典[2]

男性18名を対象とした試験において、1日当たり6.4gのβアラニンを投与しつつ6週間高強度インターバルトレーニングを行ったところ、反復スプリントのパフォーマンスが向上しました。これはβアラニンの補給により筋肉のカルノシン含有量の改善が誘発され、反復スプリント中の筋疲労の軽減に寄与したことが示唆されます出典[3]

日頃の趣味としてスポーツに励む方から本格的なアスリートのサポートとして、βアラニンが有効である可能性があるでしょう。

 

2.有酸素運動の能力向上

βアラニンは、高強度の運動パフォーマンスを高める効果が期待される注目の成分ですが、比較的長時間行える有酸素運動のパフォーマンス向上にも役立つことが報告されています。

12名の男性持久系スポーツアスリートに対し低用量(体重1kg当たり30mgおよび高用量(体重1kg当たり45mgのβアラニンを投与し、6分間の最大有酸素性速度での走行距離を測定するテストを行ったところ、投与前と比較し低用量・高用量どちらも走行距離が長くなりました。なお低用量と高用量の間に有意な差は認められませんでしたが、30mgよりも45mgのほうが実質的な効果を示したと考えられます出典[4]

健康な成人16名に1日当たり5gのβアラニンを23日間摂取させ、10km走のタイムとその後の乳酸濃度について調査した結果、10km走のタイムはβアラニンを摂取した群で大幅に短縮しました。さらにβ-アラニン群は10km走後の血中乳酸濃度が低かった。つまり継続的にβアラニンを摂取することは、血中の乳酸濃度を低下させ有酸素運動のパフォーマンスを向上させると考えられます出典[5]

有酸素運動といえば、ダイエットや生活習慣病の改善効果も期待できる運動です。体重を減らしたい、血糖値が高め、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪が高めといった悩みを抱えている方も、βアラニンを十分に補給することで有酸素運動に取り組む時間を延長できる可能性が高まりそうですね。

 

3.ネガティブな気分を改善する可能性

βアラニンを補給することで、脳のカルノシンおよび脳由来神経栄養因子 (BDNF) を増加させ認知機能を改善したり、老化・神経疾患・肉体労働に伴う不安や抑うつ症状を緩和したりする可能性が示唆されています。

24時間の模擬軍事作戦の前の健康な男性を対象に、1日当たり12gのβアラニンを14日間補給した場合の認知機能・気分・循環BDNF濃度に及ぼす影響を検討しました。
その結果、βアラニンを補給した群とそうでない群で認知機能または BDNF濃度の測定値に変化は見られませんでした。しかし、βアラニンを補給した群では主観的な抑うつ感が大幅に減少し、補給しない群では活力感が大幅に減少しました。βアラニンの補給は、認知機能や循環BDNFに影響を与えているようには見えませんが、健康でレクリエーション活動に積極的な男性の、模擬軍事作戦前の気分の落ち込みなどの症状出現を緩和する可能性があると考えられます出典[6]

βアラニンを補給することは、精神的負担の多い職業に就く方などの日々の活力を保つことに役立つ可能性があります。
 

βアラニンの摂取方法や注意点

βアラニンには健康に良い影響を与える成分ではありますが、摂取するに当たっての注意点などはあるのでしょうか。
ここではβアラニンの摂取方法や副作用、より有効に摂取する方法などについて解説します。

1.健康上限摂取量と副作用について

非必須アミノ酸であるアラニンには、1日当たりの摂取必要量や上限量などの目安はなく、重大な副作用も現時点では報告されていません。

しかし一度に800mgを超える量のβアラニンを摂取すると、感覚異常が出現する場合があることが知られています出典[7]

この感覚異常は一般に「βアラニンフラッシュ」と呼ばれ、摂取から数分程度で手のひらなど皮膚にピリピリとした感覚が現れます。βアラニンフラッシュは一時的なものであり、健康上問題ありませんが、症状が気になる場合は少量ずつ複数回に分けて補給することで防げるとされています。

 

2.理想の摂取方法やタイミングはある?

運動パフォーマンスの向上を目的とした場合、以下のような摂取方法及び摂取量が効果的であることが示唆されています出典[7]

4週間継続して1日当たり4~6gのβアラニンを補給すると、筋肉のカルノシン濃度を大幅に増加させ、筋肉疲労を抑制する。少なくとも2~4週間、1日当たり4~6gのβアラニンを毎日補給すると運動パフォーマンスが向上する。

また持久力系競技では、運動の60分前にβアラニンを補給することでパフォーマンスの向上が確認されたという研究報告もあります出典[4]

上記以外にも、βアラニンに関するさまざまな研究成果が報告されていますが、今後の研究に期待される部分もあるようです。
 

まとめ

非必須アミノ酸である「アラニン」の種類の一つがβアラニン。βアラニンはたんぱく質の構成成分とはなりませんが、パントテン酸やコエンザイムAなど人体に欠かせない成分を構成しています。

筋肉疲労の抑制や、認知機能の改善および不安感の緩和などさまざまな効果が期待されているβアラニンですが、特に運動パフォーマンスの向上効果のメカニズムは徐々に明らかにされつつあります。日々トレーニングに励む方などは、βアラニンを上手く取り入れてみてはいかがでしょうか。

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