執筆者
株式会社アルファメイル
NP+編集部
「オトコを科学する」をキーワードに男性の悩みや課題の解決を科学的根拠をもってサポート。運動や睡眠、栄養など、健康に関する正しい知識を提供するためにコンテンツを製作中。
眠くなる2つのメカニズム
眠るためには十分な「眠気」が必要です。そもそもひとはなぜ眠くなるのか、「眠気」の正体を見ていきましょう
概日リズム
多くの生物の活動は地球の24時間周期の昼夜変化に影響を受け、体温やホルモン分泌など基本的な体の機能がこの周期に同調します。これをおおむね一日周期という意味で「概日リズム」といいます。意図せずとも概日リズムによって毎日ほぼ同じ時間帯で生活できるのです。
暗くなり夜になると眠くなるのもこのためです。睡眠ホルモンのメラトニンが増加し、身体の中心の温度である深部体温が低下します。
概日リズムと睡眠の関係については、いまだに謎も多いようです。これまでの研究では概日リズムの乱れは睡眠リズムを乱し、がんのリスク、神経疾患、気分障害に関連しているとの報告があります出典[1]出典[2]。
現代社会では時差のある移動や人口光が原因となり、概日リズムの乱れが危惧されます。睡眠の質を保つには概日リズムを正しくコントロールすることが重要です。
睡眠圧
睡眠の欲求の強さを「睡眠圧」と呼びます。起き続けていると睡眠圧がたまっていき、眠ることによって解消されます。十分に解消されるまで睡眠は続きます。徹夜明けの時に通常より強い眠気を感じるのは、この睡眠圧のためです。睡眠圧が高いほど深く眠れるといわれています。
睡眠圧のメカニズムは完全に明確にはなっていませんが、アデノシンという物質の増加が1つの可能性として考えられています出典[3]。アデノシンが脳内の受容体に結合することで、覚醒作用のある神経伝達物質の放出が抑えられ、眠くなると言われています。アデノシンはひとの体のエネルギー源であるATPの代謝産物のため、運動等でエネルギーを使うほど、体内に蓄積されていきます。
眠くない時に、どんなに頑張っても眠れないのはアデノシンが足りていないからかもしれません。睡眠圧を高めるには体が疲れることが必要。睡眠と覚醒は切っても切り離せません。起きている時間を充実させ、睡眠圧を十分に高めてぐっすり眠りましょう。
睡眠の質低下につながる具体的原因
残念ながら、私たちの周りには睡眠の質を低下させる原因が多く存在しています。意識して対処することで睡眠の質を守りましょう。
メンタルヘルス
ストレスや不安を抱えていると交感神経が高ぶり、睡眠の邪魔になってしまいます。睡眠にはリラックスすることがとても重要。日本でメンタルの疾患は年々増加傾向にあります。思い当たることがある場合は、出来るだけ原因を取り除くようにしてみてください。
- 仕事や学校などの人間関係によるストレス出典[4]:睡眠の質の低下によってさらなるストレスを招くケースが多い。何かトラブルに直面した時は相談にのってもらう、問題解決を手助けしてもらうことも大切。
- うつ病出典[5]:睡眠障害に悩む患者の4割程度は精神疾患を抱えている。また睡眠障害がうつ病発症やメンタルの不調を予測する要因にもなるので早期に対応を。
- PTSD出典[6]:トラウマから発症するPTSD(心的外傷後ストレス障害)は睡眠障害を伴うことがある。眠ること自体が不安になる、途中で起きてしまうなどつらい症状があげられる。
日中の生活リズム
睡眠は日中の生活リズムに大きく影響されます。不規則なスケジュールやある種の習慣は体内時計を乱し、睡眠の質が低下します。忙しいなかでも規則正しいリズムの生活を工夫してみてください。
- 睡眠リズムの変化による概日リズムの乱れ出典[7]:シフトワークで昼夜が逆転したり不規則になる、出張や旅行による時差ボケ等。
- 日中しっかりと光を浴びていない出典[8]:光を浴びないと体内でセロトニンという物質が作られない。すると眠りを誘うホルモンのメラトニンが生成、分泌されなくなる。
- 長時間またはイレギュラーな昼寝出典[9]:30分を超えると深い睡眠に入ってしまうため、目覚めたときに眠気がとれない、夜に寝れなくなるなどの悪影響がある。
- 寝室を睡眠以外の目的で利用する:良い睡眠のための寝室はリラックスできることが大切。テレビを見たり、仕事をすると脳が起きる場所だと錯覚することになる。
病気や怪我
痛みや不快感で目覚めてしまう経験は誰しもありますよね。ただし不眠が病気のサインの場合もありますので、長く続く場合は専門医に相談しましょう。
- 腰や首等の痛み:身体的な痛みが気になって眠れない。病気やケガだけでなくデスクワークからくる肩や首のコリや痛みも睡眠を妨げる。
- 糖尿病による末梢神経の痛み、頻尿、血糖値の急激な変化出典[10]:ピリピリとした痛みやのどの渇き、トイレで起きてしまうことで睡眠障害を引き起こす。逆に寝不足も血糖値に悪影響を与える。
- レストレスレッグ症候群出典[11]:夜布団に入ると脚がむずむずする。特定の原因がないこともあり、ふくらはぎや太腿部、足首などに症状が現れる。
- 認知症/アルツハイマー等の脳機能系の病気出典[12]出典[13]:認知症は体内時計を調節している神経系に影響を及ぼすことで睡眠障害を併発しやすい。アルツハイマー型認知症では夜間のメラトニンが減少する。パーキンソン病では入眠障害や夜間に何度も目が覚めるなどの症状を訴える患者が多い。
- 呼吸器系や神経系の病気出典[14]:大きないびきをかき、睡眠中に何度も呼吸が止まる止まる睡眠時無呼吸症候群は睡眠を阻害するだけではなく重大な疾患につながる可能性がある。
- かゆみ等の不快感出典[15]:かゆみは夜になると強まる傾向がある。気になって睡眠中に無意識に掻くと皮膚を刺激してさらにかゆみが強まる。
加齢
加齢による心身の変化や、自身の生活環境の変化などで睡眠障害になることがあります。不眠は病気のリスクを高めるので、高齢者はより早めの対処が大切です出典[16]出典[17]。
- 血圧や体温、ホルモン分泌の変化:遺伝子の影響とメラトニンの分泌量の減少により、加齢は体内時計を老化させ睡眠と覚醒のリズムを乱す。高齢者が早寝早起きになるのはこのため。
- 睡眠サイクルの変化:深い睡眠のノンレム睡眠が減り、レム睡眠が増えることで眠りが浅くなる。夜間に目が覚めたり、疲れがとれにくいと感じることも。
- 病気やケガの増加:加齢に伴い治療のために医薬品の利用が増える。薬を飲み始めてから不眠が始まった場合は、その副作用が原因の場合も考えられる。
- 社会との交流の低下:定年や引退などで社会とのつながりが減ることでメンタルヘルスが悪化するケースがある。
医薬品による副作用
以下のような薬を併用している場合は、副作用により睡眠の質が低下してしまう可能性があります。お医者様と相談して薬の種類を変更するのも1つです。
- 降圧剤
- 抗うつ薬
- 抗ぜんそく薬
- その他副作用として日中に眠気を誘う事で概日リズムを乱す医薬品
就寝前 or 就寝中の活動や環境
睡眠に悪影響を与える環境は遠ざけることが重要です。さらに就寝前の習慣も知らず知らずのうちに眠りの邪魔をしているかもしれません。
- 就寝前に一定量以上の食事をする出典[18]:寝る直前にしっかりとした食事をとると、消化が間に合わず睡眠の質を下げる。
- スマホやPC等ブルーライトを浴びる出典[19]:ブルーライトのような強い光は睡眠ホルモンのメラトニンを減少させ、覚醒を促す。またデジタル機器の使いすぎは脳を披露させ、体は疲れていても眠れなくなる。
- 寝る直前まで煌々と明るい環境で過ごす出典[20]:同じく光により入眠が妨げられる。さらに目を閉じて寝ている時でも部屋が明るいと光を感知するため、眠りが浅くなり途中で起きることに。
- 就寝前のカフェイン/アルコール/喫煙出典[21]出典[22]出典[23]:お茶やコーヒーに含まれるカフェインは興奮作用を引き起こす。アルコールは寝付きはよくなるが睡眠の質を下げ、利尿作用によりトイレで起きることに。煙草に含まれるニコチンには鎮静と覚醒の両方の作用があるが覚醒作用のほうがより強く表れる。
- 騒音出典[24]:不快に感じる音は大きなストレスになる。入眠と熟睡を妨げ、睡眠時間を減少させてしまうことになる。
- 就寝前の運動による神経の活性化出典[25]:激しい運動は交感神経が活性化し、目が冴える。また入眠には運動によって上がった体温が十分に下がる時間が必要。
睡眠の質を高める4つの要素と具体的な行動
睡眠の質を低下させる原因がおわかりいただけましたか?ここからは実際にどのような行動をすればよいか、4つの項目で紹介します。
要素①:就寝前のルーティン
まずは眠る前におすすめの、リラックスした心と体の状態を維持するためのルーティンです。概日リズムを整えて眠りの質を上げましょう。
照明の強さを抑える
眠る直前まで明るい部屋で過ごしたりしていませんか。何気ないその習慣が睡眠の質を下げているかもしれません。
睡眠を含む様々な概日リズム機能を調節することが知られている神経ホルモンのメラトニン。そのメラトニンは光によって分泌が抑制されてしまいます。目から入った光が直接作用するため、照明を抑えることでメラトニンの自然な分泌をサポートし、概日リズムを整えることができます出典[26]。
眠りに入る前から部屋の照明をほの暗くしておきましょう。目を閉じていても光を感知するため就寝中も暗くしたままにしておくことをおすすめします。
脳を使う行動を控え、リラックス
強い光は概日リズムを乱しますが、特にスマホやパソコンなどが発するブルーライトは要注意。目で見える光の中で最も波長が短く強い光で、網膜まで到達するといわれています。つまりスマホなどの使用はメラトニンを減少させてしまうことに。さらに鬱を引き起こすこともあり、その結果睡眠障害を誘発します。
大学生を対象にした実際の調査では、スマートフォンの使いすぎがうつ病、不安、睡眠の質と関連している可能性があることが報告されています出典[27]。
またデジタル機器の使いすぎは脳を疲労させ、体は疲れているのに眠れない状況を招く場合もあります。ベッドでスマホを見ることが習慣になっていませんか?睡眠のためには寝る前や長時間の使用は避けるようにしましょう。
就寝6時間前はカフェインを控える
コーヒーやお茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインには覚醒作用があることがよく知られていますね。では睡眠に影響を与える時間帯はいつでしょうか?
2013年にウェイン州立大学で行われた研究では、就寝時刻の 6 時間前に摂取したカフェインが睡眠に重大な影響を与えることを示唆しています出典[28]。つまり就寝時刻の最低 6 時間前からカフェインの使用を控えることが、睡眠にとって望ましいということです。
この研究からも就寝6時間前はカフェインを控えたほうがよさそうです。長いと感じるひともいるかもしれません。できれば夜間は神経の興奮を静め、リラックスできる飲み物がお勧めです。
アルコールやタバコを控える
アルコールを摂取することで脳の活動は低下するため、寝付きはよくなるでしょう。しかしその後、アルコールを代謝する際に脳は活性化するため、睡眠リズムが乱れ、疲労が取れにくくなってしまいます。またアルコールの代謝によりアセトアルデヒドという物質が生じますが、これには覚醒作用があるため浅い眠りしか得ることができなくなります。就寝前の飲酒は避け、アルコールに頼らず入眠できるようにしましょう。出典[29]。
タバコに含まれるニコチンも同様に覚醒作用を持ちます。交感神経が優位になり興奮状態になってしまいます。実際に喫煙の度合い別にノンレム睡眠中の脳波を測定した実験があり、喫煙者に深い睡眠時にみられるデルタ波の減少が認められました出典[30]。
眠るころにはアルコールが抜けるように飲酒は眠る2〜3時間前までに終わらせるといいでしょう。ニコチンの効果は1〜2時間続くといわれています。翌朝気持ちよく目覚められるように、就寝前のアルコールや喫煙は控えましょう。
就寝4時間前から本格的な食事を控える
寝る前にがっつり食べると、ベッドに入ってからも胃もたれや不快感を感じることがありますね。忙しさで食事の時間がずれ込んでしまったり、空腹で眠れないからと言って直前に重い食事をすることはおすすめできません。
食物を消化する際の胃や腸は忙しく活動することになり、その状態では脳や体を休めることができないため眠りが浅くなってしまいます。人間の身体は寝ているときでも消化活動が停止することはないのです。
2011年にブラジルで行われた研究では、夜間帯の食事摂取は健康な人の睡眠の質に悪影響を及ぼすことと相関していると結論づけています出典[31]。
本格的な食事は就寝前4時間前に済ませ、就寝直前は避けてください。寝るまでの時間を十分取れない場合は消化に良いものを選びましょう。
就寝90分前に入浴/シャワー
毎日の入浴をうまく利用して睡眠の質を上げましょう。それには就寝90分前までに入浴をすませることを心がけてください。
入眠のためには深部体温が下がることが重要です。深部体温とは脳や臓器など体の内部の温度のことで恒常性で一定に保たれており簡単に変動しませんが、入浴は体温を変動させる有効な手段になります。40℃のお湯に15分程度入浴すると、0.5℃上がった深部体温は約90分で下がります出典[32]。ベッドに入るにはこのタイミングがベストというわけです。
入浴が寝る直前になってしまう場合は、生活スケジュールを見直すことも大切です。寝るまでの時間が取れないときは体温が上がりすぎないようにするためシャワーですませてもいいでしょう。
就寝1~2時間前は水分補給を控える
就寝1~2時間前に利尿作用のある飲み物を大量に飲むことは避けましょう。
夜間にトイレに行きたくなり目が覚めてしまうことになります。また照明を点けたりすることですっかり目がさえ、再度眠ることができなくなってしまう場合も。
利尿作用がある飲み物は、覚醒効果で知られるカフェインを含むお茶やコーヒー。またアルコールにも強い利尿作用が知られています。野菜やフルーツに含まれるカリウムも塩分を尿として体外に出す働きがあるため、過剰に摂取しないようにしましょう。
ただし就寝前にコップ一杯程度の水を飲むことはおすすめ。特に睡眠中の脱水が懸念される夏などは適切な水分補給をしてください。
要素②:最適な睡眠環境作り
次に紹介するのは睡眠に適した環境です。外的要因の中でも主に温度湿度、音、光が睡眠の質に大きな影響を及ぼすことが知られています。一日の疲れを癒してくれる寝室や寝具を整える参考にしてみてください。
室温の最適化(室温26度/湿度50~60%)
入眠に深部体温が深くかかわっていることは前述のとおりです。当然のことながら体温は室温や寝床内の温度に影響を受けます。寝苦しい、眠りが浅いと感じた時は、寝室の温度設定のせいかもしれません。
理想の寝床内の温度は32~34℃で、そのためには室温26℃湿度50~60%が最適といわれています出典[33]。部屋が暑すぎても寒すぎても睡眠の質を低下させてしまいます。
日本は四季があり温湿度も大きく変動するため、室温コントロールが必須です。温湿度環境に気を配り、空調などをうまく利用して快適な寝室をつくりましょう。
屋外の光を遮るカーテン類利用
現代社会は室内照明だけでなく、夜間営業の店舗照明や街灯、車のヘッドライトなどの光があふれています。近年ではLEDが使われることが多く、青色波長の成分が多く含まれています。これがブルーライトです。
住んでいる環境によっては屋外の光に影響されることもありますよね。強い光は概日リズムを乱し睡眠に悪影響を及ぼしますので、これを避けるためにはカーテンやブラインドの使用が効果的です。
普通のカーテンでは不十分な場合は遮光できる機能のカーテンも販売されています。寝室の暗さを保ち、安眠できるようにしましょう。
部屋の色は蛍光色ではなく薄紫
寝室のインテリアの色選びに気を配ってみるのもおすすめです。
色は視覚から脳に作用することが知られており、青や紫は気持ちを穏やかにさせる効果があります。鮮やかな赤や黄色などの派手な色使いには興奮作用があり、落ち着いて眠れなくなる可能性があります。
学生寮の壁紙を複数の色に変更した実験では、青色の壁紙をみた時に脳波が最も落ち着いていたと報告されています出典[34]。
一口に青系の色といっても濃い紺色やスカイブルー、グレーがかったものなど様々あります。壁紙やカーテン、寝具などに好みの色を取り入れてみてはいかがですか。寝室は心地よくリラックスできる空間にしましょう。
通気性に優れた寝具の使用
マットレスを選ぶときにこだわっているポイントはありますか。ぐっすり眠るために通気性も重視してみてはいかがですか。素材や構造、硬さで通気性は変わります。
通気性に優れたマットレスは温度や湿度を調整し、深部体温を下げてくれます。寝がえりのしやすい硬さのものは、体とマットレスの接触面積が減ることで結果的に蒸れを防ぐことに。柔らかすぎるマットレスは体との密着度が上がり通気性が悪くなりがちです出典[35]。
素材や弾力性など様々なマットレスが販売されています。特に日本の夏は高温多湿ですので、蒸れ感のない寝心地のものを選ぶことをおすすめします。吸湿性に優れたシーツやパッドも一緒に使うことで寝苦しさを追放してください。
自身の体に合った寝具の手配
起床時に疲れが取れていない、コリがひどいなどの場合は寝具を見直してみてはいかがですか。体の状態はひとそれぞれ。自分の体に合った寝具や寝間着を選ぶことが重要です。
マットレスの硬さが適切ではないと痛みを引き起こす原因になりかねません出典[36]。一方で体に合ったマットレスは痛みや不快感による睡眠の質の低下を防止してくれます。
またパジャマと睡眠の関連を調査したところ、素材や形の違いによる体温調節が入眠に影響し、さらに自律神経やホルモン分泌に影響を及ぼす可能性があるとの報告が出典[37]。身体を締め付けないデザインも重要です。
いずれも体に直接触れるものなのですので、心地よく感じられることが大切です。
防音や騒音対策をする
不快な騒音によるストレスは睡眠障害を引き起こす可能性があります。目が覚める音量には個人差がありますが、低レベルのノイズでも睡眠の質を悪化させる場合も。
騒音が多い小児病棟でアクチグラフという睡眠と覚醒のリズムを調べることのできる機器で計測を行った調査があります。病院での睡眠時間は家庭時に比べて、子どもで平均62.9分、親で平均72.8分も少ない結果になりました。結論として騒音レベルの高い小児科病棟では、子どもとその母親は睡眠の質が低いということです出典[24]。
できる限り静かな環境で眠りたいものですが、騒音を避けることが難しい場合は防音対策をしましょう。騒音の大きさにもよりますが、ノイズキャンセリングイヤホンや遮音カーテンは効果的です。
ファンの回転音や睡眠用に販売されているホワイトノイズマシンの音は生活音や騒音を遮断するのに役立ちます。
要素③:日中の行動
起きているときの行動が睡眠の質を大きく左右します。規則正しく過ごすことで睡眠と覚醒のリズムを整え、体が心地よく疲れて自然に眠気が起きるように日中しっかりと活動してください。
日中はしっかりと光を浴びる
屋外の太陽の下で過ごすとよく眠れた、という経験はありませんか。日中、しっかりと光を浴びることが深い睡眠につながります。
太陽光を浴びることで概日リズムを整える効果が期待できます。光を浴びると神経伝達物質のセロトニンが分泌しメラトニンを生成します。メラトニンは概日リズムを整え、夜間になると睡眠を促します。
窓のないオフィスで働く人と窓のあるオフィスで働く人の睡眠状況を比較した研究では、窓があるオフィスで働く人の方が、身体活動が多い傾向があり、主観的な睡眠の質が改善されたことが報告されています出典[38]。
1日30分程度日光を浴びることをおすすめします。曇りの日は時間を長めに取り、室内にいる場合は窓辺で過ごしましょう。
定期的に運動をする
良い眠りのためには、定期的に運動をとり入れましょう。
日中に最大酸素摂取60%程度の運動を1時間程度(軽いジョギング/活発なウォーキング)行うと睡眠の質が向上し、また入眠障害の原因となるストレスの緩和にも効果的といわれています。別の研究では軽い運動によって睡眠の質は改善されなかったが、最大心拍数の 65 ~ 70% (中程度の強度) で運動の場合、睡眠の質が改善したとの報告が出典[39]。中程度の強度の運動は会話することができなくなる程度のきつさです。
運動は心身ともにリフレッシュできる方法としておすすめ。程よい疲れが心地よい眠りに誘ってくれるでしょう。ただし運動は夕方までに終わらせて、就寝前に頑張りすぎて眠気が飛んでしまわないようにしてください。
寝室は睡眠以外に使用しない
寝室は睡眠以外の目的で使用しないようにすることが理想です。近年の事情から、寝室をワークスペースにしていませんか?
ぐっすり眠るための環境は、心身ともにリラックスできる場所であることが大切です。「ベッド=休息の場」と脳に理解させることも睡眠の質の向上に重要。
オンオフの切り替えが難しいと睡眠の質を低下させるだけでなく、作業効率も下がってしまうかもしれません。できる限り寝室で仕事や勉強をしたりすることは避け、少なくともベッドの上で日中から作業をしたり、スマホを見続けたりしないように心がけましょう。
長いorイレギュラーな昼寝は避ける
昼間にどうしても眠気を感じる場合は短時間の昼寝がおすすめ。疲れが軽減しパフォーマンス回復に有効です。眠気を無理に我慢するよりも日中の活動が充実します。
睡眠のリズムを乱さないためにも、昼寝は30分以下に抑えてください。30分以内であれば深い睡眠に入る前に目が覚めるので、目覚めもよく夜間の睡眠にも影響しません。昼寝をする時間帯も概日リズムによって自然に眠気に襲われる午後がいいといわれています。
くれぐれも長時間の昼寝やイレギュラーな時間帯の昼寝は避けてください。眠気に負けてリズムを崩す行動は、さらに睡眠の質を落とすことになります。
要素④:計画的な睡眠スケジュール
生活リズムは一人ひとり異なるため、自分にあった睡眠計画の設計が大切。そもそも概日リズムにより、夜間は体温が低下し睡眠に適した状態です。それを踏まえて睡眠と覚醒のリズムを整えることが質の良い睡眠への近道です。
毎日決まった時間に起床/就寝
毎日、できるだけ決まった時間の起床と就寝をこころがけてみてください。
実は日によって異なる時間に起床や就寝する事は、ひとの体の仕組み的に非常に難しく負荷がかかっているのです。
不規則な生活では睡眠の質が下がり、放っておくと「概日リズム障害」を引き起こし日常生活に支障をきたすこともあります。突然強烈な眠気に襲われ、運転中には危険を招く可能性も。
もし寝る時間が少しずれてしまっても、同じ時刻に起床して光を浴びることをおすすめします。そうすることで体内時計を乱さないようにすることが大切です。
睡眠のための時間を確保
個人差はありますが、睡眠時間が7~9時間確保できるような生活を送る事が理想です。これは多くの研究でも報告されています。寝ている時間は疲れをとっているだけではありません。
一晩のうちにレム睡眠と深い睡眠であるノンレム睡眠を4~5 回くり返す必要があるといわれています。睡眠中は体のメンテナンスをし、さらに脳の老廃物を除去しリセットさせる効果があります。そのほか神経をやホルモンを整える大切な時間です。
ただし睡眠時間は、短すぎることはもちろんですが長すぎてもよくありません。睡眠のために生活スケジュールを見直し、毎日同様の時間を確保するようにしましょう。
生活リズムを変えるときは徐々に
生活リズムを変えるときは、時間を徐々に変えていってください。
夜勤等強制的なリズム変更がある場合は難しいですが、出来れば毎日最大でも1~2時間程度、就寝/起床時間をずらしていくことが理想です。
例えば休日の極端な寝だめはかえって睡眠のリズムを崩し、睡眠の質を悪化させることになります。この状態はソーシャルジェットラグと呼ばれ、一度崩したリズムをもとに戻すのは簡単ではありません。
休日たっぷり寝たはずなのに休み明けに疲れが残っていたり、日中眠気に襲われることがあれば要注意。睡眠の時間差(ラグ)を作らないようにすることが大切です。
まとめ
睡眠の質を深めるためのメカニズムや具体的な方法をお伝えしてきました。現代は夜遅くまで行動することができ、仕事は忙しく楽しみも多いですよね。これは睡眠にとっては過酷な状況といえます。しかし深い眠りによって十分に休息をとることができれば、仕事や作業の効率化を生みスケジュールに余裕が生まれるかもしれません。
出典
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