監修者
睡眠健康指導士/ロジスティクス管理3級
室井優作
心と体の健康の要となる睡眠のスペシャリスト。眠りに悩みを抱える方のコンサルティングを日々行っている。プロボクサーを目指しており、運動やダイエットに関する指導も可能。おすすめの寝具はウェイトブランケット。
執筆者
株式会社アルファメイル
NP+編集部
「オトコを科学する」をキーワードに男性の悩みや課題の解決を科学的根拠をもってサポート。運動や睡眠、栄養など、健康に関する正しい知識を提供するためにコンテンツを製作中。
寝る前のスマホが眠りにNGな理由3つ
睡眠に良くないと言われている、寝る前のスマホ。どんなことが睡眠に影響しているのでしょうか?ここでは、寝る前のスマホが眠りにNGな理由を3つ解説します。
1.ブルーライトが入眠ホルモンを減らしちゃう
寝る前のスマホが眠りにNGな理由の1つ目は、スマホから出ているブルーライトが入眠ホルモン「メラトニン」を減らすことです。
ブルーライトとは、人の目に見える光の中に含まれている、紫外線の次に波長の短い光です。ブルーライトは非常にエネルギーが強く、目の奥まで届きます。太陽光の他に、LEDを使用したパソコンやスマートフォンなどの液晶画面からも放射されています。
目から入ったブルーライトを感知するのは、網膜です。網膜が光を感知すると、メラトニンの分泌が抑えられるのです。
昼間、眠くならないのはメラトニンの分泌が抑えられているためです。ブルーライトを夜に浴びると脳は昼と判断して、睡眠を促すメラトニン分泌を抑制し、そのために眠れなくなってしまうのです。
2.スマホ操作が脳を覚醒させる
寝る前のスマホが眠りにNGな理由の2つ目は、スマホ操作が脳を覚醒させることです。
あまり興味のない授業中に気づいたらウトウトしていた…という経験がある方も多いのではないでしょうか。脳が退屈を感じていると、自然に眠くなってしまうのが人間です。
授業中とは反対に、スマホの操作は自分が興味のあることを調べたり、読んだりするので、それ自体が刺激になり脳を覚醒させます。脳が覚醒すると、夜でもますますやる気が出て、スマホで検索する…という事態に陥りがちです。
したがって、就寝前はブルーライトの影響だけではなく、操作で脳が覚醒しないためにも、スマホ操作は避けた方が良いのです。
3.寝室を覚醒する場所と脳が勘違いしてしまう
寝る前のスマホが眠りにNGな理由の3つ目は、寝室を覚醒する場所と脳が勘違いしてしまうことです。
梅干しを見ると自然に唾液が出てきませんか?梅干しを見て自然に唾液が出てくるのは、過去に梅干しを食べたことがあり、その時に「酸っぱかった」ということを体が覚えているからです。
このように経験があって後天的に獲得した反射のことを「条件反射」と言います。同じように、「寝室は眠る場所だ」という考え方も一つの条件反射です。幼いころから寝室やベッドで寝てきた経験から、寝室に入ると自然と眠くなるのです。
しかし「スマホを寝室で操作する」という習慣をつけると、新しい考え方「寝室は覚醒する場所」を脳が覚えてしまうことがあるのです。
本来、寝室は睡眠を取る場所ですが、これは後から身についた習慣なのです。だから、寝室ではリラックスして眠ることに徹しましょう。
寝る前のスマホの悪影響を小さくする方法5選
上、就寝前にスマホをまったく使わないというのは、考えにくいことです。この章では寝る前のスマホの悪影響を小さくする方法を5つ紹介します。できることから実行してみましょう。
1.日中に十分な光を浴びる
昼間に意識的に太陽光を十分浴びることが、光耐性を高め、夜のブルーライトの影響受けにくくします。
2016年にスウェーデンで14名の被験者を対象とした研究では、日中に十分な光を浴びると就寝の2時間前に紙の本を読んでも電子書籍を読んでも睡眠の質や唾液中のメラトニン濃度に違いがないことが示されています出典[1]。
つまり、夜にスマホを見てもブルーライトの悪影響を受けにくくなるのです。
また、2015年に日本で行われた研究でも、日中の異なる強度の光を浴びることによる、夜間の光で起こる入眠ホルモンメラトニンの抑制についての影響が報告されています出典[2]。
この研究では、午前中に下記の様々な強度の光を浴びてもらいました。
・100lx(街灯くらいの明るさ)
・300lx(学校の教室くらいの明るさ)
・900lx(手術室くらいの明るさ)
・2,700lx(晴れた日中くらいの明るさ)
そして深夜に300lxの光を浴びてもらい、その前後で唾液中のメラトニン量を測定し、比較しました。その結果、日中に100と300lx浴びたグループでは深夜のメラトニン濃度が大幅に減少しましたが、900と 2700 lxではメラトニンは低下しませんでした。
つまり、ある程度明るい光を浴びないと、夜のブルーライトの悪影響はなくなりません。一日中屋内で過ごしている人は、昼間に意識的に外に出るようにしてしっかりと日光を浴びましょう。
2.夕方に軽い運動をする
スマホは現代生活の必需品である上に、いろいろなアプリケーションやコンテンツがあるので、私たちも「いじっているだけで楽しい」と感じる現実もあります。こんな気持ちにならなければ少しはスマホから離れられそうですが…
2022年に中国で行なわれたランダム化比較試験では、中強度で30分間程度行う有酸素運動がスマホを使いたい欲求を約半分に下げる効果があると報告しています出典[3]。
運動を行うことで自制心が高まり、スマホへの欲求が下がるのではないかと考えられています。
ただし、運動をする時間には注意が必要。
運動と睡眠の質に関する23件の報告をまとめた研究では、夜遅すぎる運動は就寝時の体温を上げ、睡眠効率を低くし、入眠後の覚醒が多くなると報告しています出典[4]。
よって夜に運動を行う場合は、遅くとも就寝の1時間前までに済ませるようにしましょう。
3.夜はブルーライトカット眼鏡をつけて過ごす
夜はブルーライトカット眼鏡をつけて過ごすという方法もあります。
2016年に日本で12名を対象に行われた研究では、睡眠の質とメラトニンの分泌を調査したところ、ブルーライトカット眼鏡がメラトニンの抑制を防ぐと報告しています出典[5]。
この研究では、ブルーライトカット眼鏡を付けたグループの方が睡眠の質が高く、入眠時間も約8分短かったことが明らかに…!
日頃から眼鏡を掛けている方であれば、レンズをブルーライトカットレンズにすれば良いだけなので、抵抗なく始められそうですね。
4.スマホの使用は遅くとも寝る30分前まで
スマホやパソコンなどから出るブルーライトは、強いエネルギーを持つので、目の奥まで届きます。光として強いので、メラトニンの分泌抑制作用も大きいのです。
しかし、現代社会では夜でも全くスマホを使わないというわけにはいかないでしょう。
2020年に中国で、就寝30分前からスマホの使用を4週間制限するという調査が行われました出典[6]。
この研究では以下のようなことが報告されました。
- 入眠までの時間が12分短くなった
- 睡眠時間が18分長くなった
- 睡眠の質の向上した
「もし大事な連絡があったら…」と抵抗のある方もいるでしょうが、ビジネスの連絡は夜には少ないものです。就寝前30分前であれば、スマホを見なくても生活に支障ないのではないでしょうか。
また、家族や友人などの知り合いとだけでも、「夜〇時から朝〇時まではスマホでの連絡を控える」と取り決める方法を組み合わせれば、効果も高まります。取り決めてしまえば、あとは安心してスマホから離れられるでしょう。
5.寝室にスマホを持ち込まない
寝室で「少しだけ、少しだけ…」と思って見てしまうスマホ。少しなら目への影響も少ないと考えてしまいがちですが、ちょっと違うようです。
2019年にイギリスで、6,616 人の青少年を対象にした大規模コホート研究が行われました。その研究では、夜間の携帯電話やタブレット、ラップトップ、テレビなどの使用と睡眠の関係についても調査されました出典[7]。
その結果、携帯電話などは明るい部屋で使用した場合よりも暗い部屋で使用した場合の方がブルーライトの悪影響を受けやすいと報告しています。
暗めの寝室ではスマホを使わない方が良い、持ち込めば使ってしまう…となると、持ち込まないというのも1つですね。寝室へはスマホなしで向かい、入ったらすぐ寝ましょう。そうすれば質の良い睡眠を取れます。
よくある質問
解決する可能性があるので、読んでみてください。
寝る前にスマホをいじると太りますか?
寝る前にスマホをいじると血糖値が上がりやすくなり、体脂肪が合成されやすくなるので、太る可能性があります。
2016年にアメリカで健康な成人19名を対象に、朝か夕方にブルーライトを浴びた場合の血糖値の変化について調査しました出典[8]。この研究では、夕方にブルーライトを浴びると正常体重の成人の血糖値を上げると報告しています。
血糖値の上昇は体脂肪の合成を招く恐れがあります。ダイエット中の方は夜のスマホを控えるのがよいでしょう。
寝る前にスマホをいじると高血圧になりますか?
夜にスマホで通話する習慣がある人は高血圧になる可能性があります。
2023年にイギリスで携帯電話の使用と高血圧発症との関連を調べる研究が行われました出典[9]。この研究では、携帯電話で週に30分以上会話する人と、 30分未満の会話をする人に比べて高血圧症を発症する医学的リスクが12%増加すると報告しています。
また、高血圧の遺伝的リスクが高く、週に携帯電話の発着信の使用時間が長い人は、最も高血圧症のリスクが高かったとも報告しています。電話の使用者の血圧が高い理由として挙げられるのは以下のことです。
- 電話をかける姿勢が交感神経活動を増加させ、血圧をあげる可能性がある
- 携帯電話の使用頻度が高いことは、精神的健康への悪影響や睡眠障害に関連している可能性がある
どちらも血管損傷を引き起こす可能性があり、高血圧症を発症させる可能性がありますが、メカニズムは今のところ不明です。
寝る前にスマホをいじると肌が汚くなりますか?
寝る前にスマホを使い、睡眠の質が下がると肌質が悪くなるので、肌が汚くなると感じる可能性があります。
2021年に韓国で女性 22 人を対象に、スマートフォン使用による睡眠の質の低下による肌特性の変化を評価する研究が行われました出典[10]。
この研究では、睡眠時間の2時間前にスマホを使用して、肌特性の評価を行いました。その結果、平均入眠時間は約34分遅れ、肌特性の評価は、以下のような結果になりました。
- 皮膚の水分量が減少
- 皮脂量が増加
- 皮膚の落屑が増加
- 皮膚表面を中心に肌のつや、透明感、弾力が低下
睡眠中には成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンは、肌のハリを維持するために皮下組織の水分をキープしたり、肌のターンオーバーを促して古い皮膚を生まれ変わらせたりします。
睡眠の質が良くないために、成長ホルモンの分泌も十分でなく、肌質は悪くなるのです。
まとめ:夜はスマホから離れて良い睡眠を!
現代の社会生活でほぼ欠かすことはできないと言って良いスマホ。夜にスマホを使っていると、スマホから発するブルーライトが入眠ホルモンのメラトニンを減らし、操作自体が脳を覚醒させ、また脳が寝室を覚醒する場所と認識してしまうなどの事態が起こってしまいます。なんとか上手に付き合って、睡眠の質も落とさずに生活したいものです。
本記事では寝る前のスマホの悪影響を小さくする方法を5つ紹介しました。睡眠の質を高める方法と重なることも多く、やはり生活習慣と睡眠の質は密接に関係しているといっていいのでしょう。質の良い睡眠をとるために、夜はスマホから離れて過ごすというのもひとつの考え方です。
出典
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