寝る前の空腹には味噌汁!オススメの食べ方や具材を紹介
2023年12月26日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

寝る前の味噌汁が効果的な理由5つ

夜更かしをしてしまった。仕事で帰宅が遅くなり夕食を食べ損ねてしまった。そんな時の強い空腹感を我慢したままでは、寝付きも悪くなり、睡眠不足になりやすくなってしまいます。適度に空腹感を紛らわせる、低エネルギーの食品を取り入れたいところですよね。

睡眠中の消化器系に負担をかけず、さらに快眠効果も得られる食品として、今回は味噌汁を紹介します。疲れて帰ってきた夜にも簡単に用意でき、様々な具材を入れて飽きずに楽しめる味噌汁は、手軽で継続しやすい快眠食品であると言えるでしょう。

では、寝る前に味噌汁を食べることで、具体的にどのような快眠効果が得られるのでしょうか。

理由1.体温を上げることで入眠をサポート

寝る前に温かい味噌汁を飲むことで、体の内側から温まる効果が期待できます。

睡眠は私たちの体温変化と密接に関係していて、深部体温が下がるときに眠りが訪れやすいという特徴があります。寝る前に体を温めることで、上がった体温を下げるために放熱しようとして、脳や臓器などの深部体温が下がりやすくなるのです出典[1]

寝る少し前に味噌汁を飲んで体を温めておくことで、入眠をサポートする効果が期待できるでしょう。

 

理由2.低エネルギーで満足感を得やすい

味噌で構成された味噌汁は、その具材も含めて低脂質であることが多く、カロリーも控えめです。また、温かい味噌汁は冷たいジュースやビールのように一気飲みすることがありません。時間をかけて少しずつ食べられるため、満足感を得やすく、食べ過ぎを防ぐ効果も期待できます。

強い空腹の状態を我慢して眠ろうとすると、ストレスからなかなか入眠できず、睡眠時間が減少する傾向にあります。睡眠時間の減少に伴い、大きく変化するのが食欲をコントロールするホルモンたちの分泌量です。

普段健康な人であっても、1日10時間眠った日と比較して、4時間しか眠れていない寝不足の状態を2日間続けただけでも、食欲に関わるホルモンに大きな変化が見られます。食欲を抑えるホルモンであるレプチンの分泌量が減少し、逆に食欲を高めるホルモンであるグレリンの分泌量が増加してしまうのです出典[2]

食べすぎにより体脂肪が増加すると、脂肪が呼吸の物理的な障害となります。その結果、睡眠時無呼吸症候群という、睡眠中に呼吸が止まりがちになり深い眠りが障害される疾病のリスクが高まることも分かっています。

このように、食欲をコントロールするホルモン量が変化することによる食べすぎは、巡り巡ってさらに睡眠の質を下げることにもなりかねません。

食欲をコントロールして、翌日以降の食べすぎを防ぐことは、ダイエットや睡眠の質の維持に役立ちます。味噌汁のような、低エネルギーで満足感を得られるものを取り入れて、ストレスなく眠れるようにしましょう。

 

理由3.比較的消化の良いたんぱく質食品を入れやすい

たんぱく質食品を食べることで、消化管からコレシストキニン(CCK)というホルモンの分泌が促されます。このCCKには食事に対する満足感を高める効果が確認されています出典[3]

たんぱく質食品を意識して摂取することで、少量で満足感を得やすくなりますね。

味噌汁には豆腐や卵など、手軽に調理できるたんぱく質食品を加えることができます。これらは脂質の多い肉類やチーズと比較して消化しやすいため、夜遅くに摂取しても、消化管への負担を少なく抑えられます。

揚げ物や肉類など、高脂質の食品や、お腹いっぱいになるほどの大量の食品は、消化にかなり時間がかかります。睡眠中も消化のために内臓を活発に動かさなければいけないため、十分に体を休めることができません。

温かい味噌汁に消化の良いたんぱく質。少量で満足感を得やすく、睡眠を妨げない食品として、この組み合わせを意識してみましょう。

 

理由4.味噌の発酵パワーで腸内環境を改善

味噌汁に使われている味噌は、日本を代表する発酵食品です。味噌には麹菌や乳酸菌などが含まれており、これらの善玉菌を摂取することで腸内環境を整える効果が期待できます。

これらの善玉菌は、沸騰するまで加熱すると失活してしまいます。たとえば酵母菌は50~55度、乳酸菌は76.5度で死滅することが分かっています出典[4]これらの菌による健康効果を得るためには、50度以下で味噌汁を溶かす必要がある、ということですね。

しかし味噌汁を50度以下にまでしてしまうと、快眠効果に重要な、体を温める作用を十分に発揮することができません。また、死んでしまった善玉菌も、他の善玉菌のエサとして機能するなど、良い働きをもたらしてくれます。そのため、味噌汁を食べる際には、生きた善玉菌にこだわりすぎない方が、結果的に高い快眠効果を得られるでしょう。

腸内環境を整えることと睡眠との関係を語るにおいて、重要になるのが「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンです。セロトニンは不安を軽減したり気分を落ち着かせたりする働きがあり、入眠しやすくなる効果が期待できます。

脳において機能するセロトニンですが、そのほとんどが腸内で合成されることが分かっています。セロトニンの合成場所である腸内環境を整えることは、気分を安定させ眠りやすくするために非常に重要です。

毎日続けやすい発酵食品として、味噌汁を活用してみましょう。

 

理由5.トリプトファンの供給により睡眠ホルモンを増やす

腸内環境を整えることで合成効率の高まるセロトニンですが、その材料として必要となるのが、必須アミノ酸のひとつであるトリプトファンです。味噌や豆腐などの大豆製品にはトリプトファンが豊富に含まれており、セロトニンの材料の供給源として優秀であると言えますね。

また、セロトニンにはもう一つの特徴があります。それが「睡眠ホルモン」と呼ばれるメラトニンへの変化です。朝に合成が高まり、日中の間分泌されているセロトニンは、夜になるとメラトニンを合成するための材料として使われ始めます。

メラトニンには1日のリズムを整える働きがあり、自然な入眠をサポートしてくれます。睡眠の質を高めるためには、朝のセロトニン合成量を増やしておくことが重要、ということが分かりますね。

このように、セロトニンの合成からメラトニンへの変化までには長い時間がかかります。そのため、寝る前に摂取した味噌汁由来のトリプトファンが、そのまますぐにメラトニンに変わって入眠をサポートする、というわけではありません。

味噌汁の役割は、必須アミノ酸として、筋肉などの合成にも盛んに使われるトリプトファンの不足を防ぎ、翌日以降のセロトニン合成を促進すること。十分なトリプトファンの摂取により、翌朝のセロトニン合成効率が高まり、結果的に次の夜における睡眠の質を高める効果が期待できるでしょう。

 

どう食べる?寝る前の味噌汁で大事なポイント4つ

このように、寝る前の味噌汁には、空腹感を適度に解消しつつ、入眠をサポートする効果が期待できます。
では、そんな味噌汁の快眠効果を正しく得るため、工夫したいポイントについて5点ほど紹介しましょう。

ポイント1.睡眠直前ではなく、30分前までに

体を温める効果のある味噌汁ですが、眠りやすくなるのは体が最も温まった頃ではなく、上がり切った体温が下がり始めた頃。そのため、寝る直前に熱い味噌汁を飲んでしまうと、入眠効果を得られるまでにやや時間がかかる可能性があります。

温かい味噌汁を飲む際には、寝る30分ほど前を目安にしてみましょう。味噌汁を飲んでから就寝の準備をして、布団に入る頃には体温が下がり始めている、という状態にしておくと、よりスムーズに眠ることができるはずです。

 

ポイント2.寝る前の味噌汁は1杯まで

快眠効果や健康効果を多数含み、低エネルギーのため太りにくい味噌汁ですが、食べすぎはよくありません。

味噌汁には塩分が豊富であり、飲みすぎるとむくみの原因となってしまいます。また一晩に2杯も3杯も味噌汁を飲むと、摂取した大量の水分によりトイレが近くなり、深夜や早朝に尿意で目覚めてしまうということにもなりかねません。

適度な塩分量と水分量を守り、健康や睡眠を害さないようにしましょう。

 

ポイント3.継続によりメラトニンの合成効率UP

大豆製品から効率よく摂取できるトリプトファンですが、この必須アミノ酸を原料としてセロトニンが合成されるのは翌朝から。さらにそのセロトニンが睡眠ホルモンであるメラトニンに合成されるまでには、翌日の夜までかかります。

トリプトファンによるセロトニンやメラトニンの快眠効果を得るためには、「眠れない夜にのみ飲む」という方法ではなく、毎晩の味噌汁を継続することが重要です。

もちろん、日によってはそこまで空腹感が強くない、という場合もあるでしょう。その場合には温めた具なしの味噌汁を飲むだけにしておきましょう。余分なエネルギー摂取を防ぎつつ、翌日のセロトニンやエラトニンの効果を得やすくなります。

また、腸内環境を整えるために重要な善玉菌ですが、一度摂取するとずっと腸内に棲みついてくれる、というものではありません。腸内環境を良好に保つためには、善玉菌を毎日取り入れることが重要です。善玉菌の供給源としても、毎日の味噌汁を継続することは重要と言えそうですね。

 

ポイント4.糖質が多い野菜などを入れない

寝る前の味噌汁を低エネルギーに抑えるため、注意したいのが糖質の多い具材です。

じゃがいも、里芋、さつまいもなどは、ビタミンや食物繊維も豊富で良質な食材ではありますが、糖質も多いため、寝る前の味噌汁には加えない方がよいでしょう。また、にゅうめんなどの麺類を味噌汁に入れるのも避けましょう。

おすすめは大根や玉ネギなど、糖質量が少なく低カロリーで、効率よくカリウムを摂取できる野菜です。カリウムは、味噌汁で多めに摂取した塩分を、水分と共に体の外に出すように働きかける作用があります。高血圧予防やむくみの解消にも役立つため、糖質量の少ない野菜を選び、積極的に味噌汁の具として使ってみましょう。

 

寝る前の味噌汁にオススメの具材5選

味噌汁のメリットとして、具材を変更することで飽きることなく楽しめる、というものがあります。また、たんぱく質が豊富な食品、食物繊維が豊富な食品など、強化したい栄養素を考えて、健康効果をプラスできるのも魅力ですね。

以下では、寝る前の味噌汁の具として特におすすめな食材を紹介します。いつもの味噌汁をアレンジしたい、満足感や快眠効果をより得たいという場合に、是非ご活用ください。

豆腐

味噌汁に入れたい定番の具材として、豆腐を思い浮かべる方も多いことでしょう。豆腐には良質なたんぱく質が豊富に含まれており、また柔らかいため消化にもよく、夜に摂取するには最適な食品であると言えます。

大豆製品である豆腐からは、トリプトファンも豊富に摂取できます。セロトニンやメラトニンの合成材料として機能するため、味噌汁が持つ効果を強化する意味合いで見ても優秀です。

木綿豆腐や岩豆腐を少量加えて、よく噛んで食べることを意識してみるのも良いでしょう。噛むことで食欲を抑えるホルモンであるレプチンの分泌が高まるため、味噌汁1杯でも満足感を得やすくなります。

 

大根

野菜の選択肢として、まず低エネルギーな根菜である大根をおすすめします。淡色野菜であるため、βカロテンやビタミンEなどは少ないものの、エネルギー代謝に欠かせないビタミンB群や、塩分を排出する作用のあるカリウムが豊富です。

特にカリウムは味噌汁と相性が良く、多めに摂取した塩分を排出する働きを担ってくれます。毎晩の味噌汁によるむくみや高血圧のリスクが気になる方は、具材として大根を加えてみましょう。

また、大根にはアミラーゼなどの消化酵素が豊富ですが、この消化を助ける作用は、加熱すると失われてしまいます。もし大根の消化作用の恩恵を得たい場合には、生の大根をすりおろして食べると良いでしょう。

 

玉ネギ・ネギ類

玉ネギやネギ類からは、疲労回復効果のあるアリシンを摂取できます。

これらの食品にはアリインという物質が含まれており、食品を切ったりすりおろしたりすることで、独特の匂いを持つアリシンに変化します。玉ネギを切ったときに涙が出てくるのは、アリシンなどの硫化アリル類が気化して目の粘膜を刺激してしまうためです。

アリシンにはエネルギー代謝に欠かせないビタミンB1の吸収を高める効果を持ちます。エネルギー代謝を効率化することで、疲労回復効果が期待できます。また、アリシンは抗酸化物質としても機能します。疲労により増加した酸化ストレスを軽減させることで、睡眠の質を高める効果も得られますね。

また、玉ネギにはアリシンの他にも、ケルセチンという物質が豊富です。ポリフェノールの一種であるこのケルセチンもまた、抗酸化作用および抗炎症作用を発揮します出典[5]。炎症反応による痛みを和らげる効果も期待できるため、筋肉痛などを起こしているときの具材として活用すると、睡眠による筋肉痛改善効果を強化できる可能性がありますね。

 

ほうれん草

葉物野菜として、ほうれん草をおすすめします。疲労回復効果のあるビタミンB群や、緑黄色野菜に豊富なβカロテンを効率よく摂取できます。

緑黄色野菜には他にも、オクラやトマト、ピーマンにブロッコリーなどがあります。この中でもほうれん草は消化に良く、汁物である味噌汁との相性が良いため、続けやすいことも魅力ですね。

また、ほうれん草には鉄やカルシウムなどのミネラル類も豊富です。日頃からスポーツをする人は鉄が不足しがちであり、貧血のリスクが高い状態にあります。また、運動により汗をかくとカルシウムの一部が失われてしまうため、カルシウムの不足も起こりがちです。

ダイエットのため、体力づくりのため、筋トレやスポーツをしているという場合には、味噌汁の具材としてほうれん草を加えてみましょう。

なお、ほうれん草に含まれる鉄は「非ヘム鉄」であり、肉類や赤身魚に含まれる「ヘム鉄」よりも吸収率が低いことで知られています。しかし大豆製品である味噌や豆腐に含まれるたんぱく質が、鉄の吸収を高めてくれるため、貧血予防にも、ほうれん草と味噌汁の組み合わせは相性が良いと言えそうですね。

 

海藻類

味噌汁と相性の良い野菜類からは食物繊維を摂取できます。しかし野菜類の食物繊維は不溶性食物繊維に偏りがちであり、水溶性食物繊維がやや不足する傾向にあります。

水溶性食物繊維は水を吸って粘性を持ち、糖質など栄養素の吸収を穏やかにしたり、余分なコレステロールを排出したりする働きがあります。生活習慣病の予防に役立つ健康効果を数多く得られるため、是非とも摂取したいところですね。

そこで、味噌汁と相性が良く、かつ水溶性食物繊維を効率的に摂取できる食品として、わかめやあおさ、昆布などを加えてみるのはいかがでしょう?
低エネルギーで、かつ天然のうま味成分を豊富に含む海藻類が味噌汁に入ることで、満足感がぐっと高まります。腸内環境を整える効果も同時に得られるため、長期的なセロトニン合成効率のUPにも繋がりますね。

 

まとめ

夜遅くの空腹による睡眠障害を防ぐためには、寝る前の空腹を適度に和らげ、同時に快眠効果を得られるような食品を取り入れることが重要です。
手軽に用意でき、体を温められ、具材の調整により高い満足感を得られる味噌汁は、寝る前の夜食に適していると言えるでしょう。

毎日の摂取により快眠効果を得やすくなるため、具なしの味噌汁を少量からでも、継続してみることをオススメします。空腹の度合いによって具材の種類や量を調節し、ストレスなく眠りにつけるよう工夫してみましょう。

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