意外と知らない!?糖尿病とEDの関係性とは
2022年12月26日更新

監修者

綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科 部長

大坂 貴史

綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科 部長。
京都府立医科大学 内分泌糖尿病内科 客員講師。

京都府立医科大学 医学部卒業。闘う糖尿病内科医、運動療法の専門家。病院の外で「糖尿病で不幸になる人を減らす」活動をしている。Lumedia編集員/法人代表。ワインエキスパート/SAKE DIPLOMA/居合・弓道・合気道有段者 YouTubeで健康情報紹介しています!健康は~筋肉ぅ!!!

執筆者

株式会社アルファメイル

NP+編集部

「オトコを科学する」をキーワードに男性の悩みや課題の解決を科学的根拠をもってサポート。運動や睡眠、栄養など、健康に関する正しい知識を提供するためにコンテンツを製作中。

はじめに

脳や目から体の末端まで、様々な部位で恐ろしい合併症を引き起こすと言われている糖尿病。

その影響は男性機能にまで及びます...。しかし恥ずかしさからお医者様に相談し辛く、悩みを内に秘めている方も多いはず。

今回は綾部市立病院の大坂貴史先生に、糖尿病と勃起不全(Erectile Dysfunction:ED)の関係性について、医学的観点から詳しくお話いただきました。
 

対談者プロフィール

大坂先生プロフィール

綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科 部長。

京都府立医科大学 内分泌糖尿病内科 客員講師。

京都府立医科大学 医学部卒業。闘う糖尿病内科医、運動療法の専門家。病院の外で「糖尿病で不幸になる人を減らす」活動をしている。Lumedia編集員/法人代表。ワインエキスパート/SAKE DIPLOMA/居合・弓道・合気道有段者 YouTubeで健康情報紹介しています!健康は~筋肉ぅ!!!
 

関川裕大プロフィール

株式会社アルファメイル・上級睡眠指導士

学生時代、30kgのダイエットを経験し、基本的な健康習慣の重要性を実感。

特に睡眠・運動・食事など、きほんの『キ』を理論的・体系的にお客様に説明するため、専門士資格を複数取得。お客様窓口やNP+などを通じて、一人でも多くの男性を「健康体」に導いている。

 

ズバリ、糖尿病の人はEDになりやすいのか?

関川「まずはズバリお聞きします。やはり、糖尿病の方はEDになりやすいのでしょうか?」

大坂先生「はい、残念ながらハッキリと糖尿病の方はEDになりやすいと言われています。最近では糖尿病の合併症の1つであると認識されています。」

関川「医学的にも糖尿病とEDは深い関りがあるのですね。」

大坂先生「ただし、本当に糖尿病が原因でEDになったと判断するのは結構難しいんですよ...。なぜなら、”糖尿病患者がEDになりやすい”という事実があった時、『糖尿病が原因でEDになった』のか、『糖尿病になりやすい背景がEDの原因だった』のかは個人個人で違うからです。」

関川「えっと...どういうことでしょうか?」

大坂先生「確かに糖尿病自体がEDになりやすい要因になっているのも事実です。しかし、糖尿病になりやすい背景...例えば肥満や遺伝的要因、加齢、運動不足などが原因でEDが起きている可能性もあるんです。」

関川「なるほど!言われてみるとピンと来ますが、見落としがちなポイントでした...。」

大坂先生「実際のところ、糖尿病の合併症というのはEDを含めすぐには発症しません。目が悪くなったり、神経が悪くなったり、腎臓が悪くなったり...というのは糖尿病の合併症として聞いたことある人も多いと思うんですけど、だいたい10年以上の長い時間をかけてジワジワと進行していくものです。

関川「それは血糖値が高い状態が続いて、体をジワジワと蝕んでいくイメージですか?」

大坂先生「その通りです。だからこそ、糖尿病になって10年以内のEDは、基本的に糖尿病にあまり関係していないとも言われています。」

関川「10年って結構長いですね...。糖尿病になるとすぐにEDのリスクが上がると思っていたので勉強になりました!」

大坂先生「ただ、ここも見落としがちなポイントとして....糖尿病そのものは自覚症状がないので、いつから糖尿病だったかはちゃんと検査を受けていないとわからないんです。よくあるんですけど、”健康診断を毎年受けていません”って方が何かの拍子に受けたら糖尿病だったとしましょう。すると診断自体はその時だけど、糖尿病の状態が長く続いていたから既に合併症がいっぱい出ている...という人は結構います。」

関川「医師や本人も気づかないうちに糖尿病が進行しているというパターンですか...。確かにそれだと、糖尿病そのものか、普段の生活習慣のどちらが原因かは明確に分からなくなりますね...。

大坂先生「そうなんですよ。健康診断は毎年必ず受けて頂きたいものです...。」

 

糖尿病が関連するEDのメカニズムとは?

関川「では、現に糖尿病でEDにお困りの方がいたとして、改善の見込みはあるのでしょうか。」

大坂先生「改善される見込みは原因と進行度合い次第です。先ほどもお伝えしたように、肥満や運動不足が原因のこともあるので....。まずは、糖尿病がどのようにしてEDのメカニズムに関わってくるのか...という観点でお話しましょう。」

関川「ぜひ、よろしくお願いします!」

大坂先生「なんで糖尿病になるとEDになりやすいのか...というのは、メジャーな要因が2パターンあります。一つ目は血管性です。高血糖の状態によって血管が悪くなります。二つ目は神経性。糖尿病になることで神経が悪くなってしまう状態です。」

関川「それぞれ詳しくメカニズムをお聞きしてもよろしいでしょうか!」

大坂先生「血管の方は、端的に言うと”動脈硬化”が起こります。高血糖の状態だと動脈にストレスがかかり、硬くなってしまうんです。そして、そもそも勃起は海綿体に血液を沢山送って、送るだけではなく留めることが大切になりますよね。それを調節するのは血管ですが、血管が硬くなると調節しようとしてもうまく行かなくなってしまいます。ちなみに、糖尿病初期の方は、血管性EDが多いと言われています。歳をとっても同じように血管が弱ってしまいますが、糖尿病の方は歳をとりやすいというイメージになります。」

関川「血管が古びたゴムみたいにどんどん硬くなるイメージをすると...恐ろしいです...。」

大坂先生「次に神経性ですが、こちらはもっと特殊です。神経も一つの細胞で栄養を受けているんですが...糖尿病で血糖値が高いと神経の栄養伝達がうまくいかなくなってしまうのが原因になります。」

関川「たしかに神経の方はイメージしづらいですね...。」

大坂先生「神経って1つの細胞がめちゃくちゃ細長いんですよ。例えば、足のつま先の神経は腰から伸びています。なので、栄養の伝達がうまくいかないと栄養不足になりやすいんです。そして神経にも色々ありますが、勃起に影響があるのは自律神経です。意識して動かす神経ではなく、意図しないところで動く神経になります。そこが同じように栄養不足でダメージが重なると、神経がはたらかなくなってしまいます。神経が悪くなると勃起の指令がそもそも送れなくなるので、バイアグラなども効かない状況になると...。」

関川「非常に分かりやすかったです!一つ気になるのが、心因性EDも同じように自律神経の働きが原因で勃起がうまくできない状態になりますが、そちらはバイアグラが効きますよね?どんな違いがあるんですか?」

大坂先生自律神経”障害”と自律神経”失調”の違いですね。心因性の場合は、”失調”の方で、コントロールが難しくなるだけで神経自体には物理的な問題がないんです。ただし糖尿病で起こってしまう自律神経”障害”は神経に直接的な異常が出てしまうので、何をやってもうまく行かなくなってしまいます。」

関川「制御できなくなるか、そもそも壊れてしまうかの違いですね!よく分かりました!本題ですが、この2つの原因でEDになってしまった場合に、回復はできるのでしょうか?」

大坂先生「結局はどの段階かによってケースバイケースということになります。EDだけではなく全身の血管や神経に問題が出てくるまで進行していると回復がむずかしくなるんですが...初期段階だったら、気を付けることで血管・神経のどちらも改善の見込みはありますよ。

関川「改善の見込みはあるんですね!安心しました!」

大坂先生「あとは糖尿病の人がなるEDで、血管と神経以外の原因としてありがちなのが二つあるので紹介します。一つは男性ホルモンに関わる問題です。男性ホルモンが低いと高血糖状態になりやすいので、糖尿病のリスクになります。最近よくいらっしゃるのが、前立腺がんの治療で男性ホルモンを抑えたり、男性ホルモンが作られる睾丸を摘出したりする人ですね。そういった方は元々男性ホルモンが低い状態が原因で糖尿病になるのですが、EDの原因も糖尿病ではなく男性ホルモンなんです。この場合、男性ホルモンの治療をしたら糖尿病の症状も改善しちゃいましたってことがあります。」

関川「男性ホルモン低下が諸悪の根源になることもあるってことですね。男性ヘルスケアは何かと男性ホルモンが出てきますが、まさか糖尿病にまで影響があるとは...。」

大坂先生「まさしく、ホルモンの異常はEDを含め全身に影響するので、しっかりとケアしなきゃいけないと思います。ちなみにですが...実はデータが豊富なサプリメントで日頃からケアしている人は結構良い状態だったりします。より重症度が増してしまうと、治療として直接テストステロン注射などで補っていく必要が出てきますが...。」

関川「それはサプリメントを販売している弊社としては朗報ですね!笑 それにしても、男性ホルモンの低下も糖尿病に結びついているとなると判別は難しそうですが...。」

大坂先生「その通りで、男性機能に悩んでいることを患者さんから言われて初めて発覚することも多くあります。糖尿病の方全員にホルモンの検査をしているわけではないので、実は気づかない...というケースも結構あったりするんですよ。」

関川「そうなると、勇気を出してお医者様に相談するのも、お悩み解決の一歩といえそうです。」

大坂先生「医師としても、ぜひそうして頂きたいと思っています。もう一つの原因も同じく相談で解決する可能性の高い問題なので。」

関川「最後は何でしょうか?」

大坂先生四つめの原因は、お薬のせいでEDが起こってしまうことです。実は”糖尿病の薬”自体が原因になることはほぼ無いんですが、関連するコレステロールのお薬や血圧のお薬など、一部の薬のせいでEDが起きていることがあります。」

関川「いわゆる薬剤性EDですね。メカニズムとしては、どのような物があるのでしょうか。」

大坂先生「薬剤性EDは主にホルモンに影響する薬と血管に関する薬で起こります。例えば、よく知られているロキソニンやカロナールは血管を引き締める作用があります。それが陰茎の血管で起こってしまうと、血流が止められてEDに繋がる...といったメカニズムです。」

関川「誰もが飲んだことあるロキソニンでもEDが起こってしまうんですか!?」

大坂先生「そうなんですよ。ただし血流の薬の作用は基本的に数時間程度で一時的な物が多いので、ほとんどの薬は止めたら治ります。具体的に言うと、糖尿病の方がよく飲む高血圧やコレステロールの薬による薬剤性EDはやめるとすぐに治るんですよね。ホルモン系に影響を与える薬は通常の状態に戻るまで少し時間がかかりますが。」

関川「となると、こちらもお医者様への相談が鍵になるってことですか?」

大坂先生「その通りです。ぜひ医師に相談してもらいたいな...というポイントは、”糖尿病だから...”とすぐ諦めてしまうと、勿体無いってことですね。薬をやめたり、変えたりするだけでEDが治ってしまうこともあるわけなので。」

関川「ここまで四つの原因がありましたが、まとめると『改善のためにはお医者様に相談してまずは原因を調べることが大切』といえそうです!ちなみに、原因を調べるのにセルフチェックは難しいのでしょうか?」

大坂先生「うーん...糖尿病がどれだけ関係しているか等、各所の総合的な判断が必要になるので、セルフチェックは非常に難しいといえます。」

関川「なるほど...。糖尿病とEDのメカニズムや原因の種別について、非常に勉強になりました!」

 

糖尿病の方がEDを改善していくには?

関川「ちなみに、一度糖尿病になると一生EDのリスクは付きまとうのでしょうか?」

大坂先生「糖尿病で血糖値のコントロールができていないと、付き纏ってきます。逆に、しっかりと血糖値をコントロールできていれば付き纏いません。」

関川「それは意外でした!糖尿病の診断を受けても、健康的な生活でしっかりとコントロールができていればリスクも抑えられるんですね。」

大坂先生「そうです。これはEDに限らずで...例えば糖尿病の方がコロナで重症化するリスクが高いという言われ方をしますが、正確には”血糖値の高い方”なんですよ。なので、糖尿病になり血糖値が高いという状態がよくないのであって、糖尿病になっても頑張ればリスクはしっかり管理できるんです。」

関川「それは糖尿病の方にとって非常に希望がもてる内容ですね!糖尿病と聞くと、一生治らずどんどん進行していく...なったらすぐに悪影響が出てしまう....というイメージでしたが、健康的な生活を続けていれば通常の方と同じように改善も見込めると!」

大坂先生「原因と進行度次第ではありますが、そうなりますね。」

 

まとめ

前半パートでは、糖尿病とEDの関係性について、体系的に教えていただきました。

後半パートでは具体的な改善策について大坂先生にお聞きしていきます。

後半パートはこちら

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