玉ねぎはテストステロンを高めるのか?適切な食べ方やメニューについて
2024年3月1日更新

監修者

NP+編集長/NESTA-PFT

大森 新

筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

玉ねぎってどんな野菜?

玉ねぎはヒガンバナ科ネギ属の野菜であり、「淡色野菜」に分類されます。同じヒガンバナ科ネギ属の野菜には、ネギやニラ、ニンニクなどがあります。いずれも特徴的な匂いを持ちますが、食用としての歴史は長く、抗菌効果や精力増強効果を目的とした生薬として長く使われてきたようです。

オニオンスライスなど、玉ねぎを生の形で食べる際には強い辛みを感じますが、炒めたり茹でたりすることで独特の甘みが出てきます。辛み成分である硫化アリルは加熱で分解・揮発するほか、加熱による水分の蒸発により甘味成分が凝縮されるため、生の玉ねぎにはない強い甘みが出てくると言われています。

更に玉ねぎに加熱を続けることで、いわゆる「あめ色」への変色が起きます。これは玉ねぎに含まれる糖が加熱により壊れ、濃い茶色のカラメルに変化するためです。

また糖の一部はアミノ酸も反応し、メラノイジンという物質へ変化します。これらカラメルやメラノイジンにより、あめ色の玉ねぎには独特の香ばしさやほろ苦さが生まれるのです。

 

玉ねぎに含まれる4つの有効成分

玉ねぎはネギ科の食材であり、野菜の分類では「淡色野菜」に分類されます。そのため緑黄色野菜に豊富であるカロテンの含有量は低く、ビタミンやミネラルもそれほど多く含まれていません。

しかし玉ねぎ独自の様々な有効成分により、独自の健康効果を発揮することが知られています。

1.ケルセチン

ケルセチンはポリフェノールの一種です。ブロッコリーなど他の野菜にも含まれていますが、玉ねぎの含有量は野菜の中でもトップクラスです。

抗酸化物質として機能するカロテンの含有量こそ少ない玉ねぎですが、このケルセチンを豊富に含むことにより、強力な抗酸化作用および抗炎症作用を発揮することで知られています。

ケルセチン自身も抗酸化作用を持ちますが、ケルセチンはビタミンCの働きを助ける機能も併せ持っています。抗酸化物質として機能するビタミンCの働きが高まることにより、抗酸化作用の効果が更に強力になると考えられています。

この抗酸化作用により、食生活の乱れや疲労、激しい運動などによって過剰に蓄積した活性酸素を無害化する効果が期待できます。血液をサラサラにして血管の弾力性を維持することにより、血流改善効果や生活習慣病予防効果が期待できます。

また、活性酸素の蓄積によりがんの発生リスクが高まるため、がん抑制にも役立つと考えられています。更に抗炎症作用により、関節痛など炎症反応による痛みを緩和する効果も期待できます出典[1]

 

2.アリシン(アリイン)

アリシンとは玉ねぎの香りと辛みの成分であり、硫化アリルの一種です。ニンニクの成分として有名ですが、玉ねぎにも豊富に含まれています。

元々はアリインという無臭の含流アミノ酸として玉ねぎに存在していますが、切ったり砕いたりすることで分解を受け、アリシンへと変化します。アリシンなどの硫化アリルは気化する性質があるため、目の粘膜を刺激します。玉ねぎを切った際に涙が出てくるのはこのためです。

アリシンにはエネルギー代謝に欠かせないビタミンB1の吸収を高める効果を持ちます。エネルギー代謝を効率的にする働きから、疲労回復効果が期待できます。

また、アリシンは抗酸化物質としても機能するため、ケルセチンと同様に血流改善効果やがん抑制効果も期待できるでしょう。

 

3.チオスルフィネート

チオスルフィネートという成分もまた、硫化アリルの一種です。玉ねぎを切ったり砕いたりといった刺激により、玉ねぎに含まれる含流アミノ酸が酵素と反応することで生じます。

チオスルフィネートは抗菌作用のほか、抗ヒスタミン作用を持つことで知られています。気管支喘息やじんましんの原因になるヒスタミンの過剰な働きを弱めることで、アレルギー症状を緩和する効果が期待できるでしょう。

 

4.オリゴ糖

オリゴ糖は玉ねぎの甘味成分であり、特に新玉ねぎには「フラクトオリゴ糖」が豊富に含まれています。虫歯になりにくい甘味成分であり、安全な甘味料としても用いられています。

フラクトオリゴ糖は難消化性であり、食物繊維のような特徴を持ちます。腸内の善玉菌のエサとなり増殖を促進する「プレバイオティクス」としての働きにより、腸内環境が整い便秘や肌荒れを改善する効果が期待できます。

 

玉ねぎとテストステロンの関係

このように独自の有効成分を複数持つ玉ねぎですが、テストステロンにはどのように関係しているのでしょうか。以下では玉ねぎの摂取がテストステロンへ与える効果について紹介します。

ラットのテストステロンが30%UP

テストステロンは男性において、精子の製造を促す重要なホルモンです。この造精機能および精子は活性酸素に非常に弱く、活性酸素の蓄積は精子の量や運動性、形を損なうリスクを高めてしまいます。

玉ねぎに含まれる成分が強力な抗酸化作用を持つため、増精機能によい影響を与えるのではという仮説のもと、研究が行われました。

ラットを使用した動物実験において、新鮮な玉ねぎジュースを20日間摂取したラットと摂取していないラットの精巣や血液が調べられました。

その結果、精子の量や運動性が改善され、血清総テストステロンが玉ねぎジュースを摂取していない群と比較して30%増加したことが確認されました。更にテストステロンの分泌を促すホルモンである黄体形成ホルモンも有意に増加していました出典[2]

玉ねぎの摂取は精子の状態改善のみならず、テストステロンや黄体形成ホルモンの分泌量を増やす働きがある可能性があり、造精機能全体を改善する効果が期待できます。

 

玉ねぎの摂取量が多い人ほどテストステロンも多い?

ヒトにおける玉ねぎとテストステロンの関係については、玉ねぎの摂取量と身体状況を調査する横断研究において調査が行われています。

沖縄の住民を対象として行われた横断研究において、沖縄の住民は玉ねぎの摂取量が多く、また体内でテストステロンの材料として機能する「DHEA」の濃度が高いことが判明しています出典[3]

沖縄の住民においては、玉ねぎ以外にも伝統的な食事により、抗酸化物質を多く含む食品の摂取が多いことが特徴として挙げられています。野菜や果物の摂取が多く、飽和脂肪酸や精製穀物、砂糖や塩などの少ない食生活が、テストステロンの合成を高めている可能性があります。

この横断研究では、玉ねぎの摂取はテストステロンの合成を高める直接の要因であるかどうか断言はできませんが、抗酸化物質を多く含む食事を構成する重要な食材として、玉ねぎを摂取する意義は大きいと考えられるでしょう。

 

玉ねぎサプリメントが男性の更年期障害を改善

男性ホルモンであるテストステロンは、加齢と共に減少します。特に40代を超えてからの、遊離テストステロンの低下が激しいことで知られています。

体内のテストステロンは結合型と遊離型に分かれますが、筋肉や骨、性機能を活性化させる働きは遊離型のテストステロンによるものであることが分かっています。

40代頃から男性においてはこの遊離型のテストステロンが大きく減少します。中には更年期症状として倦怠感や不眠、集中力の低下、性欲の減退などを生じる場合があり、性機能だけでなく生活全体の質を大きく損なう要因となっています。

こうしたテストステロンの低下を原因とした男性の更年期障害に対する、玉ねぎの効果を調べるランダム化比較試験が日本で行われました。

これによると、玉ねぎサプリメントを4週間にわたり摂取した群は、対照群としてプラセボサプリメントを摂取した群と比較して、男性更年期症状を評価するAMS、および心の健康を評価するSF-36のスコアが改善されたと報告されています出典[4]

この試験で用いられた玉ネギサプリメントは、玉ネギの成分の中でも特にアリインを中心に抽出したものであり、アリインをより豊富に含むニンニクにおいても男性の更年期障害改善効果が期待できる可能性があります。玉ねぎやニンニクを継続摂取することにより、テストステロンの不足が改善され、更年期障害の症状緩和に役立つと考えられます。

 

男性は玉ねぎを食べるべきなのか?

動物実験においては「玉ねぎの摂取により血清総テストステロン濃度が上昇する」という因果関係が得られる試験が行われていますが、ヒトにおいては因果関係を示すデータはまだ得られていません

しかし、玉ねぎの摂取とテストステロン量との関係や、玉ネギサプリメントの摂取と男性の更年期障害との関係を調べた研究などにより、玉ねぎの摂取が性機能やそれに伴う身体症状の改善に役立つ可能性があると言うことはできそうです。

また、玉ねぎの持つ強力な抗酸化作用が、精子の劣化防止を始めとした身体の健康状態に有益な効果をもたらすことは間違いないため、男性が健康的でエネルギッシュな毎日を過ごすにおいて、習慣的に玉ねぎを摂取することには意義があると言えるでしょう。

 

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どのくらい食べるのがよいか?

加熱した玉ねぎは味噌汁やスープ、炒め物など、あらゆる料理の脇役として頻繁に摂取する機会があります。しかし玉ねぎ、特にアリインの健康効果を期待する場合、生の状態で食べることでアリインの損失を最小限に留めることができます

生の玉ねぎの場合、1日50gほど、一般的な中玉の玉ねぎであれば1/4個程度が適量であると言われています。生の玉ねぎを食べ過ぎてしまうと、胃など消化器系への負担が大きく、胃もたれや腹痛などを引き起こす可能性があるため、50gを上限に毎日継続して食べるのがよいでしょう。

 

おすすめの玉ねぎメニュー

玉ねぎは様々な料理に使われているため、加工食品やインスタント食品で食事を済ませるような食生活の偏りがない場合には、ほぼ毎日何らかの献立で玉ねぎの姿を見かけていることでしょう。以下ではその中から手軽に用意できるメニューとして、玉ねぎの健康効果を得やすいものをいくつか紹介します。

根菜のポトフ

主な食材:玉ねぎ、ニンジン、じゃがいも、ブロッコリー、ソーセージ

手軽に玉ねぎの甘みをたっぷり味わうことのできるレシピです。玉ねぎにはむくみ改善効果のあるカリウムが含まれますが、これらは水にさらすことで失われてしまいます。ポトフは水に溶け出た栄養素を丸ごと摂取できるため、玉ねぎのよさを余すところなく味わいたい方にオススメです。

玉ねぎのビタミン含有量はそれほど多くないため、ビタミンが豊富な緑黄色野菜であるニンジンやブロッコリーを加えることでビタミンの摂取バランスも整います。

 

二色玉ねぎのスライスサラダ

主な食材:新玉ねぎ、レッドオニオン、ドレッシング類

玉ねぎの辛みや匂いの成分であるアリシンは熱により分解されてしまうため、生のスライスサラダで食べることで効率的に摂取できます。ドレッシングの糖質が気になる場合には、オリーブオイルやバルサミコ酢をオススメします。

辛みを取るために水にさらしがちな玉ねぎですが、アリシンは水溶性のため水にさらすと量が減ってしまいます。その他、豊富なカリウムも減少してしまうため、大量の流水ですすぐのは控えた方がよいでしょう。

アリシンを効率的に摂取したい場合はスライス後の処理に一工夫してみましょう。スライスしたものを広げて空気にさらしたり、冷蔵庫で十分に冷やしたりすることでも辛みを和らげられますよ。

新玉ねぎに加え、レッドオニオンも辛みが少なくサラダに適しています。赤い部分にはポリフェノールが豊富に含まれているため、二種類の玉ねぎの違いを楽しみつつ、抗酸化物質をより多く摂取することができます。

 

豚肉の生姜焼き

主な食材:豚肉、玉ねぎ、生姜

玉ねぎのアリシンにはビタミンB1と吸収を高める効果があるため、ビタミンB1が豊富な豚肉と一緒に摂取することで、アリシンの効果を十分に発揮することができます。アリシンの熱分解を最小限に抑えるため、くたくたに煮るのではなく強火でさっと炒める程度にして、玉ねぎの食感が残るような調理を心掛けてみましょう。

ビタミンB1は糖質代謝に重要であり、摂取したエネルギーを体内で使える状態にするために必要不可欠な栄養素です。エネルギーの合成効率が高まるため、疲労回復効果が強く期待できるでしょう。

また、生姜に含まれるショウガオールなどの成分にも、代謝を活性化する効果があります。疲労回復に加え、余分なエネルギーが脂肪として蓄積するのを防ぐ効果を発揮するため、痩せやすい体づくりのサポートにも役立ちますよ。

 

オニオンリング

主な食材:玉ねぎ、小麦粉、揚げ油

ファーストフードなどのサイドメニューとして、オニオンリングを目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。フライ食品を毎日摂取するのはオススメできませんが、玉ねぎの有効成分であるケルセチンを効率的に摂取する方法として、フライ食品が適している可能性があるため、番外編として紹介します。

健常者が玉ねぎ料理を摂取した際の、血中のケルセチン濃度を調べた介入研究が日本で行われ、フライ玉ねぎの方が電子レンジで加熱した玉ねぎよりも、血中のケルセチン濃度が大きく上昇したとの報告が寄せられています出典[1]

効率的なケルセチンの供給方法として、外出先などでファーストフードを利用する機会がある場合には、サイドメニューとしてオニオンリングを選択肢に入れてみるといいかもしれません。

 

まとめ

私たちの生活に馴染みのある玉ねぎですが、意識して継続摂取することで男性には嬉しい性機能の維持向上の効果が期待できる可能性があります。優秀な抗酸化物質であるケルセチンやアリシンなどの供給源として、調理法に工夫しながら毎日の摂取を心掛けてみましょう。

 

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