最も筋肥大する分割法は?各分割法を徹底解説!
2023年3月26日更新

執筆者

NSCA-CPT/調理師

舟橋位於

東京大学理学部卒、東京大学大学院総合文化研究科修士課程終了。大学入学後に筋肉に興味を持ち、自分の体で学んだ理論を体現してきた。日本の筋肉研究で有名な石井直方教授のもとで学び、ティーチングアシスタントとして、学生へのトレーニング指導を行った経験も。自分が学んだ知識を伝えることで、一人でも多くの方の健康をサポートしたいと考えている。

筋トレ分割法とは?全身法とどっちがいいの?

まず最初に、分割法という言葉を聞いたことのない方のために、分割法に関する基本情報を紹介します。詳細な分割について知る前に、まずは分割法とはどのようなものであるかをざっくりと理解してください。

筋トレ分割法とはどんな方法なのか?

分割法とは、日によって鍛える部位を変えることで、トレーニングの効率を高めることを狙う考え方です。分割法を取り入れることで、一度トレーニングした部位が回復するのに十分な休息時間を取ることができるようになります。また、1回のトレーニング時間が短くなる場合があるため、仕事が忙しくて時間の限られている方にもおすすめできます。


筋トレ分割法と全身法それぞれの特徴とメリット・デメリット

続いて、分割法のメリットとデメリットについて解説します。また、分割法と反対の考え方である、全身法のメリットとデメリットも紹介します。分割法では、体の部位を複数の日に分けてトレーニングするのに対し、全身法では1日に全ての部位をトレーニングする点が特徴です。

それでは、まずは分割法のメリットについてです。

  • トレーニング時間が短くなる
    分割法を取り入れると、1日にトレーニングする部位の数が減るため、トレーニング時間を短くできる可能性があります。短時間でトレーニングを終えたいと考える方は、分割法を取り入れると良いでしょう。
  • 疲労が蓄積しにくい
    分割法では、全身を複数の日にちに分けてトレーニングします。そのため、1つの部位を鍛えている間に、別の部位を休ませることができます。そのため、完全な休養日を取る回数が減り、全体としてトレーニングの頻度を増やすことにも繋がります。
  • 高い集中を維持しやすい
    1日にトレーニングする部位の数が減れば、それだけ特定の部位に集中したトレーニングができるようになります。1日で全身を鍛えるメニューだと、高い集中力を保つには、どうしても種目数を減らさないといけません。一方の分割法では、一度に鍛える部位の数が少なくなるため、種目数を増やしても集中が切れにくくなります。また、全身の疲労の蓄積も少なくなるため、それぞれの種目に全力で取り組みやすくもなります。

続いて、分割法のデメリットです。

  • 初心者には向かない
    トレーニング初心者は、正しいフォームを身につけるために、できるだけトレーニング頻度を高める必要があります。1日に全身を鍛えるプログラムを週3回行えば、フォームを練習する機会もそれだけ増えます。一方で、1つの部位を週に1回行うような分割では、練習の頻度が足りないため、なかなか正しいトレーニングフォームを身につけられなくなります。自分のトレーニング習熟度と照らし合わせながら分割法の採用を検討すると良いでしょう。
  • 刺激の量が減る場合がある
    トレーニング上級者になると、1回のトレーニングのボリュームは重量と時間の双方の観点で増加します。そのため、1部位のトレーニングが週に1回でも、筋肉を発達させるのに十分な刺激を得ることができます。一方で、まだトレーニングの強度を高める方法を理解できていない初心者は、1部位週1回のトレーニングでは、筋肥大のための刺激が不足することがあります。まずは1つの部位のトレーニングを週に2回行うようなプログラムを基本にするのがおすすめです。

次は全身法についてです。基本的には、分割法のメリットとデメリットを逆にしたような考え方になります。まずはメリットから紹介します。

  • トレーニング頻度が多くなる
    全身法では、1日に全身の部位をまとめてトレーニングします。1日トレーニングして、翌日はオフにするような計画だと、1週間に3回トレーニングを行うことができる計算になります。初心者がレベルアップするためには、トレーニングの回数を増やして、各種目の正しい動作を身につけることが重要です。そのため、複数の部位を高頻度で鍛えられる全身方から始めることがすすめられます。

続いて全身法のデメリットです。

  • トレーニング時間が長くなる
    1日で全身をトレーニングするため、必然的にトレーニング時間が長くなります。1部位あたり3種目のトレーニングを、胸、背中、脚で行うだけでも合計9種目になります。さらに鍛える部位を細かくして、肩や腕のトレーニングも行いたいと考えると、種目数はさらに増えます。仕事が忙しくて時間が取れない場合は、全身法の採用は難しくなるでしょう。
  • 集中力を切らしやすい
    1日で複数の部位をトレーニングすると、どうしても終盤のトレーニングの質が下がりやすいです。ハードなトレーニングは、肉体面だけでなく精神面にも疲労を与えます。そのため、全身法であまりにもボリュームの多いメニューを組もうとすると、最後まで集中を維持できなくなります。全身法を採用する場合は、疲労の蓄積を考えた種目の選択や配置が鍵となります。

 

分割法はどんな人におすすめ?

ここまでの内容をまとめると、分割法は以下のような人にすすめられます。

  • ある程度トレーニングに習熟した人
    トレーニングが上手くなると、1回のトレーニングあたりの強度が高くなります。そのため、少ないトレーニング頻度でも十分に筋肥大を狙えるようになります。また、分割法を取り入れることで休息期間が長くなり、毎回のトレーニングをフレッシュな状態で行えるという利点もあります。
  • 1回のトレーニング時間を短くしたい人
    分割法は、全身法に比べると1回のトレーニング量が少なくなります。そのため、トレーニングの時間が長く取れない人におすすめできます。出社前に短時間でトレーニングしたいと考えている人には分割法が良いでしょう。一方で、時間は比較的確保できるものの、ジムに行ける曜日が限られているような人は、全身法が合っていると言えます。
     

筋トレ分割法の分割数別比較:2分割、3分割、5分割のメニューと注意点

ここからは実際に、どのようにして分割法のメニューを組んでいくかを解説します。全身をどの程度細かく分けるかで、トレーニングの内容もさまざまに変わります。自身のトレーニング習熟度やジムに行ける頻度を考えて、適するものを選んでみてください。

2分割の筋トレ方法

  • 2分割の分割例
    2分割のトレーニングでは、全身を上半身と下半身に分けて鍛えます。一見すると、上半身の方が鍛える部位が多いため、バランスが取れていないのではと考える方もいると思います。しかしながら、下半身には全身の筋肉の3分の2が存在するため、トレーニングの負荷を考えると、2分割でも理に適っていると言えます。
  • 2分割のメニュー例
    2分割のトレーニングメニューの一例は以下のようになります。
  • 上半身の日
    ベンチプレス(胸・肩・上腕三頭筋)
    インクラインダンベルフライ(胸)
    チンニング(背中)
    ベントオーバーロー(背中)
    ダンベルサイドレイズ(肩)
    バーベルカール(上腕二頭筋)
    クランチ(腹)
  • 下半身の日
    アブダクション(臀筋)
    アダクション(内転筋)
    スクワット(臀筋・大腿四頭筋・ハムストリング)
    ルーマニアンデッドリフト(臀筋・ハムストリング)
    レッグエクステンション(大腿四頭筋)
    シーテッドレッグカール(ハムストリング)
    バーベルスタンディングカーフレイズ(下腿三頭筋)
  • 2分割トレーニングのスケジュール例
曜日トレーニング部位
月曜日上半身
火曜日下半身
水曜日オフ
木曜日上半身
金曜日下半身
土曜日オフ
日曜日オフ

 

3分割の筋トレ方法:PPL法

  • 3分割の分割例
    3分割のトレーニングでは、①押す種目の日、②引く種目の日、③脚の日の3種類でメニューを組みます。この3分割は、”Push”(押す)、”Pull”(引く)、”Leg”(脚)の頭文字を取って、PPLと呼ばれることもあります。2分割トレーニングと比べると、上半身が細かく分かれることになります。そのため、休息をしっかり取って上半身のトレーニング強度を高めたいと考える人におすすめです。
  • 3分割のメニュー例
    3分割のトレーニングメニューの一例は以下のようになります。腹筋は背中の日に組み込まれていますが、時間があれば毎回行っても構いません。
  • 押す種目の日(胸・肩・上腕三頭筋)
    ベンチプレス(胸・肩・上腕三頭筋)
    インクラインダンベルフライ(胸)
    ダンベルショルダープレス(肩・上腕三頭筋)
    ダンベルサイドレイズ(肩)
    バーベルフレンチプレス(上腕三頭筋)
    リバースプッシュアップ(上腕三頭筋)
  • 引く種目の日(背中・肩・上腕二頭筋)
    チンニング(背中)
    ベントオーバーロー(背中)
    チェストサポーテッドロー(背中・肩)
    ダンベルリアレイズ(肩)
    バーベルカール(上腕二頭筋)
    クランチ(腹)
  • 脚の日
    アブダクション(臀筋)
    アダクション(内転筋)
    スクワット(臀筋・大腿四頭筋・ハムストリング)
    ルーマニアンデッドリフト(臀筋・ハムストリング)
    レッグエクステンション(大腿四頭筋)
    シーテッドレッグカール(ハムストリング)
    バーベルスタンディングカーフレイズ(下腿三頭筋)
  • 3分割トレーニングのスケジュール例
曜日トレーニング部位
月曜日押す種目の日(胸・肩・上腕三頭筋)
火曜日引く種目の日(背中・肩・上腕二頭筋)
水曜日脚の日
木曜日押す種目の日(胸・肩・上腕三頭筋)
金曜日引く種目の日(背中・肩・上腕二頭筋)
土曜日脚の日
日曜日オフ


5分割の筋トレ方法:ブロスプリット

  • 5分割の分割例
    5分割は、3分割よりもさらに細かく部位を分けてトレーニングする方法です。具体的には、胸、背中、肩、腕、脚のように分割します。トレーニングに習熟し、1回のトレーニング強度が極めて高くなるような場合は、このような細かい分割が有効になります。
  • 5分割のメニュー例
    5分割のトレーニングメニューの一例は以下のようになります。1部位あたりの種目数が増えるため、トレーニングをやり切る体力のない初心者にはおすすめできません。腹筋はどの部位の日に行っても構いません。

  • ベンチプレス
    インクラインダンベルプレス
    ディップス
    フラットダンベルフライ
    ケーブルクロスオーバー
  • 背中
    デッドリフト
    チンニング
    ベントオーバーロー
    アンダーグリップラットプルダウン
    ケーブルプルオーバー

  • バーベルフロントプレス
    アーノルドプレス
    アップライトロー
    ダンベルサイドレイズ
    ダンベルリアレイズ

  • バーベルカール(上腕二頭筋)
    インクラインダンベルカール(上腕二頭筋)
    バーベルプリーチャーカール(上腕二頭筋)
    ナローベンチプレス(上腕三頭筋)
    バーベルフレンチプレス(上腕三頭筋)
    リバースプッシュアップ(上腕三頭筋)

  • アブダクション(臀筋)
    アダクション(内転筋)
    スクワット(臀筋・大腿四頭筋・ハムストリング)
    ルーマニアンデッドリフト(臀筋・ハムストリング)
    レッグエクステンション(大腿四頭筋)
    シーテッドレッグカール(ハムストリング)
    バーベルスタンディングカーフレイズ(下腿三頭筋)
  • 5分割トレーニングのスケジュール例
曜日トレーニング部位
月曜日
火曜日背中
水曜日オフ
木曜日
金曜日
土曜日
日曜日オフ

 

どの分割方法が最適なのか?

ここまでに、2分割、3分割、5分割のメニュー例を解説しました。全身法も含めると、4種類のトレーニング案があることになりますが、それではどの分割方法が最適なのでしょうか。いくつかの研究結果を参照しながら、分割の考え方を解説します。

分割法のデメリットで紹介したように、細かくトレーニング部位を分割するほど、トレーニングの頻度は少なくなります。2分割や3分割では、1つの部位のトレーニングは週に2回ですが、5分割だと週に1回となります。トレーニング動作が身についてない初心者は、練習の頻度を増やすことが上達につながるため、あまり細かい分割を設定しない方が良いでしょう。また、刺激の頻度と筋肥大の関係について調べた研究では、週1回のトレーニングよりも、週に2回のトレーニングの方が効果が高かったことが分かっています出典[1]

この研究結果だけを見ると、5分割は2分割や3分割に劣っていると思われますが、実際はそうではありません。トレーニングに習熟するにつれて、少ない種目数では筋肉が刺激に反応しなくなってきます。そのため、分割を細かくして1部位あたりのトレーニング量を増やさないといけません。また、そのような高強度のトレーニングを行う場合は、使った部位を回復させるために多くの時間が必要となります。そうすると、自然と5分割のような頻度の少ないメニューに行き着くことになります。

以上をまとめると、トレーニング経験の浅いトレーニング3年目程度までは2分割や3分割でメニューを考えて、それ以上の経験が蓄積した頃に、5分割への移行を考えると良いと言えるでしょう。

 

分割法を成功させる上での注意点

最後に、分割法を成功させるために注意すべき点を説明します。闇雲にトレーニングを分けるのではなく、いくつかの指標を持って取り組むようにしましょう。

継続可能な分割プログラムであること

どのような分割を組むにしても、それが継続できないプログラムでは意味がありません。例えば、トレーニングの刺激を多くすることだけを考えて、2分割を週に3セット(合計6日)行うようなメニューでは、オーバートレーニングになることが容易に想像できます。別の例では、5分割における部位の順番も挙げられます。背中の翌日に脚を配置したり、腕の翌日に胸を配置したりすると、前日の疲労により翌日のトレーニングを満足に行えなくなります。どのような分割においても、オフを十分に取ることが大切です。トレーニング法を試行錯誤することは大切ですが、基本的な考えを見失ったオリジナルメニューに陥ることは避けるようにしましょう。

 

1部位の週当たりのセット数は10-20

1部位の週当たりセット数の設定も大切です。セット数が少な過ぎれば筋肥大の刺激にならないですし、多過ぎればオーバートレーニングに繋がります。適切なセット数やトレーニングボリュームには個人差がありますが、アメリカの大学の研究では、1部位あたり、1週間に少なくとも10セットのトレーニングを行わないと効果が出ないとされています出典[2]ボリュームの上限は、年齢やトレーニング歴によっても変わりますが、1つの目安として20セットを今回は設定します。週に2回トレーニングを行う2分割や3分割では、1回のトレーニングで1部位を10セット程度鍛えるようにすると良いでしょう。

 

適宜ディロードを取り入れること

継続可能なプログラム作りに関連することとして、ディロード(休養期間)を適切に設けることが挙げられます。筋肉を継続的に発達させるためには、トレーニングを熱心に行うことと同様に、十分に回復期間を取ることも大切です。特定のプログラムを3ヶ月ほど続けたら、1週間程度体を休ませると良いです。完全なオフにしても良いですし、軽く有酸素運動を行うような形式もおすすめです。怪我や痛みがある場合に、無理せずに休むことも重要でしょう。
 

まとめ

今回は、分割法について解説しました。

分割法を取り入れることで、1回のトレーニング時間を短くしたり、疲労を溜めにくくしたりすることができます。一方で、細かい分割では、トレーニングの頻度が減ってしまうという欠点もありました。

トレーニング初心者のうちはざっくりとした分割でトレーニングし、経験が増すにつれて、メニューを見直していくのがおすすめです。無闇に種目やセット数を増やすのではなく、週当たりで強度を管理することもポイントでした。

自分のトレーニング習熟度から、ぜひ自分にあった分割を見つけてみてください。

 

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