筋トレに朝食は欠かせない! 朝食における6つのメリットと3つのおすすめ献立を紹介
2023年4月14日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

筋トレ民が朝食で得られるメリット6選

生活リズムを整えたり、体を温めて免疫力を高めたり、昼食や夕食の食べすぎを防いだりと、朝食には様々な効果があることが分かっています。通常より多くの体力を必要とする筋力トレーニングにおいても、朝食がもたらす効果は絶大です。

朝食を抜くことによって筋力トレーニングの効率が高まらないばかりか、折角鍛えたはずの筋肉が分解されてしまうことにもなりかねません。筋力トレーニング中の食事において、最も重要なのが朝食であると言っても過言ではないでしょう。

まずは筋力トレーニングにおいて、朝食を食べることによるメリットを6つ紹介します。

就寝中に消費したたんぱく質を補給し、筋分解を防止する

睡眠中には食事をしていない状態のため、水分やエネルギーが不足した状態にあります。もちろん、筋肉の合成や維持に欠かせないたんぱく質も、夜間の絶食期間中に消費されています。朝起きた時には、この使い果たされた栄養素の補給が不可欠です。そのための食事が朝食であり、これを抜くことで筋肉のみならず、体全体がエネルギー不足となってしまいます。

エネルギー不足となった体は、活動のエネルギーを得るために体の組織を分解しようとします。この時、脂肪組織に蓄えられている中性脂肪だけでなく、筋肉のたんぱく質も標的となります。朝食でエネルギーを補給しない状態では、脂肪のみならず筋肉も減少してしまう、ということですね。

朝食の摂取頻度と除脂肪体重との間に関係があるかどうかを調べた横断研究が、健康な若い男女を対象に行われました。この研究では、朝食の摂取頻度が低いほど、除脂肪体重の割合も低下していたと報告されています出典[1]。朝食の摂取頻度と除脂肪体重との間に相関関係が見られたことから、朝食を抜くことで筋肉量が低下しやすくなることが分かりますね。

就寝中に消費された栄養素を朝食により補充すれば、エネルギー源として筋肉が使われるのを防ぐことができます。日中の筋分解を防止することで、より効率的にトレーニングの効果を得られるでしょう。

 

3食均等にたんぱく質を摂ることで、筋肉の合成効率UP

朝食を摂ることは、筋肉の分解を防ぐためだけでなく、筋肉の合成効率を高めるためにも重要であることが分かっています

筋肉の合成効率を高めるために必要な栄養素といえばもちろん、たんぱく質ですよね。1日の中で、たんぱく質が不足するタイミングを作らないようにすることは、筋肉のたんぱく質を合成するにおいて特に重要です。そのためには、ただ朝食を摂取する、というだけでなく、十分な量のたんぱく質食品を朝食へ取り入れる必要があるのです。

たんぱく質の摂取を3食均等に分けた場合と、夕食に偏らせた場合での、その後24時間の筋肉たんぱく質合成について調べる研究が行われました。この研究では、3食均等に適量のたんぱく質を摂取した場合の方が、夕食に偏った場合よりもたんぱく質の合成量が高かったと報告されています出典[2]

朝何も食べないということはない、という場合でも、トースト1枚とコーヒー、おにぎり1個、など、少量の簡単なもので済ませている、という方は意外に多いのではないでしょうか。

しかし、筋肉の合成効率を高めるには、昼食や夕食と同じレベルで、十分なたんぱく質を摂取することが重要です。ただ朝食を食べればいい、という考えではなく、その中身、特にたんぱく質の量についても十分に気を配る必要がありますね。

 

体温を上げて血行促進、基礎代謝の増加も

朝に体温を上昇させることで全身の血流が改善し、栄養や酸素の筋肉への供給効率を上げることができます。トレーニングにおけるパフォーマンスを高めたり、筋疲労からの回復を早めたりするためにも、朝食の摂取によって体温を上げることは重要と言えるでしょう。

体内に吸収された栄養素の一部は、「食事誘発性熱産生(DIT)」により、体熱として消費されることが分かっています。この食事誘発性熱産生の量は栄養素によって異なり、糖質のみでは摂取エネルギーの約6%、脂質のみの場合は約4%ですが、たんぱく質のみの場合は約30%にもなります。通常の食事がこれらの混合食であるため、約10%と推測されています出典[3]。たんぱく質の多い食事をしている場合には、より多くの体温上昇効果が得られる可能性がありますね。

朝食の摂取が、午前中の体温に与える影響について調べた調査においては、朝食を摂取しない場合には、体温が上昇しないまま、昼食までの午前中ずっと低体温の状態が続いた、ということが示されています出典[4]。朝食の摂取が、就寝中に低下した体温を上げるためのカギになっていることがよく分かりますね。

体温を高く保つことは基礎代謝の向上にも繋がります。体温が1℃上昇するごとに、エネルギー代謝が13%程増加します出典[5]。ダイエット効果を期待して筋力トレーニングを行っている方にとっては、朝食は特に取り入れたい習慣のひとつですね。

 

活動に必要な栄養補給で、筋トレのパフォーマンスが向上する

当然のことながら、食事によりエネルギーの補給が行えます。朝にトレーニングを行う場合、朝食でのエネルギー補給は欠かせないものとなります。エネルギー不足のまま運動をすることで、筋力トレーニングの効率が下がることは、容易に想像できるのではないでしょうか。

運動のパフォーマンスを向上させたい場合、まず摂取すべきはご飯やパンなどの糖質食品です。筋肉に蓄えられているグリコーゲンの量が多いほど、持久力が向上し、より長時間の運動が可能となります。この筋グリコーゲンの量を増やすには、運動前に高炭水化物食を摂取することが有効です出典[6]

また、この糖質を体内でエネルギーに変えるためには、ビタミン類の摂取も欠かせません。特にビタミンB1は糖質代謝に関わる重要な栄養素であり、ビタミンB1が不足した状態で糖質食品を摂取しても、折角の糖質をエネルギーとして使うことができなくなってしまいます。

お米だけ、パンだけ、といった糖質食品単体で済ませるのではなく、野菜や動物性食品などを取り入れた朝食を摂取することが、パフォーマンス向上のためには重要ですね。

 

セロトニン・メラトニンの材料を朝に摂取して、睡眠の質を高める

健康な若年成人による、徹夜でのホルモンへの影響を調べた研究においては、一晩の徹夜によって血中のテストステロンが24%減少しただけでなく、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールを21%増加させ、筋肉のたんぱく質合成を18%も減少させたと報告されています出典[7]

このように、十分な睡眠を摂ることは、ホルモンバランスを整え、筋肉の合成効率を高めたり筋疲労の回復を早めたりするために重要です。加えて、筋力トレーニングの効果UPのためには、睡眠の質を高めるための体作りも意識して行う必要があるでしょう。

私たちの睡眠の質を高めてくれるホルモンとして、睡眠ホルモンの「メラトニン」と、その合成に関わる、幸せホルモンの「セロトニン」が関係しています。

セロトニンは朝に体内で合成され、気持ちを安定させる効果を発揮します。このセロトニンを材料として、夜になるとメラトニンが合成、分泌されるのです。日中のセロトニンが多いほど、夜間のメラトニン分泌も増加し、ぐっすりと眠れるようになるということですね。

セロトニンは、トリプトファンという必須アミノ酸を材料としています。特に筋力トレーニング中は筋肉の合成のため、必須アミノ酸の需要が高まっています。筋肉の合成効率を高め、かつ十分な量のセロトニンを合成するためには、トリプトファンを含む食品を朝食として摂取することが効果的ですね

 

朝の排便を習慣化し、高たんぱく質食で荒れがちな腸内環境を整える

筋力トレーニング時の食事において、たんぱく質を摂取することは非常に重要です。しかし高たんぱく質食を続けていると、腸内で悪玉菌が発生しやすく、腸内環境が乱れやすいことが問題となります。

腸内環境の乱れは便秘や肌荒れを始めとした、体の不調を招きがちになります。さらにたんぱく質など栄養素の吸収率も落ちるため、筋肉の合成効率が下がったり、セロトニンの材料不足に陥ったりといったトラブルも生じてしまいます。

腸内環境の乱れから便秘が引き起こされ、便秘の悪化によってさらに腸内の悪玉菌が増えてしまいます。高たんぱく質食による腸内環境の悪循環を断ち切るためには、まず便秘を解消する必要があるのです。

そのために欠かせないのが朝食です。夜は、長時間食べ物を胃に入れていない状況が続いており、腸の動きも緩やかになっています。この状態から腸を活発に動かして排便を促すためには、朝食を食べて、食べ物を消化管へと送り込むことが重要です

善玉菌を増やすための発酵食品や、食物繊維が豊富な野菜や豆類などを、朝食メニューに取り入れるとさらに効果的です。腸内で善玉菌が優位になれば、悪玉菌の増殖を抑えることもできます。便秘や肌荒れを改善し、栄養素の吸収率を高める効果が期待できますよ。

 

朝食ではどのくらいたんぱく質が必要?

筋力トレーニングの効率を高めるにおいても、体調を整えてパフォーマンスを向上させるにおいても、朝食の摂取は不可欠です。また、筋肉の合成効率を高めるためには、たんぱく質の摂取量が特に重要ですね。

では、朝食時にはどの程度のたんぱく質を摂れば良いのでしょう。目安は「1日に必要なたんぱく質の1/3」です。1日に60gのたんぱく質が必要である場合には、20gのたんぱく質を朝食で摂取できればベスト、ということですね。

1日に必要なたんぱく質は、体重と、どの程度の筋トレを行うかによって異なります。激しい筋トレを行う場合にはより多くのたんぱく質が必要になります。
以下を目安に、1日に摂りたいたんぱく質量を計算してみましょう。

  • 軽負荷の筋トレの場合:体重1㎏あたり1.2~1.4g
  • 高負荷の筋トレの場合:体重1㎏あたり1.6~1.7g

たとえば体重60㎏の人が軽負荷の筋トレをする場合、1日72~84gのたんぱく質を摂取する必要がある、ということになります。この場合、朝食では24g以上のたんぱく質を摂取するのが理想です。

朝食に取り入れやすい高たんぱく質食品の、たんぱく質量はそれぞれ以下のようになっています。

  • 卵:1個50gにつき6.1g
  • 納豆:1パック40gにつき6.6g
  • 冷奴(絹ごし豆腐):50gにつき2.65g
  • サバ缶:可食部100gにつき20.9g
  • 焼き鮭:1切70gにつき15.6g
  • 牛乳:コップ1杯200mLにつき6.6g
  • ヨーグルト:100gにつき7.2g
  • チーズ:30gにつき7.7g
  • サラダチキン:100~120gにつき約21~25g

これらの食品を組み合わせて、必要なたんぱく質量を補えるようにしてみましょう。卵やチーズをプラスすることで、たんぱく質量の調整がしやすくなります。不足分はプロテインで補うようにするのも効果的ですね。

 

朝食におすすめのたんぱく質食品5選

たんぱく質食品といえば、肉や魚が思い浮かぶという方も多いでしょう。しかし忙しい朝に肉料理や焼き魚を用意するのは難しいものですよね。そこで以下では比較的手軽に用意ができるたんぱく質食品と、その成分に見る有効性について紹介しましょう。

1個で約6gのたんぱく質食品を摂取でき、目玉焼きや卵焼き、温泉卵にオムレツなど、単品でも様々な料理を作れる卵は優秀なたんぱく質食品ですよね。卵の摂取によりテストステロンが増大する効果が得られることも分かっているなど、筋力トレーニング中には是非摂取したい食品のひとつです。

筋肉の合成効率を高めるためには、全卵での摂取を

卵のたんぱく質は主に卵白に含まれており、卵黄には脂質が豊富です。このように書くと、たんぱく質の摂取のためには卵白のみを食べた方が良いのでは、と考えたくなるかもしれません。しかし実は筋力トレーニングの効率を高めるにおいては、全卵での摂取の方がより効果的であることが分かっているのです。

筋力トレーニングを行う男性を対象に行われた、テストステロンの値を調べるランダム化比較試験において、全卵と卵白との比較が行われました。この試験においては、運動直後に全卵を3個食べたグループは、卵白のみを6個分食べたグループと比較して、12週間にわたるトレーニング後の成果がより大きかったと報告されています。テストステロン値の増大、握力の向上、筋肉量の増加、体脂肪率の減少といったあらゆる項目において、全卵を食べたグループの方が、よい成績を残していたのです出典[8]

体内のインスリン分泌量を高め、たんぱく質などをより多く筋肉へ蓄えるようにするには、脂質の摂取もある程度必要であることが分かります。卵は脂質とたんぱく質のバランスの取れた優秀な食材であるため、是非とも全卵で食べるようにしましょう。

生卵はたんぱく質の吸収率を低下させる

なお、卵を使ったお手軽な朝食として、卵かけご飯を思い浮かべる方がいらっしゃるかもしれません。しかし生卵は筋力トレーニング中に食べる方法としてはあまりおすすめできません。その理由は、たんぱく質の吸収率が低下するという点にあります。

たんぱく質の消化酵素であるトリプシンの働きは、生卵に含まれるオボムコイドという物質によって阻害されてしまいます。これにより、生卵のたんぱく質吸収率は、卵全体の51%ほどにまで下がるとも言われているのです

卵は加熱することで、オボムコイドのトリプシン阻害効果が抑制され、たんぱく質の消化率が上昇することが分かっています。たんぱく質食品として卵を食べる場合には、卵焼きや固ゆで卵など、熱を十分に通した料理での摂取が良いでしょう。

 

牛乳や乳製品

牛乳に加え、ヨーグルトやチーズなどの乳製品も、朝に摂りたいたんぱく質食品のひとつです。これらはたんぱく質の摂取源としてだけでなく、筋肉の収縮に必要なカルシウムの供給源としても有効ですね。牛乳や乳製品に含まれるたんぱく質は、ホエイプロテインとカゼインプロテインに大別されます。

ホエイプロテインが豊富な牛乳やヨーグルトは朝食向き

牛乳やヨーグルトにはホエイプロテインが豊富に含まれています。ホエイプロテインは体への吸収速度が非常に早いため、筋肉へ速やかにたんぱく質を供給できる、という特徴があります。就寝時に消費されたたんぱく質を速やかに補給する手段として、牛乳やヨーグルトは適していると言えますね。

また、運動後の糖質補給に、ホエイプロテインを豊富に含む牛乳を加えることで、筋肉の回復速度が高まることも分かっています出典[9]。朝食後に筋力トレーニングをする習慣のある人は、牛乳やヨーグルトを用意しておき、トレーニング後のタイミングで摂取するとよいでしょう。

カゼインプロテインが豊富なチーズは腹持ちの向上に

一方、チーズに豊富なカゼインプロテインは体への吸収がゆっくりであるため、体内で長持ちするたんぱく質として知られています。このカゼインプロテインは、夕方の運動後や就寝30分前に摂取することで、筋肉の回復が促進され、筋肉の損傷による炎症反応や筋肉痛を緩和することが分かっています出典[10]。そのため筋肉の回復を目的とするのであれば、チーズを摂取するゴールデンタイムは夕方以降、ということになりますね。

しかしカゼインプロテインは腹持ちが良いため、朝食やその後の食事の食べすぎ防止にも繋がります。朝食や昼食を食べ過ぎてしまう傾向がある、午前中に間食をしがちである、という場合には、空腹感や食欲のコントロールのため、カゼインプロテインが豊富なチーズを朝食に加えてみるといいかもしれません。

 

納豆

納豆や豆腐、厚揚げに味噌など、日本では様々な大豆製品を安く手に入れることができます。大豆の植物性たんぱく質は、必須アミノ酸のバランスが良いことで知られており、動物性食品に匹敵するアミノ酸スコアを誇ります。たんぱく質の供給源として優れていることが分かりますね。

豆腐の味噌汁、厚揚げの味噌炒めなど、大豆製品を使った料理は複数ありますが、今回はその中でも、納豆の、腸内環境を整える効果について紹介しましょう。

善玉菌を取り入れることで、悪玉菌の増殖を抑える

納豆は「納豆菌」により作られる発酵食品です。この納豆菌は善玉菌として腸内環境を整えるために活躍してくれるため、高たんぱく質食により増えがちな悪玉菌の活動を抑える効果が期待できますね。

食物繊維やオリゴ糖が善玉菌をさらに増やす

さらに豆腐や厚揚げと異なり、大豆を丸ごと使っている大豆由来の食物繊維やオリゴ糖も摂取できます。これらは消化されず大腸まで届き、腸内で善玉菌のエサとして機能してくれます。

2つの効果を組み合わせた「シンバイオティクス」が、強力な整腸作用を発揮する

腸内環境を整えるために有効な食品は、善玉菌を含む発酵食品「プロバイオティクス」と、食物繊維やオリゴ糖など、善玉菌のエサとなる成分を含む食品「プレバイオティクス」に大別されます。この2つを組み合わせて食べる「シンバイオティクス」が、善玉菌を増やすにおいてより効果的であることが分かっています出典[11]

納豆はそれ単体でプロバイオティクスとプレバイオティクス、2つの性質を併せ持つため、腸内環境を整える効果も絶大です。たんぱく質の補給を行いつつ、高たんぱく質食品によって荒れがちな腸内環境を整える効果を持つ納豆。朝食のメニューとして、1日1パックを継続することをおすすめします。

 

たんぱく質食品である魚は、是非とも朝食に取り入れたい食品のひとつです。しかし朝に焼き魚や煮物などを作る時間はなかなか取りづらいものですよね。そんな時に活用できるのが、サバ缶や鮭缶、イワシ缶などの缶詰食品です。長期保存ができるため、他のたんぱく質食品のストックを切らしたときの救世主としても活躍してくれますね。

魚には良質なたんぱく質の他にも、筋力トレーニングと関係のある成分が含まれています。中でも、特に豊富なビタミンDとω‐3系脂肪酸について解説しましょう。

ビタミンDにはテストステロンを高める嬉しい効果も

カルシウムの吸収率を高める効果があることで知られるビタミンDですが、テストステロンを増大させる働きもあることが分かっています。

糖尿病でない男性を対象として、ビタミンDとテストステロンとの関係を調べるためのランダム化比較試験が行われました。この研究では、ビタミンDの補給を1年間続けたグループは、そうでないグループと比較して、総テストステロンおよび遊離テストステロンが上昇したと報告されています出典[12]

テストステロンの中でも、血中にテストステロン単体の形で存在する「遊離テストステロン」は、40歳を過ぎてから急速に減少することが分かっています。しかしこの遊離テストステロンこそが、筋肉の合成効率UPに繋がる重要物質。ビタミンDの豊富な魚類を摂取することで、筋力トレーニングの効率が高まる可能性がありますね。

ω-3系脂肪酸の持つ抗酸化作用が、疲労や炎症を軽減する

ω‐3系脂肪酸は、強力な抗酸化作用を持つことで知られています。血液や血管の状態を良好に保ったり、激しいトレーニングによる筋肉の炎症を防いだりする効果が期待できます

さらにω‐3系脂肪酸の一種であるDHA、この補給によってもテストステロン濃度が改善することが確認されています出典[13]。ビタミンDとのダブル効果で、テストステロンの増加の効果がより期待できるでしょう。

 

野菜類や穀類からもたんぱく質を摂取しよう

たんぱく質が含まれているのは動物性食品や大豆だけ。そんな風に考えていませんか?

実は野菜やお米、パンなどにもたんぱく質は含まれているのです。にもかかわらず、野菜や穀類がたんぱく質の摂取源として注目されない理由は、やはり量が少ないことと、アミノ酸スコアが動物性食品と比較して低いことにあります。

たとえば白米では、リジンという必須アミノ酸が大きく不足しています。必須アミノ酸は全て十分に揃っていないと、たんぱく質を合成することができないため、他の必須アミノ酸がどれだけ豊富に含まれていても、不足したリジンが原因となり、たんぱく質の合成効率は大きく下がってしまうのです。

しかし、こうした必須アミノ酸の偏りがある野菜や穀類も、様々な種類を組み合わせて食べることで必須アミノ酸の合成に必要な量を満たすことができます。白米で最も不足している必須アミノ酸はリジンですが、大豆にはリジンが豊富に含まれています。そのため白米と大豆製品を同じタイミングで食べることで、白米に含まれる必須アミノ酸をより多く利用できるようになる、という「アミノ酸の補足効果」が期待できるのです

もちろん、穀類は糖質の補給源として、野菜はビタミンやミネラル、食物繊維の補給源としても非常に重要です。たんぱく質の観点だけではなく、朝食の栄養バランスを整える意味でも、これらの食材を取り入れることには大きな意義がありますね。

 

朝食に摂りたい、高たんぱくなメニュー3選

ここまで、朝食の重要性と、朝食に取り入れたい食品について解説してきました。以下ではこれらの食品を組み合わせた、筋力トレーニングの時期に是非とも摂取したい、おすすめのメニューについて紹介します。

たんぱく質の必要量は、体重やトレーニングの強度によって異なりますが、ここでは例として先程の「体重60kgの人が軽負荷のトレーニングを行う場合」を想定して考えましょう。

このとき、1日の摂取目安量は72~84gとなります。このうち3分の1を朝食に摂取したいため、たんぱく質を24g以上含むメニューが適している、ということになりますね。

穀類や野菜、フルーツなどにもたんぱく質は含まれています。これらからの摂取量を加味して、高たんぱく質食品と呼ばれる動物性食品や大豆製品からは、20gのたんぱく質を摂取できるようにしてみましょう。

以下のメニューでは、動物性食品や豆製品などからの摂取が20g以上になるように、食品の種類や量を調節しています。どんなものをどれだけ食べればよいかイメージしにくい、という方は、ぜひ参考にしてみてください。

和食:納豆ご飯、焼き鮭、ほうれん草とキノコの味噌汁

納豆1パックで約7g、焼き鮭(70g)で約16gのたんぱく質を摂取できます

焼き鮭は前日のうちに焼いておき、朝は温めるだけの状態にしておくと準備にかかる時間を短縮できます。より簡単に魚を食べたい場合には、調理不要で長期保存も可能な、鮭缶やサバ缶に置き換えてみましょう。

ほうれん草からは鉄分のほか、硝酸塩を豊富に摂取できます。鉄不足による貧血状態はトレーニングのパフォーマンスを大幅に落としてしまうため、ヘム鉄を含む肉類からだけでなく、非ヘム鉄を多く含むほうれん草や小松菜からの摂取も重要となります。

また、硝酸塩は血管拡張作用のある一酸化窒素(NO)に代謝され、血流を改善する効果をもたらします。筋肉へのエネルギー補給や疲労回復の効率化が期待できますね。

また、キノコにはテストステロンの増大に関わるビタミンDが豊富に含まれています。特にマイタケはビタミンDの含有量が高いため、炒め物や味噌汁に加えるキノコの候補として、特におすすめしたい食品です。

 

洋食:トースト、ゆで卵、ブロッコリーと豆のサラダ、ギリシャヨーグルト

ゆで卵(50g)で約6g、ブロッコリー(60g)で約3g、蒸し大豆(30g)で約3g、ギリシャヨーグルト(100g)で約9gのたんぱく質を摂取できます。もう少したんぱく質量を増やしたい場合には、ゆで卵を増やしたり、チーズをプラスしたりするのも良いですね。

また、ブロッコリーと大豆は、テストステロン量を維持するにおいて是非ともおすすめしたい組み合わせのひとつです。

ブロッコリーには「インドールー3-カルビノール」という機能性成分が含まれています。このインドール-3-カルビノールには、体内のテストステロンを、女性ホルモンであるエストロゲンに変換する酵素、アロマターゼの発生を抑える効果があります。

大豆由来のイソフラボンである「ゲニステイン」にも同じ効果があり、2つを組み合わせて摂取することで、テストステロンの保護効果が高まることが分かっています出典[14]

運動時に消費されやすいテストステロンの濃度をより高い状態で保つためにも、ブロッコリーと大豆の組み合わせを活用してみましょう。

 

コンビニ食:おにぎり、サラダチキン、緑黄色野菜のサラダ

コンビニで手っ取り早くたんぱく質を補給したい場合、最もお手軽なのがサラダチキンです。

商品の種類にもよりますが、鶏むね肉を使用したサラダチキン(100~120g)からは、21~25g程度のたんぱく質を摂取できます。これ一品で十分なたんぱく質を供給できるため、あれこれと沢山購入するのは面倒、という場合のお助け食品としても活用できますね。

コンビニやスーパーで食事を調達する際には、どうしても野菜不足になりがちです。野菜を使ったサラダやおひたし、煮物などを意識して購入するようにしましょう。

また、コンビニのおにぎりには、自宅で食べる温かい白米からでは得られない、嬉しい効果があります。コンビニやスーパーの冷たいおにぎりには「レジスタントスターチ」が多めに含まれているのです。

白米やパスタ、じゃがいもなどに含まれるでんぷんは、冷やすことでその一部がレジスタントスターチという成分へと変化します。レジスタントスターチは消化を受けないまま大腸へと届き、食物繊維に似た働きをすることが分かっています出典[15]

冷めたままでも美味しく食べられるコンビニのおにぎりを食べることで、糖質補給だけでなく、血糖値の上昇を緩やかにして腹持ちを良くしたり、腸内環境を整えたりする効果が同時に得られます。

脂質が少なく、手軽に食べられるおにぎりは朝の主食として優秀です。コンビニで朝食を用意する際には是非、主食の候補としておにぎりを検討してみてくださいね。

 

忙しい朝でもこれはやめよう! 避けたい朝食4選

出勤の準備や家事など、何かと忙しい朝では、栄養バランスの整った朝食を用意する時間も、品目の多い食事をゆっくり食べる時間も、なかなか取れないものです。時短のため、つい簡便なもので済ませがちになってしまいますよね。

しかし「食べないよりマシ」という考えで用意したお手軽な朝食が、逆に筋肉量の合成や疲労回復の妨げとなってしまう場合もあるのです。以下では筋力トレーニングの妨げとなるおそれのある、危険な朝食たちについて解説します。

菓子パン

クリームパンやチョココロネ、メロンパンなど、甘くて美味しい菓子パンを朝食べることで、良い気分で1日をスタートさせようと考えている人もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし精製された小麦粉や砂糖、生クリームやチョコレートなどが使われている菓子パンは、成分だけ見ればショートケーキやエクレアなどの洋菓子類と大差ありません。高糖質かつ高脂質で、たんぱく質やビタミンはほとんど入っていない「嗜好品」。それが菓子パンであると認識しておきましょう。

筋力トレーニングにおいて、脂質を多量に摂取することはおすすめできません。確かに脂質を摂ることで、筋肉の活動が活発になる、運動中の脂質利用量が増加するといった、一部メリットとなる効果も確認されています。しかしそれ以上にデメリットが大きく、体脂肪量や体重を増加させたり、エネルギーを代謝するための酵素の働きを抑制したりすることが分かっているのです

これらのデメリットが大きいために、ヒトにおいては、脂質の多量摂取による明確な疲労軽減効果や運動パフォーマンスを向上させる効果は認められていません出典[9]。そのため、脂質を多量に摂取するメリットはほぼないと考えるべきでしょう。

菓子パンはあくまで嗜好品。毎朝摂取するパンの選択肢からは外して、甘くないパンやおにぎりへの置き換えを検討してみましょう。

 

砂糖入りのコーンフレークやシリアル

シリアルやコーンフレークを朝食として食べている人もいるのではないでしょうか。牛乳をかけて食べることで、たんぱく質を美味しく補給できる点を、筋力トレーニングにおけるメリットと考える方もいらっしゃるかもしれませんね。

ただしシリアルやコーンフレークは、砂糖で甘めに味付けされているものが多く、朝食としてこれらを食べると、朝食後の血糖値だけでなく、昼食後の血糖値も上がりやすくなってしまいます

朝食の内容が、1日の血糖値の上がり方を左右すると言っても過言ではありません。砂糖の多いシリアルを毎日食べていると、高血糖状態を引き起こしやすい体になり、インスリン抵抗性のリスクが高まってしまいます。

インスリン抵抗性とは、インスリンの分泌量が多くなることで細胞がインスリンに慣れてしまい、インスリンの効きが悪くなってしまう現象のことです。筋肉へのエネルギー補給や疲労回復には、インスリンによる筋グリコーゲンの貯蔵が不可欠。筋力トレーニングの質を大きく下げる原因となるインスリン抵抗性は、なんとしてでも避けたいものです。

1日の血糖値の上がり幅を緩やかにしてインスリン抵抗性を防止するためにも、朝から高糖質な食品を、それ単体で摂取することは避けた方が良いでしょう。

 

野菜ジュース

朝に野菜を用意するのは大変だから、とりあえず野菜ジュースだけでも飲んでおこう。そうした意識から、毎朝野菜ジュースを飲んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。こうした野菜への意識はとても素晴らしいことですが、残念ながら野菜ジュースには、私たちが野菜に期待している成分の多くが取り除かれてしまっているのです

ジュースにする過程で、繊維質は全て取り除かれてしまっているため、不溶性食物繊維はほとんど残っていません。また加熱処理を行うため、ビタミンCもほぼ壊れてしまっています。さらに機能性成分であるポリフェノール類は、野菜の皮部分に豊富です。皮を取り除いて加工する野菜ジュースでは、摂取の効率が大きく下がってしまいます。

また、野菜ジュースは飲みやすくするために、食塩や砂糖、人工甘味料が使われている場合があります。血糖値をいたずらに上げるだけの飲み物になっている可能性もあるため、野菜はできるだけ形のある状態で、口に入れるようにしましょう。

ただし、トマトに関しては、トマトジュースの形で摂取するのが効率的と言えます。強力な抗酸化物質であるリコピンの吸収率は、加熱することでより高まります。筋力トレーニング中に野菜ジュースを飲みたいと考える場合には、無添加のトマトジュースを選んで飲むようにしてみましょう。

 

プロテイン単体

不足しているたんぱく質の補強手段として、プロテインは非常に優れた食品です。しかしプロテイン「だけ」を摂取する方法はおすすめできません。

プロテインを冷たい飲み物に混ぜて、朝食として飲むと、胃腸などの消化器に負担が掛かってしまいます。また、プロテインには食物繊維や糖質が不足しているため、これ単体で朝食時に摂りたい栄養素を全てカバーすることは困難です。

糖質が不足した朝食では、折角十分にたんぱく質を摂取しても、不足したエネルギーを補うためにたんぱく質が分解されてしまいます。筋肉の合成効率を高めるために摂取したはずのたんぱく質が、エネルギーとして使われてしまっては本末転倒ですよね。

たんぱく質が筋肉の合成に使われるためには、エネルギーとして使える糖質の補給も重要です。ご飯や野菜類などと合わせての摂取を心掛けましょう。

 

まとめ

体へのエネルギーやたんぱく質の補給を行うにあたって、朝は最も重要なタイミングです。
朝食を抜くのはもちろん、トーストにコーヒーだけ、プロテインだけ、といった、簡便すぎるもので済ませてしまうのも、筋肉にとっては良くありません。

糖質とたんぱく質を十分に摂り、野菜や発酵食品で体調を整える効果をプラスすることで、筋力トレーニングの効率を高めることができます。良質な朝食を毎日継続して、健康的で引き締まった体を手に入れましょう。

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