牛丼で効率よくバルクアップ!筋トレ中の牛丼活用法を解説
2024年2月23日更新

監修者

NP+編集長/NESTA-PFT

大森 新

筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

筋力トレーニングに牛肉が効果的な5つの理由

食べ応えがあり、出先でも外食チェーン店を利用して簡単に食べられる牛丼は、日本人に人気のメニューです。

しかし牛丼は高カロリーというイメージが強く、引き締まった体を作るための食事としては適していないと考える方もいるかもしれません。

しかし牛丼にはトレーニーに嬉しい成分が豊富に含まれており、適切に食べればトレーニングの質を高める作用が期待できます。

まずは筋力トレーニングにおける牛丼のメリットについて解説しましょう。

豊富な糖質で筋グリコーゲンを回復

チェーン店にもよりますが、一般に牛丼の「並盛」には白米が200~260g程度使用されています。筋力トレーニングを行う男性にとって十分な量の白米を摂取できるため、牛丼は糖質補給の手段として適していると言えるでしょう。

速やかに吸収され、血糖値を急激に上げる白米は、筋肉にグリコーゲンを蓄えるための手段として効率的です。激しいトレーニングの後は筋グリコーゲンの消耗が激しいため、速やかに糖質を補給し筋グリコーゲンの再合成を促しましょう。

また筋肉の消耗や損傷を回復するためにも、エネルギー源である糖質食品の摂取は欠かせません。速やかに吸収される白米を牛丼から摂取することで、筋肉痛や筋疲労を軽減する効果も期待できそうです。

 

たんぱく質で効率よく筋肥大

牛丼の具である牛肉からはたんぱく質を豊富に摂取できます。筋肥大を効率化させるには、筋肉の合成効率が高まる運動後に高たんぱく質食品を摂取する必要があります。注文から提供まで時間がかからない牛丼を活用すれば、速やかにたんぱく質補給を行えるでしょう。

牛肉はたんぱく質のバランスがよいことでも知られています。筋肉などの体のたんぱく質を合成するためには、20種類のアミノ酸が必要です。中でも体内で合成できない9種類の必須アミノ酸は、食事からの摂取が欠かせません

牛肉は必須アミノ酸のバランスを示す「アミノ酸スコア」が最大の100であり、筋肉の合成により役立つ食品です。筋力トレーニング中の食事として、牛丼のアミノ酸組成は優れていると言えるでしょう。

また、必須アミノ酸の中でも牛肉に豊富なロイシンは、筋肉の合成を促進させ、筋損傷からの回復を早めるように働きます。

2020年にカナダのトロント大学で発表された論文において、若年男性20名がロイシンを1日3回、4gずつ摂取したところ、筋肉のたんぱく質合成効率や筋力の増加に加え、24時間後に知覚される筋肉痛が約30%、48時間後では約15%軽減されたと報告されています出典[1]

手軽に食べやすい牛丼を活用して、筋肉の合成や筋肉痛の軽減をサポートしましょう。

 

牛肉のカルニチンでパフォーマンスUP

牛肉に特徴的な成分として、L-カルニチンというアミノ酸由来の物質があります。

カルニチンは長鎖脂肪酸を、細胞のエネルギーを生産する場所であるミトコンドリアに運搬し、燃焼する働きがあります。体内にあるカルニチンのうち90%は骨格筋に貯蔵されているため出典[2]筋肉における脂肪酸のエネルギー変換効率は、ミトコンドリア内のL-カルニチン量により変化すると考えられます出典[3]

2011年にスウェーデンにて発表されたジャーナルでは、カルニチンの摂取により筋肉中のカルニチン量が増加し、30分あたりの運動パフォーマンスが11%増加することが示されてています出典[4]

長鎖脂肪酸は本来、体脂肪として合成されやすい栄養素です。牛バラ肉は長鎖脂肪酸の多い食品ですが、L-カルニチンの存在により体脂肪合成のリスクが比較的低い食品であるとも言えそうですね。

脂質代謝を効率化させ、運動のパフォーマンスを高めるように働く牛肉を、牛丼として手軽に摂取しましょう。

 

飽和脂肪酸でテストステロン合成をサポート

牛肉には飽和脂肪酸、とくに脂肪の合成に使われやすい長鎖脂肪酸が豊富に含まれています。体脂肪合成のリスクが高いため、トレーニング中に食べるのは控えるべき、と考える方もいることでしょう。

しかしL-カルニチンの存在により体脂肪合成のリスクを抑えられるほか、適量の飽和脂肪酸は運動のパフォーマンスを高めるためにも重要です。やる気や活力、筋肉の合成効率を高めるテストステロンの合成には、飽和脂肪酸の存在が欠かせません

スイスの国立公衆衛生研究所で30人の男性を対象に行われた試験によると、食事からの脂肪量、および脂質全体に対する飽和脂肪酸の割合が減少するほど、総テストステロンや遊離テストステロンの血清濃度が低下したと報告されています出典[5]

体内のテストステロンは、たんぱく質など、他の物質と結合している結合テストステロンと、血液中にそのままの形で存在する遊離テストステロンとに分けられます。

やる気や活力、筋肉の合成効率を高めるように働くのは遊離テストステロンの方であり、トレーニーにとっては遊離テストステロンの量の維持が重要です。

遊離テストステロンは40歳を過ぎた頃から大きく減少する傾向にあります。牛肉から飽和脂肪酸を適度に摂取し、テストステロンの不足が起こらないよう食事を整えましょう。

 

玉ねぎのケルセチンで筋疲労や筋肉痛を軽減

牛丼に使用される玉ねぎには、ポリフェノールの一種であるケルセチンが含まれています。ケルセチンには抗酸化作用や抗炎症作用があり、体内で発生した活性酸素の働きを軽減する効果が期待できます。

激しいトレーニングにより過剰に発生した活性酸素は筋細胞にダメージを与え、筋肉の損傷や筋肉痛を引き起こします。抗酸化能力は私たちの体にもある程度備わっていますが、食品から抗酸化物質を摂取することで、筋肉を保護する効果がより期待できるでしょう。

2020年にイタリアのローマ大学から発表された論文では、ケルセチンを補給しない場合、運動後の筋力が運動前の51.2%まで低下するところ、ケルセチンを補給した場合では41.0%と、筋力低下を抑える効果が確認できたと報告されています出典[6]

ケルセチンは熱に強い物質であるため、牛丼のように十分煮込んだものでも損失が少なく効率的に摂取できます。十分に煮込まれたおいしい玉ねぎを十分に摂取して、筋損傷からの回復や痛みの軽減に役立てましょう。

 

トレーニーの牛丼活用法

牛丼からは、豊富な糖質やたんぱく質に加え、様々な機能性成分を摂取できます。適切なタイミングや量で摂取することで、トレーニングの質を高める効果が期待できるでしょう。

この章ではトレーニーが牛丼を食べる際、意識したいポイントを4つ解説します。

バルクアップ期間におすすめ

一般的なチェーン店で提供される牛丼には「ショートプレート」と呼ばれる部位の肉が使用されることが多いようです。

ショートプレートはバラ肉の部位の一部であり、焼肉店では「さんかくバラ」の名前で提供されています。脂身のうま味と甘みが強く人気の部位ですが、バラ肉であるため脂質量がかなり多めです。

【輸入牛肉100gあたりの栄養素(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年版(八訂)より)】出典[7]

 カロリーたんぱく質脂質
牛バラ肉338kcal14.4g32.9g
牛ヒレ肉123kcal20.5g4.8g

牛肉の中でも比較的低脂質である牛ヒレ肉と比較すると、カロリーは約3倍、脂質は約7倍であり、バラ肉の脂質量の多さが際立ちます。

L-カルニチンの働きにより、牛肉の飽和脂肪酸はエネルギーとして消費されやすい性質があります。しかしエネルギーとして消費しきれない分は当然ながら脂肪として蓄えられてしまいます

脂質はエネルギー密度が1gあたり9kcalと非常に赤く、バラ肉、ひいては牛丼のカロリーを押し上げる原因となっています。筋肉量を積極的に増やしたいバルクアップ期間中には適していますが、体脂肪を落として体を引き締めたい期間や、ダイエット中の食事にはおすすめできません。

高脂質なバラ肉を使用した牛丼は、筋肉量を増やしたい期間にのみ積極的に取り入れましょう。

 

トレーニング後の食事に

トレーニング後の食事が重要と言われる理由は、運動直後から30~60分後にかけて、筋グリコーゲンを蓄えたり筋肉を合成したりする働きが格段に高まるためです。

2013年にオランダのマーストリヒト大学から発表された論文では、運動後に約20gのたんぱく質を摂取すると筋肉の合成速度が最大化すると説明されています出典[8]

2002年にアメリカのテキサス大学から発表された論文においては、たんぱく質と糖質の組み合わせは、同じカロリーの糖質のみの補給よりも、筋グリコーゲンの合成量を約1.4倍に増加させたと報告されています出典[9]

以上の情報から、運動後のたんぱく質補給は筋肥大に欠かせないものであり、たんぱく質と糖質の組み合わせで筋グリコーゲンの合成効率がより高まることが分かります。高糖質かつ高たんぱく質の牛丼を食べるタイミングとして、運動後が最も適していると言えそうですね。

なお、トレーニング前にも糖質補給は非常に重要ですが、牛丼には消化に時間のかかる脂質が含まれるため、あまり適していません。トレーニング前には消化に負担がかかりにくく、吸収の素早いシンプルなおにぎりや素うどんを選びましょう。

 

ご飯の量を増やしすぎない

糖質を増やせば増やすほど筋グリコーゲンを効率的に回復できるというわけではないため、ご飯の増量には注意すべきです。

運動後の糖質補給量と、筋グリコーゲンの貯蔵効率との関係について調べた論文を確認してみましょう。

まずイギリスのバース大学から2016年に発表された論文では、激しいランニングからの回復中、1時間あたり1.2 g/kgの炭水化物を摂取すると、1時間あたり0.3 g/kgの炭水化物を摂取した場合と比較して筋グリコーゲン濃度が約1.7倍に増加し、運動能力の向上も見られたと報告されています出典[10]

一方で、2009年にカナダのマックマスター大学より発表された論文では、運動後に1時間あたり1.6 g/kg/の炭水化物を摂取しても、 1時間あたり1.2 g/kgの炭水化物を摂取したとき以上の筋グリコーゲン再合成は期待できないと説明されています出典[11]

以上の研究より、運動直後の糖質摂取は1時間あたり1.2g/kgのペースが最適と考えられるでしょう。

白米100gあたりの糖質量(単糖当量)が38.1gであることを踏まえると、体重60kgの方の米飯量は約190gが目安と計算できます。意外に少ない、と感じた方もいるかもしれませんね。

大手チェーン店の「大盛」や「特盛」では、米飯の量が300gを超える場合もあります。体重80kgの方でも運動後の適切な米飯量は約250gであり、300gを超える米飯は過剰になりがちです。

必要以上に糖質を摂りすぎないよう、ご飯の増量は慎重に行いましょう。

 

牛肉の追加も不要

筋肉の合成効率を高めるためにはたんぱく質の摂取が欠かせないため、肉の量を増やせるメニューを注文したいと考える方もいることでしょう。

しかし大手牛丼チェーン店における牛丼のたんぱく質量は、並盛でも約20gです。ミニや小盛を選ばない限り、たんぱく質が20gを大きく下回ることはありません。

たんぱく質の「20g」は、運動後の筋肉の合成効率を最大化するための数字として示されているものです出典[8]。もう少し増やしてより筋肥大に役立てたいと考える方もいるかもしれませんが、牛バラ肉は脂質量が多い点に注意すべきです。

牛丼の肉を必要以上に増やすと、たんぱく質を豊富に摂取できるメリットよりも、脂質の摂取量増加によるデメリットの方が上回ってしまいます。牛肉を倍量にしたり、追加で具を盛ったりするのは控え、そのままの量で食べましょう。

 

牛丼を自作する場合のポイント

大手チェーン店では手軽においしい牛丼を食べられますが、もちろん自炊で牛丼を用意することもできます。トレーニング後1時間以内に牛丼を用意できる環境が整っているようであれば、自炊での牛丼を検討してもよいでしょう。

牛丼を自作するメリットは、脂質をカットしやすく、たんぱく質や糖質の量を自在に調節できる点にあります。トレーニング中の食事により適した牛丼を作る際のポイントについて、今回は3点解説しましょう。

バラ肉はウォーターソテーで脂質カット

一般的な牛丼チェーン店の多くは「ショートプレード」と呼ばれるバラ肉の一種を牛丼に用いています。バラ肉は高脂質であるため、体を大きくするためのバルクアップ中にも、高頻度での摂取は控えたいところ。しかし牛丼の柔らかさを出すためにはバラ肉が欠かせません。

そこでバラ肉の脂質をカットする方法として「ウォーターソテー」を試してみましょう。一般的に牛肉を炒める際には焦げ付きを防ぐために油を用いますが、ウォーターソテーでは少量の水で茹でるようにして炒めます。

ウォーターソテーで溶け出た脂は水と共に捨てた上で、玉ねぎや調味料を加えて煮込みましょう。すべての脂を除去できるわけではありませんが、飽和脂肪酸の摂取を少しでも抑えたい方におすすめです。

 

白米の量は体重×3.2gを目安に

筋グリコーゲンの合成効率を高められる糖質量である「1.2g/kg」を目安に、もう一度米飯量を計算してみましょう。

体重60kgの方であれば、摂取したい糖質量は以下のように計算できます。

60(kg)×1.2(g)=72(g)

この72gを、米飯100gあたりの糖質量(単糖当量)である38.1gで割ることで目安の米飯量が求められます。

72(g)÷38.1(g)=188.9 → 約190(g)

この「190」gは「60」kgを約3.166……倍した数字になるため、運動後に摂りたい白米の目安は、現体重×3.2gと計算できるでしょう。体重60kgの方であれば60×3.2=192g、80kgの方であれば80×3.2=256gとなります。

もちろんここまで綿密に米飯を測る必要はなく、192gであれば200gを、256gであれば250gを目安に盛り付ける認識で問題ありません。ただし200gで十分なところ350gも食べてしまっている、というような大きなズレを起こさないよう、おおよその目安量はあらかじめ把握しておきましょう。

 

玉ねぎは電子レンジ加熱がおすすめ

一般的な牛丼では、玉ねぎも牛肉と共に炒めた上で調味料と共に煮込みます。しかし牛肉をウォーターソテーする場合には、玉ねぎの加熱に一工夫加える必要があるでしょう。

玉ねぎに含まれるケルセチンは水溶性であるため、ウォーターソテーで牛肉と共に加熱するとケルセチンが水に流れ出ます。バラ肉の余分な脂を落とすためにウォーターソテーの水を捨てると、ケルセチンも同時に失われてしまうでしょう。

ケルセチンの損失を防ぐためには電子レンジでの加熱がおすすめです。玉ねぎを加熱し、やや透き通った柔らかい状態に仕上げてから、ウォーターソテーを終えた牛バラ肉と合わせましょう。たれの水分にもケルセチンは流れ出ていきますが、牛丼にかけることで逃さず摂取できるため効率的です。

電子レンジでの加熱なしでより手早く牛丼を作りたい場合には、玉ねぎを薄切りのスライスにすると、全体を煮込む工程のみでも熱が通りやすく、甘めの味わいに仕上がります。甘いトロトロの玉ねぎにこだわりがない場合は、大きめに切って玉ねぎのシャキシャキ感を味わうのもおすすめです。

玉ねぎの成分の「茹でこぼし」を避け、効率よくケルセチンを摂取しましょう。

 

牛丼でバルクアップを効率的に!

牛丼は豊富な糖質と良質なたんぱく質を手軽に摂れるメニューのため、運動後の食事に適しています。牛肉由来のL-カルニチンや飽和脂肪酸、玉ねぎ由来のケルセチンにも、トレーニーに嬉しい効果が期待できます。

筋グリコーゲンの回復や筋肉の合成を効率化させたり、筋肉痛を軽減したりする効果により、トレーニングの質を高められるでしょう。

一方で、牛丼に使用される牛肉は高脂質なバラ肉の一種であるため、摂取頻度が増えすぎないよう注意が必要です。ダイエット中や体を引き締める期間の牛丼は、体脂肪合成のリスクを高めるため控えるべきでしょう。

トレーニング後に補給したい主な栄養素として、糖質は体重1kgあたり1.2g、たんぱく質は約20gが目安となります。自炊では米飯量や肉の量をより細かく調節して、自身の体格に合った牛丼の摂取を心掛けましょう。

 

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