筋肉痛の時の筋トレはNG?痛みを早く治す方法15選
2023年4月25日更新

執筆者

NSCA-CPT/調理師

舟橋位於

東京大学理学部卒、東京大学大学院総合文化研究科修士課程終了。大学入学後に筋肉に興味を持ち、自分の体で学んだ理論を体現してきた。日本の筋肉研究で有名な石井直方教授のもとで学び、ティーチングアシスタントとして、学生へのトレーニング指導を行った経験も。自分が学んだ知識を伝えることで、一人でも多くの方の健康をサポートしたいと考えている。

筋肉痛の時に筋トレはしてはいけない?

熱心にトレーニングを行っている方だと、できるだけジムに行きたいが、筋肉痛があるために控えた方が良いのではないかと気になることもあると思います。そのような疑問に答えるために、いくつかポイントを示しながら解説します。

  • 筋肉の発達には影響がない
    筋肉痛がある場合でも、傷つけられた筋肉の合成は進んでいます。筋肉痛がある場合にさらにトレーニングをすると、この筋肉の合成が阻害されるのではないかと心配される方もいるでしょうが、研究では問題がないことが分かっています。被験者に、筋トレを模した肘を伸ばすタイプの運動を数日の間に連続して行わせる実験では、筋肉の損傷度合いや回復の程度に変化がなかったことが分かりました出典[1]。筋肉の回復という観点では、筋肉痛の有無を過度に意識しなくても良いと言えるでしょう。
  • トレーニングの質は低下する可能性がある
    筋肉痛がある部位をトレーニングしようとすると、痛みや可動域の制限により、最大のパフォーマンスを発揮できなくなる場合があります。ウエイトトレーニングにおいては、常に前回の強度を超えるようなイメージで運動を行う必要があります。しかしながら筋肉痛があると、高い強度を維持することが難しくなります。そのため、筋肉痛がある状態でトレーニングをするならば、他の部位を行ったり、後述する方法で筋肉痛をやわらげたりする工夫が必要です。
  • 怪我の心配がある
    筋肉痛がある状態で無理矢理にトレーニングを行おうとすると、正しいフォームを維持できなくなる恐れがあります。痛みを避けるようなフォームでトレーニングを続けていると、思わぬ部分に負荷が集中し、怪我につながることもあります。筋肉痛がある場合のトレーニングでは、マシンのように動きが固定されいてるものを使い、フリーウエイトは避けるのが無難でしょう。

 

筋肉痛を早く治す方法12選

トレーニングの頻度を高めるためには、筋肉痛をできるだけ早く解消し、フレッシュな状態で次のトレーニングを始めることが大切です。ここからは、筋肉痛を早く治す方法を12種類紹介します。比較的容易に実施できるものがほとんどですので、筋肉痛に悩まされている方は、ぜひ普段のルーティーンに取り入れてみてくださいね。

痛みを感じる部位をマッサージする

マッサージは、凝り固まった筋肉をほぐして血流を良くするために行われるものですが、筋肉痛の解消にも一定の効果があるとされます。

複数の研究の内容をまとめて再検討した論文によると、激しい運動後にマッサージを行うことで、24時間後の筋肉痛が軽減されたことが分かっています出典[2]。別の実験では、運動後にマッサージを行うことで、筋肉の損傷を示す指標が低下したことも示されています出典[3]

トレーニングを行った後は、運動で使った部位を中心にマッサージを実施すると、筋肉痛が長続きすることを防げる可能性があるかもしれないですね。


フォームローラーで筋肉をほぐす

フォームローラーと呼ばれる筒状の器具を用いてストレッチを行うことにも、筋肉痛をやわらげる効果が期待できます。基本的には、ストレッチしたい部位にフォームローラーを当てて、転がしながら圧力をかけて使用します。

オーストラリアの研究者は、膝を伸ばす運動で筋肉にダメージを与えた後、フォームローラーによる処置を行うグループと行わないグループを比較する実験を行いました。運動後、24時間、48時間、72時間のポイントでそれぞれのグループのジャンプ力を測定したところ、フォームローラーを使用したグループでは、使用しなかったグループよりも高い結果が出たことが分かりました出典[4]

このことは、筋肉痛が解消され、パフォーマンスが元のレベル近くまで回復したことを意味していると考えられます。


コンプレッションウェアを着る

血流を改善するタイプの着圧ソックスや着圧レギンスは女性の間では有名ではないでしょうか。最近では、女性向けに限らず、上半身に圧力をかけるタイプのコンプレッションウェアも登場しています。そして、このようなタイプのコンプレッションウェアは筋肉痛の解消に効果があるとする研究もあります。

2017年に発表された論文では、運動後にコンプレッションウェアを72時間着用した場合は、未着用の場合と比べて、最大筋力やジャンプ力の数値が高くなることが分かりました出典[5]。複数の論文をまとめて解析した別の研究でも、コンプレッションウェアの着用により、筋肉痛が緩和されたことや筋力が回復したことが分かっています出典[6]

コンプレッションウェアに慣れるまでは、着心地の面で違和感があるかもしれませんが、着るだけで効果を得られる点は非常に優れていると言えるでしょう。
 

水風呂に浸かる

怪我をした場合は患部に炎症反応が起こるため、まずは冷やすことが勧められます。激しい運動を行った場合にも、筋肉では同様の炎症が起きており、これが元で痛みが発生することがあります。そのため、患部を冷やすことができる水風呂への入浴は、筋肉痛を和らげるための1つのアプローチとして候補に挙がります。

被験者に高強度運動を行わせた後、水風呂に入ってもらう実験では、水風呂に入らなかったグループと比べて、筋力の回復が早かったことが分かりました出典[7]。また同じ研究の中で、筋肉痛が軽減されたことに加え、筋肉の損傷に関する科学的指標も低い数値が出たことが報告されています。

ジムに浴場が併設されている場合は、積極的に水風呂を活用すると筋肉痛が長引くことを防げるかもしれないですね。

 

お湯に浸かる

炎症が起こったらまずは冷やすことを考えるのが一般的ですが、反対に温めても良い影響があるという意見があります。

ある研究では、運動後24時間以内に患部を温めると、筋肉痛が軽減され、回復も速くなったと報告されています出典[8]

患部を温める方法はいろいろありますが、日本人の場合は、お湯に浸かることが一般的かつ簡単な手段でお勧めです。


温冷交代浴を行う

お湯と水に交互に浸かる温水交代浴も筋肉痛の解消に効果があります。

フランスの研究者が2013年に発表した論文では、この温水交代浴の効果が述べられています。研究の結果、温水交代浴を行うと、何も行わずに休息を取った時と比べて、筋肉痛の軽減、筋力低下の軽減というような効果が得られることが分かりました出典[9]

自宅で温水交代浴を実施するのはなかなか難しいですが、温水のシャワーと冷水のシャワーを交互に浴びることでも代用はできるでしょう。また、ジムに浴場や水風呂が設置されている場合は、利用を検討してみると良いですね。


アイシングを行う

アイシングは怪我や炎症に対する最も一般的な処置の1つです。患部を冷やすことで炎症や内出血の拡大を抑え、怪我の治りを早くする効果が期待できます。筋肉痛は運動による刺激で筋肉が炎症を起こしている状態ですので、アイシングを行えば、ある程度は症状を緩和できます。

運動後のアイシングに関するレビュー論文では、アイシングを行うことで、運動後24時間での筋肉痛の症状をやわらげることができたと紹介されています出典[10]。怪我をした場合に行うものと思われがちなアイシングですが、うまく取り入れることで、筋肉痛からの回復も早めることができると言えるでしょう。


整骨院で電気治療を受ける

手軽に行える方法ではないですが、整骨院での電気治療にも筋肉痛を軽減する効果があります。いわゆる低周波治療と呼ばれるタイプの電気治療には、痛みの伝達を抑えたり、治療部位の血流を促進したりする効果が期待できます。

ハンドボール選手を対象に低周波治療の効果を調べた研究では、治療によって運動パフォーマンスが速やかに回復することや、疲労の指標となる物質の数値が低下したことなどが分かりました出典[11]。頻繁に行える方法ではないですが、特定の部位のトレーニングの後に重度の筋肉痛が出ることが分かっている場合などには、活用できる可能性があるかもしれませんね。


鍼治療を受ける

髪の毛ほどの太さの鍼(針)を体に刺すことでさまざまな効能を得る鍼は、中国や韓国・日本で発達した治療法です。

中国の研究者によるメタ解析論文では、激しい運動後に鍼治療を行うことで、筋肉痛の軽減や、筋肉の損傷の指標であるクレアチンキナーゼの血中濃度が低下することが分かりました出典[12]。また、運動後の筋力の回復にも貢献したことが分かっています。

鍼治療はWHO(世界保健機構)によっても有効性が認められている治療法ですので、利用できる機会のある方はぜひ一度試してみると良いでしょう。


キネシオテープを巻く

アスリートが膝や足首に貼ることのある細長いテープをキネシオテープ(キネシオロジーテープ)と呼びます。通常のテーピングのように、関節を固定して、怪我を予防したり怪我が再発するのを防いだりする効果に加え、独自の効能を持つことが知られています。この特別な効能は、キネシオテープが貼った部位のリンパや血液の流れを改善することに由来するとされます。そして、さまざまな効果のうちの1つとして、筋肉痛を軽減する効果があることが示されています。

キネシオテープと筋肉痛の関係を調べた8種類の実験結果を分析したところ、キネシオテープを使用することで、運動後48時間および72時間での筋肉痛がやわらいだことが分かりました出典[13]。キネシオテープはネットでも簡単に手に入れられるため、比較的導入しやすいと思われます。特定の部位に慢性的な筋肉痛がある場合は、キネシオテープを貼ってみてはどうでしょうか。


運動後に炭水化物とプロテインを摂取する

筋肉の継続的な発達を狙うためには、適切なタイミングで栄養補給をすることが欠かせません。その際に役に立つのが、プロテインや炭水化物のサプリメントです。これらは水に溶かすだけで簡単に摂取できることに加え、通常の食事よりも吸収が早いメリットがあります。これらの栄養素は、筋肉の発達に欠かせないだけでなく、筋肉痛を軽減するのに役立つ可能性も示唆されています。

レッグカールを模した運動前または運動後に、プロテインと炭水化物を混ぜたサプリメントを摂取させ、その効果を調べる実験が行われました。その結果、サプリメントを摂取しなかった被験者と比べて、サプリメントを運動前および運動後にサプリメントを摂取した双方のグループで、筋肉痛が軽減される効果が見られました出典[14]

プロテインを利用している方は多いですが、炭水化物のサプリメントまで意識してる方は少ないと思われます。筋肉痛からの積極的な回復を狙うならば、これらを組み合わせて摂取してみると良いでしょう。
 

ポリフェノールが豊富なジュースを飲む

ポリフェノールは、アンチエイジングに有効な成分として有名です。その働きは、体内で発生した活性酸素を無害な物質に変える抗酸化作用です。これにより、細胞へのダメージを軽減することが知られています。

ポリフェノールは植物の苦味や色素に関わる成分で、飲み物ならば、ワインやトマトジュースに豊富に含まれます。ポリフェノールをうまく摂取することで、筋肉痛を軽減する効果もあるとされます。運動後のポリフェノール摂取が筋肉に与える影響を調べた実験では、発揮できる最大筋力の回復や、筋肉痛の軽減に効果があったことが分かっています出典[15]

運動後にワインを飲むことは推奨できないですが、プロテインをフルーツジュースに溶かして飲むなどの工夫は行ってみても良いのではないでしょうか。

 

筋肉痛に関してよくある質問

最後に、筋肉痛についてよく話題に挙がる質問を取り上げます。筋肉痛について知識を深めた状態でトレーニングすると、これまでよりも一層トレーニングの質を高められるのではないでしょうか。ぜひ、普段の疑問を解消していただければと思います。

筋肉痛の正体ってなんですか?

最初は筋肉痛の正体についてです。激しい運動や、久しぶりに体を動かした際の刺激などで筋肉痛が発生しますが、そもそもなぜ筋肉痛は起きるのでしょうか。実は、筋肉痛が発生する仕組みについてはいくつか仮説はあるものの、完全な答えは出ていません。今回はそのような仮説の中から2種類をピックアップして紹介します。

  • 筋肉で炎症が起こっている
    運動によって筋肉に微細な損傷が発生すると、その周辺で炎症が起こり、それに伴って発生する痛み物質が筋肉痛の原因となる仮説です。損傷が起こった部位で発生する物質を感知して起こる免疫反応により炎症が引き起こされます出典[16]。免疫反応が順調に進めば、傷ついた筋肉は修復され、元よりも強く太くなって再生します。これが、ウエイトトレーニングによって筋肉が発達する仕組みです。運動によって筋肉が傷つき、それにより痛みが発生するという考え方は比較的イメージしやすいですね。
  • 筋肉周辺の神経が圧迫される
    筋肉の中には、筋肉の長さを感知する筋紡錘と呼ばれる器官が存在します。筋紡錘には複数の神経が出入りしていて、それらが運動中に圧迫されることにより、痛みが発生するとする仮説があります出典[17]。このようにして筋肉痛が発生することにより、損傷した部位をさらに使うことが制限され、結果として、怪我の防止や筋肉の発達に有利に働くと考えられています。

 

追い込んでも筋肉痛にならないのはなぜですか?

ハードにトレーニングしたはずなのに、筋肉痛にならなかったという経験がある方は多いと思います。その一方で、強度は高くないはずなのになぜか筋肉痛が起こったという経験もあるでしょう。このような違いには、運動のパターンと、その運動に慣れているかどうかが関係しています。

まず、運動のパターンについてです。筋肉は収縮する時よりも、負荷に耐えながら伸びる時の方が強い力を出せる性質があります。収縮動作のことを「コンセントリック運動」と呼び、伸張動作を「エキセントリック運動」と呼びます。当然、エキセントリック運動の方が強い負荷が筋肉にかかるため、筋肉の損傷の程度も大きくなります。そのため、筋肉を伸ばす動作に意識を置いたトレーニングを行うと、筋肉痛が生じやすくなる可能性があります。ジムでの運動を例に挙げるならば、ウエイトを下ろしていく局面に時間をかけて丁寧に行うやり方や、補助者にウエイトを持ち上げてもらい、下ろす局面だけを抽出して行うやり方が、エキセントリック動作に注目した運動と言えます。

2点目は、慣れた運動では筋肉痛が起こりにくいというものです。冬にスキーに行って、全身が筋肉痛になるのがこの一例です。ジムでのトレーニングでも、いつも同じメニューを繰り返していると体が動作に慣れて筋肉痛が起こりにくくなります。後述するように、筋肉痛は筋肉の発達に不可欠な要素ではないですが、定期的に種目を見直して刺激を変えること自体は、筋肉の発達にプラスになります。メニューが固定化されてしまっている方は、マシン、ダンベル、バーベルをうまく組みわせてバリエーションを持たせても良いかもしれないですね。
 

筋肉痛にならないけど筋肥大しますか?

筋肉痛が起こらないと筋肉が発達しないのかという疑問は非常によく見られます。これに対する回答は、筋肉痛は必要ではないが、筋肉が損傷することは必要であるというものになります。トレーニングに慣れてくると、筋肉痛が起こりにくくなりますが、運動によって筋肉にダメージは与えられます。

そして、そのダメージによって損傷した筋肉が回復する過程で筋肥大が起こります出典[18]トレーニングのボリュームや強度は個人間で異なるため、単純に筋肉痛だけを筋肥大の目安にするのは、間違った考え方だと言えるでしょう。長期間にわたって筋肉の発達が見られない場合は、筋肉が損傷するだけの負荷を十分に与えられているかを再確認してみてはいかがでしょうか。

 

まとめ

今回は、筋肉痛についてさまざまな角度から解説しました。

筋肉痛がある場合でもトレーニングすることは可能ですが、痛みのせいで最大のパフォーマンスが発揮できなかったり、怪我をしたりする恐れがある場合は、休息を取る方が無難です。どうしても筋肉痛を軽減させてトレーニングをしたい場合は、今回紹介した、痛みを軽減する方法を試してみると良いでしょう。

筋肉痛は場合によっては起こらないことや、筋肉痛がなくても筋肉は発達することも解説しました。筋肉痛だけをトレーニングの評価項目にするのではなく、正しいフォームでトレーニングができているかや、継続した発達が見られているかなどの観点でも分析できると良いですね。
 

 

LINEで専門家に無料相談

365日専門家が男性の気になる疑問解決します
LINEからメッセージを送るだけで薬剤師やパーソナルトレーナー、睡眠指導士やサプリメントアドバイザーなどNP所属の男性ヘルスケアの専門家があなたの疑問や質問に直接回答します!