筋トレ効果倍増!カフェインの効果的な摂り方7選
2023年5月25日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

カフェインは筋トレと好相性!筋肉への嬉しいメリット3つ

コーヒーや緑茶、ココアにチョコレート、ガムにエナジードリンクなど、カフェインは様々な食品に含まれています。最近ではカフェインを摂取できるグミなども販売され、人気を博しているなど、多くの人がカフェインの力を借りて、忙しい日々を乗り切っていることが分かりますね。

眠気を覚ます、集中力を高める、などの効果が有名なカフェインですが、筋力トレーニングにおいても嬉しい効果を発揮することが分かっています。限られた時間の中で行うトレーニング、できるだけ高いパフォーマンスで行って、筋肥大の効率を高めたいものですよね。

以下ではカフェインの摂取が筋肉や、トレーニング中の体調にもたらすメリットについて解説します。

1.覚醒作用や集中力増強作用によりトレーニングの効率UP

カフェインといえば、やはり頭をスッキリさせる効果を思い浮かべる方が多いでしょう。このカフェインによる覚醒作用や集中力増強作用により、筋力トレーニングの効率が増し、より高いパフォーマンスを発揮できる可能性があります。

サプリメントの形でカフェインを摂取した場合、筋力トレーニングをしている男性グループの筋力および運動意欲が、比較対象としてプラセボサプリメントを摂取したグループよりも15%ずつ増加していたことが分かっています出典[1]

集中できない状態で漫然とトレーニングを続けても、よいトレーニング効果は得られません。カフェインの摂取により、限られたトレーニング時間を有効に使うことができるようになれば、筋肥大の効率UPに繋がるでしょう。

 

2.疲労感や筋肉痛を軽減させる

脳や筋肉を使うとき、エネルギーとして脳細胞や筋肉細胞が消費するのが、アデノシン三リン酸(ATP)と呼ばれるエネルギー物質です。私たちがトレーニングによりATPを消費すると、その分解産物である「アデノシン」が体内に蓄積します。このアデノシンがアデノシン受容体に結合することで、疲労を感じるようになるのです。

カフェインは、このアデノシン受容体に先んじて結合し、アデノシンによる疲労や眠気の発生を抑制する作用があります。これにより疲労感が軽減し、より長時間のトレーニングが可能になったり、トレーニングのパフォーマンスが向上したりする効果が期待できます。

カフェインの疲労軽減効果を調べた研究において、サイクリングを行う成人男性がカフェインを摂取することにより、疲労までの時間が12%延び、主観的疲労が減少したという結果が得られています出典[2]

また、エクササイズ後の筋肉痛への影響を調べた研究においては、カフェインの摂取によりエクササイズから2日目と3日目における筋肉痛が軽減されていました。この試験において再度行われたエクササイズでは、上腕二頭筋のエクササイズの実施効率が1.5倍に増加していたとも報告されています出典[3]

カフェインの摂取により、疲労感を軽減してより長時間の運動が可能になるだけでなく、筋肉痛の緩和により、翌日、翌々日のトレーニングにおいても高いパフォーマンスを発揮しやすくなります。トレーニングを続けて行う日にはカフェインの力を借りることで、より効率的に筋肥大を行うことができそうですね。

 

3.脂肪燃焼作用があり、体脂肪を効率よく減らせる

ダイエット目的に筋力トレーニングをしている人にとって、カフェインは強い味方となってくれることでしょう。カフェインは体内の脂質代謝を活性化することが分かっており、体脂肪を燃焼させる効果が期待できるのです。

カフェインは交感神経を活性化させ、アドレナリンやノルアドレナリンといった神経伝達物質を分泌させます。これにより脂肪分解酵素であるリパーゼが活性化し、体内の脂肪を遊離脂肪酸に分解、エネルギーとして使うよう働きかける効果を発揮するのです。

カフェイン摂取経験の少ない男性を対象に、運動とカフェインの摂取を組み合わせた際の脂質代謝の変化を調べた研究では、240mgのカフェイン摂取により、朝方の脂質代謝が11%、午後には13%増加したことが明らかになりました出典[4]

また別の男性グループを対象とした研究では、カフェインの摂取によりエネルギー消費が13%増加し、脂質の代謝量が2倍になったことが分かっています出典[5]

トレーニング中は筋肉が脂肪酸を取り込み、エネルギーとして使おうとする流れが活性化しています出典[6]。トレーニングとカフェインを組み合わせることで、産生した脂肪酸をより消費しやすくなり、効率的に体脂肪を燃やせるようになりますね。

 

カフェインの効果的な摂り方7選

このように、カフェインには筋力トレーニングに与えるメリットがいくつも確認されています。是非とも効果的に取り入れて、筋肥大やダイエットの効率UPに繋げたいものですよね。

では、これらのカフェインはどのように摂取すれば良いのでしょう? 以下ではカフェインの摂取タイミングや摂取量などについて解説します。

1.トレーニングの30分~1時間前に摂取する

カフェインの覚醒作用や集中力増強作用を活用し、より高いパフォーマンスを発揮させるためには、カフェインの血中濃度が最大となるタイミングでトレーニングに取り組むことが重要です。

カフェインの血中濃度は摂取後30分~2時間程度で最大となり、半減期(効果が半分になる時間)は2~8時間と幅があることが分かっています出典[7]トレーニングの30分前に摂取すれば、カフェインの血中濃度を高めた状態でトレーニングに挑むことができるでしょう。

また、カフェインによる脂質代謝への影響を調べた研究においては、カフェイン摂取後1時間で、脂質代謝の効率が2倍になったと報告されています出典[5]。脂肪燃焼効果を期待する場合には、カフェイン摂取後1時間の段階で、トレーニングを始めておきたいところですね。

以上より、おすすめのカフェイン摂取のタイミングは、トレーニングの30分~1時間前であると言えます。覚醒作用や集中力増強作用、脂肪燃焼効果を十分に得るため、是非このタイミングでカフェインを取り入れてみましょう。

 

2.効果的な摂取量は体重1kgあたり3~6mg

カフェインの感受性には個人差があるため、この量を摂取すれば必ず高い効果が得られる、ということは言いづらいのが実情です。

しかし多くの研究により、運動前および運動中に体重1kgあたり3~6mgのカフェインを摂取すると、筋持久力を高めたり疲労を軽減したりといった、パフォーマンスの向上効果が確認されやすいと判明しています出典[8]

体重60㎏の方であれば、理想的なカフェインの摂取量は60(kg)×3~6(mg)=180~360(mg)と計算できます。

代表的なカフェイン飲料であるコーヒーからは、100mLあたり60mgほどのカフェインを摂取できます。コーヒーのみでこの量のカフェインを摂取する場合、300~600mLほど飲む必要があると言えるでしょう。

ただしカフェインを普段から摂取しておらず、カフェインに耐性がない場合には、この量を摂取するとカフェインが効きすぎて、眩暈や嘔吐、吐き気などの副作用を生じるおそれがあります。カフェインの摂取習慣がない場合には、体重1kgあたり3mg以下の量から始めるようにしましょう。

また、体重1kgあたり9mg以上の摂取でも、カフェインの副作用が生じやすくなります。摂取すればするほど効果が出る、という考え方はやめて、適切な量を適切なタイミングで取り入れることを心掛けましょう。


3.1日400mgを上限にする

カフェインの感受性に個人差があることなどから、日本においてはカフェインの明確な摂取基準というものは定められていません。しかしWHOやカナダ保健省などにおいては、健康な成人、および妊娠中の人や子供におけるカフェインの目安上限量が定められています。

WHOにおいては、代表的なカフェイン飲料であるコーヒーの摂取を1日3~4杯までとするよう呼びかけています。またカナダ保健省ではカフェインの摂取量を、健康な成人で400mg、コーヒー換算でマグカップ3杯までにするよう推奨しています出典[9]

この量を大きく超えた摂取を毎日続けていると、カフェインの効きが悪くなるほか、頭痛や眩暈、吐き気、脱水や不眠などの副作用を引き起こしやすくなります。これらのトラブルを抱えたままのトレーニングは効率が悪く、体調を崩すことにもなりかねません。

日頃からカフェインを飲み慣れている、という人であっても、400mgを超えた量を継続摂取しないよう注意しましょう。

 

4.摂取源はコーヒーかサプリで

カフェインは様々な食品や飲料に含まれていますが、効率的に摂取したい場合は、コーヒーかサプリメントを活用するのがおすすめです。

カフェインを含む飲料として、緑茶や紅茶が挙げられますが、これらはコーヒーと比較するとカフェイン含有量が3分の1から2分の1ほど。さらにお茶には「テアニン」という旨み成分が含まれており、これがカフェインの覚醒作用を抑制してしまいます。そのため、お茶類からのカフェインでは十分なパフォーマンス向上効果を得られないのです。

また、エナジードリンクは種類によってカフェイン量にバラつきがあり、種類によっては必要量のカフェインを摂取するために、何本も飲まなければならなくなるでしょう。

加えて、エナジードリンクには糖質が多量に含まれています。1~2本であれば運動前のエネルギー補給として適切な場合もありますが、量が多くなると糖質や水分量が過剰になり、摂取後のトレーニングに支障をきたすことにもなりかねません。エナジードリンクのみで必要なカフェインを摂取するのは少々無理があると言えるでしょう。

コーヒーに含まれているカフェインと、サプリメントから摂取できる無水カフェインでは、効果に違いは見られず、同じように活用することができます。コーヒーが苦手な方、コーヒーの淹れ方によるカフェイン含有量のバラつきが気になる方は、サプリメントの利用をおすすめします。カフェインの利尿作用による脱水やミネラルバランスの乱れを防ぐため、サプリメントは十分な水分と共に摂取するようにしましょう。


5.慣れが生じたらカフェイン断ちの期間を設ける

眠気覚ましとして飲んでいたコーヒーの効き目が悪くなり、以前よりもコーヒーを飲む量が増えてしまった、という経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

このように、カフェインを繰り返し摂取すると、カフェインに対する耐性が生じることが知られています。はっきりとしたメカニズムはまだ明らかになっていませんが、最も可能性が高いものとして、アデノシン受容体が感度を上げることにより、カフェインとアデノシン受容体の結合量以上に、アデノシン受容体が増加してアデノシンとの結合を起こし、疲労感や眠気を生じるようになっているのではと考えられています。

また、カフェインを摂取することによりアドレナリンやノルアドレナリンの分泌量が増加し、交感神経が優位になる働きについても、カフェインを摂取し続けて数日で出現する耐性により、低下することが分かっています出典[10]

幸いにも、これらの耐性は、カフェイン断ちをしばらく続けることで消失します。コーヒーやサプリメントを飲むことによる効果を感じにくくなった、という場合には、思い切ってカフェイン断ちをしてみると良いでしょう。

なお、どのくらい飲み続けることで耐性が生じ、何日のカフェイン断ちにより再び効果を得られるようになるかについては、カフェインの感受性や耐性に個人差があることから明確には分かっていません。しかしほとんどの場合、数日のカフェイン断ちにより体調が回復し、再度カフェインの効果を得られるようになります。

筋力トレーニングの効率UPのため、思い切ってカフェインに頼らない期間を作ることも重要ですね。

 

6.夕方から夜のトレーニング時には利用しない

カフェインの副作用で最も大きなものは、飲みすぎることによる夜の睡眠障害でしょう。カフェイン飲料を夜間に飲むことで、なかなか寝付けなくなったという経験に、心当たりのある方も多いのではないでしょうか。

カフェインの血中濃度は、摂取後30分から2時間でピークに達し、およそ2~8時間でその効果は半減します。個人差はありますが、カフェインを摂取後、8時間経っても効果が発揮されているとする場合、午後3時頃に摂取したカフェインでさえ、睡眠に影響する可能性があることが分かりますね。

400mgのカフェインを摂取することによる、睡眠への影響が調べられています。この研究によると、就寝時刻の3時間前にカフェインを摂取すると総睡眠時間が63分も減少し、6時間前の摂取においても総睡眠時間が 41分減少していました。

また、睡眠の途中で目覚める時間も、3時間前の摂取では約28分、6時間前の摂取では8分ほど、カフェインを摂取しない場合と比べて増加していました出典[11]

このように、カフェインの睡眠阻害効果は、就寝の6時間前の摂取においても生じており、夜間の摂取ではさらに睡眠時間が減りやすくなることが分かります。

睡眠不足により、筋肉の合成や筋損傷からの回復を促進する成長ホルモンの分泌量が減少します。またストレスホルモンであるコルチゾールが増加し、これにより筋肉の合成効率を高める男性ホルモン、テストステロンが減少してしまいます。筋肥大の効率や、筋肉の回復速度が大きく落ちてしまうため、カフェインは睡眠阻害を起こさない時間帯に摂取するようにしましょう。

目安として、睡眠時間の6時間前以降のカフェイン摂取を避けるようにしましょう。夕方以降にトレーニングを行う場合には、カフェインの摂取を控えた方が良さそうですね。

 

7.バナナとナッツを一緒に摂る

トレーニング前のカフェインと合わせて摂りたい食品として、バナナとナッツ類をおすすめします。

バナナは運動前のエネルギー供給源として非常に優秀です。一般的な果物の糖質はブドウ糖(グルコース)や果糖(フルクトース)など、分子の小さなもので構成されていますが、バナナはでんぷんやショ糖(スクロース)など、分子の大きなものも含んでいます。

分子の小さなブドウ糖などは、素早くエネルギー補給を行うことができます。一方の分子の大きなでんぷんなどは、緩やかに血糖値を上げてエネルギーを持続させることができます。

バナナは様々な大きさの糖質を含むことにより、即効性と持続性の二つのメリットを持ち合わせています。そのため長時間のトレーニングにおいてもエネルギー切れを起こしにくく、パフォーマンスの向上効果を長く得ることができるのです。

ナッツ類にはビタミンEやω‐3系脂肪酸などが含まれており、抗酸化物質として機能し、筋損傷や炎症を軽減する効果が期待できます。

また、ナッツ類に含まれるアルギニンと、カフェインとの相乗効果が注目されています。カフェインはアルギニンを分解する酵素を阻害することが分かっており出典[12]、同時摂取により、アルギニンによる一酸化窒素(NO)の産生量が増加します。NOの血管拡張効果により血行が促進されるため、覚醒作用や集中力増強作用をより効率的に得られる可能性がありますね。

 

まとめ

カフェインは筋力トレーニング前に摂取することで、パフォーマンスの向上効果や筋肥大の効率UP効果が見込めます。摂取の時間帯や摂取量などに注意して、効率的にカフェインの恩恵を得られるよう工夫してみましょう。

もちろん、カフェインの摂取だけでは筋力トレーニングの効率UPには不十分です。運動前にはバナナなどでの糖質補給を、運動後にも糖質やたんぱく質補給により速やかなリカバリーを行い、筋損傷からのいち早い回復を狙いましょう。

 

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