知らないと眠れない?睡眠環境を整える9つの方法
2023年11月21日更新

監修者

睡眠健康指導士/ロジスティクス管理3級

室井優作

心と体の健康の要となる睡眠のスペシャリスト。眠りに悩みを抱える方のコンサルティングを日々行っている。プロボクサーを目指しており、運動やダイエットに関する指導も可能。おすすめの寝具はウェイトブランケット。

執筆者

株式会社アルファメイル

NP+編集部

「オトコを科学する」をキーワードに男性の悩みや課題の解決を科学的根拠をもってサポート。運動や睡眠、栄養など、健康に関する正しい知識を提供するためにコンテンツを製作中。

睡眠環境の三大要素

質の良い睡眠をとるためには、睡眠環境を適切なものに整える必要があります。ここでは、睡眠環境の三大要素を解説します。知識を確認しながら、読んでみてくださいね。

1.温熱環境

温熱環境とは温度感覚を左右する環境のことで、具体的には気温や湿度のことです。

身体の中心の温度である深部体温は日中に上昇し、夜間に低下するように体内時計によって調節されています。眠る前に深部体温が下がることで脳や身体は休息モードになり、深い眠りにつくことができます出典[1]

しかし夏のように蒸し暑い日は夜にしっかりと深部体温が下がらないので、スムーズに休息モードに入ることができません。また熱のこもる寝具を使っていることも深部体温が上がってしまう大きな原因です。就寝時に室温を適切に保ち、皮膚を快適な状態に保つ寝具を使って睡眠をとることが大切です。

特に寝具の材質や構造は、寝床内の気温や湿度に大きく影響します。質の良い睡眠を得るために、室温だけでなく寝具選びにもこだわりたいものです。

 

2.光環境

光環境とは、屋内の照明ばかりでなく、自然界の太陽光を含む「光放射の存在している環境」を指します。

光環境は睡眠ホルモンのメラトニンと密接な関係があります。メラトニンは深部体温を下げ、眠気を誘発する作用があります。

しかし、目の奥にあるメラトニンの分泌を調整している器官が光を感知すると、メラトニンの分泌は止まってしまいます出典[2]

寝室や夜過ごす部屋はできる限り暗い状況を保ちたいものです。

 

3.音環境

「うるさくて眠れない…」騒音に睡眠が妨げられるという経験は、1度や2度はあるのではないでしょうか。

普段耳にしている音を騒音レベルで表したものが以下の表です。

【普段耳にしている音を騒音レベル】

騒音の大きさ感じる音の目安音の具体例
20dBきわめて静か木の葉の触れ合う音、雪の降る音
30dB静か深夜の郊外、鉛筆での執筆音
40dB閑静な住宅地の昼、図書館内
50dB
50dB普通家庭用エアコン室外機、静かな事務所の中
 
60dB走行中の自動車内、普通の会話、デパート店内
 
70dBうるさい高速道路走行中の自動車内、騒がしい事務所の中
 
80dB走行中の電車内、救急車のサイレン
 
90dBきわめてうるさいカラオケ音、犬の鳴き声

40dBは図書館内で感じる音のレベルです。寝室は40dB以下が望ましいとされています。

2022年にスウェーデンのヨーテボリ大学医学部で行われた36研究のメタアナリシス研究では、交通機関の騒音が 10 dB 増加するごとに睡眠の質が低下していくことが報告されています出典[3]

静かな環境に寝室を整えて質の良い睡眠を取りたいですね。

 

睡眠環境を整える9つのアイデア

睡眠環境がいかに睡眠にとって大切かご理解いただけたでしょうか。ここからは心地よく眠るために、睡眠環境の整え方をいくつかご説明します。手軽にできるものを中心に紹介しているので、是非できるものから取り組んでみてくださいね。

温熱環境の整え方3つ

心地よく眠るための湿熱環境は、使用する寝具と寝室の温湿度で整えることができます。寝具はさまざまな構造を持つ、多岐に渡る材質のものが市販されています。また、寝室の温湿度を整えるものと言えば、やはりタイマー機能付きのエアコンでしょう。

1.通気性が十分な寝具の使用

通気性が十分な寝具を使用すると、眠りにつきやすいです。蒸れが少なくなり、深部体温が適度に下がるためです出典[4]

2018年に日本の医師は、若者10名と高齢者20名に対して、高反発マットレストッパーと低反発マットレストッパーの睡眠に対する影響を比べる研究を行いました。すると、高反発マットレストッパーは低反発マットレストッパーに比べ、深部体温の低下を促し、夜間睡眠の初期段階で深い眠りを高めるという結果が出たと報告しています。

マットレストッパー(パッド)とは、寝心地改善のためにマットレスの上に敷く寝具のことです。

高反発マットレストッパーが深部体温の低下を促したのは、3 次元構造を作るために織り込まれたポリエチレン樹脂繊維でできているためで、通気性が良いことが理由です出典[5]

通気性十分な寝具は入眠しやすいだけでなく、衛生的でもあるので、健康に良いですね。

 

2.入眠から4時間はエアコンで室温を調整

快適に眠ることができる室温は16~26℃と言われています。夏場は夜は26℃設定、冬場も就寝中は16℃程度なら問題ありません。

適切な室温を維持する上でエアコンはとても便利です。理想的にはエアコンを一晩中点けておくのが良いですが、電気料金の心配があります。点けっぱなしにしたくない場合は、いつエアコンを点けるのがよいのでしょうか。このことを確認した研究があります。

2005年に日本で、就寝中の温度変化と睡眠の質の関係を調べた研究が行われました出典[6]。この研究では8人の男性が次の3つの条件で実験に参加しました。

  1. 26℃条件:8時間、室温26℃の環境で眠る
  2. 26℃→32℃条件:最初の3時間45分は室温26℃の環境で眠り、最後の3時間45分は室温32℃の環境で眠る
  3. 32℃→26℃条件:最初の3時間45分は室温32℃の環境で眠り、最後の3時間45分は室温26℃の環境で眠る

その結果、当然26℃条件が最も睡眠の質が高かったです。しかし、面白いことに26℃→32℃条件では後半の3時間45分においてのみ覚醒時間が増加したのに対し、32℃→26℃条件では前半の3時間45分と後半の3時間45分の双方において覚醒時間が増加していました

つまり質の良い睡眠のためには、睡眠の後半よりは前半にエアコンを点けて快適な室温を保った方が良いのです。夏の冷房のタイマーは入眠から4時間後に設定しましょう。

 

3.加湿/除湿で相対湿度を50%に保つ

相対湿度は50~60%がベストです。湿度が高すぎると体の熱を放散できません。じめじめとした日は深部体温が下がりきらず、寝ることに苦労しそうですね。こんな日は、寝る前に寝室を換気するのも1つの手段です。

実際に2016年、学生寮居住の男女16名に行ったデンマークの研究では、窓を開けて寝た場合、閉じた場合と比べ湿度が約10%低下しており、寝つきも翌日のパフォーマンスも良好であったと報告しています出典[7]

もちろん、エアコンの除湿モードを使うのも1つでしょう。

また湿度が低すぎる場合も問題です。空気が乾燥していると、喉の痛みや皮膚のかゆみを引き起こし、快適な睡眠を妨害する可能性があります。乾燥する冬場は加湿器や洗濯物を室内に干すなどの乾燥対策を行って湿度を調整しましょう。

 

光環境の整え方3つ

心地よく眠るための光環境は、使用する照明と生活習慣で整えることができます。ひょっとしたら、もう取り入れている方もいるかもしれませんね。まだの方はできるものから取り入れてみましょう。

1.電球色の間接照明を使用する

光は睡眠ホルモンのメラトニンの分泌を抑制します。とはいえ、夜に光が全くない状態で過ごすことは現実的ではありません。

そこで少しでも光の悪影響を小さくするために、就寝の数時間前からは明るさを落としていただくことはおすすめです。

1996年に北海道大学が8人の若い男性を対象に行った研究では、500lx以上の明るさの光はメラトニンの分泌を顕著に抑制したのに対し、200lxの光ではあまり抑制されないことが示されています出典[8]。500lxは会議室で白色の電気を点けたぐらいの、200lxは晴天時の日没時くらいの明るさです。

また間接照明は明るさレベルを1ランク落とします。天井や壁・床に光を反射させるので、強度は弱まり、人の受光量も減少します。オレンジ色の電球色の蛍光灯や電球を使えばさらに受光量を減らすことができます。

寝室はもちろん、就寝前に過ごすリビングも電球色の間接照明で過ごせば、スムーズに眠ることができるでしょう。

 

2.就寝前のスマホの使用を控える

スマートフォンやパソコンなどの液晶画面から出ているブルーライトは、紫外線の次に強いエネルギーを持っており、目の奥まで届き、入眠に悪影響を及ぼします。

実際に2001年にトーマス・ジェファーソン大学が行った研究では、様々な光の中で最もメラトニンの分泌を抑制したのがブルーライトだと報告しています出典[9]

スマホやPCの使用は脳の興奮にも繋がるため、就寝前の使用は出来る限り控えたいものです。しかし、仕事や勉強の関係でどうしても使わざるを得ない場合はあるでしょう。そんな時はブルーライトカット眼鏡は良い方法です。

2014年にバーゼル大学が男性13 名を対象に実施した研究では、就寝3時間前からのブルーライトカット眼鏡の着用を1週間継続することで、メラトニン抑制を30%ほど軽減したことが報告されています出典[10]

どうしてもスマートフォンなどを使う場合は、ブルーライトカットメガネを使用した方が若干ですが、よい睡眠が得られそうです。

コロンビア大学で行われた12件の研究の系統的レビューとメタ分析では、ブルーライトカットメガネは不眠症の人に対しても有効である可能性が示唆されています出典[11]

理想的には就寝の3時間前からはブルーライトを浴びないことですが、どうしても難しい場合はブルーライトカット眼鏡をかけましょう。
 

3.睡眠中は真っ暗orマメ電球1つ程度の明るさで

2013年、韓国の成均館大学が10人に対して行った研究では、明かりをつけて寝ると眠りが浅くなり、覚醒度が30%ほど増加することが報告されています出典[12]

一方で、もう1つ2017年に奈良県立医科大学が行った研究では、寝室の明るさが5ルクス以下だとうつ病のリスクがあると報告しています。5ルクスは豆電球より少し暗い程度です出典[13]

完全に真っ暗だと不安感が大きくなり、精神面に悪影響を及ぼすのかもしれません。したがって睡眠中は真っ暗か、もしくはマメ電球1つ程度の明るさがよいでしょう。

 

音環境の整え方3つ

音に対する環境や感覚も人によってまちまち。でも静かだと睡眠が取りやすいというのも本当ですね。心地よく眠るための音環境の整え方も、手軽なものから大がかりなものまでいろいろです。「これ!」と思うものから取り入れてみましょう。

1.耳栓の使用

手軽に試せるのが耳栓です。

2010年、中国で14名に行われた研究では、耳栓とアイマスクの使用で睡眠の質が向上し、メラトニンレベルが上昇したと報告しています出典[14]

耳栓には材質や使い方、値段などさまざまなものが市販されています。選ぶときは以下の点に注意して選びましょう。

  • 遮音性能
  • フィット感
  • つけ心地

耳の穴の大きさや肌質は人により異なるので、自分の耳穴にフィットして、肌に負担ないものを選ぶのがよいでしょう。また、耳栓の素材や人によっては長時間の装着で、耳が痛くなることもあります。防音効果があっても耳が痛くて目覚めるようでは困るので、つけ心地も大切です。

 

2.防音窓や防音カーテンの設置

防音窓や防音カーテンの設置も音環境を整えるのに役立ちます。

交通量が多い道路が近くにある、飛行場の近くに住んでいるなど居住地域によっては防音窓や防音カーテンが効果的なこともあるでしょう。

防音窓と防音カーテンでは、防音窓の方がはるかに優れた効果を持ちます。防音カーテンの効果は「カーテンを閉めると少し静かになる」という程度です。

そのため可能であれば防音窓を取り入れることがおすすめです。ただし防音窓は高価であり、取りつけにも少し手間がかかります。

手っ取り早く対策をしたい人は防音カーテンから始めてみましょう。

 

3.ホワイトノイズを流す

騒音を完全になくすことができない場合は、ホワイトノイズを流すのもよいでしょう。

ホワイトノイズとはノイズ(雑音)の一種で、 換気扇やテレビの「サーッ」「シーッ」という砂嵐のような音のことです。最近はスマートフォンアプリでも気軽に聞けます。

2021年にワイル・コーネル医科大学の10名の成人を対象にした研究では、ホワイトノイズを流すことで騒音の街と呼ばれるニューヨークに住む不眠症患者の入眠までの時間が4分短くなり、覚醒時間が5分短くなったことが報告されています出典[15]

ホワイトノイズは人間の耳で聞こえるすべての周波数が均等に混ざっているので、サウンドマスキングが得意です。耳障りな音をかき消すので、音が気にならなくなるのです。

 

まとめ

24時間体制で動く現代社会、睡眠に適する状態の中で眠りにつくことは難しいですね。しかし必要以上に心配することはありません。適切に対処することで、安心してぐっすり眠ることができます。今回は9つの整え方を紹介しましたが、もちろん一度に全部をする必要はありません。自分の生活にマッチしたものから少しずつ取り入れて、質の良い睡眠を取ってくださいね。

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