トレーニーにおすすめ!はちみつのメリットと活用法を解説
2023年12月26日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

はちみつってどんな食品?

はちみつはハチの巣から採取できる、ミツバチ由来の天然の糖類です。静菌・抗菌活性を持ち、保存性も高く、砂糖よりも強い甘さを持つなど、食品としての質の高さゆえに古くから親しまれてきました。

まず、はちみつの特徴について詳しく確認してみましょう。

砂糖とどう違う?

砂糖もはちみつも同じ糖類ですが、成分にやや違いがあります。

【はちみつと上白糖の特徴】出典[1]

 はちみつ上白糖
主な糖類
 
ブドウ糖と果糖
(単糖類)
ショ糖
(二糖類)
カロリー329kcal/100g391kcal/100g
糖類以外の成分
 
ビタミン
ミネラル
酵素 など
ほぼ含まれていない
調理性やや使いづらい使いやすい

一般的な砂糖は、ブドウ糖と果糖からなる「ショ糖」という二糖類で主に構成されています。

一方、はちみつではミツバチの体内でショ糖が既に分解を受けているため、ブドウ糖と果糖がそのままの形で存在しています

また、はちみつには糖類のほかにも、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、オリゴ糖など、様々な栄養素が含まれています。ミツバチ由来の酵素や、ブドウ糖と酵素の反応により発生する有機酸を同時に摂取できる点も大きな特徴です。

様々な栄養素や酵素が含まれ、また強い粘り気もあるため、調理に使う際には少し工夫が必要ですが、栄養価という面で見ると、はちみつは砂糖よりも低エネルギーで、かつ栄養価の高い、良質な糖類であると言えそうです。

 

どんな種類がある?

スーパーや市場で販売されているはちみつの中には、1kg1000円程度で購入できるお手軽なものから、200gほどの小瓶で2000円以上するものなど、様々な価格帯のものが存在します。この違いははちみつの種類によって生じており、はちみつは水分量や製法によって以下のように分類されます。

  • 純粋はちみつ
    水分含有量が23%以下、果糖・ブドウ糖の合計含有量が60g/100g以上のものを指します。
    中でも加熱処理を行っていない「生はちみつ」は、はちみつのビタミンやミネラル、酵素を摂取できるため、栄養価が高いことで知られています。
  • 加糖はちみつ
    水あめや砂糖、果糖などを混ぜて作られた、純粋はちみつの含有量が60%以上のものを指します。手軽な値段ではちみつの味や風味が楽しめますが、はちみつ本来の殺菌作用や健康効果はあまり期待できません。
  • 精製はちみつ
    はちみつのたんぱく質やビタミン、ミネラルなどを除去したものを指します。はちみつ独特の色や香りがなく、糖類以外の栄養素がほぼ失われており、調味料としての活用が主となります。

また、はちみつの風味や味は、ミツバチが集める花の種類によっても変化します。様々な花から集めてきた蜜で出来たはちみつは「百花蜜」と呼ばれ、採取する地方や地域によって風味や味が変わることが特徴です。

一方、れんげやアカシアなど、ひとつの花に絞って密を集めさせたものは「単花蜜」と呼ばれています。花によって蜜の特徴が異なるため、低温でも溶けやすいはちみつや、特に殺菌効果の高いはちみつなど、期待したい効果や使いやすさによって使い分けることもできます。

 

はちみつを使うとどう変わる?筋トレへのメリット5選

様々な健康効果が期待できるはちみつですが、筋力トレーニング中の甘味料としても効果が高いことが分かっています。以下ではちみつを取り入れることで、具体的にどのような健康効果が得られるのかについて解説します。

メリット1.エネルギー変換効率や疲労回復効果が高い

単糖類を豊富に含むはちみつは、消化の手間なく素早く吸収されます。さらにはちみつからは微量ながら活性の高い、天然のビタミン類を摂取できます。ビタミンによりエネルギーの変換効率が上がり、吸収された糖質をすぐに疲労回復やグリコーゲンの再補充に役立てることができます。

また、はちみつにはミツバチ由来の酵素の影響で、様々な有機酸が含まれています。中には疲労回復効果の高いクエン酸が含まれているものもあり、疲労物質の分解をサポートする効果も期待できます。

さらにクエン酸や、おなじくはちみつ由来の物質であるリンゴ酸は、抗酸化物質としても機能します出典[2]サイクリングトレーニングの後にはちみつを補給する生活を16週間続けたところ、炎症性サイトカインであるインターロイキン6(IL6)やTNF-1などが減少したことが確認されています出典[3]

抗酸化物質には、トレーニング後に発生量が増える活性酸素を除去する働きがあります。はちみつ由来の抗酸化物質により酸化ストレスが軽減され、筋肉痛などの炎症反応を抑制できる可能性があるのです。

トレーニングで疲労した筋肉に素早く疲労回復効果をもたらしたい場合、はちみつは良い選択肢であると言えるでしょう。

 

メリット2.整腸作用により腸内環境の悪化を防ぐ

はちみつはブドウ糖や果糖のほか、オリゴ糖などの糖類を含んでいます。また、ミツバチ由来の酵素と糖類が反応することにより、グルコン酸という有機酸が発生します。

オリゴ糖はヨーグルトやバナナからも摂取できる糖類です。体内には吸収されにくく、腸内で善玉菌のエサとして機能して、腸内環境を良好に保つ効果が期待できます。

また、グルコン酸にも善玉菌の一種であるビフィズス菌を増やす作用があります。1日2gのグルコン酸を継続摂取することで、ヒトの腸内におけるビフィズス菌が有意に増加したという報告が寄せられており、様々な有機酸の中で唯一、腸内の善玉菌のエサとして機能する働きを持つと考えられています出典[4]

筋力トレーニング中にはたんぱく質を十分に摂ることが欠かせませんが、たんぱく質は腸内において悪玉菌のエサになりやすく、腸内環境を乱しやすい栄養素です。

腸内環境の悪化は便秘や免疫力の低下、肥満や炎症などのリスク因子となります。体調を整えて筋力トレーニングのパフォーマンスを維持するためにも、整腸作用が期待できるはちみつを取り入れてみましょう。

 

メリット3.アミラーゼなどの酵素により消化促進

はちみつにはミツバチ由来の酵素が含まれています。酵素は高温で失活するため、加熱処理されたはちみつには含まれていませんが、非加熱、あるいは低温処理された生はちみつであれば、同時に酵素も摂取できます。

生はちみつからは消化酵素であるアミラーゼやα-グルコシダーゼなどを摂取できます。消化酵素の働きにより、糖類の消化を早める効果が期待できます。

はちみつの糖類は既にブドウ糖と果糖に分解されていますが、食パンなど、炭水化物を合わせて食べる場合には、でんぷんなどの糖類の消化を助けるように機能します。素早いエネルギー補給を行いたい場合や、消化にかかる負担を軽減したい場合に役立つでしょう。

 

メリット4.血糖値の上昇が緩やかであり、体脂肪合成のリスクが少ない

ショ糖で構成されている上白糖は、血糖値を上げやすい食品のひとつです。一方、はちみつはブドウ糖と果糖で構成されており、このうち果糖は血糖値を直接上げるものではないため、血糖値を上昇させる作用は砂糖よりも緩やかです。

食品を摂取したときの血糖値の上がりやすさを示す指標として「グリセミック・インデックス(GI値)」というものが使われます。

各糖類のGI値を調べた食品研究によると、ブドウ糖(グルコース)のGI値103に対して、果糖(フルクトース)のGI値は15であり、ブドウ糖と果糖を含むはちみつは、ショ糖(スクロース)を含む砂糖と比較して、GI値が7%ほど低く抑えられていました出典[5]

血糖値が急激に上がると、インスリンというホルモンが大量に分泌され、余った糖が体脂肪合成に使われやすくなります。インスリンは筋肉へのグリコーゲン貯蔵を促進する重要なホルモンですが、体脂肪合成のリスクを高めるホルモンでもあるのです。

糖質補給を行いつつ、体脂肪合成のリスクを減らしたい場合には、GIが上白糖よりも低いはちみつを甘味料として活用してみましょう。

 

メリット5.甘さの密度が高くカロリー調整がしやすい

はちみつでは、ショ糖が酵素の働きにより分解され、ブドウ糖と果糖に分解された状態で存在しています。この状態の糖は転化糖と呼ばれ、転化糖の割合が多いほど、ショ糖よりも強い甘味を感じることが分かっています。

はちみつは、ショ糖100%のグラニュー糖や、ショ糖に僅かな転化糖を含んだ上白糖よりも甘味が強く、またグラニュー糖や上白糖よりも低エネルギーです。

より強い甘味を、より低エネルギーで出したい際に、はちみつは活躍しやすい食品となっています。甘いものを食べながらカロリー調整をしたい方にもおすすめできる甘味料です。

 

より効果を得るために!はちみつの活用ポイント4つ

はちみつには、エネルギーの変換効率を高める、疲労や炎症を軽減する、体脂肪合成のリスクを減らす、といった様々な健康効果が確認されています。筋力トレーニングと相性が良いこれらの効果を効率よく得るためには、はちみつをどのように食べれば良いのでしょう。

以下でははちみつを活用する際のタイミングや量、選び方などについて紹介します。

ポイント1.生はちみつを選ぼう

はちみつの効果を十分に得たい場合は、純粋はちみつの中でも非加熱、あるいは低温処理された「生はちみつ」を選びましょう。

加糖はちみつには砂糖などが加えられているため、はちみつに含まれるビタミンやオリゴ糖などを摂取することができません。また、精製はちみつも膜によるろ過処理の過程で酵素やビタミンが取り除かれているため、はちみつ本来の健康効果は薄まっています。

なお、純粋はちみつにも、加熱処理されたものと、非加熱あるいは低温処理されたものとがあります。

酵素は熱に弱いため、加熱処理により失活してしまいます。はちみつのアミラーゼは70度以上、α-グルコシダーゼは50度以上で数時間加熱すると活性が大きく低下するため出典[6]、50度以下の低温処理であれば酵素の損失を防ぐことができます。

このように、非加熱あるいは低温処理された生はちみつを選ぶことで、ビタミンや酵素の効果を最大限受けることができます。

糖質に加え、ビタミンやオリゴ糖、ミネラル、酵素など、様々な栄養素を摂取できる点こそはちみつのメリットです。栄養素や酵素が失われていない生はちみつを選ぶようにしましょう。

 

ポイント2.生で食べる

購入した生はちみつは、熱を加えずに生で食べるようにしましょう。

当然ながら、煮込み料理や焼き菓子などに加えてはちみつを熱すると、はちみつのビタミンや酵素が減少してしまいます。健康効果を得るためには生の状態で食べることをおすすめします。

また、生はちみつを料理に活用することは、はちみつだけでなく、料理の点からもあまりよくありません。

たとえばカレーに生はちみつを加えて調理すると、アミラーゼの作用により、でんぷんが分解されてとろみが弱まります。このように、料理がはちみつの酵素やビタミンの影響を受けて、本来とは異なった仕上がりになることがあるのです。

加熱処理されたはちみつや、精製はちみつを使うことで料理側の問題は回避できますが、はちみつの効果を守るためにも、特に加熱調理に加えることはやめておきましょう。

 

ポイント3.1日大さじ1~2杯を目安に、継続しよう

生はちみつをそのまま食べる際は、大さじ1~2杯を目安にしましょう。

上白糖よりも低エネルギーではありますが、はちみつも甘味であるため、食べ過ぎればカロリーオーバーを引き起こすため注意が必要です。

また、腸内環境を整える効果のあるグルコン酸は、小腸で吸収されない難消化性の成分であるため出典[7]、多量摂取することによりお腹が緩くなり、腹痛や下痢の原因となることがあります。そのため、全ての糖類をはちみつに置き換える、という方法はおすすめできません。

さらに、健康効果の高い生はちみつは、グラム単価の非常に高い甘味料です。負担なく継続するためにも、1日あたりの摂取量は大さじ1~2杯に留めておきましょう

疲労回復効果や炎症抑制効果は、はちみつの成分を継続摂取することにより確認されています。毎日食べ続けることで、筋力トレーニングにも良い効果をもたらしやすくなるでしょう。

 

ポイント4.トレーニング前後のプロテインに混ぜると効果増大

運動前にプロテインを飲むことで、エネルギーとしてアミノ酸を使いやすくなり、トレーニングのパフォーマンスを高めることができます。運動後のプロテインも、グリコーゲンを消耗した筋肉へのエネルギー再補充に有効です。

こうした運動前後のプロテインにはちみつを加えることで、プロテインの効果が高まる可能性があります。

糖類であるはちみつを摂ることで、インスリンの分泌が適度に促進されます。プロテインを飲んだタイミングでインスリンを分泌させることで、アミノ酸がエネルギーとして、グリコーゲンに蓄えられやすくなるのです。

筋肉へのエネルギー貯蔵効率が高まるため、パフォーマンスを高めたり持久力を増加させたりする効果が期待できるほか、運動後の回復速度を早めるのにも役立つでしょう。

また、はちみつにはビタミンや抗酸化物質など、トレーニング前後に摂取したい成分が複数含まれています。運動前後に飲むプロテインの吸収効率を高めたいときや、甘みを加えたいとき、筋肉痛を軽減させる効果をプラスしたいときには、是非はちみつを利用してみましょう。

 

はちみつとの組み合わせにおすすめの食品3つ

はちみつは、少量を毎日摂取することで、健康効果や筋力トレーニングへの効果を得やすいことが分かっています。そのまま食べる、プロテインに混ぜる、といった方法でもはちみつを摂取できますが、他にも味や成分の面で、はちみつと相性の良い食品はいくつかあります。

今回はその中から、特に筋力トレーニングに効果を発揮する食品の組み合わせについて、3つ紹介しましょう。

1.ヨーグルト

ヨーグルトは言わずと知れた発酵食品であり、ビフィズス菌などの乳酸菌を摂取できます。ヨーグルト自体にもオリゴ糖など、ビフィズス菌のエサとなる成分は含まれていますが、グルコン酸を含むはちみつと合わせることにより、よりビフィズス菌を増やしやすくなります

ヨーグルトとはちみつの組み合わせにより、筋力トレーニングに欠かせないたんぱく質の補給と、高たんぱく質食で荒れがちな腸内環境の改善、2つの嬉しい効果を同時に得ることができるでしょう。

なお、一般的なはちみつは、外気温15~16以下で結晶化が起こりやすく、13~14度程度で最も結晶化しやすいという性質があります。そのため冷たい飲み物やヨーグルトに混ぜると、固まってしまいスプーンにくっついたり、全体に混ざらなかったりすることがあります。

はちみつに含まれる糖類のうち、果糖の割合が多いほど結晶化しにくいことが分かっています出典[8]。はちみつの混ざりにくさが気になる場合は、果糖の含有量が多くブドウ糖の含有量が少ない、はちみつを利用してみましょう。

アカシアという花から採取されたはちみつは果糖が多く、結晶化しにくい性質があります。冷たい食品に合わせる際には、アカシアのはちみつを検討してみましょう。

 

2.パン

主食とはちみつの組み合わせにより、活性の高いビタミン類を補給できます。糖質をエネルギーに変換するためにはビタミンB1の作用が欠かせません。はちみつを合わせて摂取することにより、エネルギー変換効率を上げる効果が期待できます。

なお、はちみつで味付けされた菓子パンは、コンビニやスーパーでもよく売られています。パンとはちみつの組み合わせならエネルギー変換効率が高いため、筋力トレーニングとの相性も良いのでは、と考えたくなるかもしれません。

しかし市販の菓子パンには、純粋はちみつはほとんど使用されておらず、はちみつの健康効果をあまり得られません。また市販の菓子パンは高脂質であることも多く、体脂肪合成のリスクも高まります。ダイエットを目的とした筋力トレーニング中には、特に避けた方が良いでしょう。

食パンやフランスパン、ベーグルのようなシンプルなパンを選ぶことで、体脂肪合成のリスクを抑えることができます。はちみつを合わせて、パンの糖質をより有効利用してみましょう。

 

3.牛乳

はちみつの糖質は速やかに吸収され、即座にエネルギーとなるものでありながら、血糖値の上昇は比較的緩やかです。

この性質から、睡眠前に少量のはちみつを食べても、血糖値の急上昇を起こさないため、睡眠の質を妨げることがありません。また、速やかにエネルギー補給が行えるため、脳のエネルギー補給にも役立ち、睡眠の質を高める効果が期待できます。

冠動脈疾患患者が牛乳とはちみつの混合物の摂取を1日2回続けたところ、3日目には睡眠スコアの有意な改善が見られるなど出典[9]、臨床研究においてもはちみつによる快眠効果が確認されています。

ホットミルクにはちみつを加えて飲むことで、体を温めると同時に良質な糖質補給を行えます。空腹や冷えで寝つきが悪い場合には、牛乳との組み合わせを試してみてください。

なお、加熱することで酵素やビタミンが減少するはちみつですが、温めた牛乳に加える程度では大きな損失は起こりません。たとえばはちみつのアミラーゼの失活には70度以上、数時間の加熱が必要とされています。温かいものとの組み合わせを過剰に避ける必要はないため、好みに応じて温かい食べ物や飲み物とも合わせてみましょう。

 

まとめ

はちみつは糖類のほか、ビタミンやミネラル、酵素など、様々な栄養素や成分を摂取できる優れた甘味料です。糖質補給の効率化や、疲労回復の促進、筋肉痛の緩和など、筋力トレーニングに嬉しい効果が複数期待できます。

上白糖よりも低エネルギーで血糖値の上昇も緩やかでありながら、強い甘さを楽しむことができるため、ダイエットを目的とした筋力トレーニングとも好相性です。

毎日の継続には、プロテインやヨーグルトに混ぜたり、パンにかけたりして食べるのがおすすめです。少量の摂取を毎日続け、筋力トレーニングに役立ててみましょう。

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