メラトニンを整えて快眠!日光浴の効果的な方法5つ
2023年11月21日更新

監修者

睡眠健康指導士/ロジスティクス管理3級

室井優作

心と体の健康の要となる睡眠のスペシャリスト。眠りに悩みを抱える方のコンサルティングを日々行っている。プロボクサーを目指しており、運動やダイエットに関する指導も可能。おすすめの寝具はウェイトブランケット。

執筆者

株式会社アルファメイル

NP+編集部

「オトコを科学する」をキーワードに男性の悩みや課題の解決を科学的根拠をもってサポート。運動や睡眠、栄養など、健康に関する正しい知識を提供するためにコンテンツを製作中。

睡眠と日光浴の関係3つ

夜の睡眠に日光がどうして必要なのでしょうか?なんとなく大事と聞いたことはあっても、メカニズムについて理解している人は少ないことでしょう。

ここでは、睡眠と日光浴の関係を3つ解説します。原理を知ると日中は外で過ごしたくなるはずですよ。

関係性1.体内時計をリセットする

人間には1日周期の「体内時計」が備わっているので、自分で意識しなくても日中は活動状態に、夜間は休息状態になります。体内時計が働くために人間は周りが暗い夜になると自然に眠くなり、睡眠をとります。

しかし、体内時計の周期はきっちり24時間ではありません。正確には24時間数分~数十分と、個人差があります。この数分~数十分のずれをそのままにしていると、24時間周期の生活サイクルからどんどんずれることになります。そのために必要なのが、日々のリセットです。体内時計は朝、太陽の光を浴びることでリセットされ、再び一定のリズムを刻んでいきます

2019年、バーゼル大学では、概日リズム、睡眠、気分に対する光の影響に関する研究をレビューしました。この研究では、朝の光は時計を進め、夕方と夜の光は遅らせ、また屋外で 1 時間過ごすごとに睡眠が約 30 分早まると報告しています。つまり、太陽の光を浴びることで、体内時計が24時間に近づこうとするのです出典[1]

人間が毎日、決まった時刻に学業や勤務がこなせるのは、体内時計と朝の太陽光による体内時計のリセットのおかげなのですね。

 

関係性2.セロトニンの生成でうつを防止

セロトニンとは、脳内で働く幸せホルモンとも呼ばれるものです。セロトニンは光を浴びることで体内で生成されます。

セロトニンの不足が招くのはうつ状態です。日照時間が短くなる冬の時期には「冬季うつ病」とも呼ばれる季節性情動障害(SAD)という疾患も発症します。

2021年、英国民50万人以上を対象とした長期的な横断研究がオーストラリアで行われました。この研究では、日中に外で過ごす時間が長いほどうつ病になる確率が低くなると報告しています出典[2]。さらに、睡眠についても日中に外で過ごす時間が長いほど、不眠症になりにくく、また疲れにくくなることがわかっています

日中に屋外で過ごすほど、うつ病にならない、不眠症になりにくい、疲れにくくなるなど精神的な健康が保たれるというのはうなずけますね。この研究結果を見て、今日から少しでも外に出て日光を浴びようと思った方は多いのではないでしょうか。

 

関係性3.入眠ホルモンのメラトニン生成に役立つ

メラトニンとは脳の松果体(しょうかたい)から分泌されるホルモンです。体内時計に働きかけ、覚醒と睡眠を切り替えることで、自然な睡眠を誘う作用があります。別名は「入眠ホルモン」です。

メラトニンの原料はセロトニンです。セロトニンが合成される過程では光が必要ですが、セロトニンからメラトニンに合成される過程では光は必要ありません。むしろ暗い状態でこそ、メラトニンは多く作られます出典[3]

日中にメラトニンを作る材料のセロトニンが分泌されても、眠気が生じないのはメラトニンの合成が光によって抑制されるからです。(寝不足や疲労などメラトニン以外の要因で眠気が訪れることはあります。)

そのため日中は十分に光を浴び、夜になったらスマートフォンや蛍光灯からの光は極力浴びないことが、より良い睡眠に重要です。

 

今日から快眠間違いなし!日光浴の方法5選

日光浴がいかに睡眠にとって有用かご理解いただけたでしょうか。ここからは効果的に日光浴を行うために、日光浴を行う方法をいくつかご説明します。手軽にできるものを中心に紹介しているので、是非できるものから取り組んでみてくださいね。

1.起きたらまずカーテンを開ける

朝、起きたらまず部屋のカーテンを大きく開けて、太陽の光を浴びましょう。ヒトは目から入った太陽光の情報を、網膜・視交叉上核で受け取り、体内時計がリセットされます。リセットされた情報は、すぐに全身へ伝達され、全身が目覚めます。

また、光の他に体内時計に影響を与えているものとして挙げられるのは、食事です。朝の太陽光を浴びるほかに、朝食をきちんと摂取することも質の良い睡眠には有用です。

2019年の日本の研究では、朝食における糖質とタンパク質の適度な摂取は、体内時計のリセット効果を促進すると考えられると報告しています出典[4]。さらに食事と光を組み合わせることでより効果的に体内時計をリセットできる可能性もあるとも報告しています。

起床後、カーテンを開けたら、決まった時刻に栄養バランスのよい食事を取って、夜の睡眠へのスタートを切りましょう。

 

2.1日30分を目安に浴びる

適切な日光浴時間の目安は、日光を浴びることで皮膚で生成されるビタミンDの量からおおよそ知ることができます。なぜならビタミンDはセロトニンの合成に関与し、眠りの質を高める作用があるためです。

実際に2023年に、ブラジル成人1,709人を対象にビタミンDの量と睡眠の質の関連性に対する研究では、ビタミンD量が1ng/mL 増加するごとに睡眠の質が4.2% 向上する可能性が示されています出典[5]

しかし、ビタミンDは食品から取得するだけでは不足しがちであり、適度な日光浴による皮膚での補給が不可欠です。 皮膚でビタミンDを生成する量は浴びる紫外線強度にほぼ比例します。

日本の主な研究機関が推奨するビタミン D 生成に必要な日光照射時間は以下の通りです。

  • 環境省:約15分(日向)~30分(日陰)
  • 日本ビタミン学会:夏季は約30分、冬季は約1時間
  • (財)骨粗しょう症財団:夏季は約30分(木陰)、冬季は約1時間

日光照射時間はその場所の緯度・経度・季節などに依存して大きく変化します。そのため、日本各地だけに限ってみても一概には言えませんが、上記の例から1日30分程度は浴びると良いでしょう出典[6]

 

3.曇りの日や冬は少し長めに

睡眠に有用な日光浴。曇りや冬は光量が少ないため長めに浴びるのが良いでしょう。

冬に比べて夏はビタミンD生成量が多く、また晴れの日が曇りや雨の日に比べて生成量が多いことも報告されています出典[6]

冬や雨や曇りの日はどうしても家にこもりがち。しかし、日光浴をしないと睡眠がしっかりとれないとなると、あまり関心がない日光浴にも意識が向きますね。

日光浴をするときは以下のことに気をつけましょう。

  • サングラスや帽子を使わない
  • 曇りや雨の日は、太陽のある方向を見る

サングラスや帽子を使えば、目に入る光量が激減します。また、曇りや雪の日にも太陽の光がまったく地上に届かないわけではありません。快晴時の光量を100とすると、うす曇りのは80~90、曇りの時も60~70ほどの紫外線量があるので、心配は不要です。

曇りや雪の日は光が届きにくいので、できるだけ太陽の方向を見るようにすることで目に入る光の量を増やすことができます。 

 

4.朝食でトリプトファンを十分に摂取する

朝食でトリプトファンを十分に摂取しましょう。

トリプトファンとは、体内で生成できない必須アミノ酸のひとつです。体内で生成できないので必ず食事から栄養分として摂取しなければなりません。トリプトファンは脳に運ばれ、セロトニンやメラトニンの原料となります

2014年、日本で33名の男子学生に、トリプトファンと日中の光暴露のメラトニン分泌へ与える影響の研究が行われました。

その研究では33 人の男子学生を以下の4グループに分け、4 泊 5 日続く実験が行われました。

  • トリプトファンの少ない朝食 (1食あたり55mg)と薄暗い光環境(<50lx):10名
  • トリプトファンが豊富な朝食 (1食あたり476mg)と薄暗い光環境(<50lx):7名
  • トリプトファンの少ない朝食(1食あたり55mg)と明るい光環境 (>5,000 lx):9名
  • トリプトファンが豊富な朝食(1食あたり476mg)と明るい光環境(>5,000 lx):7名

(50lxは、10m先の人の顔が明確に分かる程度の明るさ。5000ルクスは一般的な事務所の10倍の明るさ)

その結果、トリプトファンが豊富な朝食と日中の明るい光環境への曝露が、夜間のメラトニン分泌を促進したと報告されています出典[7]

2012年にスペインでも、高齢者がトリプトファン豊富なシリアルを摂取した場合の効果についての研究が報告されました。この報告では、トリプトファンが豊富なシリアルは夜間睡眠やメラトニン、セロトニン、総抗酸化能力レベルと気分を改善したとしています出典[8]

トリプトファンを豊富に含む食品として挙げられるのは、豆腐・納豆などの大豆製品、チーズ・牛乳などの乳製品、米などの穀類です。その他、ごま、卵・バナナにも含有されています。

 

5.ランニングしながら浴びると効率的

日光は、セロトニン濃度を上げる効果のあるランニングをしながら浴びると効率的です。

ランニングはリズム運動です。リズム運動とは、一定のリズムを重視した運動でランニングの他にも、ウォーキング、自転車こぎなども含まれます。リズム運動には、20~30分の継続で効果的にセロトニン濃度を上げる効果があるといわれています。

セロトニン濃度が上がると、必然的に夜のメラトニン濃度も上がりますね。

2020年のアメリカの研究は、17名の健康な成人男性が8週間の有酸素運動を実施したところ20時のメラトニン生成量が2倍になったと報告しています出典[9]。メラトニン濃度が上昇するので、睡眠の質が向上します。

8週間はちょっと長いですが、諦めるのは早いです。

2020年のイランの研究チームが67人の女子学生を対象にした調査でが、4 週間の有酸素運動は睡眠の質を向上させると報告しています出典[10]。この研究では8週間継続時点の結果も報告していて、8週間継続すれば睡眠時間も有意に上昇しています

4週間でも睡眠に良い影響があるのです。4週間で効果を実感、さらに継続すればもっと良い効果…と考えるとがんばれそうですね。

 

日光浴に関してよくある質問

日光浴に関してよくある質問をまとめてみました。日光浴に関する疑問が解消する可能性があるので、読んでみてください。

どのくらいで効果が表れますか?

効果に伴うのは個人差です。1つの例ですが、5日間で効果があったとする研究があります。

2017年、トルコで61名の高齢者施設在住者を対象に5日間の介入研究が行われました。この研究では、日光浴は総合的な睡眠の質を向上させるのに効果的であることが判明しました(P < .001)出典[11]

介入研究での効果のあった日光浴の詳細は以下の通りです。

【効果のあった日光浴の詳細】

  • 午前8時から午前10時の間に浴びる
  • 1日30分以上の日光浴をする

あくまで高齢者を対象とした1例ではありますが、まずは5日間、午前中に30分程度日光を浴びてみてはいかがでしょうか。
 

ガラス越しでも効果はありますか?

太陽光線には身体へ強い影響を及ぼすUVBと身体へに影響が小さいUVAの2種類があります。ガラス越しではUVBがカットされるため、ビタミンDは生成されにくいです。

ビタミンDはセロトニンの合成に関わっているため出典[14]出典[15]出典[16]、UVBがカットされると日光浴の効果も半減してしまうことでしょう。

窓ガラス以外にも自動車ガラス、サングラスなどのあらゆるガラスはUVBがカット効果があるので出典[12]、日光浴は必ず屋外で行いましょう。

また屋外での日焼けには危険が伴う出典[13]ので、日焼け止めを使用する方もいますが、日光浴の効果はなくなりますのご注意を。

 

日焼けサロンでも効果はありますか?

日焼けサロンもUVBが少ないためビタミンDレベルを高くできずに、効果は少ないでしょう。

日焼けサロンのウリは、波長の短いUVBをコントロールして、害の少ないUVAのみで、肌を褐色に焼くというものです。したがって、日焼けサロンでは日焼けはできても、天然の日光浴と同じとは言えず、ビタミンDレベルを高くできずに睡眠に対する効果は期待できないでしょう。

 

まとめ

24時間体制で動く現代社会、良質な睡眠を取るのは意外に難しいものです。その中で太陽に当たりながら外を歩くだけで良いので、日光浴は睡眠の質を上げるために効果的だと言われています。しかし、忙しい日常の中で日光浴を効果的に取るのは意外に難しいものです。本記事では日光浴の効果的な方法を5個紹介しました。質の良い睡眠をとるために、可能なものから取り組んでみてくださいね。

LINEで専門家に無料相談

365日専門家が男性の気になる疑問解決します
LINEからメッセージを送るだけで薬剤師やパーソナルトレーナー、睡眠指導士やサプリメントアドバイザーなどNP所属の男性ヘルスケアの専門家があなたの疑問や質問に直接回答します!