筋トレの効率化には亜鉛!おすすめの摂取方法について解説
2023年8月8日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

亜鉛ってどんな栄養素?

亜鉛は「必須ミネラル」に分類される重要な微量元素です。

主に、代謝に関わる酵素の構成成分として、また酵素の働きを助ける「補因子」として幅広く活躍するミネラルです。ホルモンの合成や分泌を調整したり、免疫機能を調節したりする働きもあります。

またDNAやたんぱく質の合成にも関わっており、体の成長や維持において重要な役割を担っています。

亜鉛は血液や皮膚、骨や脳、髪の毛など、細胞の入れ替わりが盛んな部位に多く存在しています。男性においては前立腺にも多く分布しており、精液中の成分にも亜鉛が含まれています。

体内で生成できない亜鉛は、食事からの摂取が不可欠です。亜鉛不足では、主に以下のトラブルを生じる可能性があります。

  • 脱毛や爪の変形:たんぱく質合成が滞る
  • 味覚障害:舌の味蕾細胞が育たなくなる
  • 発育障害:成長ホルモンの分泌が滞る
  • 免疫機能の低下:免疫細胞の働きが鈍る

食事から十分に亜鉛を摂取し、体調を整えることが重要です。

 

筋トレ好きが亜鉛が不足すると起こる3つのこと

日本人において、亜鉛の摂取の平均量は推奨量にやや足りておらず、不足によるトラブルのリスクが高い方が多いようです。加えて筋力トレーニングを継続している方は、より亜鉛不足に注意する必要があります。

亜鉛は炎症や発汗によって体内量が減少しやすいミネラルです。激しい疲労を伴う筋力運動は、血清亜鉛濃度を低下させ、尿中亜鉛濃度を増加させることが分かっています出典[1]。トレーニングからの回復期にこの変化が見られることから、筋肉の修復プロセスに亜鉛が消費されている可能性が指摘されています。

激しいトレーニングを行う方は亜鉛の消費量が増しているため、より亜鉛不足を引き起こしやすい状態にあると言えるでしょう。

トレーニーにおける亜鉛不足は、体調を損なうばかりでなく、トレーニングの質を大きく低下させます。亜鉛不足により生じる悪影響について、3つ解説しましょう。

1.筋肉の合成のスイッチを入れるテストステロンが減る

筋肉の合成を促進するホルモンとして、男性ホルモンであるテストステロンがよく知られています。亜鉛はテストステロンの合成に関わっているため、不足すると筋肉の合成効率が低下してしまいます

実際に1996年にアメリカのウェイン州立大学が発表した論文では、40人の男性の血液分析の結果、血中の亜鉛濃度が低い人ほどテストステロンが低いことが報告されています。

またこの研究では、亜鉛の制限や投与によるテストステロンの変化も調べられています。若い男性が20週間、亜鉛を制限したことにより、テストステロン濃度が74%も減少したのです。一方、亜鉛欠乏の状態にある高齢男性が6か月間亜鉛を十分に摂取したところ、テストステロン量は約93%増加しました出典[2]

テストステロン量を保つことは、筋肉の合成効率を高めるにおいて非常に重要です。テストステロンの生成を高める亜鉛を摂取して、トレーニングの質を維持しましょう。

 

2.筋肉を分解するシステムが活発になる

亜鉛不足においては筋肉の合成効率が下がるのみならず、筋肉の分解が盛んになり、トレーニングの効果が得られなくなる可能性があります。

2022年にインドから発表された論文では、亜鉛欠乏食を7週間食べたラットにおいて、骨格筋細胞の減少や細胞死(アポトーシス)が有意に多く確認されたと報告されています。筋委縮マーカーや細胞のストレスマーカーが増加していたことから、亜鉛不足が筋委縮を促進する可能性が指摘されています出典[3]

熱心に筋力トレーニングに取り組んでも、十分に亜鉛を摂取できていないと筋肥大を起こせないばかりか、筋肉が減少してしまう可能性もあるのです。トレーニングによる発汗や筋肉の炎症により亜鉛の消費量はさらに増大するため、亜鉛補給を行わないままでは筋肉の分解が加速してしまいます。

筋力トレーニングへの取り組みをムダにしないためにも、十分な亜鉛の摂取が肝心です。


3.貧血になりトレーニングのパフォーマンスが低下する

亜鉛は赤血球を形成するミネラルでもあります。赤血球のもとになる赤芽球の分化や増殖に亜鉛が関わっているため、亜鉛不足により赤血球の生成が追いつかなくなり、赤血球自体の強度も損なわれます

亜鉛不足により赤血球の量や質が低下した状態で激しいトレーニングを行うと、運動による強い物理的刺激により赤血球が壊れてしまい、貧血を引き起こしやすくなります出典[4]

亜鉛を十分に摂取して、高負荷のトレーニングに耐えうる丈夫な赤血球を作りましょう。

 

亜鉛はどう摂る?摂取方法について解説

筋肉の状態を良好に維持し、トレーニングの質を高めるため、日頃から亜鉛を不足なく摂取する必要があります。

しかし亜鉛の吸収率は高くなく、腸管からの吸収率は約30%ほどと言われています。また摂取量や同時に摂取する栄養素によって吸収率が変動するため、十分に摂取したと思っていても、体に必要量が吸収されていない、という可能性も考えられます出典[5]

亜鉛不足を防ぐためには、量やタイミング、栄養素との組み合わせに注意する必要があります。摂取方法のコツについて次に解説しましょう。

適切な摂取量

2020年度版の「日本人の食事摂取基準」において、18~74歳の男性における亜鉛の摂取量は以下のように示されています出典[6]

  • 推定平均必要量(集団のうち50%が必要量を満たす量):9mg/日
  • 推奨量(ほとんどの人が必要量を満たす量):11mg/日

一方で、令和元年度の国民健康・栄養調査では、20歳以上の男性の亜鉛摂取量は9.1~9.8mg/日と報告されており、成人男性には亜鉛がやや不足傾向にあることが分かります出典[7]

なお、亜鉛の耐容上限量(健康障害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限)は40mg/日と示されています。

通常の食事から摂取する分にはこの量を超えることはまずありません。また亜鉛は体内に十分な量がある状態では吸収率がさらに低下するため、食事による過剰症のリスクは低いと言えます。

しかしサプリメントなどで吸収効率を高められたものを過剰に摂取した場合には、吐き気や下痢、頭痛などの過剰症を引き起こす可能性があります。サプリメントを利用する際には販売元の1日摂取の目安量に従い、過剰摂取を引き起こさないよう注意しましょう。


吸収率を上げる摂取タイミング

亜鉛は同時に摂取する栄養素によって、吸収率が変動します。亜鉛の吸収率を高めるための摂取法として、避けるべきタイミングと相性の良い組み合わせをそれぞれ紹介します。

相性の悪い栄養素が豊富な食事の直前直後は避ける

亜鉛の吸収率を低下させるものとして、次の成分が明らかになっています出典[4]

  • フィチン酸(未精製の穀類、豆類)
  • カルシウム(牛乳、乳製品)
  • タンニン(コーヒー、濃い緑茶、ワイン)
  • オレンジジュース
  • 食物繊維の摂りすぎ

フィチン酸は未精製の穀類である玄米や全粒小麦、オートミールなどに含まれます。また大豆やインゲン豆などの豆類、とうもろこしにも含まれています。これらの食品には食物繊維も豊富であるため、食べ過ぎにより亜鉛の吸収率を下げる作用が強まります。

タンニンはコーヒーや濃い緑茶、紅茶、ワインなどに含まれるポリフェノールの一種です。抗酸化物質として機能し、筋肉痛を軽減する効果が期待できますが、亜鉛との相性はよくないため同時摂取は避けましょう。

カルシウムを豊富に含む牛乳、アルコール飲料、オレンジジュースなどの飲料にも注意が必要です。

亜鉛を豊富に含む食事を摂取する際には、食物繊維やフィチン酸が豊富な全粒穀物や豆類、乳製品を避けることをおすすめします。また、サプリメントを飲む際にはお茶やジュースではなく、水で飲むようにしましょう。

 

相性の良い栄養素と同時に摂る

亜鉛は次の食品や成分と同時に摂取することで、吸収率が高まることが分かっています出典[4]

  • 動物性たんぱく質
  • クエン酸
  • ビタミンC

亜鉛は動物性食品に豊富に含まれているミネラルであるため、肉類や魚介類から摂取することで吸収効率を高められます。

クエン酸とビタミンCを同時に含む食品として、レモンやキウイなどのフルーツが挙げられます。亜鉛の吸収を助けるため、食後のデザートに取り入れてみましょう。

 

亜鉛が豊富なおすすめ食材4選

亜鉛は肉類や魚介類、ナッツ類や穀類など、様々な食品に含まれています。今回はその中から、吸収性が高い動物性食品を中心に紹介しましょう。

各食品における、筋力トレーニングの質を高める成分についても紹介しているので、是非参考にしてみてください。

牡蠣

牡蠣はトップクラスの亜鉛含有量を誇る食品であり、100g食べれば13.2mgの亜鉛を摂取できます。牡蠣1個を20gと考えた場合、3個食べるだけで18~74歳における亜鉛の1日の推奨量、11mgの半分以上を満たせる計算になります。

エネルギー代謝をサポートするビタミンB群や、貧血防止に役立つ、疲労回復効果や筋肉痛を軽減させる効果のあるタウリンなども摂取できるため、筋力トレーニングの質を高めるのに非常に相性のよい食品であると言えるでしょう。

なお、亜鉛は水溶性であり、煮汁に溶け出しやすい栄養素です。牡蠣の亜鉛をより効率よく摂取するためには、焼く、炒めるなどの水を使わない料理で食べるか、スープに使用して溶出した亜鉛ごと食べる方法をおすすめします。

 

赤身肉

牛かた肉や牛もも肉、豚レバーや豚ヒレ肉など、赤身肉の亜鉛の供給源として使いやすい食品です。牛肉と豚肉には他にも、筋力トレーニングの効率化に役立つ栄養素が含まれています。

牛肉からはクレアチンL-カルニチンを効率的に摂取できます。クレアチンもL-カルニチンも、エネルギー産生を効率化する物質です。

クレアチンの摂取と運動を組み合わせることで、エネルギーとなるATPの生成効率が上がり、身体機能の向上や除脂肪体重の増加、筋肉の肥大、疲労軽減などの効果が得られることが分かっています出典[8]

L-カルニチンには脂肪からのエネルギー産生を効率化する働きがあり、脂肪の燃焼に役立ちます。ダイエット目的で筋力トレーニングを続けている方は、脂肪の少ない牛もも肉や牛ヒレ肉を積極的に活用しましょう。

豚肉からは糖質代謝を担うビタミンB1を効率的に摂取できます。摂取した糖質をエネルギーとして使える形に変えるには、ビタミンB1の作用が欠かせません。十分にビタミンB1を摂取することで、疲労回復効果が高まり、次のトレーニングに備えやすくなります。

赤身肉を料理に活用し、亜鉛とあわせてトレーニング効果を高める物質を効率的に摂取しましょう。

 

卵からは100gあたり1.3mgの亜鉛を摂取できます。亜鉛や赤身肉と比べるとやや効率は落ちますが、毎日手軽に取り入れて続けやすい食品として、積極的に活用することをおすすめします。

卵からはビタミンCと食物繊維以外の、人体に必要な栄養素をすべて摂取できます。エネルギー生成に欠かせないビタミンB群や、必須アミノ酸組成のバランスが整った良質なたんぱく質など、筋肉トレーニング中に十分補給しておきたい栄養素も豊富です。

なお、卵に含まれる亜鉛やたんぱく質を効率的に摂取したい場合は、生卵での摂取を避け、温泉卵や半熟卵など、ある程度熱を通した状態で食べましょう。

たんぱく質を体内で消化する際、消化酵素であるトリプシンが必要ですが、トリプシンの働きは生卵に含まれるオボムコイドにより阻害されてしまいます出典[9]。加熱した卵のたんぱく質吸収率が全体の92~97%ほどであるのに対し、生卵のたんぱく質吸収率は、卵全体の50%ほどにまで下がるとも言われています出典[10]

たんぱく質を十分に吸収できないと、亜鉛の吸収率にも影響を及ぼす可能性があるため、生卵の摂取には注意しましょう。

 

カシューナッツ

カシューナッツ(フライ・味付け)には100gあたり5.4gの亜鉛が含まれています。アーモンド(3.7mg/100g)やくるみ(2.6mg/100g)と比較してかなり高い含有量を誇り、ナッツ類の中では最も亜鉛の摂取に適していると言えそうです。

カシューナッツからは一価不飽和脂肪酸ω‐3系脂肪酸といった、良質な脂質を摂取できます。

一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸には、血中のコレステロールの正常化をサポートする働きがあります。血液の状態がよくなることで血流が維持され、筋肉を動かすためのエネルギー補給や、筋肉で発生した疲労物質の回収などを効率化する効果が期待できます。

ω‐3系脂肪酸は抗酸化物質として機能する脂肪酸です。激しいトレーニングにより発生した活性酸素を除去してくれるため、酸化ストレスによる炎症や筋肉痛の軽減に役立ちます。筋損傷を抑えることで、次のトレーニングに備えやすくなります。

また、ナッツ類からは食物繊維も豊富に摂取でき、よく噛んで食べる食品でもあるため、空腹の軽減効果も得やすくなっています。間食として食べることで、亜鉛や不飽和脂肪酸など、筋肉のコンディションを整える栄養素を効率的に摂取しましょう。

 

まとめ

日本人において摂取量のやや少ない亜鉛は、トレーニーにおいては亜鉛の消費量や喪失量が増しているため、十分に摂取しておきたいミネラルです。

亜鉛不足によりトレーニングの質が落ちるのみならず、筋肉の分解や貧血を引き起こす可能性もあります。毎日の食事から亜鉛を摂取して、トレーニングの質の向上に役立てましょう。

なお、男性ホルモンであるテストステロンの量を維持するためには、亜鉛だけでなく様々な成分の摂取が重要です。テストステロンを増やし、筋肉の合成効率やトレーニングパフォーマンスを高めたい場合には、テストステロン量を高めるためのサプリメント「テスノア」の利用をおすすめします。

テスノアは安全性の高い天然素材を使用したサプリメントです。亜鉛の摂取と組み合わせることで、さらなる筋力アップが期待できるでしょう。

 

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