執筆者
株式会社アルファメイル
NP+編集部
「オトコを科学する」をキーワードに男性の悩みや課題の解決を科学的根拠をもってサポート。運動や睡眠、栄養など、健康に関する正しい知識を提供するためにコンテンツを製作中。
テストステロンが減るとどうなる?
テストステロンは男性ホルモンの代表的なホルモンで、約95%が睾丸(精巣)、残りの5%が副腎で合成されます。
テストステロンは男性にとって欠かせないホルモンなので、低下すると次のような症状が出現します。
- 筋量の低下:テストステロンは筋肉を肥大化させるために重要です。血中のテストステロン量が少ない人ほど筋肉量が少ないことが示されています出典[1]出典[2]。
- 性機能障害:テストステロンは精子形成や勃起・性欲などの男性機能を保つのに重要です。テストステロンが低下するとED(勃起不全)や精子の運動性が落ちるなどの性機能障害が出現します出典[1]出典[3]。
- 気分の落込み:テストステロンはやる気やモチベーションを高めるドーパミンの分泌を促します。テストステロンの低下はドーパミンの減少に繋がり、気分が落ち込むなどのうつ症状が出やすくなります出典[4]。
- 睡眠障害:テストステロンには睡眠-覚醒のリズム(概日リズム)を整える役割を持ちます出典[5]。テストステロン値が低いほど、夜間覚醒や睡眠時無呼吸が増えるなどの睡眠障害が出やすくなります出典[6]。
- 記憶力の低下:テストステロンには脳を活性化する作用があるので、テストステロンが減ってしまうと記憶力に影響が出ます出典[7]。
テストステロンを低下させる要因は加齢と生活習慣です。
加齢によって体内のテストステロンの合成能が落ちたり、酸化ストレスなどで分解されたりするので、テストステロンは20代をピークに年1%ずつ低下していきます出典[8]。
また、睡眠・食生活・運動習慣・飲酒・ストレスなどの日々の様々な生活習慣がテストステロンに影響します。
加齢による低下は避けられませんが、生活習慣による低下はセルフケアで改善可能なので対処しておきましょう。
テストステロンを減らす行為15選
テストステロンを維持することは快適なメンズライフを送る上で必要不可欠です。
しかし、テストステロンは睡眠・食生活・運動習慣・飲酒・ストレスなど、日々の生活習慣の影響を受けやすく、誤った生活習慣を送っていると低下してしまいます。
テストステロンを減らしてしまう行為を論文を基に解説しますので、該当することはないかチェックしてみてください。
1.睡眠時間が5時間以下
しっかりと睡眠時間を確保することは健康維持のために欠かせません。
睡眠不足が続くと日中に眠気を感じるだけでなく、集中力や免疫力が低下したり、生活習慣病にもなったりするので、良いことは何一つありません。
もちろんテストステロンの低下も起こります。理由はテストステロンは睡眠中に最も分泌されるからです。
2011年のアメリカのシカゴ大学の研究では、1日5時間の睡眠が1週間続くだけでテストステロンが10~15%も低下することを報告されています出典[9]。
成人は7~9時間の睡眠時間を取ることが推奨されているので出典[10]、しっかりと睡眠時間を確保するように心がけましょう。
2.全く運動をしない
全く運動をしないと身体活動量が少なくなるので、テストステロンを低下させる要因です。
体を動かすことが少なくなると筋肉量が低下し、カロリーが消費されにくくなるので、肥満になりやすくなります。肥満になると脂肪細胞からの炎症性のホルモンの分泌が増え、テストステロンの分解や合成の低下が起こります出典[11]。
2016年に行われた筑波大学の研究では、身体活動量(有酸素運動)が多くなるとテストステロンが高くなるとのこと。また、肥満の人がテストステロンを増やすにはカロリー制限よりも身体活動量を増やすことが有効であることが示されています出典[12]。
健康のためにも1日当たり8000~10000歩を目安に体を動かすようにしましょう。
3.逆に運動をしすぎている
先程とは逆になりますが、運動のしすぎもテストステロンを減らす要因の一つです。
もちろん、適度な運動は体に様々な良い影響をもたらしてくれるので健康維持のために大事です。テストステロンにとっても重要で、運動によって脳下垂体前葉が刺激されることで、精巣からのテストステロン合成が増えます出典[13]。
しかし、運動をやり過ぎると体内のエネルギーが枯渇しテストステロンを作れなくなります。また、ストレス・炎症・活性酸素などが増加することでテストステロンが分解されてしまうからです。
毎週64km以上走っている男性は、運動しないデスクワークの男性よりもテストステロンが低いとの報告があります出典[14]。
また、市民ランナーの月間のマラソン距離とテストステロン値の関係を調べた研究では、月間200km以上を超えてくるとテストステロンが著しく低くなることがわかっています出典[15]。
何事もほどほどが大事です。ランニングの場合は月間200km、水泳の場合だと月間250kmを目安にしましょう。
4.過酷な減量
テストステロンにとっては肥満だけでなく、過度な減量などによる痩せ過ぎも低下を招く要因です。
テストステロンは体内に蓄えられた脂肪に含まれるコレステロールを原料にして合成されます。過度な減量によって体の脂肪分が減ってしまうと、原料となるコレステロールも少なくなってしまうので、テストステロンが作られにくくなるのです。
2013年にアメリカのフィッチバーグ州立大学で行われた研究では、体脂肪率を5%まで絞り込むと、テストステロンが3分の1に低下することが報告されています出典[16]。
肥満度を表すBMI(体格指数)が25以上になると肥満、逆に18.5以下になると痩せです。BMI22が適正体重と言われているので、身長170cmの人は63.5kg、180cmの人は71kgくらいを目安にしましょう。
5.食事を抜く
あなたは1日3食しっかりと食べていますか?
食事を抜くことでもテストステロンは低下します。
2010年に行われたワシントン大学で行われた研究で、カロリー制限を行うとテストステロンが低下することが報告されています出典[17]。
なぜなら、食事を抜くことがあると、テストステロンを合成するための原料となるコレステロールやエネルギー源が十分に供給されなくなるからです。
また、エネルギー不足により体が疲れやすくなると体内で活性酸素などが発生し、テストステロンが分解されたりもします。
6.揚げ物や高糖質の食べ物を好んで食べる
揚げ物や高糖質の食べ物。ハンバーガーやカップ麺、スナック菓子などのジャンクフードを好んで食べているとテストステロンは低下します。
2019年にオーストラリアのフリンダース大学で行われた研究によると、ジャンクフードを食べるとテストステロンは25%近くも低下するようです出典[18]。
揚げ物に含まれるトランス脂肪酸や糖質の中でもシュクロースがテストステロンを低下させる要因です。トランス脂肪酸やシュクロースは精巣にダメージを与え、精巣機能を低下させることがわかっています出典[19]出典[20]。
7.亜鉛の不足
必須ミネラルの一つである亜鉛の不足はテストステロンの低下を招きます。
亜鉛はホルモンやタンパク質合成・免疫反応などに関わる栄養素で、テストステロンの合成にも関わります。
2011年に韓国の亜洲大学で行われた研究によると、血中のテストステロンと亜鉛の量の間には負の相関関係があることがわかっています出典[21]。
亜鉛は体内では合成できないので食事から摂取する必要があります。
成人男性は1日11mgを目安に摂取するようにしましょう。亜鉛は牡蠣・豚レバー・カシューナッツなどに多く含まれています。
8.低脂質高たんぱくすぎる食事
低脂質高たんぱくな食事は脂質の摂りすぎを避けることができるので、健康的な体づくりや生活習慣病を予防する上で効果的な食事です。
しかし、たんぱく質の摂取量を優先して過度に脂質を減らした食事はテストステロンを低下させる原因となります出典[22]。
体内で合成されるテストステロンなどの一部のホルモンは脂質を原料としているので、適度な量の脂質は摂取する必要があるのです。また、脂質はテストステロンなどのホルモン合成だけでなく皮膚の潤いを保つためなどにも欠かせません。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」では、一日あたり摂取エネルギーの20~30%の脂質を摂取することを推奨しています。
いくら低脂質が体に良いとは言っても過度に減らすのは避けましょう。
9.過度な飲酒
適度な量の飲酒であれば問題ありませんが、過度な飲酒はテストステロンを低下させる要因です。
お酒に含まれるアルコールは様々な作用によりテストステロンを低下させます。
一つは睾丸や副腎の細胞にダメージを与え、テストステロンの合成を低下させます出典[23]。
二つ目として、アルコールによってテストステロンの前駆体であるアンドロステンジオンが、女性ホルモンの代表格であるエストロゲンに変換されやすくなります出典[24]。
他にも、過度のアルコール摂取により体内に炎症が起こると、炎症を抑えるために副腎から「コルチゾール」が分泌されることもテストステロンが低下する一因です出典[25]。コルチゾールが分泌されるとテストステロンの前駆体である、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)が消費されてしまいます。
アルコールは1日20g、500mlのビール1缶や日本酒1合程度を目安にしましょう。
10.ストレスをため込む
労働者の半数以上は何かしらのストレスを抱えていると言われ、社会問題の一つでもあるストレスは私達の体に様々な不調をもたらします。
不眠・免疫力の低下・疲労感・うつなどだけでなく、テストステロンの低下もストレスによる不調の一つです。
慢性的なストレスは、テストステロンの95%を作る精巣の機能を低下させます出典[26]。
また、ストレスによって体内で発生した炎症物質や活性酸素などによってテストステロンは分解されてしまいます。
11.日光を浴びない
外出することが少なく、日光を浴びる機会が少ないのもテストステロンを低下させる要因です。
日光を浴びることはストレス解消やリラックス、睡眠の質を高めるなどの効果があります。また、体内でビタミンDが生成されるので、骨を丈夫にしたり、免疫力を高めたりするために欠かせません。
実はビタミンDによってテストステロンの合成に関わる酵素の発現量が増えることがわかっています出典[27]。
2010年にオーストラリアのグラーツ医科大学で行われた研究では、ビタミンDとテストステロンの低さに相関関係があることや、日照時間が長くなるとビタミンDとテストステロンの両方が高まることが示されています出典[28]。
ビタミンD を合成するのに必要な日光浴の目安時間は15~30 分程度です。外に出て日光を浴びることを心がけましょう。
12.姿勢が悪い
姿勢の悪さはテストステロンを低下させる要因の一つです。
2010年にアメリカのコロンビア大学で行われた研究によると、背筋を伸ばした姿勢ではテストステロンが高くなるとのこと。逆に猫背などの自信がなさげな姿勢ではテストステロンが低くなることを報告しています出典[29]。
姿勢にはその人の気分や感情が現れており、背筋を伸ばした姿勢からは力強さや勇敢さ、気分の明るさを感じることができます。力強さや勇敢さはテストステロンによってもたらされる感情です。
逆に姿勢が悪いのは、不安や自信がないなどのマイナスの心理状態なのでテストステロンは低くなってしまいます。
13.プラスチック容器の加熱
コンビニ弁当やお惣菜などのプラスチック容器をde電子レンジなどでそのまま加熱して食べていませんか?
温かいものを食べたいので当たり前のように思える行為ですが、実はプラスチック容器を加熱する行為はテストステロンを低下させる要因の一つです。
プラスチック容器を加熱するとプラスチックに含まれるフタル酸エステルが溶け出してくるので、無意識のうちに摂取していることになります。
2014年にミシガン大学で行われた研究によると、体内に取り込まれたフタル酸エステルからできた代謝物の量とテストステロンの値には逆相関があります。つまり、フタル酸エステルの摂取量が増えるとテストステロンは低下するのです出典[30]。
プラスチック容器に入ったものを加熱したい時は、お皿などに移してから加熱するのをオススメします。
14.副作用の大きい薬の摂取
健康に生活を送るために欠かせない薬ですが、薬の副作用によってテストステロンが低下してしまうこともあるのです。
例えば、抗うつ薬や血中のコレステロール値を下げるためのスタチン系薬剤、鎮痛薬などにテストステロンを下げる可能性があることが報告されています。
抗うつ剤や鎮痛薬は中枢神経系に作用し、脳からのテストステロンの合成を促すための司令に影響を与えます出典[31]出典[32]。
また、スタチン系の薬剤は体内でのコレステロール合成を抑制します。テストステロンを合成するための原料が減少するので、テストステロンは低下してしまうのです出典[33]。
薬は健康に生活する上で必要不可欠なので、他の方法でテストステロン量を維持することを心がけましょう。
15.特定の女性と長期的な関係を築く
特定の女性と長期的な関係を築いているとテストステロンは低くなります。
2015年にイギリスのサンダーランド大学で行われた研究によると、同じ女性と12ヶ月以上の長期的な交際関係にある男性は、相手がいない人や12ヶ月未満で新しい女性との交際関係に移っている男性よりもテストステロンは低いことが報告されています出典[34]。
多くの生き物と同じように、人間も子孫を効率的に残したり、より良い遺伝子を残し子孫を繁栄させるために本能的に新しい相手を求めがちです。テストステロンは新しい相手を求めるという内的動機を引き起こしています。
とは言っても、パートナーがいる人にとっては同じ女性と長期的な関係を築いているのは良いことなので、他の方法でテストステロンを高めるようにしましょう。
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今回はテストステロンを減らす行為について論文を基に紹介しました。
もし普段からやっている行為があった場合は、注意が必要です。
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