執筆者
株式会社アルファメイル
NP+編集部
「オトコを科学する」をキーワードに男性の悩みや課題の解決を科学的根拠をもってサポート。運動や睡眠、栄養など、健康に関する正しい知識を提供するためにコンテンツを製作中。
目次
巷ではプロテインで勃起力が高まると噂されている
最近SNS等では「プロテインで勃起力が高まった」との投稿を目にする機会は少なくありません。
しかし本当なのでしょうか?
そもそも、たんぱく質の塊のドリンクを飲んで男性機能に何の影響があるというのでしょうか?
今回はプロテインと男性機能の関係について紐解くと同時に、摂取する上での注意点を解説しようと思います。
プロテインで本当に勃起力は上がるのか?
早速ですが、まずはプロテインの勃起力改善にエビデンスはあるのか?という疑問から解消しましょう。
結論、プロテインと男性機能を紐付けるデータ自体は存在します。
例えば2016年にオーストラリアで行われたとある研究では、高タンパク食によるダイエットが男性機能へ与える影響について調査されていました。
肥満男性(20〜65歳)118人に対し、エネルギー制限された高タンパク質低脂肪食(35%タンパク質、40%炭水化物、25%脂肪)を52週間(12週間の減量、40週間の体重維持)摂取させたところ、男性活力に不可欠なホルモン「テストステロン」の増加が報告されているんです出典[1]。
つまり高タンパク低脂質の食事で、テストステロンが増加して男性機能が向上する可能性があるわけですね。
逆に低たんぱく質の食事ではテストステロン量が減少すると報告する研究も存在します。
雄ウサギ12匹を用いた調査では、低タンパク質・高炭水化物食(8%タンパク質、65%-72%炭水化物)を摂取した6匹の雄ウサギは、通常食を摂取したウサギと比較して、SHBG(性ホルモン結合グロブリン)と呼ばれるテストステロン量を減らす物質が増加しました。出典[2]。
低タンパク質の食事等でタンパク質が不足すると、テストステロン量が減少してしまう可能性があるんです。
これらの試験結果を見る限り、プロテイン摂取は男性機能に影響を与える可能性は0ではありません。
ただ、結局はタンパク質だけでなく、他の栄養素とのバランスを整えたことで男性機能が改善されただけと言えばそれまで。
健康な人が大量にプロテインを飲んだからと言って、テストステロンが増えて勃起力が高まるわけではないんです。
しかし、実際にプロテイン利用者の中には、男性機能が高まっている人がいるのも事実。
一体どういう事なのでしょうか?
勃起力の向上を実感する理由とは
謎を紐解く鍵は、プロテイン利用者の”習慣”にありそうです。
プロテインを飲んでいる人がほぼ必ず行っていることと言えば、「運動」。
そうです。恐らく勃起力の向上を実感するのは運動がもたらした結果である可能性が高いんです。
まずは男性機能の仕組みから説明しましょう。男性機能では、”テストステロン”と”血流”の2つの要素が根幹となります。
テストステロンは先程からお話に出ている物質ですが、簡潔に言うと男性ホルモンの一種。筋肉や骨格の発達、ストレス耐性に闘争心、性欲や勃起力等の男性的な特徴に深く関わる体内物質です。
実際にテストステロン量が多い男性は、男性機能も高いパフォーマンスを発揮すると言われているんです。
さらに勃起とは血液が陰茎の海綿体に流入することで生じている現象。そのため健康的で力強い勃ちでは、どれだけ多くの血液を送り込めるかがポイントなわけです。
この時点でピンと来ている方もいるのではないでしょうか?
そうなんです。運動にはテストステロンと血流の両方を高める作用が期待できるんです。
例えば、筋トレで筋肉量を増やせばテストステロンも増加することも分かっています。さらに有酸素運動などでは血管や心肺機能の強化が可能。
つまり、プロテイン利用者が男性機能の向上を実感するのは、運動によって知らずしらず体内のパフォーマンスが高まった結果だと言えるでしょう。
もちろんプロテイン摂取により効率的に筋肉が付くことも、男性機能の改善にはプラスに働いていると考えられますね。
プロテインや運動で男性機能を高めるために知るべき5つの事
さて、プロテイン摂取や運動が男性機能の向上ではポジティブだと分かりました。
しかし、プロテインや運動に取り組む上ではいくつか注意点もあるんです。
ここからは、男性機能の向上を目指す上で、プロテイン摂取や運動で知っておくべき事を解説します。
1.飲み過ぎると逆にテストステロンが減る
まず注意が必要なのは、プロテインの飲み過ぎ。
飲みすぎると逆にテストステロンの分泌が減少する可能性があるんです。
これは、タンパク質の過剰摂取によってコルチゾールが増加するため。コルチゾールは、精巣に作用してテストステロンの分泌を抑制する働きをもつホルモンなんです。
2022年にイギリスのウスター大学で行われた研究では、高タンパク食の摂取におけるテストステロン量の変化が調査されています。この調査は309人を対象に行われ、タンパク質35%以上の高タンパク食(糖質35%以下)を摂取したグループではコルチゾールが増加し、平均モデルと比較して37%のテストステロン減少がみられました出典[3]。
一般的な成人男性が必要なタンパク質の量は、1日あたり体重×0.8〜1.0gだと言われています。
運動レベルが高い人だと体重×1.2〜2.2gが必要となる場合もありますが、基本的には体重あたり1gまでを意識すると良いでしょう。
2.含まれる人工甘味料は勃起力の天敵
プロテインに含まれるのはタンパク質だけではありません。一般的なプロテイン製品の多くには、スクラロース、アステルパーム、アセスルファムKなどの人工甘味料が含まれていますよね。
実はこれらの人工甘味料で、男性機能が低下するかもしれないんです。WHOの発表によると、アステルパームを含む人工甘味料が糖尿病や心血管疾患などさまざまなリスクを高める因子として関連性が示されています出典[4]。
糖尿病や心血管疾患の患者は、EDを発症しやすいことも。結果的にアステルパームの摂取が、EDのリスクを高める可能性があるのです出典[5]。
2020年のテヘラン大学による研究では、36匹の雄マウスに対し、アステルパームを与えないグループと90日間アステルパームを与えるグループ3つ(40、80、160mg/kg)に分けて男性機能の変化を調査しました。
その結果、アステルパームを投与したグループではテストステロンの低下がみられ、精巣組織に悪影響がみられたんです。
また80および160mg/kgのアスパルテームを与えたグループでは、精子形成を調節するタンパク質の減少も確認されていました。出典[6]。
さらに2009年から2021年にかけてフランスで行われた調査では、アスパルテームとアセスルファムKがテストステロンを減少させるという報告も出典[7]。
プロテインに含まれる人工甘味料が勃起力を妨げる可能性がうかがえますね。
とはいえ、ドリンクタイプのプロテイン製品には、飲みやすさやカロリーの低減、コストの関係などで人工甘味料や添加物が含まれるのは仕方がないこと。
一切の無駄がない状態で特定の成分を摂取したいなら、固形タイプのサプリメントがオススメです。
例えば、男性機能に重要なテストステロンを増やすタイプの素材も存在します。
テストステロンは筋肉の合成にも重要な役割を果たすため、筋トレ中の方にもよい効果を与えられるでしょう。
オススメのテストステロンブースターをまとめた記事もあるので、ぜひご覧ください。
3.腎臓に負担をかけてEDのリスクを高める
プロテインのとりすぎは、腎臓に負担をかけてしまいます。
なぜなら腎臓は、タンパク質を体内で分解するときに、発生する老廃物を尿として排出する役割をもつから。
必要以上にタンパク質を摂取すると、老廃物の処理量が多くなります。そのため、腎臓を酷使してしまうわけですね。
イタリアで行われた45〜64歳の男女1522人を対象とした調査では、タンパク質の摂取量が増えると12年後のeGFR値が低下していることがわかりました出典[8]。
eGFRは腎機能をあらわす数値で、腎機能が低下すると低くなります。
この調査から、プロテインの過剰摂取が腎臓の負担になる可能性があるといえるでしょう。
さらにオランダで行われた調査では、心筋梗塞の既往歴を持つ60〜80歳4837人の食事と腎臓のデータを分析。
この調査では、1日の総タンパク質摂取量が1.2g/kg/日を超える患者は0.8g/kg/日未満の患者と比較して、年間における腎機能の低下が2倍速いことがわかりました出典[9]。
腎機能の低下は、血流の障害やホルモンバランスの乱れを引き起こし、EDになりやすくなるといわれています。
プロテインを過剰に摂取するのはやめておきましょう。
4.運動せずに飲むと肝臓への負担が増加
プロテインを飲むなら運動は不可欠。運動をせずにプロテインを摂取すると、肝臓の負担を増加させる可能性もあるんです。
これは摂取したタンパク質が筋肉の合成などに使われず、アミノ酸の状態で体内に蓄積されるため。
肝臓はアミノ酸の代謝などの働きも司るため、負担をかけてしまうんです。さらに年齢層が高くなると内蔵の機能が低下していることも多く、負担は大きくなるでしょう。
肝機能の低下は、動脈硬化による血流障害やホルモンバランスの乱れによって男性機能も低下させます。
プロテインを運動をせずに必要以上に摂取するのは、やめておきましょう。
5.逆に運動しすぎるとテストステロンが減る
逆に運動のし過ぎにも注意が必要。
運動をしすぎることで、テストステロン値が低くなる「運動ストレス性低テストステロン症」を引き起こす可能性があるんです。出典[10]。
長距離ランナーにおけるテストステロン値を調査した研究では、毎週64km以上走っている31人の男性は、運動しないデスクワークの男性18人に比べてテストステロンの平均値が低いことがわかっています出典[11]。
さらに2017年に実施された日本メンズヘルス医学会の研究では、市民ランナーを対象として月間のマラソン距離とテストステロン値を比較しました出典[10]。
その結果、月間200km以上ではテストステロン値が低くなることが判明したんです。
逆にこの研究では月間120~150kmを走る人は最もテストステロン値が高いということが分かっています。
男性機能を高めるためにテストステロンの分泌を増やしたい場合は、適切な量の運動を続けることが大切だといえますね。
エルゴジェニックエイドの摂取がおすすめ
プロテインと勃起力の関係について解説しました。
タンパク質が十分足りている人が「プロテインを飲んで勃起力が向上した」と実感できるのは、プロテインの直接の作用ではなく運動習慣によるものと考えられます。
またプロテインの摂取や運動を過剰におこなうことは、男性機能に対してマイナスに働くことも少なくありません。
タンパク質不足の人を除いて、プロテインを勃起力強化のために積極的に摂取するのは好ましい方法とはいえないでしょう。
より男性機能を高めるためにサプリメントを摂取する場合は、プロテインのようなダイエタリー系(不足を補うタイプ)のサプリメントではなく、エルゴジェニックエイド系(さらなるパフォーマンスの向上を目的とするタイプ)の製品を選ぶことが大切です。
勃起力を強化したいなら、エルゴジェニックエイド系のサプリメントで攻めていきましょう。
出典
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