GABAとは?確認されている5つの効果
2023年11月21日更新

監修者

睡眠健康指導士/ロジスティクス管理3級

室井優作

心と体の健康の要となる睡眠のスペシャリスト。眠りに悩みを抱える方のコンサルティングを日々行っている。プロボクサーを目指しており、運動やダイエットに関する指導も可能。おすすめの寝具はウェイトブランケット。

執筆者

管理栄養士

松尾 明香音

管理栄養士の資格取得後、ドラッグストアに勤務。管理栄養士の資格を活かし、地域健康相談会の開催や栄養指導に取り組んできた。また、登録販売者の資格も取得し、栄養と薬の専門家として働いている。読者の方に専門知識をわかりやすく伝えられるような記事の執筆を心がけている。

GABAの正体とは

まずはGABAの基本的情報についてご紹介します。

GABAとは?

GABAはγ-アミノ酪酸(Gamma-Amino Butyric Acid)の略でアミノ酸の一種です。主に私たちの脳内で神経伝達物質として働いています。

GABA自体は発芽玄米やトマト、なす、パプリカなどの野菜類、メロンやみかんなどの果物類、漬物や味噌などの発酵食品など、わたしたちが普段食べている様々なものに含まれています。

また、GABAに限ったことではありませんが、神経伝達物質はアミノ酸から生成されているため、アミノ酸の代謝に大きく関係するビタミンB6を同時に摂取するとより効果的です出典[1]


どんなはたらきをする?

先ほどGABAは神経伝達物質であるとお話ししました。

神経伝達物質とは私たちの脳内で伝達信号として使われる物質で、興奮系と抑制系にわかれて自律神経の調節に関わっています。神経伝達物質の興奮系は交感神経、抑制系は副交感神経が優位に働くときに多く分泌され、脳内で興奮状態やリラックス状態など神経状態のコントロールを行っているのです。

GABAは脳内のGABA受容体と結合することで、脳に興奮状態を引き起こすドーパミンやノルアドレナリンなどの交感神経を有意にする分泌量を減少させ、副交感神経を優位にする働きがあります出典[1]

2008年の京都大学の研究では、健康な男子学生12名にGABAとプラセボカプセルを摂取させ、摂取前(安静時)、摂取30分および60分後の心拍数変動と心拍変動の周波数と強さ(パワースペクトル)を観察しました。

パワースペクトルは低周波(LF)と高周波(HF)に分けられ、LFが高いほど交感神経、HFが高いほど副交感神経の活動が優位であることを示します。その結果、GABA摂取30分後に心拍数の大きな変動がみられ、あわせてHFも急激にピークに達し安静時と比較して約200%、摂取60分後も安静時と比較して約176%と増加傾向にありました。これにより、GABAの摂取が自律神経活動、特に副交感神経活動を亢進させることがわかりました出典[2]

GABAはストレスが多い社会に生きる私たちにとって注目されており、さまざまなサプリメントや食品に含まれていることから成分の認知度も向上しています。

 

安全性は?

現在、GABAは機能性関与成分(特定保健用食品に含まれる保健機能を有する成分)として定められていて、様々なサプリメントや食品に含まれています出典[3]

消費者庁のホームページでGABAを機能性関与成分として調べても、600製品が登録されています出典[4](2022年5月27日現在)。

食品安全委員会による評価においても

  • 「2004.2.5、γ-アミノ酪酸を特定の保健の目的に資する栄養成分とし、血圧の高めの方に適した旨を特定の保健の目的とする錠剤形態の食品については評価済。」
  • 「適切に摂取される限りにおいては、安全性に問題はない」

とされているので、安全性もしっかり確保されています出典[5]出典[6]
 

GABAに確認されている効果5つ

ここからはGABAの具体的な効果についてご紹介します。

1.不安などネガティブな感情の緩和

GABAの効果1つ目は「不安などのネガティブな感情の緩和」です。

GABAは抑制系の神経伝達物質であるとお話ししました。不安やイライラなどのネガティブな感情が強い時には、ドーパミンやノルアドレナリンなどの興奮系の神経伝達物質が多く分泌され、交感神経が優位に働いている状態です。GABAを摂取することによりドーパミンやノルアドレナリンの分泌が抑制され、副交感神経の働きが活発になります。その結果、不安などネガティブな感情が緩和されるのです。

2010年にドイツのハインリッヒ・ハイネ大学の研究チームが、不安障害を持つ504人の脳と不安障害を持たない対照者593人の脳を調査したところ、不安障害を持つ人の脳では健常者と比較してセロトニン、ドーパミン、GABAの減少が顕著であることがわかりました出典[7]

また、2011年の日本のコカコーラ、ファーマフーズ、静岡大学の共同研究では、30人の日本人男女にGABA25mg配合、50mg配合、またはGABA配合なしのいずれかのドリンクを250ml飲んでもらい、15分後に30分間の内田クレペリン検査(UK)を受けさせ、疲労やストレスを調査しました。

すると、GABA25mg配合ドリンクを飲んだグループとGABAなしドリンクを飲んだグループでは受験後の疲労度が悪化していたものの、GABA50mg配合ドリンクを飲んだグループの主観的な疲労度(VAS)はテスト受験後より改善するという結果になりました。ストレスを示す唾液中のクロモグラニンA(CgA)とコルチゾールの濃度の測定では、GABAなしドリンクを飲んだグループではテスト後のクロモグラニンAは平均約50%、コルチゾールは約80%増加していたのに対して、GABA入りドリンクを飲んだグループでは両方とも少なくなっていました出典[8]

これら2つの結果でもわかる通り、GABAには副交感神経の働きを活発にし、不安等のネガティブな感情の緩和効果があることがわかります。

 

2.タスクパフォーマンス力の向上

GABAの効果2つ目は「パフォーマンス力の向上」です。

タスク実行前にGABAを摂取することで、刺激への反応速度が速まります。

2015年の研究では、ライデン大学の学部生30名(女性29名、男性1名、平均年齢19.5歳、範囲18~22歳)の健康成人をランダムで合成GABA800mgまたはプラセボ投与の2グループに分け、参加者はストップパラダイムにて評価しました。

GO刺激に対する反応時間(RT)は反応実行の効率を反映していて、RTが短いほどより効率的に行動選択をしていることになります。

各成分被験者に対してストップパラダイム注釈[1]を行いRTを解析した結果、プラセボ群のRTは1000 ms、GABA群のRTは806 msとなり、プラセボ群とGABA摂取群ではGABA摂取群の反応速度が速いことが明らかとなりました。

つまり、GABAを摂取することで次の行動に移行する時間や反応速度が短くなり、パフォーマンス力が向上するのです出典[9]

 

3.運動による無脂体重の増加

GABAの効果3つ目は「運動による無脂肪体重の増加」です。

成長ホルモンは骨格筋の成長と維持に重要な役割があります。GABAの摂取により、安静時の血漿成長ホルモンの濃度が高まることで筋タンパク質合成が促進されるのです

2019年のファーマフーズインターナショナル株式会社、三菱商事株式会社、立命館大学の共同研究が行われました。

この研究では、健康な男性21名(26~48歳)を、ホエイプロテイン(WP、10g)またはホエイプロテイン+GABA(WP+GABA、10g+100mg)を12週間毎日摂取するグループにランダムで振り分け、両群とも週2回の同じレジスタンストレーニングを行い、体組成の変化を二重エネルギーX線吸収装置を用いて評価しました。

その結果、12週間後WP群では無脂肪体重が平均約146g増加したのに対し、WP + GABA群では平均約1,340g増加し、WP+GABA群はWP群に比べ、全身の無脂肪体重が有意に増加したことがわかりました。

また、血漿成長ホルモン値は、WP+GABA群は4週目と8週目に、ベースラインと比較して有意に高い安静時血漿GH濃度を示し、。WP群では、8週目のみベースラインと比較して有意に高い濃度を示しました。

この結果により、GABAとホエイタンパク質の組み合わせは、血漿中の成長ホルモンを増加させ、全身無脂肪体重の増加により効果的であることがわかりました。毎日のGABAの摂取は運動誘発性筋肥大の増強に効果的であると考えられます出典[10]

さらにホエイタンパク質とGABAを一緒に摂取すると血漿中の成長ホルモンが増加することで筋肉量が増加し、体脂肪が減少するのです。

 

4.睡眠の質の改善

GABAの効果4つ目は「睡眠の質の改善」です。

不眠の原因は脳が興奮状態であること。入眠時や睡眠時に脳内で興奮系の神経伝達物質(ドーパミンやノルアドレナリン)が多く分泌されていると脳が興奮状態となり寝つきが悪くなったり眠りが浅くなります。

GABAは興奮系神経伝達物質の分泌を抑制し、副交感神経を優位にすることで脳をリラックス状態へ導きます。脳がリラックス状態となることで睡眠の質が向上します。

2016年に発表された三和酒類株式会社の研究では、32人の被験者に対し睡眠30~60分前にGABA100mgまたはプラセボを2週間経口投与し、ストレス、睡眠の質、疲労、睡眠中の脳波に及ぼす影響をプラセボと比較して評価しました。

その結果、就寝前にGABAを摂取した群では、プラセボ摂取群と比較してノンレム睡眠第3段階(より深い睡眠の指標)の合計時間が優位に増加しました出典[11]

2018年にGABAストレス・研究センターが行った研究では、事前アンケートにおいて睡眠に不満のある8名(男性5名、女性3名)に対し昼間にGABAを摂取した1週間、②昼間に偽薬(プラセボ)を摂取した1週間の計2週間で脳波の測定を行いました。

その結果、GABAを摂取した人では摂取していない人に比べて、深い眠りであるノンレム睡眠の脳波の出現が25%多く、GABAが深い眠りを促すことがわかりました。

さらに事前アンケートで数値化したものと比べ、GABAを摂取すると目覚めのスッキリ感が約2倍、睡眠の満足度が約5倍に増加したとともに、GABAを摂取することでいつもより7.5分早く眠りにつけたという結果も出ました出典[12]

この結果によりGABA摂取により副交感神経が優位となり、睡眠の質が改善されるということがわかりました。

 

5.高血圧の緩和

GABAの効果5つ目は「高血圧の緩和」です。

高血圧には自律神経が大きく関係しています。交感神経が優位でありノルアドレナリンの分泌が多いと血管の収縮が強くなり、血圧も高くなります。GABAは副交感神経を優位にし、ノルアドレナリンの分泌を抑制することで血圧を下げる効果があるといわれています出典[13]

大妻女子大学家政学部教授の研究によると高血圧または軽度高血圧の86名を2グループに分け、GABA含有はっ酵乳またはプラセボを12週間毎日投与し、血圧の変化を調べたところ、プラセボを飲んだグループでは変化は見られませんでしたが、GABA含有はっ酵乳を飲んだグループでは飲んでいる間収縮期血圧が約10mmHg下がっていて拡張期血圧でも同様の結果となりました出典[13]

2009年に発表された東邦大学医学部の研究でも、収縮期血圧130-159mmHgまたは拡張期血圧85-99mmHgの被験者80名(40名/群)が、GABAリッチクロレラ20mgまたはプラセボを12週間経口投与をしたところ、GABAリッチクロレラを投与した人たちはプラセボ投与の人たちと比較して収縮期血圧が有意に低下しました。また、血圧の低下は軽度高血圧患者でより効果が出現していて、高血圧予防としても期待できるとの結果となりました出典[13]

この結果によりGABAの摂取は高血圧の緩和効果、特に経度高血圧患者に対する効果が大きく期待できることがわかりました。
 

副作用のリスクと推奨摂取量

GABAの摂取による副作用は今のところ報告されておらず、比較的安全性は高いという研究結果が多く出ています。

GABAは不安感の改善効果などがあることから、不安障害への治療薬としても用いられています。しかし、治療薬としてのGABAはさまざまな副作用と高い中毒性があり離脱症状も著しいため用法容量を守り多量の内服は避けましょう出典[14]

また、副作用が少なく安全性が比較的高いといわれていても胎児への影響や薬の相互作用はまだ不明確な部分もあるため妊娠・授乳中は注意して使用し、高血圧の治療補助として用いる際も担当医師と相談して使用するようにしてください。

GABAの摂取推奨量は厳密に定められてはいませんが、成人の男女でリラックス効果や血圧を30mg~100mgが良いとされています。

GABAに関する研究では1日に120mg投与しているケースもあるので、100mg以上摂取したからと言って過剰になるということではなさそうです。

まとめ

今回はGABAについてお話ししました。

GABAは現在注目度が高まっている成分で、ネガティブな感情の緩和や血圧を下げる効果、睡眠の質改善など現代に生きるわたしたちにとってうれしい効果がたくさんあります。

ぜひ今後も積極的に摂取していきたい成分です。

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