監修者
睡眠健康指導士/ロジスティクス管理3級
室井優作
心と体の健康の要となる睡眠のスペシャリスト。眠りに悩みを抱える方のコンサルティングを日々行っている。プロボクサーを目指しており、運動やダイエットに関する指導も可能。おすすめの寝具はウェイトブランケット。
執筆者
株式会社アルファメイル
NP+編集部
「オトコを科学する」をキーワードに男性の悩みや課題の解決を科学的根拠をもってサポート。運動や睡眠、栄養など、健康に関する正しい知識を提供するためにコンテンツを製作中。
寝る前のヨーグルトに期待できる効果3つ
寝る前に食べると睡眠や健康に良いと言われているヨーグルト。寝る前のヨーグルトにはどんな効果が期待できるのでしょうか?ここでは、寝る前のヨーグルトに期待できる効果を3つ解説します。
睡眠の質を高める
腸内環境を整え、メラトニンの材料になる「トリプトファン」を含むヨーグルトは、睡眠の質を高めるのに有効な食材です。
質のよい睡眠ためには、入眠ホルモンの「メラトニン」が不可欠。メラトニンの材料である「セロトニン」の95%は腸でつくられます。腸内環境を整えれば、メラトニンの生成量が増え、睡眠の質も高まります。
ヨーグルトを摂取することは、腸内環境を整える方法のひとつ。ヨーグルトには乳酸菌やビフィズス菌などが含まれているので、食べるだけで腸内の善玉菌を増やせます。
また、ヨーグルトに含まれている「トリプトファン」は、セロトニンやメラトニンの材料になるアミノ酸です。
1989年にカナダで、10人の健康なボランティアに対して、就寝1時間前と2時間前にトリプトファンを投与した場合の効果を調べる研究が行われました出典[1]。
就床1時間前にトリプトファン(タブレット)を投与したところ、血中トリプトファン濃度が上昇し、入眠までの時間が約16分から約8分に短縮されたと報告されています。また、トリプトファンの投与を1.2gから2.4gに増やすと、入眠時間の短縮効果は就床2時間前の投与でも現れました。
睡眠の質を高めるヨーグルトは、就寝1~2時間前に食べましょう。
夜のドカ食いを防ぐ
夜寝るころにちょうどお腹が空いて、思い切り食べてしまい、「太って後悔した」経験のある方も多いのではないでしょうか。ヨーグルトを食べると満腹ホルモンの分泌が増え、深夜の空腹感の軽減に繋がります。
2014年にカナダで行われた人間対象の研究では、牛乳とヨーグルトを摂取すると、食欲抑制ペプチドのグルカゴン様ペプチド (GLP)-1 およびペプチド YY (PYY)の循環濃度が増加すると報告されています出典[2]。
乳たんぱく質は吸収の速いホエイとゆっくり吸収されるカゼインを含んでいるので、急速かつ持続的に満腹感を高められるのです。
少量のヨーグルトを食べることで、食欲が抑えられるのであれば、夜にドカ食いせずに済み、ダイエットにもなりますね。女性だけではなく、生活習慣病の影がチラつく男性の方にも良い情報ではないでしょうか。
「夜にお腹が空いたら、ヨーグルト!」スローガンにしても良さそうですね。
筋肉の分解を防ぐ
たんぱく質は、睡眠中も体の機能維持のために消費されています。睡眠中は食事でのたんぱく質の補給がないので、不足すると筋肉が分解されて活用されてしまいます。睡眠中の筋肉の分解を防ぐためには、牛乳やヨーグルト(たんぱく質)を摂取することもひとつの方法です。
2021年にイランで、30人の筋肉トレーニング中の若い男性に高タンパク質乳製品の効果を調べる研究が行われました出典[3]。その結果、筋肉トレーニング中に高タンパク質乳製品を意図的に摂ると、摂取しなかったグループより除脂肪体重が向上することが報告されています。
この研究では、運動直後と睡眠の30分前に250 ml、タンパク質30 gの高タンパク質乳製品を摂取しています。通常の牛乳の100g当たりのタンパク質量は3.3gなので、約3.5倍の濃さの乳製品を使っています。
トレーニングをしている人は、ヨーグルトにプロテインパウダーを混ぜて夜に食べることがおすすめです。
ヨーグルトの食べ方
寝る前に食べると、睡眠の質を高めるなどの良い効果が期待できるヨーグルト。効果をより実感するためには、ヨーグルトの食べ方にコツがあります。ここでは、ヨーグルトの食べ方を紹介しますので、参考にしてください。
摂取量の目安は1日200g
ヨーグルトの摂取量の目安は、無理なく続けられる量として200g程度がおすすめです。何分、摂り過ぎには注意しましょう。
多く摂りすぎた時に起きる症状は以下の通りです。
- 腹痛・下痢
- 胃痛
- おなら
- 体臭
腹痛や下痢が起こるのは、ヨーグルトの消化不良が原因です。胃痛の主な原因は消化酵素不足ですが、冷たいヨーグルトを食べ過ぎた場合は、冷えで胃が痛むこともあります。
ヨーグルトに含まれる乳糖が原因で、おならが増えたり、においが強くなったりすることもあります。体臭がきつくなるのも、同様に乳糖が原因です。おならや体臭への影響は、乳糖の消化酵素が少ない方で大きいようです。
ヨーグルトに含まれる乳糖は、消化されないと胃腸で腐敗して有毒ガスを発生させます。有毒ガスには臭い成分が含まれていますが、血流にのって全身をまわります。臭い成分は、汗腺に届けば汗と一緒になってきつい体臭になり、肺に到達すると呼気に混ざり口臭になります。
深夜のトイレに繋がる恐れがあるため、食べ過ぎには十分気をつけましょう。
全脂肪ヨーグルトを選ぶ
ヨーグルトには、いろいろな種類があります。大きく分けると糖分の有無で加糖・無糖、脂肪分の含有量で無脂肪・低脂肪・全脂肪などです。その他に、含まれている菌の種類で選ぶ方法もあります。
ダイエットのことも考えると、どれを食べたら良いのか悩みますね。そんな方のために、脂肪の含有量で選ぶ場合の参考になるのが以下の研究です。
2006年にアメリカでボランティアを対象に、牛乳の種類を変えて、筋肉タンパク質バランスへの影響を調べる研究が行われました出典[4]。
この研究で使われた牛乳の種類は、以下の通りです。
- 237 g の無脂肪乳
- 237 g の全乳
- 無脂肪乳と等カロリーの 393 g の無脂肪乳
定期的な運動の 1 時間後にそれぞれの牛乳を摂取し、代表的なアミノ酸の動脈血濃度を測定しました。その結果、無脂肪乳よりも全脂肪乳でのアミノ酸の取り込みが高く、必須アミノ酸のスレオニンの取り込み量は2.8倍違ったと、この研究では報告しています。
一見ダイエットとなると、無脂肪乳の方が効果的と思えるかもしれません。しかしスッキリとしてハリのある身体を目指すのであれば筋肉を増やすことも大切です。
脂質量は揚げ物やスイーツを減らすことで管理し、ヨーグルトは全脂肪を選ぶようにしましょう。
同じ種類を2~3週間程度継続する
自分に合う種類のヨーグルトがどれかは、実際に食べてみなければ分かりません。最低でも1週間、できれば2~3週間、おなじヨーグルトを食べ続けることをおすすめします。継続してみて、変化があるかどうかを確かめてみましょう。
乳酸菌にはたくさんの種類があり、ビフィズス菌だけでもその数は30~40種です。ヨーグルトで摂取した菌は生きたまま腸に届いても、腸内に同じ系統の菌がいない限り、数日後に排出されます。
生きて腸に届いていれば、排出されるまでは、腸内にすんでいる菌と同じように働いてくれます。しかしできれば、良い効果が実感できるように腸内に定着してくれるといいですね。
ヨーグルトの菌が自分にあっている場合の変化は、5日目ぐらいから現れます。ます、力まずに便が出る、そして便臭がなくなります。このような効果が実感できたら、毎日、食べ続けましょう。反対に10日間、食べ続けても変化が実感できないときは、別のヨーグルトを試しましょう。
ヨーグルトと合わせるのがおすすめの食品
ヨーグルトと合わせるとより良い効果を期待できる食品があります。ここでは、ヨーグルトと合わせるのがおすすめの食品を3つ紹介しますので、食べる際の参考にしてくださいね。
はちみつ
ビタミン、ミネラル、アミノ酸、酵素、ポリフェノールなどの天然の栄養成分がたくさん入っているはちみつ。いろいろな栄養成分がバランスよく入っているので、風邪予防や喉の傷み、保湿、抗菌・殺菌などのほかに、腸内環境を整える効果も期待できます。
2018年にイランで、急性冠症候群の入院患者 68 人に、はちみつと牛乳を同時摂取することの睡眠への影響を調べる臨床研究が行われました%出典[5]%。研究では、睡眠の深さや入眠潜時の患者の視点、起床時間、起きている時間、全体的な睡眠の質を考慮した睡眠スコアを検討しました。
その結果、入院初日の睡眠スコアは摂取しないグループとの間に差はありませんでしたが、3 日目には有意な差があったと報告しています。
簡単に手に入るはちみつ。はちみつをヨーグルトと一緒に摂ることで、より睡眠に良い効果が期待できそうですね。ただ甘いので、食後の歯みがきを忘れないということにも気をつけた方がいいでしょう。
キウイ
キウイは睡眠に良いくだものです。睡眠に良い理由は以下の通りです。
- 睡眠に重要なトリプトファンを含んでいる
- ストレスを軽減して睡眠の質を高めるビタミンCが豊富に入っている
キウイは、ヨーグルトと同様にトリプトファンを豊富に含んでいます。そのためセロトニンやメラトニンの合成により良い効果があります。さらに、トリプトファンからセロトニンを合成する時に必要なビタミンB6も含んでいるので、効率の良い摂取が可能です。
ビタミンCには、抗酸化作用や抗ストレスホルモンの合成などの働きがあります。ビタミンCの摂取はストレス軽減や睡眠の質の向上に繋がります。
2011年に台湾で、就寝1時間前にキウイ2個食べた場合の研究が行われました出典[6]。この研究では、睡眠障害のある成人で、入眠時間が14分減少し、総睡眠時間が55分増加した報告されています。
一般的にキウイには1個当たり71mgのビタミンCが含まれています。ビタミンCの摂取推奨量は成人で100mgなので、キウイ1個で1日分の7割を摂取可能です出典[7]。
バナナ
バナナは栄養が豊富である上に、1年中手頃な価格で食べられるという、とても優れた果物です。好物だという方も多いのではないでしょうか。また、バナナは疲労感を和らげ、リラックス効果をもたらします。精神安定作用等の多くの生理作用が報告されているGABAも含まれています出典[8]。
2021年に日本で健康な81名を対象に、1日2本のバナナ(可食部120g)の摂取を4週間続けることによる体調への影響が調査されました
この研究では、バナナ摂取群で、排便促進や疲労感、緊張感が改善するなど、排便や精神状態の変化へ良い効果があると報告しています。
ヨーグルトとバナナを一緒に摂取すれば、睡眠へより良い効果が期待できるでしょう。
よくある質問
寝る前のヨーグルトの効果や食べ方について、よくある質問をまとめてみました。あなたの疑問が解決する可能性があるので、ぜひ読んでみてください。
ヨーグルトは朝と夜どっちにたべるのがよいですか?
ヨーグルトは朝と夜のどちらに食べても良い効果が期待できます。普段の食生活に合わせて、たんぱく質の摂取量が少ない方で摂取するのがよいでしょう。
たんぱく質やトリプトファンは朝も夜も重要な栄養素です。もし、朝食で他の食品でたんぱく質をまかなえている場合は、夜の方が良いでしょう。なぜなら、夜の方がカルシウムの吸収率が高いからです。
別の理由もあります。空腹時は、胃の中は胃酸で酸性度が高まっているので、ヨーグルトを摂取してもヨーグルトの中の乳酸菌やビフィズス菌は死んでしまいます。
多くの生菌を腸へ届けるために、ヨーグルトは食事中または食後に食べるのが効果的です。つまり、ヨーグルトを一番効果的に摂取できるのは夕食時ということになります。
自分の食事を振り返って、どちらで食べると良いかを決めましょう。
ヨーグルトを食べすぎるとどうなりますか?
ほとんどの食品でも同じですが、食べ過ぎるとカロリーオーバーによって、太る可能性があります。また、ヨーグルトの摂取し過ぎに関しては、前立腺がんリスクについても懸念が示されています。
2019年にスペインで、牛乳や乳製品の摂取と前立腺がんのリスクについて、6つの小さい研究をまとめる研究が行われました出典[9]。その研究では、牛乳や乳製品の摂取量が多いと前立腺がんのリスクが増加する可能性があると報告しています。
しかし、同じ乳製品を摂取しているわけではないなどデータが均一ではなく、結論はまだ一貫していないとも述べています。また、そのメカニズムについても未解明のままです。
カロリーオーバーや前立腺がんリスクのほかにも、前述のように、腹痛・下痢、胃痛、おなら、体臭などの症状が起きる可能性もあります。
はっきりしない心配もありますが、今夜就寝後の下痢も心配。「過ぎたるは及ばざるがごとし」で、何ごとも良い加減が大切なのですね。
温めた方が効果はありますか?
ヨーグルトは温めた方が効果があります。ホットヨーグルトには、お腹を冷やしにくい、腸の血流だけでなく、全身の血流が上がるなどの効果があります。ただし暖め過ぎると菌株が死滅してしまうので、注意が必要です。
ホットヨーグルトの作り方は簡単です。ヨーグルトをお皿に入れ、ラップはせずに、電子レンジで短時間(100gなら500wで1分、600wなら40秒ほど)温めれば完成です。
温め過ぎるとヨーグルトが分離するので、人肌よりも少し温めを目安にします。熱でヨーグルトの酸味が増すので、苦手な方は「水切りしたヨーグルト」を使うのがおすすめです。また、はちみつやきなこなどをトッピングしても良いでしょう。
なお、電子レンジで善玉菌が少し死んでしまいますが、死んだ菌も腸内で善玉菌のエサになってくれます。
まとめ:寝る前のヨーグルトで快眠&快調!
本記事では寝る前のヨーグルトの効果や食べ方を論文を基に解説してきました。寝る前のヨーグルトには、睡眠の質を高める、夜のドカ食いを防ぐ、筋肉の分解を防ぐなどの効果が期待できます。
また、食べ方にも1日200gを目安に、全脂肪ヨーグルトの同じ種類を2~3週間程度継続するなどのコツがあります。合わせるのがおすすめの食品も上手に活用して、寝る前のヨーグルトで快眠&快調になりましょう。
出典
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