寝る前に食べると太るは嘘?論文から判明した真実とは
2023年11月23日更新

執筆者

株式会社アルファメイル

NP+編集部

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「寝る前に食べると太る」と考えられている理由3つ

昔からよく言われている「寝る前に食べると太る」。では、なぜ「寝る前に食べると太る」と考えられているのでしょうか。ここでは、「寝る前に食べると太る」と考えられている理由を3つ解説します。

理由①:睡眠中はエネルギーを消費しないから 

理由の1つ目には、就寝中は身体を動かさずエネルギーを消費しないため、寝る前に食べると食べた分が消費されないと考えられていることが挙げられます。

人間はなぜ太るのでしょうか?現代人が太る理由として挙げられるのは、以下のことです。

  • 食べ過ぎ
  • 運動不足
  • 食べ方の異常
  • 遺伝上の問題
  • ジャンクフードなど食べるものの質
  • 添加物の摂取など

上記のうち、たいていは複数の理由があって太ります。

一言でいうと、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回った場合に、残ったエネルギーを脂肪に変換してため込むから太るのです。

人間の体では、エネルギーを脂肪に変え、いざという時のために貯蔵するのです。睡眠中は体を動かさないので、起きているときよりは明らかに活動量が低く、そのために消費エネルギーは低いと考えられます。

寝る前に食べたエネルギーはほとんど消費されず、「脂肪としてため込む」と考えられ、そのために太るというのが、理由の1つ目です。

 

理由②:夜にBMAL1が活性化するから

BMAL1(ビーマルワン)は、脂肪を溜めこむ働きがあるたんぱく質で、生活リズムを調整します。22時~2時に多く分泌されるので、この時間は脂肪がつきやすいといわれています。

急増するのは夜9時以降です。この仕組みから考えて、「寝る前に食べると太る」と言われているのですね。

2011年の日本で、マウスについて、BMAL1の機能についての研究が行われました出典[1]。この研究では、脳と筋肉の時計遺伝子である Arnt 様タンパク質 1 (BMAL1) が欠損すると、脂質異常症と異所性脂肪形成が誘発されると報告しています。

簡単に言うとBMAL1が欠損すると脂肪はため込まれず、循環脂肪酸(トリグリセリドや遊離脂肪酸、コレステロールなど)レベルが増加してしまうようになるのです。

つまりBMAL1が正常に活動すると、脂肪がため込まれてしまう可能性があります。

BMAL1が活発にはたらく夜間に食事を摂ると、脂肪の蓄積が促進され、太るのかもしれません…。

 

理由③:睡眠の質が下がり食欲が増すから

睡眠と食事の関係について、別の研究報告もありますので、ここで紹介します。

2011年にブラジルで健康成人52人に対して、食物摂取と睡眠パターンの関係を調べる研究が行われました出典[2]。この研究では、夕方の食事と睡眠の関係は特に女性で大きく、寝る前に重い食事を摂ると眠りの質が低下すると述べています。

また、2004年にアメリカで、睡眠時間が短い場合の食欲についての研究が行われました出典[3]

この研究では、睡眠時間が 8 時間未満の場合は、睡眠時間が少ないほどBMIが増加したと報告しています。また睡眠時間が短いと食欲抑制ホルモンレプチンが減少し、睡眠 5 時間では 8 時間の 15.5% 低く、食欲増進ホルモングレリンは14.9% 高いと予測できました。

つまり睡眠時間が短いと、食欲を抑えることができなくなり、過食を招き、その結果、BMIが増加してしまうのです。

寝不足の時に無性にお腹がすいたという経験がある方も少なくないのではないでしょうか?

寝る前の食事により睡眠の質が低下してしまうと、空腹が増し間接的に体重が増える恐れがあります…。

 

「寝る前に食べると太る」は本当か?論文から判明した真実とは

それでは「寝る前に食べると太る」というのは本当なのでしょうか?

ここでは、「寝る前に食べると太る」ということについて、論文から判明した真実を5つ紹介します。

真実①:就寝中も日中と同じようにカロリーを消費している 

2008年にオランダで49人の被験者を対象として行われた研究でも、夜間と日中で基礎代謝に大きな違いはないことが報告されています出典[4]

基礎代謝とは心拍や呼吸・体温など生命維持のために必要な最小限のエネルギーのこと。動かずにじっとしていても消費される1日あたりのエネルギーのことで、これは夜間や睡眠中のエネルギー消費量に反映されます。

したがって就寝中も多少はエネルギーを消費しており、就寝前に食べたものが即座に脂肪として蓄積するとは考えにくいです。

 

真実②:「夜間のBMAL1の活性化」=「夜に食べたら太る」とは限らない

夜、特に睡眠中は日中と違って、自覚できない多くのことが起こっていそうですね。体内状態に関しては、日中も含め、ますますそうでしょう。

脂肪を溜めこむ働きがあるたんぱく質のBMAL1。22時~2時に多く分泌されるとされていますが、BMAL1が活発になる時間の前に食事を摂ると、それらが体脂肪になるというデータはありません

人間の体の仕組みは複雑で、さまざまな要因で成立しています。また、BMAL1についても、肥満についてもすべてが解明されているわけではありません。

判明していないことはたくさんあります。その中で、「夜間のBMAL1の活性化」と「夜に食べたら太る」ということを結びつけてしまうのは、少しせっかちかもしれません。

BMAL1は本来、生活リズムを整えるタンパク質の一つで、22時~2時に多く分泌されるのは、体内時計を刻むためです。夜間にBMAL1が活性しても、夜に食べたら太るとは限らないということでしょう。

 

真実③:食べる物によってはむしろ睡眠の質が上がるかも...? 

確かに脂質を多く含む重い食事を摂ると睡眠の質が低下する可能性があります。しかし、炭水化物やトリプトファンなど寝る前に摂ることで眠りの質が高まる栄養素もあります。

1989年にカナダで、10人の健康なボランティアを対象に、就寝前にL-トリプトファンを投与する臨床試験が行われました出典[5]

この試験では、就寝1時間と2時間前に、L-トリプトファンを1.2もしくは2.4gを投与しました。どちらの L-トリプトファン用量でも 1 時間前で入眠までの時間が短縮され、2.4 g 用量の場合のみ、2時間前でも効果があったと報告しています。

トリプトファンを多く含む食材として挙げられるのは、大豆製品(豆腐・納豆・味噌・しょうゆなど)や乳製品(チーズ・牛乳・ヨーグルトなど)、米などの穀類などです。その他、ごまやピーナッツ、卵、バナナにも豊富に含まれています。

2018年にトルコで、運動後の食事の内容が睡眠の質と量に及ぼす影響を調査するための研究が行われました出典[6]

この研究で被験者が摂取したのは、血糖指数が高い(HGI、GI170)か低い(LGI、GI81)食事です。その結果、LGI と比べて HGI では、総睡眠時間(TST)が長く、睡眠効率が良い、入眠までの時間は 4 倍短縮されるという結果が得られました。

つまり、運動後に血糖指数の高い食事をとることで、総睡眠時間と睡眠効率の両方が改善され、同時に入眠までの時間を短縮できるのです。

GIが高い食品としては、ご飯やパンなどの炭水化物、クッキーや果物などが挙げられます。しかし、どうも寝る前に食べたからといって睡眠の質が下がり、食欲が増すとは一概に言えないようです。

 

真実④:食べる時間が遅いと総摂取カロリーが増えて太るかも...!

しかし、食事の時間が遅いと、摂取カロリーが増し、太る可能性があることを示す研究結果も報告されています。

2014年にアメリカで、食事のタイミングとカロリー摂取量および体格指数 (BMI) の関係を評価する研究が行われました出典[7]。その結果、食事のタイミングは全体的なエネルギー摂取量と関連していることがわかりました。

また、年齢、性別、睡眠時間、およびタイミングなどの影響を排除して分析した結果、以下のような理由で総カロリー摂取量がより高くなることが分かりました。

  • より頻繁に食べる
  • 最後の食事のタイミングが遅い
  • 最後の食事から入眠までの時間が短い

このことは、食事の相対的なタイミングが遅いと、食事の回数が増え、1日の総カロリー摂取量が増加することを示しています。

また、遅い時間の食事については別の報告もあります。

2022年にアメリカで、遅い時間と早い時間の食事の肥満への影響を調べるための研究が行われました出典[8]

この研究では、遅い時間の食事は空腹感が増加し、食欲ホルモングレリン:食欲抑制ホルモンレプチン比が増加、エネルギー消費量 を低下させると報告しています。

やはり、「夜に食べると太る」を裏付ける報告もあるのですね。こういう報告があると夜には食べられなくなりますね。

 

真実⑤:寝る前にスナックを食べると太りやすくなるかも...? 

夜、お腹が空いたときに食べるとおいしいスナック菓子。塩味と適度な脂分がたまらないのですよね。いけないと分かっていてもつい手が出て、結局、1袋食べてしまって後悔…という方も少なくないのではないでしょうか。このスナック菓子についての研究報告もあります。

2013年に日本で行われた臨床研究です。11 人の健康な若い女性を対象に、夜間の間食がエネルギー代謝に及ぼす影響を調査しました出典[9]

被験者は13日間に渡って、日中(10:00)と夜間(23:00)に指定されたスナックを摂取しました。その結果、夜に食べると総コレステロールとLDLコレステロールが増加、脂肪の酸化は減少したと報告しています。このことは、夜の食事が脂肪代謝を変化させ、肥満のリスクを高めることを示唆しています。

若いと身体活動も活発なので、定時の食事だけでは足らず、夜に食べたくなることも多いでしょう。空腹を感じて夜に食べる場合は、睡眠の質が上がるという報告がある炭水化物やトリプトファンなどにすると良いのではないでしょうか。後で太ってしまい、がっかりするのは嫌ですものね。
 

まとめ:寝る前に食べると必ずしも太るわけではない

本記事では「寝る前に食べると太るかどうか」について、論文を基に解説してきました。基本的に「寝る前」というタイミングが原因で太るとは考えにくいです。ただし、総摂取カロリーが増えることで間接的に体重が増える可能性があります。また一部の研究では夜の間食が脂質の代謝を変化させることが示されています。

論文からは、はっきりとは否定とも肯定とも判断できない結果が述べられていますが、「寝る前に食べるかどうか」を決めるのはあなた自身です。あまり遅くならない時刻に、食べ過ぎないようにすることで、質の高い睡眠や肥満防止に努めましょう。

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