カルニチンとは?7つの効果と適切な摂取方法
2023年11月21日更新

執筆者

NSCA-CPT/調理師

舟橋位於

東京大学理学部卒、東京大学大学院総合文化研究科修士課程終了。大学入学後に筋肉に興味を持ち、自分の体で学んだ理論を体現してきた。日本の筋肉研究で有名な石井直方教授のもとで学び、ティーチングアシスタントとして、学生へのトレーニング指導を行った経験も。自分が学んだ知識を伝えることで、一人でも多くの方の健康をサポートしたいと考えている。

カルニチンとは

それではまずはじめに、カルニチンの基本的なデータについて解説していきます。

1.どんな栄養素?

カルニチンは、ヒトの体内では、メチオニンとリジンの2種類の必須アミノ酸から合成されます。厳密にはアミノ酸の定義に合致しない物質ではありますが、アミノ酸を元に合成されるため、アミノ酸の誘導体と表記されることもあります。

カルニチンはアミノ酸のように、その構造からL体とD体の2種類に分類できます。アミノ酸の中にはD体が特徴的な働きをするものがありますが、カルニチンはL体のみが活性を持つことが分かっています。市販されるサプリメントの多くは「Lカルニチン」という名称であることがほとんどです。
 

2.体の中でどんな働きをする?

カルニチンのもっとも一般的に知られている機能として、脂質の燃焼を手助けすることが挙げられます。

ヒトを含む生物が活動するためには、ATP(アデノシン三リン酸)という物質が必要です。ATPを得るための材料としては、炭水化物、脂質、たんぱく質などが主にあり、これらは形を変えながら、細胞内のミトコンドリアという部分に運ばれ、そこでATPを生み出すために利用されます。

カルニチンは、このうちの脂質をミトコンドリアに運ぶ働きを持つことが分かっています。カルニチンを十分に摂取することが脂質の正常な代謝に有益であり、その結果として、肥満の治療や、エネルギー消費量の改善等に恩恵があるとされています出典[1]
 

3.不足するとどんなリスクがある?

カルニチンは、生体内では骨格筋や心筋に特に多く存在することが分かっています。これは、ヒト以外の生物についても同じことが言えます。そのため、動物性食品を食べる機会が全くないかもしくは少ないベジタリアン高齢者においては、カルニチンの摂取量が不足する可能性があります。

カルニチンは、メチオニンとリジンを元にして腎臓や肝臓で合成されます。そのため、これらの臓器の機能が低下している場合は、食事からの摂取が重要になる可能性もあります。

それでは、カルニチンが不足すると、具体的に体にはどのような影響が出るのでしょうか。

アメリカの研究者たちは、慢性的にカルニチンが不足している精神疾患患者にカルニチンのサプリメントを摂取させたところ、認知機能を測るテストの結果が改善したことを示しています出典[3]。このことから、カルニチンの不足が認知機能の低下に関連している可能性が示唆されます。

また、がん悪液質患者注釈[1]においてもカルニチンが欠乏することがわかっています。これによって、疲労感の出現や筋力の低下、炎症に対する耐性の低下などが生じるとされています出典[4]

カルニチンの不足によるリスクは、全身に及ぶ可能性があることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
 

4.どんな食材に含まれている?

カルニチンは、骨格筋や心筋に多く含まれるため、動物性食品でその含有量が多くなります。以下に、カルニチンを多く含む食品の例をまとめますので、ぜひ参考にしてみてください。
※「カルニチン欠乏症の診断・治療指針 2018」出典[2]から抜粋

食品名

カルニチン含有量(100gあたり)

羊肉(マトン)

208.9mg

牛肉(ランプ)

130.7mg

子羊肉(ラム)

80mg

豚肉(ロース)

69.6mg

牛肉(ヒレ)

59.8mg

鶏肉(もも)

32.8mg

あさり

23.8mg

牡蠣

23.1mg

タイ

19.6mg

 

カルニチンに確認されている作用や効果

ここからは、カルニチンの持つ働きについてさらに詳しく解説していきます。カルニチンには、知っている方が比較的多いと思われるダイエットのサポート効果以外にも、研究によってさまざまな作用や効果があることが分かっています。

1.ダイエットのサポート

カルニチンが脂質の代謝に関係することは導入部分ですでに述べましたが、ここではいくつかの研究結果を交えながら、さらに詳しくその内容について説明します。

私たちが一般的に脂質と呼んでいる物質は、脂肪酸とグリセリンという2種類の化合物が結合してできています。そして、ヒトが脂質をエネルギー源として用いる場合は、脂肪酸をミトコンドリアに運び込む必要があります。脂肪酸はその分子量から、中鎖脂肪酸や長鎖脂肪酸などに分類され、主にこのうちの長鎖脂肪酸をスムーズにミトコンドリアの中に輸送するためにカルニチンが必要となります。

イランの研究者たちが、すでに報告された複数の研究結果を改めて分析し直した論文では、Lカルニチンの摂取により、過体重や肥満とされる成人において、体重、BMI、体脂肪量が減少することが報告されています出典[5]

カルニチンがダイエットに役立つということは、我々にとっては周知の事実となりつつありますが、実は、その効果を否定する研究結果もあります。

ある研究では、カルニチンに似た物質であるLカルニチンL酒石酢酸塩を摂取させることにより、脂肪の燃焼効果が生じるかどうかが調べられました。その結果、4週間LカルニチンL酒石酢酸塩を摂取した上で、90分のサイクリング運動を行っても、消費される脂肪の量は、何も摂取しなかった場合と変化がないことが分かりました出典[6]

カルニチンがダイエットに役立つという情報を我々は鵜呑みにしがちですが、中には反論を唱える論文もあることを知っておくと良いでしょう。
 

2.運動パフォーンスのサポート

日常生活や運動時に主に利用されるエネルギー源は糖質と脂質の2つです。脂質は身体に豊富に蓄えられている一方で、糖質はごく少量しか体内に貯められません。そして体内の糖質が枯渇すると筋肉がうまく動かせなくなり、疲労感が生じます。

カルニチンは、体内にある脂質を効率よくエネルギー源にする際に重要となる栄養素です。莫大なエネルギー源の脂質を利用することで、長い時間の運動が可能になります。また、脂質利用の増加は、糖質のセーブにもつながり、疲労を感じにくくなる可能性があります。

スウェーデンの研究者によるジャーナルでは、カルニチンを摂取することで筋肉中のカルニチン量が増加したことと、30分あたりの運動パフォーマンスが11%増加することが示されています出典[7]。このエルゴジェニック(運動量増強)効果は、カルニチンが存在することで、低強度運動時のグリコーゲン消費が節約されたことと、高強度運動時の乳酸蓄積量の減少が起きたことに由来すると結論づけられています。

別の研究では、カルニチンの摂取により、痛みや損傷を保護する効果が得られると報告するものもあります。イタリアの研究者たちは、1日あたり3gのカルニチン摂取を3週間継続した場合に、エキセントリック運動(筋トレの一つの様式)による痛みの発現に違いが出るかを調べました。その結果、カルニチンを摂取することにより、痛みそのものの大きさ、痛みの感じやすさ、クレアチンキナーゼ(筋損傷の指標)などの数値が小さくなることが分かりました出典[8]

研究者たちはカルニチンの摂取により血管が拡張したことで、回復に必要な酸素やエネルギーの供給や、発痛物質の除去につながったことが要因ではないかと考えています。

カルニチンを摂取することで、体脂肪燃焼だけでなく、運動中のパフォーマンス向上や運動後のダメージ軽減が期待できるかもしれませんね。

 

3.脳の健康の維持

カルニチンは、筋肉のみではなく、脳にも働きかけることが分かっています。

イギリスの研究者たちは、アセチルLカルニチンの摂取が、アルツハイマー病の症状に影響を与えるかどうかを調べました。実験では、患者はアセチルLカルニチン群とプラセボ群に分けられ、それぞれが1日2回の摂取を24週間続けました。その結果、アセチルLカルニチンを摂取したグループでは短期的な記憶力を測るテストのスコア向上が見られました出典[9]

カルニチンが脳機能を改善する仕組みについては、ラットを用いた研究で明らかになっている部分があります。

日本の研究者たちは、生後19ヶ月の高齢のラットを用いて、アセチルLカルニチンの投与が、迷路を学習する能力に影響を与えるかどうかを調べました。その結果、アセチルLカルニチンを摂取したラットは、コントロールのラットと比べて、迷路を解く際の失敗数が減ったことが分かりました。また、アセチルLカルニチンを摂取したラットの脳では、コリンに由来する神経伝達物質の働きが強化されていることも分かりました出典[10]

つまり、カルニチンの摂取は脳内の情報伝達の効率をサポートすることで、記憶力をはじめとする認知機能の維持に貢献する可能性があります。
 

4.血圧の低下

一部の研究では、カルニチンの摂取により血圧が低下する可能性が示されています。

糖尿病や心血管系リスクの高い被験者に1日2gのアセチルLカルニチンを摂取させた研究では、動脈血圧を大きく低下させることが報告されています。また血圧低下の効果は、アセチルLカルニチンの摂取後徐々に弱まっていきました出典[11]

動物実験でも同様の結果が出ており、Lカルニチンを摂取したラットの血圧が低下することが分かっています。また、それだけでなく、高血圧に起因する炎症反応を軽減する効果があることも示されました 出典[12]

上記は特定の患者や動物を対象とした実験のため、カルニチン摂取の血圧への影響については更なる研究が必要です。
 

5.心臓の健康維持

健常な心臓では、拍動のためのエネルギーの60~70%を長鎖脂肪酸から得ています。カルニチンは脂肪酸をエネルギーに変換する上で重要な役割を果たしているため、正常な拍動のために大切な物質です。

また脂肪酸は心臓のエネルギー源であると同時に心血管系のリスクファクターでもあります。実際に過度な脂肪酸の蓄積は、心臓のエネルギー生産工場のミトコンドリアの機能不全を引き起こします。カルニチンは脂肪酸をエネルギーに変換することでミトコンドリアの機能低下を防ぐ役割もあります出典[21]

つまりカルニチンは心血管系の健康維持に必要不可欠であると言えるでしょう。

2004年に発表された昭和大学の研究によると、472人の心不全患者にレボカルニチンを投与したところ、心不全による突然死の減少や、虚血と再灌流(酸素を失った組織に再び血液が流れ込む)の際に起こる障害を改善する効果が見られました出典[13]

また別の研究では、心筋梗塞を引き起こした患者にLカルニチンを投与する治療を12ヶ月行ったところ、症状による左心室の拡張を軽減することができたと分かっています出典[14]

このように、実際に研究においても心臓の健康維持にカルニチンの摂取が有効な可能性が示されています。
 

6.血糖値の調整

カルニチンが血糖値の調整に関わることも報告されています。

イギリスの研究者らは、カルニチンL酒石酸塩の摂取が、痩せ型被験者と過体重/肥満の被験者の血糖値の変化に及ぼす影響について調査しました。この研究では痩せ型被験者8名と、過体重・肥満被験者8人に、14日間にわたってLカルニチンL酒石酸塩を摂取させました。

その結果、痩せ型グループでは、ブドウ糖摂取試験後速やかに血糖値が低下したのに対し、過体重/肥満グループでは低下しませんでした出典[15]。血糖値の低下に関わるインスリンやGLP-1などのホルモンには変化はなく、具体的なメカニズムは未だに不明です。

また他の研究では、肥満またはⅡ型糖尿病の被験者に対して血糖値低下の効果が確認されているものもある一方で、確認されていない研究もあり、決着は付いていません。

高血糖で悩む方は、カルニチンのサプリメントを検討するのも一つかもしれません。
 

7.妊活のサポート

精子の健康度を表す指標の1つとして「運動率」があります。運動率はその名の通り精子がどれほど動いているか表すものになります。運動率が低いと卵に辿り着く可能性が低くなるため、自然妊娠が難しくなると言われています。そして精子が活発に運動するためにはエネルギーが必要です。

カルニチンはエネルギーの生成をサポートすることで精子の運動率を向上させる可能性があります。不妊症に悩む20歳から40歳の男性被験者100名に、2ヶ月間のLカルニチン摂取をさせた研究では、精子全体の運動量が11%向上し、精子の濃度が1.5倍程度に増加したことが分かりました出典[16]

まだ完全に明らかになっている分野ではないので、実際に不妊に悩んでいる方は、この情報のみを鵜呑みにせず、まずは担当の医師の意見を尊重するようにしてください。
 

カルニチンの摂取方法や注意点

最後に、カルニチンの効果的な摂取方法や、摂取の際の注意点を紹介します。

1.どのくらい摂取すればいい?

現在の日本では、カルニチンの推奨摂取量は定められていません。アメリカ合衆国保健福祉省によると、健康な小児および成人は、メチオニンとリジンを元に、必要量をヒト自身で合成できるとされています出典[17]

しかしながら、メチオニンやリジンが不足する場合は、体内のカルニチン量が低下することも分かっています。

  1. 完全に植物食品しか食べない菜食主義者
  2. 乳製品や卵は食べる菜食主義者
  3. 動物食品も植物食品も食べる人

の3グループについて、メチオニンとリジンの摂取量及び、体内のカルニチン量を調べたところ、全ての項目において、1が最も少ない値を示し、逆に3が最も大きい値を示すことが分かりました出典[18]

推奨摂取量が定められていない背景には、さまざまな食品をバランスよく食べている前提があることを理解しておくと良いでしょう。

 

2.健康上限摂取量は?

カルニチンを安全に摂取できる上限量については、食品安全委員会肥料・飼料等専門調査会が2015年に出した報告に記述があります。

報告の中では、日本人が1日の食事から摂取するLカルニチンの総量は、体重1kgあたり0.77mgと推定されています。ヒトを対象とした試験で、副作用が生じないとされるカルニチンの摂取量は、1日に体重1kgあたり33.3mgであると確認されているため、普通の食事をしている限りは、安全な摂取量を超えることはないと考えられます出典[19]

また、カルニチンの摂取量を増やしても、1日あたり2gを超える分に関しては、吸収が行われない可能性も示唆されています出典[20]

以上をまとめると、カルニチンは、一般的な食事量では摂取上限に達することはありません。仮に上限値(33.3mg/kg/日)以上を摂取しても、そもそも体は余剰のカルニチンを吸収できないため、過剰摂取による副作用の危険性は限りなく低いと言えるでしょう。

 

3.理想の摂取方法はある?

カルニチンは動物性食品に多く含まれる栄養素であるため、直接の摂取を考えるならば、動物性食品をかかさずに食べることが勧められます。それ以外ではサプリメントを活用するという方法もあります。

カルニチンを自身で合成する際には、メチオニンとリジンという2種類のアミノ酸が必要であることはすでに紹介しました。これらの2種類のアミノ酸は、ともに必須アミノ酸と呼ばれ、やはり動物性食品に多く含まれます。また、カルニチンの合成反応をスムーズに進めるためには、メチオニンとリジン以外に、鉄、ビタミンC、ビタミンB6、ナイアシンなどの栄養素が必要であることも分かっています出典[20]

仕事が忙しくて、バランスの良い食事を用意することが難しい場合は、マルチビタミン&ミネラルのサプリメントを活用して、カルニチンの合成に必要な栄養素の確保を意識すると良いでしょう。

 

まとめ

今回はカルニチンについての解説でした。

カルニチンと聞くと、ダイエットに有効なサプリメントというイメージが強いですが、それ以外の働きも数多くあることがお分かりいただけたかと思います。また、ダイエット効果については、推奨する研究だけでなく、否定的なものも存在していました。全ての情報を真実だと思わないようにすることが、サプリメントに溢れる現代では必要なことかもしれませんね。

効果や作用の部分で紹介したものの中には、現段階ではまだ確実性に欠けるものもありますので、そのあたりはご理解いただいた上で活用していただければ幸いです。

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