執筆者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識できるよう日々邁進中。
最適な筋トレ頻度は個々人によって異なる
「筋トレを始めたはいいものの、どのくらいの頻度で行うのがベストなのか分からない...」
そのように悩む方も多いことでしょう。
インターネットで調べると「週3~4回が適切!」という意見が多く見られる一方で、筋骨隆々とした身体を持つフィットネス系インフルエンサーはほぼ毎日のようにトレーニングしています。
それもそのはず。
適切な筋トレ頻度はトレーニング経験やトレーニング量、疲労回復能力などの要素によって個人差が大きいのです。
実際に研究でも適切な筋トレ頻度が個人によって異なることが示されています。
2019年にサンカルロス大学が発表した論文では、20人の男性の8週間レッグエクステンションを行ってもらいました出典[1]。
トレーニング頻度の影響を調べるために、片脚は週2~3回の頻度で、もう片脚は週5回の頻度でトレーニングをしています。
その結果、31.6%の人は週5回行った脚の方が大きくなったのに対して、36.8%の人は週2~3回行った脚の方が大きくなったのです!(残りの31.6%の人は両脚で筋肉量に違いはありませんでした。)
このように誰もが共通で当てはまるトレーニング頻度というのはありません。
本記事では自分に合った筋トレ頻度を見つけるための考え方と、トレーニング経験別におすすめの筋トレ頻度についてご紹介します。
筋トレ頻度を決定する3つの要素
この章では筋トレ頻度を決めるために大切な3つの要素についてご説明します。
もちろん厳密に考えると3つだけでは足りませんが、とくに影響の大きい3つに絞ってご紹介します。
1.トレーニングボリューム
トレーニングボリュームとは筋肉に与えた総負荷量のこと。「挙上重量×挙上回数×セット数」で表されます。
例えばバーベルスクワットを100kg×10回×3セットを行った場合のトレーニングボリュームは3,000kgになります。
トレーニングボリュームが増えれば、筋肉に与える負荷も大きくなります。
神経系的な要因や疲労、トレーニング内容などにもよりますが、基本的には中長期的にトレーニングボリュームを増やすことが筋肥大に繋がると言えます。
そして筋肥大においては頻度よりもトレーニングボリュームの方が大切です。
実際に1週間の総トレーニングボリュームを揃えて、週3回と週6回の筋トレを比較した研究では、両グループに筋肥大量に差はなかったことが報告されています出典[2]。
よって、トレーニングボリュームを最大化できる頻度を設定することが重要です。
先ほどの研究では、週3回と週6回で差はないとしていましたが、現実的には頻度が高い方がトレーニングボリュームが増えやすいです。
スクワットを1日に5セットする場合と5日で5セットする場合を考えてみてください。
1日5セットを行うと、疲労によってセット数を重ねるにつれてレップ数が減ってしまいます。
一方で5日に1セットであれば、1日1セットであり、全力で取り組むことができ、トレーニングボリュームが増加します。
昨今では1部位を1日でまとめて行うトレーニング方法が主流ですが、実は同一部位は何日かに分けた方が効率的な可能性があります。
2.疲労
トレーニングボリュームのことだけを考えると、トレーニングは分散させて毎日行った方がいいように感じます。
しかし、現実はそうはいきません。
1回のトレーニングの負荷が大きいと、疲労は翌日になっても抜けないためです。
自重での体幹トレーニングであれば疲労は残りにくいため、毎日行っても翌日には回復していることでしょう。
しかし、高負荷のウエイトトレーニングであれば、翌日・翌々日まで疲労が残ります。
例えばマシンを用いて上腕二頭筋に高い負荷をかけた研究では、トレーニングの1~2日後にパワーの出力に重要な神経の機能が12~24%ほど低下していました出典[3]。
つまり連日で同じ部位をトレーニングすると、疲労により使用重量が落ち、かえって総ボリュームが低下してしまう恐れがあるのです。
疲労が回復してるか否かは、前回行ったトレーニングの記録を下回っていないかどうかで判断するのがおすすめ。
個々人のトレーニング内容やトレーニング量に応じて調整するのがよいでしょう。
3.動作の習熟度
トレーニング頻度を決める3つめの要素はトレーニングの習熟度です。
トレーニングはどのような動作か知れば誰でも実行できると考えている人もいるかもしれません。
しかし、トレーニングもバスケットボールのドリブルやサッカーのシュートと同じようにやればやるほど上手くなります。
トレーニングの習熟度が高くなると力が分散せず、対象とする筋肉に刺激を乗せやすくなります。
特に初心者の人はフォームが固まるまでは同じトレーニング種目を集中的に行うことがおすすめです。
また、上級者の人でもトレーニング動作が苦手な種目は頻度を高めることで筋肥大の効率が高まる可能性があります。
上手く対象筋に刺激を入れられるようになるまでは、種目数を増やしすぎず、なるべく高頻度で同じ種目を行うとよいでしょう。
【トレーニング経験別】おすすめの筋トレ頻度
では実際にどのくらいの頻度でトレーニングを行うのがよいのでしょうか?
つまらないことを言うと、最初にもお伝えした通り、適切な頻度は個々人によって異なります。
トレーニングをやりながら自分に適した頻度を探ることがおすすめです。
とはいえ、まったく指針がなければ下げるのも難しいでしょう。
そこで、ここからはトレーニング経験別におすすめの頻度をご紹介します。
まったくわからない!という人は、まずこの基準を当てはめて、適宜頻度を増減させてください。
初心者:1部位あたり週3~4回
初心者の場合は少ないトレーニング量でも筋肉が大きくなります。トレーニング量が少ないため、疲労回復も早いです。
そのため高頻度でトレーニングを行うことがおすすめです。高頻度で行うことはトレーニング動作の練習にも繋がります。
初心者の時期はフォームが安定していないため、種目数は絞って高頻度で行い、動作の習熟度を高めると良いでしょう。
以上より、1日に全身を鍛える全身法で週3~4回程度トレーニングを行うことがおすすめです。
中級者:1部位あたり週2~3回
初心者の頃は毎週のように使用重量が伸び、筋肉が成長していきます。
しかし、続けていくうちに徐々に成長が鈍化していくため、トレーニング量を増やす必要があります。
1部位に対するトレーニング量が増えるため、疲労回復に時間がかかるようになります。
トレーニング経験者がベンチプレスを5セット行った研究では、回復には48時間程度かかったという研究があります出典[4]。
よって同一部位のトレーニングは2日程度オフを挟んで行うのがよいでしょう。1部位あたり週に2~3回程度です。
上半身・下半身の2分割もしくは、胸肩・背中腕・脚の3分割で行うことがおすすめです。
上級者:1部位あたり週1~2回
上級者になると1回のトレーニング量がさらに増えます。1部位に対して、5~6種目行うこともざらにあるでしょう。
トレーニング経験者がベンチプレスを8セット行った研究では、回復までに72~96時間程度要したことが報告されています出典[5]。
また、上級者になると動作の練習をする必要性も低くなります。
よって同一部位のトレーニングは3~4日程度オフを挟んで行うのがよいでしょう。1部位あたり、週に1~2回の頻度です。
胸・肩・脚・背中の4分割、もしくは胸・肩・腕・脚・背中の5分割で行うとがおすすめです。
なお、時間に余裕がある人は1日に2度トレーニングを行うダブルスプリットを行うことも1つです。
女性アスリートを対象とした研究では、総トレーニング量を揃え、1日1回週3回でトレーニングしたグループと1日2回週3嗅いでトレーニングしたグループを比較すると、1日2回トレーニングをしたグループの方が筋肉が大きくなったが報告されています出典[6]。
特定の部位だけダブルスプリットを取り入れるというのもよいでしょう。
よくある質問
最後に筋トレの頻度に関連する質問にいくつか答えて本記事を締めたいと思います。
筋トレは毎日やると逆効果ですか?
筋トレを毎日しても、必ずしも逆効果になるとは限りません。
2019年にザグレブ大学が実施した研究では、1週間の総トレーニングボリュームを合わせた上で、週3回と週6回のトレーニングの効果を比較しました。
この研究は全身をウエイトトレーニング7種目で鍛える構成で、1部位1種目のみです。4セットを週3回行うグループと、2セットを週6回行うグループで比較しています。そして、各セットを6~12回で限界になる重量でオールアウトまで繰り返します。
その結果、どちらも同程度の筋肥大を認めました。
ウエイトトレーニングでも1部位1種目を2セット程度なら疲労が溜まりづらく、ほぼ毎日行うという方法もアリかもしれません。
何日休むと筋肉が落ちますか?
筋たんぱく質の合成は、トレーニング後から最大で72時間続きます。そのため、3日程度経つと筋肉の合成が終わり、徐々に筋肉が分解される可能性が考えられます。
2週間全く脚を動かさなかった研究では、若者の筋肉量は485g、高齢者の筋肉量は250g減少したことが報告されています出典[7]。
この研究では歩行などの日常動作も行っていないことには注意が必要ですが、やはりトレーニングなどで動かさないと筋肉量は徐々に低下していくでしょう。
しかしご安心を。
長期的に見れば数週間筋トレを休んでも、十分に筋肉をつけることができます。
2012年に東京大学が発表した論文では、短期的なトレーニングオフが筋肥大に及ぼす影響について調査されました出典[8]。
研究では、25歳のトレーニング未経験者14名を下記2つのグループに分けています。
- 6週間トレーニング(週3回)→3週間オフ
- 休みの週なしで週3回の筋トレ
いずれのグループもベンチプレスを10回×3セット行っており、使用重量は各被験者の成長に合わせて徐々に伸ばしました。
その結果、どちらのグループも最大筋力が50%増加しており、腕や胸の筋肉の増え方にも両グループで差はありませんでした。
トレーニングを休んでいる間は確かに筋肉は減りますが、トレーニングを再開すると休んだ分だけ筋肥大の効率が高くなるようです。
これはトレーニング未経験者の研究のため、中級者以上で同じことが言えるとは限りませんが、頑張りすぎてオフを設けていない人はあまり根を詰め込みすぎる必要はないでしょう。
ダイエットに効果的な筋トレ頻度はどれくらいですか?
ダイエット目的の場合も筋肥大目的の場合と同様に、適切な筋トレ頻度には個人差があります。
その上で、1つ参考となる論文を紹介しましょう。
2009年にオースティンウェルネスセンターが発表した論文では、22~74歳の男女90名を集め、運動頻度と体脂肪量の変化の関係について調べられました出典[9]。
研究参加者の運動頻度は下記の通りです。
- 全く運動しない
- 1回30分の運動を週に2回未満
- 1回30分の運動を週に3~4回
- 1回30分の運動を週に4回以上
8週間運動を行った結果、体脂肪が減ったのは週に4回以上運動を行ったグループのみでした。
この研究は期間が短いため、週に4回より少なくても継続すれば体脂肪が減る可能性は十分に考えられます。
しかし、できる限り早く体脂肪を落としたい人は週に4回以上運動するとよいでしょう。
3つの要素を考慮して自分に合ったトレーニング頻度を見つけよう!
最適なトレーニング頻度は「トレーニングボリューム」「疲労」「動作の習熟度」の3つによって決まります。
自分のトレーニング状況や体調を考慮しながら、最適なトレーニングボリュームを見つけましょう。
とはいえ、いきなり自分で見つけるのは難しいという人もいるでしょう。
その場合は以下を参考にしてみてください。
- 初心者:1部位あたり週3~4回
- 中級者:1部位あたり週2~3回
- 上級者:1部位あたり週1~2回
あくまで参考に留まるので、自分に合うように適宜微調整してみてください!
出典
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