【ナツメグの効果6選】副作用で幻覚も?注意すべき致死量について
2024年3月27日更新

執筆者

薬剤師 / 公認スポーツファーマシスト / 研修認定薬剤師 / 健康サポート薬剤師 / アロマテラピー検定1級

大西 剛気

薬剤師免許を取得後、メディカルモール併設の調剤薬局で勤務。複数の店舗で1日400枚越えの処方せんに対応しながら様々な診療科を学ぶ。その後、全国展開の大手調剤薬局にて4店舗の管理薬剤師 、2地区のエリアマネージャーを歴任。新店舗開発にも携わる 。現在は 、新しく調剤事業を立ち上げた企業に仲間入りし 『医療と福祉の融合 』『新時代の薬局 』を目指し日々奮闘中。趣味はキャンプ、サウナ、食べ歩き。2児のパパでもある。

ナツメグとは?

ナツメグは、料理の香り付けや保存料として世界中で使用されるスパイスの代表格です。

しかし、実は様々な健康効果があることは意外と知られていません

今回は栄養学の観点から徹底的に分析していきましょう。

その前にまずはナツメグの特徴を解説します。

どんな食材?

ナツメグは、ニクズク科の常緑高木ニクズクの種子から種皮を取り除き、乾燥させて粉末にしたスパイスです。特徴的な甘い香りを持つナツメグは、ハンバーグなどの肉料理で臭み取りとして親しまれています。

また、ナツメグは料理だけでなくアロマテラピーとしても使われているほか、インドのアーユルヴェーダでは医薬品としても重宝されてきました。

 

ナツメグの歴史について

香辛料としてのナツメグの歴史は古く、約3500年前のアイ島で確認された物が最古の例といわれています。

中世ヨーロッパでは、ナツメグは料理の香り付けや保存料として胡椒と共に人気の香辛料でした。当時、ナツメグは疫病を寄せ付けないと信じられていたため、価格の高騰や交易の利権を巡る争いにまで発展したとされています。

19世紀までは、インドネシアのバンダ諸島が唯一のナツメグの生産地とされていたことも、ナツメグが貴重だった理由に挙げられます。現在はグレナダのスパイス島やインドでも栽培されており、世界中で手軽に利用されるようになりました%出典[1]

 

ナツメグの栄養素と働きについて

日本食品標準成分表(八訂)によると、ナツメグ100gあたりに含まれる主な栄養素は、次のように報告されています%出典[2]

エネルギー

520kcal

リン

210㎎

たんぱく質

5.7g

2.5㎎

脂質

38.5g

亜鉛

1.2㎎

炭水化物

47.5g

マンガン

2.68mg

ナトリウム

15㎎

ビタミンB1

0.05mg

カリウム

430㎎

ビタミンB2 

0.10mg

カルシウム

160㎎

  

マグネシウム

180㎎

  

また、ナツメグに含まれる色素であるシアニジンや、フェノール化合物は抗酸化作用が期待されています%出典[1]

その他にも、サビネンやテルピネオールなどの抗炎症化合物も多いため、健康維持のためにナツメグを使った料理を取り入れる人も少なくありません。

h2ナツメグの6つに効果効能について

ナツメグは、肝臓の薬や滋養強壮剤など、医薬品・漢方薬として大昔から使われてきました。最近の臨床研究でも、ナツメグから抽出した物質に様々な健康効果があることが示されています。

ここからは、ナツメグに期待される効果効能についてみていきましょう。

効果1.抗うつ作用

ナツメグには、抗うつ作用が期待されています。

ナツメグ特有の成分「ミリスチシン」は、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの放出を活性化させる働きがあります。

うつ症状の原因は、このセロトニンの不足が原因とされているため、ナツメグを摂取することで足りなくなったセロトニンを補うことができるのです%出典[3]%出典[4]

ナツメグによる抗うつ作用について、マウスを対象とした動物実験が行われています。

雄のマウスに体重あたり5,10,20mg/kgのナツメグを3日連続で経口投与したところ、マウスに抗うつ効果が得られました。特に、この実験ではナツメグの投与量が多いほど目立った効果が報告されています%出典[3]

体内のセロトニンの濃度が低下すると、不安やイライラ、やる気の低下などの精神症状を引き起こすとされています。最近元気がない、気持ちが落ち着かないという方は、ナツメグをスパイスとして使った料理を試してみるのも検討の余地ありです。


効果2.肝臓の保護

インドやスリランカの伝統医学「アーユルヴェーダ」では、胃の病気の治療薬としてナツメグを使用していました。実際に、ナツメグには肝臓の保護効果があることが動物実験によって報告されています。

肝臓の健康状態は、細胞の酸化ストレスに大きく影響されます。ナツメグに豊富なフェノール化合物(プロトカテキュ酸、フェルラ酸、カフェ酸)は、強い抗酸化作用があるため、酸化ストレスから肝臓を守ってくれるのです。

マウスを対象にナツメグから抽出した物質と人工的に誘発させた肝臓へのダメージと脂質酸化への影響について分析を行いました。ナツメグから抽出した物質を経口投与させたマウスの肝臓を分析したところ、肝臓へのダメージや肝臓の脂質酸化が抑制されていたことが分かりました%出典[5]

栄養の代謝やアルコールの解毒などの役割を持つ肝臓は、私たちの健康を維持するために最も重要な臓器の一つです。肝臓の病気を防ぐためにも、ナツメグを食生活にプラスしてみましょう。

 

効果3.血糖値の改善

ナツメグには、血糖値を改善する効果も期待されています。

糖尿病をもつラットを使用した動物実験によると、体重あたり100および200㎎のナツメグ抽出物を投与したことで、ラットの血糖値が低下し、血液中のインスリン濃度が増加したことが示唆されました%出典[6]。この効果は、ナツメグの抗酸化作用によってラットの膵臓細胞の酸化ストレスが軽減されたことが要因と考えられています。

糖尿病は、神経や目、腎臓など全身に影響を及ぼす危険な病気です。ナツメグを使った料理を取り入れつつ、普段からバランスのとれた食生活を心がけましょう。

 

効果4.オーラルケア

実は、ナツメグの油はプラーク(歯垢)や口臭の軽減などのオーラルケアにも役立ちます。

60名の対象者を2つのグループに分け、ナツメグ油から調製したうがい薬とマウスウォッシュの効果を比較した実験が行われました。

それぞれ1日2回、21日間使用したところ、ナツメグ油を使用したグループではプラークスコアが1.27から0.77に減少、マウスウォッシュを使用したグループでは1.3から0.79に減少しました出典[7]。このデータから、ナツメグはマウスウォッシュと同じくらいのオーラルケア効果があると考えられます。

歯の健康は、私たちの生活の質(QOL)を保つためにとても重要な要素です。毎日のケアと合わせて、ナツメグを食生活にプラスしてみましょう。

 

効果5.美肌のサポート

紫外線による肌へのダメージを軽減したい場合にも、ナツメグが役立つことをご存知でしょうか?

肌を若々しく保つためには、皮膚を構成するたんぱく質であるコラーゲンの合成が重要なポイントです。

ナツメグ特有の化合物である「メイスリグナン」は抗酸化作用と抗炎症作用が認められており、紫外線による肌の酸化ストレスを軽減することからコラーゲン合成をサポートするといった研究報告があります出典[8]

紫外線は夏の時期だけでなく、年間を通して降り注いでいます。肌のダメージ予防を考えている方は、ナツメグ料理を習慣的に取り入れましょう。

 

効果6.性欲の向上

ナツメグの摂取によって、性欲が向上する可能性があります。

オスのラットをグループに分け、それぞれのラットに体重あたり100、250、500mgのナツメグ抽出物を7日間与えました。その結果、体重あたり500mgのナツメグ抽出物を与えたラットの性的活動が大幅に増加したことが分かりました出典[9]

ナツメグによる性欲向上についてのメカニズムは現在明らかになっていません。ただし、ナツメグには神経興奮作用があることは確認されています。

また、ナツメグに含まれる化合物であるステロールは性ホルモンの合成に関わる物質であるため、これらが媚薬のように作用している可能性があるのです。

性機能を向上させたいと考えている方は、ナツメグを配合したサプリメントの使用も検討の余地ありです。

過剰摂取で幻覚も?副作用と致死量について

ナツメグは、大量に摂取すると副作用を起こす可能性がある食品です。そのため、ナツメグを食生活に取り入れるときは十分に気を付けましょう。

ナツメグに含まれるミリスチシンには、神経伝達物質であるセロトニンやドーパミンの分解を抑制する作用(モノアミン酸化酵素阻害作用)があります。そのため、ナツメグを過剰に摂取すると脳内の神経伝達が過度に増強されてしまう恐れがあるのです。

川崎市立川崎病院・救命救急センターの報告によると、香辛料としてナツメグを10g摂取した際に次のような症状がみられました出典[10]

  • 浮遊感(身体が浮くような感覚)
  • 動悸
  • 不安感
  • 口渇(のどの渇き)
  • 身体の冷え

また、ヒトがナツメグを経口摂取した場合の中毒量は5〜15gといわれています。中毒の場合、摂取してから1〜8時間後に症状が発生し、24時間程度で症状改善に向かうと報告されています。ナツメグ種子2個(1個=6 g)分の摂取量で死亡事故が起きた事例もあります。ただし、20〜80g のナツメグを摂取しても後遺症なく退院したという報告もあり、推定摂取量と重症度は必ずしも比例しないと考えられます出典[11]

ちなみに、ナツメグには重大な副作用があるといっても、あくまで過剰に摂取し過ぎた場合に限られます。日常生活でナツメグをスパイスとして使用する量では問題ないため、過度に心配する必要はありません。

まとめ:

ナツメグは、料理の香り付け以外にもアロマセラピーや漢方としても普及しており、現代ではスーパーやオンラインショップで簡単に購入できるようになりました。

ただし、ナツメグの過剰摂取やナツメグのアロマ製品を誤って食べてしまうと、命にかかわる副作用が発生する恐れがあるので注意が必要です。

副作用についても十分チェックし、健康に良いからと通常以上に摂り過ぎてしまう・小さなお子様が誤って口に入れてしまわないよう気を付けましょう。

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