執筆者
薬剤師
小椋香奈
薬剤師免許を取得後、内科・整形外科・皮フ科・泌尿器科を有する医療機関の門前薬局に勤務。局内で使用する患者向け指導せんの作成に関わるなど、調剤だけでなく幅広く薬剤師業務をこなす。現在は勤務の傍らでライターとしても活動中。
そもそもパセリって何?
彩り、飾りつけとして添えられることが多いパセリ。
栄養豊富なパセリですが、残してしまうこともしばしば・・・なんてことはありませんか?
実はそれ、非常にもったいないんです・・・
今回は栄養学の観点からパセリに期待できる素晴らしい効果を解説しましょう。
と、その前にまずはパセリの特徴をご紹介します。
春と秋が旬のセリ科の野菜
パセリはセリ科の野菜で、日本では葉の縮れた葉のものが主流ですが、平らなものもあります。
紀元前から食用にされていましたが、日本に入ってきたのは江戸時代です。
ハウス栽培が行われており、年中スーパーや飲食店で見ることができ、旬は3~5月、9~11月頃で、柔らかい葉の食べやすいパセリを手に入れやすい時期です。
せっかく食べるのであれば、時期の美味しいパセリを食べたいですね!
古代ローマから食用や歯磨きに使われた伝統ある食材
パセリはそもそもいつから使用されていたのでしょうか?地中海沿岸の南イタリア及びアルジェリアが原産と言われており、岩場(ペトロス)のセロリという意味からパセリと名付けられたようです。
古代ローマ時代にはすでに食用とされており、殺菌作用のあるパセリは口腔ケアとして歯磨きにも使われていました。日本に伝わったのは18世紀になってからで、本格的に栽培されるようになったのは明治から大正にかけてだと言われています。
日本での歴史は浅い野菜ですが、古くから食べられている伝統のあるパセリ。どのような成分が含まれているのか詳しく見ていきましょう。
ビタミンCやβカロテンなどの栄養素が豊富
パセリは苦味や飾りのイメージが強く、なかなか口にする機会が少ないのではないでしょうか……
ところが、パセリは野菜の中でもトップクラスの栄養価のある食べ物です。
βカロテン(ビタミンA)やビタミンC、ビタミンK、鉄、カルシウム、モリブデンなどの「色素」「ビタミン」「ミネラル」が豊富に含まれています。
それでは、パセリに含まれる成分が身体にどのような効果を及ぼすのでしょうか。
パセリに期待できる効果とは?
それでは効能について詳しく見ていきましょう。
1.肥満の予防や改善のサポート
パセリに含まれるビタミンCは身体の機能維持に関与する成分。エネルギー代謝を促進し、脂肪の燃焼を上げることで脂肪の蓄積を防ぐ可能性があると言われています。
複数のデータベースから検索したシステマティックレビューでは、31の論文を用いてビタミンCを含む6種類の抗酸化物質の濃度と体脂肪率の関係について解析が行われています。その結果、肥満の人は抗酸化物質の濃度が低く、肥満および体脂肪量と逆相関していることが明らかとなりました。出典[1]
38名の重度の肥満患者にビタミンC 3g/日もしくはプラセボを6週間摂取し、ダイエットを並行した際の6週間前後での体重の減少を比較しています。すると、ビタミンCを摂取した群はプラセボ群と比較して、体重減少幅が有意に大きくなりました。出典[2]
加齢により痩せにくくなったと感じる、健康診断でBMIの数値が上がってきていませんか?肥満を放っておくと生活習慣病を併発する危険があります。運動や食事に気をつけることはもちろんのこと、補助的にビタミンCを摂取してはいかがでしょう。
2.血圧の正常化
ビタミンCには身体の機能を正常にする働きがあります。効果の1つとして血圧の正常化が報告されており、血圧が下がると心筋梗塞などの循環器疾患の予防が期待できるのです。
健康な168名を対象に血液中のビタミンC濃度と血圧の関係について調査が行われました。すると、血中のビタミンC濃度が高くなるほど収縮期・拡張期血圧ともに低くなることが報告されました。出典[3]
1993年~1997年までに行われた40歳~79歳の男女 20926人を対象とした血中ビタミンC濃度と血圧の関係を横断研究した論文があります。これによると、血中ビタミンC濃度がグループの上位25%に入る人は下位25%の人に比べて高血圧(収縮期血圧が140mmHg以上)になる可能性が22%低くなるという結果が報告されました。出典[4]
ストレスや食生活だけでなく遺伝、加齢によっても血圧は上がる可能性があります。血圧の上昇が気になる方は、普段の食事からビタミンCの摂取を心がけましょう。また、ビタミンCは一度に摂取しても過剰分は排泄されてしまうので、適切な量を継続的に摂取するのが大切ですね。
3.美肌化によるアンチエイジング
ビタミンCと聞くとまず思い浮かぶのは美容のイメージではないでしょうか?
パセリに含まれるビタミンCは強力な抗酸化作用を持ち、細胞のダメージを防ぎ、コラーゲンの生成を促進することで、皮膚のハリや弾力性を保つ効果があります。
20~47歳の40名をビタミンE 2g/日の投与群、ビタミンC 3g/日の投与群、ビタミンE、Cの投与群、プラセボ群に分けて50日間継続摂取した際の研究があります。
摂取前後の紫外線に対する皮膚の炎症反応を比較したところ、ビタミンCとビタミンEの両方を50日間摂取したグループのみ、日焼けの炎症による紅斑の大きさ・赤みが他のグループと比較して有意に減少しました。出典[5]
アメリカで行われた全国健康栄養調査のデータベースと皮膚科検査を用いた分析研究があります。40~74歳の女性4025名を対象にビタミンCの摂取量と皮膚の変化について調査しました。
すると、ビタミンCの摂取量が増えるほど、老人性乾皮症やしわなどのリスクが低下することが明らかとなりました。
出典[6]
ビタミンCは肌の健康や老化軽減に効果があるだけでなく、紫外線によるダメージからも肌を守ります。栄養バランスの取れた食事はもちろんのこと、ビタミンCも補助的に摂取し健康な肌を手に入れましょう。
4.記憶力の改善
パセリに含まれるβカロテンはプロビタミンAと呼ばれ、体内でビタミンAに変換されます。プロビタミンAはカロテノイドとも呼ばれ「抗酸化作用」「抗炎症作用」をもつことから、脳の記憶を正常にする働きがあると言われています。
91名をカロテノイドが含まれるサプリメント群とプラセボ群にランダムに分け、12ヵ月間継続して摂取した際の変化を調べた論文があります。これによると、プラセボ群と比較してサプリメント摂取群では記憶力の優位な改善と課題でのエラー数が減少したことが分かりました。出典[7]
ビタミンAは記憶に必要な栄養素であり、記憶力の向上に効果を発揮することが分かりました。最近物忘れが増えたと感じていたり、仕事や勉強で頭を使う事が多い方にはおすすめの成分ですね!
5.網膜の健康維持
パセリに含まれるβカロテンから生み出されるビタミンAは目の健康維持にも関与しています。ビタミンAは目の網膜に存在する光を感知するタンパク質、ロドプシンの材料であり、不足すると暗い場所で目が見えにくくなることがあります。そのため、日頃からビタミンAを摂取しておく必要が!
ビタミンAのプロビタミンであるカロテノイドと加齢黄斑変性の関連を調査した米国の論文があります。これによると、血漿中のカロテノイド濃度が高い群は低い群より進行性の加齢黄斑変性のリスクが40%減少したことが報告されています。
出典[8]
加齢黄斑変性は網膜の黄斑という部分にダメージを受けることで発症します。歳を重ねるにつれて目の老化も避けては通れませんが、視力が衰えるリスクを少しでも軽減させるために、普段からビタミンAを摂取できると良いですね!
6.骨の強化
イメージが湧きにくいですが、実は多くのカルシウムを含んでいるパセリ。生体内のカルシウム約99%は骨と歯に存在しており、生命活動の重要な部分を支えています。ところが、特に女性では高齢になるとホルモンの影響により、骨粗鬆症のリスクが高まることを知っていますか?
30,970名が参加した8件の研究から、骨折発生率に対するカルシウムとビタミンD補給の効果を分析した論文があります。すると、カルシウムとビタミンDの補給により全骨折リスクが15 %減少し、股関節骨折リスクが30 %減少したことが示されました。出典[9]
骨は体を支えるだけでなく、体を動かしたり脳や内臓を守ったりと生きていく上で非常に重要です。健康な生活は骨からとも言えるでしょう。カルシウムを継続して摂取し、健康な骨と生活が手に入れられると良いですね。
7.コレステロールの減少
コレステロールは2種類あり、全身にコレステロールを供給するLDLと余分なコレステロールを肝臓に戻すHDLに分けられます。悪玉コレステロールと呼ばれているのはLDLです。
パセリに含まれるカルシウムには、コレステロール値を正常にする働きがあると言われています。
4,071名が参加した22件の研究から、カルシウムのサプリメントまたはプラセボを摂取した際の血中コレステロールの変化を調査した論文があります。すると、プラセボと比較してカルシウムのサプリメントを摂取した群ではLDLが0.12 mmol/L減少し、HDLが0.05 mmol/L増加したことが示されました。
出典[10]
食生活が偏っていたり、LDLコレステロールの数値が高い人は血液がドロドロになり血管が詰まりやすくなっているかもしれません。生活習慣を見直しつつ、カルシウムも食事やサプリメントから積極的に摂取しましょう。
8.心疾患の予防
血圧が高いまま放置しておくと、心疾患の発生リスクが上がるお話をしました。その他にも心疾患の予防に効果があると言われているのがビタミンK!もちろんパセリにもビタミンKが多く含まれています。
心筋梗塞の病歴が無い4,807名を対象に、ビタミンK2の摂取量と大動脈の石灰化と冠状動脈性心疾患の関連を調査したデータがあります。すると、ビタミンK2摂取上位~中位では下位の群と比較して大動脈の石灰化および冠状動脈性心疾患の死亡リスクが低下したことが報告されています。出典[11]
心疾患はガンに次いで死亡率が高い病気です。特に高血圧、喫煙、脂質異常などで身に覚えがある方は注意が必要!!健康で長生きして、突然死のリスクを下げるためにもビタミンKを継続して摂取しましょう。
9.糖尿病の予防
パセリにはミネラルの一種である、モリブデンという成分が多く含まれています。あまり耳にしたことがないかもしれませんが、モリブデンは肝臓や腎臓に多く存在していて、体内で起こる化学反応に必要な成分です。最近の研究では、血糖値を下げる可能性も期待されている成分でもあります。
24名を対象に行われた、モリブデンを多く含ませたレタスを12日間摂取させた前後の血液や尿の変化を調べた研究があります。すると、空腹時血糖・インスリン抵抗性が大幅に低下し、インスリン感受性が増加したことが示されました。出典[12]
糖尿病は初期段階では自覚症状がないことが多く、気付いた時にはすでに症状が進んでいることがあります。普段から過食ぎみ、運動不足の方は糖尿病の予防として「モリブデン」を意識的に摂ってみるのが良いでしょう。
パセリは優秀な健康食品!
パセリに含まれる豊富な栄養素は健康な身体を作るために必要な成分がたくさんあることが分かりましたね!
パセリに含まれるカルシウムには、骨を作るのはもちろんのこと、心疾患リスクが上がる血圧を正常にする働きがあります。
また、ビタミンも豊富に含んでおり物忘れ、目の神経を正常にする働きから肌のアンチエイジングまで健康に美しく生きていくために必要な効果が得られる可能性が示されました。
糖尿病の予防として、ミネラルであるモリブデンも重要な役割を果たしていることが分かりましたね。
パセリに含まれる有効成分だけでは効果が現れにくいことがあるかもしれません。そんな時は足りない成分のみをサプリメントで摂取してみてもいいかもしれません!
パセリが栄養たっぷりであることを知ると、彩りに添えられている少量であれば食べてみたくなってきませんか?
出典
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