執筆者
NSCA-CPT、調理師免許
大里 亮太(筋肉料理研究家Ryota)
激太り&うつで入院するも入院中にTeststerone氏の「筋トレが最強のソリューションである」に出会い、退院後に筋トレとお料理で体重-25kgに成功。精神的にも立ち直り、パーソナルトレーナー資格のNSCA-CPTを取得。元々所有していた調理師免許を生かし、筋肉料理研究家として活動するように。昔の自分のように心身ともに悩んでいる方のサポートになればと、日々簡単ダイエットレシピを発信している。
そもそも全身法とは?
全身法とは、文字通り1日に全身を鍛えるトレーニング方法。
1950年ごろまでは主流となっていた鍛え方で、現在は再びその効果が見直されてきています。
一方、「今日は胸、明日は背中…」のように、1日ごとに鍛える部位を分けるトレーニング方法を分割法と呼びます。
筋トレ中~上級者の多くは分割法を用いていて、SNSなどでその様子をご覧になったことがある方も多いはず。
全身法と分割法には、それぞれメリット・デメリットが存在します。
それらを把握した上でトレーニングをすれば、より効率よく体作りを進めることができるでしょう。
分割法と何が違う?全身法のメリット3選
それでは、全身法は分割法とは具体的に何が違うのでしょうか。
この項目では、まずは全身法ならではのメリットを3つご紹介します。
メリット1. ジムに行く頻度が少なくてもいい
分割法は4分割なら週4回、5分割なら週5回…と鍛える部位を分ければ分けるほど、ジムに何度も行く必要があります。
時間が確保できる方ならまだしも、仕事が忙しく毎日ジムに行けない方にとってはハードルの高い方法になってしまうことに。
一方、全身法なら1日で全身をまんべんなく鍛えることが可能。
そのため、ジムに行く回数を調整しやすく、何なら最低週末の時間があるときだけでもジムに行くことができればオーケー。
最近増えているコンビニ感覚で通えるような24時間ジムを利用すれば、生活の中に簡単に筋トレを組み込むことができます。
つまり、全身法は仕事や家事、学業などで忙しい方でも取り入れやすいトレーニング方法。
また、スケジュールも立てやすいので、健康維持のために細く長く筋トレを続けたい方にもおすすめなんです。
メリット2. フォームが上達しやすい
例えば、週3回の同じ頻度で筋トレをした場合、分割法と全身法では分割法の方が同じ部位を鍛える間隔が空いてしまいます。
そのため、正しいフォームを身に付けるのに、より長い時間がかかってしまうことに。
一方、全身法は1日で全身を鍛えるので、その分同じ部位を高頻度で鍛えることが可能。
つまり、それだけフォームが上達しやすくなります。
正しいフォームを身に付けられれば、筋肉も効率よく刺激できるようになり、成長のスピードもアップ。
さらに、徐々に重量を上げていけば身体の変化も目に見えて感じやすくなり、トレーニングへのモチベーションにもなります。
加えて、フォームの上達はケガの防止にもつながるというメリットも。
どれだけ効果的なトレーニングも、ケガをして身体を痛めてしまっては元も子もありません。
そのため、まず全身法で身体に動きを覚えさせることは、体作りをする上での目標達成の近道となるのです。
メリット3. 1部位に対する負担が小さい
分割法では、1日ごとに1つまたは2つの部位を集中的に鍛えるので、その分1部位に対する負担も大きくなります。
例えば、1週間にスクワット・レッグプレス・ブルガリアンスクワットという脚の3種目を行うとしましょう。
分割法では、3種目を1日に行う必要があります。
スクワットやレッグプレスによる疲労が残った状態でブルガリアンスクワットを行うのは、身体的・精神的な負担が大きくなります。
一方で全身法では1日で全身を鍛えるので、1部位に対するセット数が少なくなります。
スクワット・レッグプレス・ブルガリアンスクワットという脚の3種目も、全身法なら1日に1種目だけ行えばオーケー。
つまり、その分身体的・精神的な負担も小さく済み、トレーニング自体も継続しやすくなるのです。
ただし、当然ながら扱う重量が重たくなれば、身体にかかる負荷も大きくなります。
筋肉は刺激を与えるだけでは成長せず、十分な栄養と休息があって初めて成長するもの。
1部位に対する負担が小さいからと言って毎日トレーニングすることは避け、適度にオフを設けるようにしましょう。
全身法のデメリット
いいことばかりのように見える全身法ですが、もちろんデメリットも存在します。
この項目ではエビデンスを交えつつ、全身法のデメリットを3つご紹介しましょう。
デメリット1. 疲労が溜まりやすい
全身法は1日で全身を鍛える分、疲労が溜まりやすいというデメリットがあります。
ここで、2017年にウェスタン・シドニー大学が発表した論文をご紹介しましょう出典[1]。
実験には、全身エクササイズを行った後の疲労と回復について調査するため、トレーニング経験のある男性8名が参加しました。
被験者たちは、オーストラリアのラグビーリーグでシーズン中に行われるトレーニングに基づいた全身エクササイズを実施。
その上で、エクササイズ終了後の1時間後、24時間後、48時間後に各種のデータを分析しています。
結果として、身体の疲労や筋肉痛が運動前のレベルまで回復するには、48時間の休養が必要であることが判明。
つまり、このデータから見ても、全身法を高頻度で行うと疲労が回復しきらない可能性があると言えるのです。
そのため、前述の通り連日のように全身法でトレーニングをすることは避けるようにしましょう。
デメリット2. 後半に行う種目が伸びにくい
全身法は1日で全身を鍛えるため、集中力の低下や疲労から後半に行う種目が伸びにくくなる可能性があります。
例えば、最初に胸の種目を行うと、補助筋となる肩や三頭筋のパフォーマンスは少なからず落ちてしまうことに。
ここで、それを裏付けるような2020年にロンドリーナ州立大学が発表した論文をご紹介しましょう出典[2]。
論文では、エクササイズの順序が筋力や筋肥大に与える効果を分析するため、11の研究を対象にレビューを実施。
その結果、多関節種目に関する筋力向上は、多関節種目から開始する方が効果的であることが判明。
一方、単関節種目に関する筋力向上は、単関節種目から開始する方が効果的でした。
このデータから論文では、筋力はトレーニングの最初に実施する種目において最も増加すると結論付けています。
つまり、全身法のエクササイズを毎回同じ順序で行っていると、前半と後半の部位で成長に差が生じてしまう可能性があるのです。
デメリット3. メタボリックストレスを与えにくい
メタボリックストレスとは筋肉を刺激することで生じる、代謝産物によるストレスのこと。
軽めの重量で高レップのトレーニングを行うと、筋肉中に大量の血液が流れ込み、閉塞状態に陥ります。
すると、大量の血液が閉じ込められた筋肉は膨れ上がってパンプアップした状態に。
しかし、血中に溶け込んでいた酸素や栄養物質は徐々に失われ、次第に筋肉には代謝産物が蓄積。
このとき焼けるような痛み、いわゆる「バーン」と呼ばれる感覚を感じられるようになります。
このストレスがアナボリックホルモンの放出を刺激し、筋肥大へのトリガーとなると言われています。
ところが、全身法のトレーニングでは、基本的にたくさんの関節を使うベンチプレスや懸垂、スクワットなどの種目を行います。
また、前述の通り1日で全身を鍛える分、1種目あたりのセット数も少なくなってしまいます。
そのため、必然的にメタボリックストレスを与えにくくなってしまうのです。
全身法と分割法どっちがいい?
結局のところ、全身法と分割法はどちらが優れているのでしょうか。
ここで、2015年にニューヨーク市立大学リーマンカレッジが発表した論文をご紹介しましょう出典[3]。
実験では、週1回の分割法と週3回の全身法がトレーニング経験のある男性の筋肉に与える影響を調査しています。
被験者である20名の男性はランダムに分割法と全身法に割り当てられ、8週間のトレーニングを実施。
その前後に測定したところ、前腕の筋厚は全身法群の方が大きく増加していました。
また、2019年にピラシカバ・メソジスト大学が発表した論文でも、全身方の方が優れた筋肥大効果をもたらすと示されています出典[4]。
しかし一方で、1週間のトレーニング量を揃えた場合には、全身法と分割法では効果が変わらないという論文もあります出典[5]。
つまり現段階では、全身法と分割法は一概にどちらが優れているとは言えないところのなのです。
その上で、トレーニング初心者はエクササイズ動作の習得度を高めるため、まずは少ない種目数で全身法を行うのがおすすめです。
全身法のメニュー例
全身法のトレーニングは種目選びが重要です。
この項目では、具体的な全身法のメニュー例をご紹介しましょう。
週2回
週2回の場合はオフを2~3日取ることができるので、疲労回復にも十分な時間を取ることが可能。
そのため、たくさん関節を使うコンパウンド種目を多く取り入れ、効率よく筋肉を刺激していきましょう。
●1日目
- ベンチプレス(大胸筋・三角筋前部・上腕三頭筋)
- 懸垂またはラットプルダウン(背中・三角筋後部・上腕二頭筋)
- フレンチプレス(上腕三頭筋)
- バーベルカール(上腕二頭筋)
- サイドレイズ(三角筋中部)
- スクワット(脚全体)
- クランチ(腹筋)
●2~3日目
オフ
●4日目
- デッドリフト(背中・ハムストリング)
- ベンチプレス(大胸筋・三角筋前部・上腕三頭筋)
- ダンベルカール(上腕二頭筋)
- スカルクラッシャー(上腕三頭筋)
- サイドレイズ(三角筋中部)
- レッグプレス(脚全体)
- レッグレイズ(腹筋)
●5~7日目
オフ
週3回
3回の場合は週2回に比べてオフが1~2日と短くなるので、その分関節への負荷も大きくなります。
そのため、単関節種目を取り入れたり、マシンも活用して筋肉にいろいろな刺激を与えていきましょう。
●1日目
- ベンチプレス(大胸筋・三角筋前部・上腕三頭筋)
- ラットプルダウン(背中・三角筋後部・上腕二頭筋)
- フレンチプレス(上腕三頭筋)
- レッグカール(ハムストリング)
- クランチ(腹筋)
●2日目
オフ
●3日目
- 懸垂(背中・三角筋後部・上腕二頭筋)
- マシンチェストプレス(大胸筋・三角筋前部・上腕三頭筋)
- サイドレイズ(三角筋中部)
- スクワット(脚全体)
- レッグレイズ(腹筋)
●5~6日目
オフ
●6日目
- デッドリフト(背中・ハムストリング)
- ダンベルフライ(大胸筋)
- バーベルカール(上腕二頭筋)
- レッグプレス(脚)
- ロシアンツイスト(腹筋・脇腹)
●7日目
オフ
週5回
週5回の場合は連続でトレーニングする日が多くなり、さらに身体への負荷が大きくなることに。
そのため、続けて鍛える場合は同じ部位でも刺激の入り方を変えられるような種目を選び、疲労が溜まらないように注意しましょう。
●1日目
- ベンチプレス(大胸筋・三角筋前部・上腕三頭筋)
- ラットプルダウン(背中・三角筋後部・上腕二頭筋)
- サイドレイズ(三角筋中部)
- レッグエクステンション(大腿四頭筋)
●2日目
- デッドリフト(背中・ハムストリング)
- ダンベルフライ(大胸筋)
- バーベルカール(上腕二頭筋)
- レッグプレス(脚全体)
●3日目
オフ
●4日目
- インクラインベンチプレス(大胸筋上部・三角筋前部・上腕三頭筋)
- ケーブルプルオーバー(背中)
- レッグエクステンション(大腿四頭筋)
- インクラインダンベルカール(上腕二頭筋)
●5日目
- 懸垂(背中・三角筋後部・上腕二頭筋)
- インクラインダンベルフライ(大胸筋上部)
- レッグカール(ハムストリング)
- ケーブルトライセプスEX(上腕三頭筋)
●6日目
- スクワット(脚全体)
- シーテッドロウ(背中・三角筋後部・上腕二頭筋)
- ケーブルフライ(大胸筋)
- クランチ(腹筋)
●7日目
オフ
まとめ
全身法にはジムに行く頻度が少なくて済む、フォームが上達しやすくなるなど、さまざまなメリットがあります。
一方で疲労が溜まりやすかったり、後半に行う種目は伸びにくくなる、メタボリックストレスを与えにくいなどのデメリットも。
これらを踏まえた上で、筋トレ初心者は全身法でトレーニングの習熟度を高めるのがおすすめ。
正確なフォームを身に付けて効率よく筋肉を刺激できるようになれば、成長のスピードもアップ。
さらに、トレーニングを習慣化できれば、身体の変化も目に見えて分かるようになってきます。
ぜひ、紹介したメニューなども参考にして、理想の身体を作り上げてください。
出典
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