【睡眠に良い?】ネムノキに期待できる効果効能とは?
2024年4月1日更新

監修者

睡眠健康指導士/ロジスティクス管理3級

室井優作

心と体の健康の要となる睡眠のスペシャリスト。眠りに悩みを抱える方のコンサルティングを日々行っている。プロボクサーを目指しており、運動やダイエットに関する指導も可能。おすすめの寝具はウェイトブランケット。

執筆者

薬剤師

小椋香奈

薬剤師免許を取得後、内科・整形外科・皮フ科・泌尿器科を有する医療機関の門前薬局に勤務。局内で使用する患者向け指導せんの作成に関わるなど、調剤だけでなく幅広く薬剤師業務をこなす。現在は勤務の傍らでライターとしても活動中。

ネムノキとは?

みなさんはネムノキという植物を知っていますか?

近年「ネムノキ」には体内の睡眠リズムを整える効果が期待されています。

あまり聞いたことない成分だけど効果はあるの?

睡眠以外にも何か効果があるの?

など…分からないことだらけなネムノキを詳しく見ていきましょう!

 

1.どんな栄養素?

ネムノキは東北から東南アジアまでの暖帯から亜熱帯に分布するマメ科の落葉高木。

夕方に暗くなると葉をたたんで垂れ下がり、眠っているように見えることから、日本では「合歓木(ねむのき)」と呼ばれるようになりました。夏になると淡いピンク色の特徴的な花を咲かせます。

古くは生薬として使用されていた「ネムノキ」。近年はリラックス効果や睡眠の質向上に効果があるとして、サプリメントが作られるようになりました

ネムノキの花や葉、樹皮から抽出された成分にはストレス軽減、不安感の緩和、睡眠の質の向上をサポートするなど様々な成分が含まれています。

アフリカではネムノキの原産国であることもあり、民間療法で広く使用されているようです。

 

2.体の中でどんなはたらきをする?

続いてネムノキに含まれる成分と体内での働きについてお話していきましょう。ネムノキにはフラボノイド、サポニン、アルカロイドと呼ばれる植物化学物質がふくまれています。

フラボノイドはポリフェノールの1種で、植物に含まれます。数千種類もの成分に分けられ、抗酸化作用やアンチエイジング、ストレス緩和効果があるとされている女性にも嬉しい成分です。

サポニンは水に溶かして混ぜると、石鹸のように泡立つことから天然の界面活性剤とも呼ばれます。フラボノイドと同様に強力な抗酸化作用を持ち、免疫力向上や肥満予防に効果があるとされています。

アルカロイドは春野菜を食べた時の苦味成分と言うとわかりやすいでしょう。腎機能を高め、新陳代謝を高めることで体内に溜まった老廃物や余分な水分を排泄します。
 

ネムノキに期待できる効果効能とは?

それでは、ネムノキを実際に摂取すると人間にはどのような影響や効果を発揮するのでしょうか。以下で詳しく見ていきましょう。

 

1.睡眠の質向上に役立つ可能性がある

睡眠の質悪化は生活習慣病のリスク因子であり、健康のためには良質な睡眠が不可欠です。ネムノキ抽出物にはリラックス効果があり、睡眠の質が上がるとしてサプリメントにも含まれることがあります。ネムノキが睡眠に影響を与えるのは本当なのか見ていきましょう。

ネムノキ抽出物200mg/日を被験者5名に5日間続けて摂取してもらったところ、プラセボ摂取した際と比較して5名中4名が寝付きの時間がわずかに短縮されました。また、眠りの深さがネムノキ抽出物を摂取した際に5名中4名が良好となりました。

寝付きの時間、眠りの質共に改善はみられましたが、数値にすると大きな変化は見られませんでした。
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成人の3分の1は不眠に悩んでいると言われ、歳を重ねるにつれて不眠症の割合が高くなっていきます。ネムノキ抽出だけに頼らず、他の睡眠改善サプリメント等と併用し、補助的に摂取するのが良いかもしれませんね。

 

2.午後の眠気を抑制する

普段の日常生活で、昼過ぎになると眠たくなった経験はありませんか?効率が落ちて、思うように物事が進まず何とかしたいと思っている方も多いことと思います。実はネムノキ抽出物には睡眠の質をあげるだけでなく、睡眠リズムを整え午後の眠気を抑える効果が報告されているのです。

ネムノキ抽出物200mg/日を被験者9名に10日間続けて摂取してもらったところ、9名中6名で午後の眠気が低下した事が分かりました。また詳しく見て見ると、VAS評価(視覚的アナログ評価尺度)では摂取前と比較して覚醒度・意欲・気分・集中力が優位に増加しています。また、アンケートでは被験者の朝方傾向が強くなったことが示されました。出典[1]

体内の睡眠と覚醒のサイクルを調整することで、入眠が早くなり午後の眠気が低下するとされるネムノキ抽出物。日中眠くならないように夜更かしは控え、加えてネムノキ抽出物を摂取することでさらに睡眠のリズムが整うかもしれません。

 

3.抗肥満効果をもつ可能性がある

近年ダイエットへの関心は高く、体重減少を後押しする食品がたくさん販売されています。その中でも、ネムノキ抽出物には肥満細胞に効果があると言われ、論文が発表されています。

ネムノキ葉抽出物 (AJLE) が脂肪細胞に及ぼす影響を調査した論文を見てみましょう。PPARγやC/EBPなど特定のタンパク質の働きを抑えることで脂肪細胞の増殖や貯蔵を抑え脂肪細胞を減少させます。

また、脂肪細胞を分解して燃焼し、エネルギーを生み出す「褐色脂肪細胞」を増殖させる効果があることも明らかとなりました。

さらに、ネムノキ抽出物はエネルギー産生の場となるミトコンドリアを増加させることで、よりたくさんのエネルギーを消費できるようになり、エネルギーを生み出すために脂肪細胞が燃焼されることが報告されています。
出典[2]

今回ご紹介したデータは、実際に人間で行われた実験ではなく、試験管内での実験結果です。実際に人間に効果があるのかは、現時点ではあやふやな部分があるかもしれません。

肥満は放っておくと高血糖や高血圧、脂質異常症のリスクが上がります。食生活改善や簡単な運動はもちろんのこと、それでも足りない部分はネムノキ抽出物などのサプリメントを補助的に摂取してみてはいかがでしょう。

 

4.抗うつ・抗不安に役立つ可能性がある

ネムノキ抽出物には、心身をリラックスさせ睡眠を促進する効果があるとお伝えしてきました。それに関連し、気持ちをリラックスさせることで不安やうつ症状を改善する可能性が報告されているようです。

海外の臨床現場では、経験的に抗うつ薬として使用されており、動物実験においてはネムノキ抽出物の摂取で抗うつ・抗不安作用が確認されています。出典[3]

マウスを用いて尾懸垂試験(抑うつ状態や抗うつ効果の検出に有用)を行ったところ、ネムノキ抽出物200 mg/kg摂取時に現在抗うつ薬として使用されているイミプラミン(10 mg/kg )と同等の効果を発揮しました。また、ネムノキ抽出物は5-HT1A受容体系を介して抗うつ薬様効果を発揮していることが示唆されています。出典[4]

また、複数のデータベースからネムノキ抽出物の効果について文献検索が行われました。そこから抽出された中国語と英語の論文によると、現代の薬理学的研究では、抗不眠症に加えて抗不安作用、抗うつ作用など複数の薬理学的活性があることが示唆されました。出典[5]

ネムノキ抽出物は古くから経験的に抗うつ、抗不安薬として使用されてきました。そして、動物実験では精神症状の緩和に一定の効果が報告されているため、人間でも同じような効果を発揮する可能性があります。

睡眠の質を高めたいならネムノキよりデータが豊富な素材をチェックすべき?

不眠は生活習慣、ストレス、アルコール・カフェイン摂取など様々な要因から起こります。日常生活に支障をきたすこともあり、早く睡眠の悩みから解消されたいですよね。

睡眠サプリメントとして調べるとネムノキ抽出物が含まれている商品はいくつかあります。ところが、論文のデータを見てみると軽微に睡眠の質が改善しているものの、大きな変化量はなく人間におけるデータ量も乏しいと言えます。効果から考えると、まずはネムノキを摂取しましょうとは言いにくいかもしれません。

もし今から睡眠改善サプリメントを摂取しようと考えている方は、すでにデータが豊富であるクロセチンやGABAなど他の成分が含まれるサプリメントを選んで摂取するのが良いかもしれませんね。
 

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