監修者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。
執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
きな粉ってどんな食べ物?
きな粉は炒った大豆を丸ごと粉にして食べやすくした食品です。きな粉の原料である大豆は、ほかの豆類と比較して、たんぱく質をはじめとする栄養価にやや違いがあります。
【食品100g(乾燥品)あたりの栄養価(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より)出典[1]】
大豆 | あずき | ひよこまめ | レンズまめ | |
エネルギー(kcal) | 372 | 304 | 336 | 313 |
たんぱく質(g) | 33.8 | 20.8 | 20.0 | 23.2 |
脂質(g) | 19.7 | 2.0 | 5.2 | 1.5 |
炭水化物(g) | 29.5 | 59.6 | 61.5 | 60.7 |
食物繊維(g) | 17.9 | 15.3 | 16.3 | 16.7 |
カルシウム(mg) | 180 | 70 | 100 | 57 |
マグネシウム(mg) | 220 | 130 | 140 | 100 |
このように、大豆は高たんぱく高脂質であり、かつカルシウムやマグネシウムの摂取源としても優れています。栄養価の高い大豆を手軽に摂る手段として、保存性が高くそのまま食べられるきな粉は非常に便利です。
また、きな粉には大豆すべてを使用した全粒大豆と、皮を剥いた上で製粉する脱皮大豆とがあり、栄養価が若干異なります。
【食品100gあたりの栄養価(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より)出典[1]】
きな粉(全粒大豆) | きな粉(脱皮大豆) | |
エネルギー(kcal) | 451 | 456 |
たんぱく質(g) | 35.7 | 37.5 |
脂質(g) | 25.7 | 25.1 |
炭水化物(g) | 28.5 | 29.5 |
食物繊維(g) | 18.1 | 15.3 |
このように、皮ごと使用した全粒大豆では食物繊維の量が多く、脱皮大豆では皮がない分、たんぱく質や脂質、炭水化物の含有量がわずかに高めです。
ただし、きな粉の1回あたりの摂取量は大さじ1杯、約7gのため、これらの差をそこまで気にする必要はありません。滑らかさや風味を比較して、好みのきな粉を選びましょう。
男性がきな粉に期待できる6つの効果
健康食品として知られるきな粉ですが、男性が食べることで具体的にどのような効果が得られるのでしょう。
ここからは男性がきな粉に期待できる効果について、きな粉の原料である大豆の効果をもとに解説します。
トレーニング効率UP
大豆にはたんぱく質が豊富であり、かつ体のたんぱく質を作るために必要な必須アミノ酸のバランスがよいことで知られています。
必須アミノ酸のバランスを示すアミノ酸スコアにおいて、大豆は肉や魚に匹敵する最大値の100を示しています出典[2]。たんぱく質の消化率を考慮したアミノ酸スコアにおいても、鶏卵97%に対し大豆91%であり、動物性食品とほぼ変わらない優秀さです出典[3]。
2004年にオハイオ州立大学から発表された論文では、若い男性のトレーニングにおける徐脂肪体重の増加において、乳清たんぱく質と大豆たんぱく質との間に差が生じなかったと述べられています出典[4]。
同研究ではさらに、両者のたんぱく質を摂取した際の抗酸化機能についても調べられています。乳清たんぱく質の摂取では抗酸化能力が有意に低下し、また酸化ストレスのマーカーとなるミエロベルオキシダーゼは倍近く増加していました。
一方大豆たんぱく質の摂取においては抗酸化能力の有意な低下が見られず、またミエロベルオキシダーゼにおいては僅かながら減少傾向も見られました出典[4]。
このように、大豆たんぱく質には徐脂肪体重と抗酸化能力の増加、2つの効果が確認できるようです。効率よく筋肉量を増やしたい方、筋疲労を抑えて筋肉痛を軽減したい方はに大豆製品の摂取はおすすめです。ソイプロテインの摂取に加え、ドリンクと相性のよいきな粉を取り入れてもよいかもしれません。
便秘の解消や腸内環境の改善
大豆には食物繊維や難消化性オリゴ糖などが含まれており、大豆を丸ごと粉にしたきな粉からも、同様にこれらの成分を摂取可能です。食物繊維や難消化性オリゴ糖には、腸内の善玉菌を増やす効果が期待できます。
腸内環境は善玉菌と悪玉菌のバランスで決まり、悪玉菌の増加は肥満や糖尿病、大腸がんのリスクとも関係しています出典[5]。肥満を改善し、将来の病気のリスクを下げるためにも、腸内環境への意識は非常に重要です。
腸内環境の改善は便秘の解消にも効果的であるほか、食物繊維自体が便のかさを増して腸内を刺激し、排便を促すようにも働きます。食物繊維は若い世代において不足しがちな栄養素であるため、きな粉をはじめとするさまざまな食品から摂るようにしたいものですね。
また大豆由来のたんぱく質も、腸内環境の改善に役立つ可能性があります。大豆たんぱく質の一部は小腸で分解されず大腸まで届き、短鎖脂肪酸を増やすように働くことが判明しています出典[6]。短鎖脂肪酸は腸内で善玉菌のエサとなる成分です。腸内の善玉菌を増やすため、大豆たんぱく質の摂取が役立つでしょう。
このように、大豆には食物繊維、オリゴ糖、大豆たんぱく質など、腸内環境の改善に役立つ成分が複数含まれています。普段の料理やドリンクにちょい足しできるきな粉を活用して、手軽に腸活をおこないましょう。
アンチエイジング効果
きな粉に確認されている抗酸化能力は、大豆由来のポリフェノールであるイソフラボンやサポニンなどによるものです。
活性酸素は激しいスポーツや強いストレス、紫外線による刺激で増加しますが、普段の生活においても少しずつ産生されています。加齢による皮膚や髪の変化は、活性酸素による長年のダメージによるものとも考えられています。
体内にもある程度の抗酸化機能が備わっていますが、食品から抗酸化物質を摂ることで、活性酸素の働きを抑える効果がより期待できるでしょう。
とくにイソフラボンの一種であるダイゼインは血液脳関門を通過して、脳の酸化ストレスにも作用します。脳におけるたんぱく質「タウ」のリン酸化を抑えることで、アルツハイマー型認知症のリスクを下げられる可能性も指摘されています出典[7]。
皮膚や髪、脳など体のさまざまな老化や、老化に関連した疾患の予防のため、きな粉が有効に働くかもしれません。若々しく元気な体を維持したい方は、ぜひきな粉をはじめとした大豆製品を積極的に取り入れてみましょう。
生活習慣病の防止
大豆にはイソフラボンやサポニン、食物繊維など、生活習慣病のリスクを下げるように働く成分が多数含まれています。肥満はもちろん、高血圧、高血糖、脂質異常症などを防ぐため、きな粉をはじめとした大豆製品が役立つでしょう。
大豆および大豆成分の摂取による、血圧、血糖値、血中脂質について調査した論文を確認してみましょう。
まず血圧については、2011年に中国の東州大学から発表された論文により、大豆製品の摂取が多いほど血圧が下がるという逆相関の関係が示されました。
また複数の論文を分析した結果、大豆たんぱく質の摂取により収縮期血圧が平均2.21mmHg、拡張期血圧が約1.44mmHg低下したとの報告も得られています出典[8]。
血糖値への影響は、2008年に韓国の漢陽大学が発表した論文で示されています。糖尿病患者が通常の糖尿病食を4週間続けた場合の空腹時血糖の低下は12.2mg/dLでしたが、大豆食を4週間続けた場合では57.3mg/dLもの減少が確認できました。
食後2時間後の血糖値においては糖尿病食で14.3mg/dLの低下に対し、大豆食では99.9mg/dLとより効果が出ていることがわかるでしょう出典[9]。
同論文にて血中脂質への影響も確認されています。大豆食の摂取により中性脂肪が167mg/dLから145.5mg/dLに減少し、善玉のHDLコレステロールは35.3mg/dLから39.0mg/dLへと増加の傾向が見られました出典[9]。
高血圧、高血糖、脂質異常は動脈硬化を進展させて生活習慣病のリスクを高めるため、若いうちからの予防が重要です。大豆製品を摂取する習慣を付けて、将来の健康リスクを下げましょう。
発がんリスクの低減
大豆由来のポリフェノールのうち、サポニンやイソフラボンに強い抗がん作用が確認されています。
イソフラボンは閉経後の女性における乳がん発症のリスクを減らす効果が確認されていますが出典[10]、男性においては前立腺がんの原因となる過剰な男性ホルモンを減らす効果に注目すべきでしょう。
男性ホルモンの過剰による、前立腺がんのようなアンドロゲン依存性疾患を治療するため「5α-リダクターゼ阻害剤」が一般に用いられます。イソフラボンは5α-リダクターゼに似た効果を持ち、過剰な男性ホルモンによる影響を抑えるように働くことが確認されています出典[11]。
また、抗酸化物質であるサポニンには、DNA損傷を防ぐ働きも期待できます。
2002年に韓国の淑明女子大学から発表された研究では、大豆サポニンによる細胞のDNA異常の抑制効果が調べられました。サポニンで処理した細胞のDNA損傷阻害割合は50.1%であり、DNA保護効果のあるL-アスコルビン酸の38.4%、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)の32.6%よりも高い阻害効果を示しています出典[12]。
大豆サポニンには、発がんの開始段階をブロックして発がんを予防する効果が期待できるかもしれません。抗酸化物質のなかでも発がんを抑制する作用がとくに強いサポニンを、きな粉のような大豆製品から効率よく摂取しましょう。
肌荒れや薄毛の防止
イソフラボンの「5α-リダクターゼ」を阻害する効果は、肌荒れや薄毛の防止にも役立つ可能性があります。
男性系脱毛症やニキビなどの原因と考えられる物質は、テストステロンが5α-リダクターゼにより変化した「ジヒドロテストステロン(DHT)」です。過剰な男性ホルモンの一部が、5α-リダクターゼによるDHTへの変換を受けることで肌荒れや薄毛のリスクを高めると考えられています。
脱毛症の治療において、5α-リダクターゼ阻害剤による症状の改善も報告されています出典[13]。一方で5α-リダクターゼ阻害剤の使用では、うつ症状や性機能障害などの副作用を生じる可能性があるため注意が必要です出典[14]。
イソフラボンをはじめとする植物由来の機能性成分は、5α-リダクターゼ阻害作用を持ちながら副作用や毒性が少ないとの特徴で注目を集めています出典[11]。
テストステロンは男性のやる気や活力、性機能を高めるために重要なホルモンですが、DHTの過剰な生成は避けたいものです。ニキビや脱毛、薄毛などのリスクを下げるため、5α-リダクターゼを阻害できる成分をきな粉から手軽に摂取しましょう。
きな粉を食べる際のポイント
大豆を丸ごと食べられるきな粉は、大豆に含まれるさまざまな栄養素や機能性成分を手軽に摂取できる食品です。
ではきな粉を食べる際には、どのような点に注意すればよいのでしょう。
1日大さじ1~2杯を目安に
きな粉の摂取量は1日あたり大さじ1~2杯(7~14g)程度を目安にしましょう。
きな粉大さじ1杯あたりのカロリーは約32kcalであり、それほど高カロリーではありません。しかし1日に大さじ5杯も6杯も食べていると、食事やドリンクのカロリーを増やしすぎるため注意すべきです。
またきな粉は食物繊維のうち、不溶性食物繊維を豊富に含みます。不溶性食物繊維を摂りすぎると、腸の中で食物繊維が過剰に膨らみ、腸内を圧迫して便秘や腹痛の原因になることもあります。
健康効果が期待できるとされる栄養素であっても、やはり摂りすぎは禁物です。1日あたりの摂取量は増やしすぎず、少量を毎日継続して摂ることを心掛けましょう。
ドリンクやヨーグルトへのちょい足しがおすすめ
きな粉を手軽に食べるため、ドリンクやヨーグルトへ加える方法がおすすめです。
きな粉は水に溶けづらく、一気に加えるとダマになり飲みづらくなります。また野菜ジュースや青汁への添加はきな粉の粉感が強く出るため、サラサラとした飲み心地を損なうかもしれません。
牛乳や豆乳のような脂質を含む飲料であれば、きな粉の口当たりを感じにくく、飲みやすいでしょう。少量ずつ混ぜながら加えることで、ダマになりにくくなります。
粉っぽさを気にせず食べる方法としてはヨーグルトへの添加もおすすめです。はちみつを加えて混ぜるとより食べやすくなるでしょう。
朝の摂取で1日を快適に
きな粉を摂るタイミングに悩んでいる場合は、ぜひ朝の食事に取り入れてみましょう。
朝に食物繊維が豊富なきな粉を食べることで、腸を動かす効果がより強まり、便秘を解消しやすくなるでしょう。また大豆たんぱく質による善玉菌を増やす効果は、朝の摂取でより高まることが判明しているため、腸内環境の改善にも役立ちます出典[6]。
またきな粉を朝に食べる意識を活用して、毎日朝食を摂る習慣を付けることも重要です。朝食を抜くと、昼食の血糖値スパイクが起こりやすくなり出典[15]、血管への負担や糖尿病のリスクも高まるでしょう。
食物繊維が豊富な朝食は、朝食に加え、昼食の血糖値の上昇を抑えるようにも働きます。ヨーグルトや牛乳にきな粉を加えて、毎朝のきな粉生活を習慣化してみましょう。
きな粉の食べ過ぎでテストステロンが減る?
きな粉のイソフラボンにはDHTの生成を抑制する効果があります。しかしDHTも男性ホルモンの一部であるため、テストステロンが減少しないか不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
確かに過剰な大豆製品の摂取により、テストステロンが減少したとの論文は少数ですが存在します。テストステロンとイソフラボンの関係について調査した41の研究を分析した論文では、イソフラボンを100mg以上摂取したものは8件確認され、うち1件では総テストステロンが約5%、1件では遊離テストステロンが約6%減少していました出典[16]。
きな粉を含めた大豆製品の摂りすぎにより、テストステロン量や活力、性機能などに影響が出る可能性は完全には否定できません。テストステロンの量を維持するためにも、きな粉の食べ過ぎは控えた方がよいでしょう。
豆腐や味噌などに含まれるイソフラボンアグリゴン量は次のように示されています。
【大豆製品に含まれる大豆イソフラボンアグリゴン量の平均値】出典[17]
大豆イソフラボン量(mg) | |
大豆(100g) | 140.4 |
木綿豆腐(150g) | 34.5 |
絹ごし豆腐(150g) | 31.5 |
充てん豆腐(150g) | 31.5 |
味噌(18g) | 7.4 |
大豆100gあたりの含有量を参考にすると、大豆を丸ごと粉にしたきな粉大さじ1~2杯(7~14g)の大豆イソフラボンアグリゴン量は約9.8~19.6mgと考えられるでしょう。
豆腐や納豆、味噌など、ほかの大豆製品を摂取する機会が多い場合は、きな粉の摂りすぎにより注意すべきです。テストステロンへの影響が気になる方は、大豆製品によるイソフラボンアグリゴン量の合計摂取量が100mgを超えないよう調整してみましょう。
きな粉を賢く取り入れて若々しい身体を手に入れよう!
大豆を丸ごと粉にしたきな粉からは、良質なたんぱく質や脂質、サポニンにイソフラボンなど、さまざまな栄養素や機能性成分を摂取できます。
女性のみならず男性の摂取においても、トレーニングの効率を高めたり、肌荒れや薄毛を防止したり、将来の生活習慣病のリスクを減らしたりする効果が期待できるでしょう。
きな粉は食物繊維が多い食品であるため、便秘を防ぐためにも1日の摂取量は大さじ1~2杯に留めるべきです。またテストステロンの減少リスクが気になる場合には、ほかの大豆製品の量を考慮して食べ過ぎないよう注意しましょう。
きな粉は保存性も高く、ドリンクやヨーグルトに加えて手軽に食べられる食品です。ぜひ毎日の食事にきな粉を取り入れて、元気で若々しい体づくりに役立てましょう。
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