執筆者
管理栄養士/分子栄養学カウンセラー
岡かな
大阪市立大学食品栄養科、大学院修士課程修了。医療機関に勤務し、糖尿病や高血圧など生活習慣病の栄養管理に取り組む。その後はヘルスケア事業に移り、年間500人以上のダイエットをサポートする。現在はダイエットサポートの他、特定保健指導や健康に関わる分野の執筆も行っている。誤った情報で10キロ以上リバウンドした自分自身の経験から、科学的根拠に基づく正しい情報の発信を心掛けている。
ナッツってどんな食べ物?
小腹が空いたときのおやつや飲酒時のおつまみとして人気のナッツ。
近年では、健康志向やダイエット目的に食べる人も多いのではないでしょうか?
まずはナッツの特徴に注目し、男性がナッツを食べるメリットや効果を確認してみましょう。
栄養価の高い種実類
そもそもナッツとは、おおよそ「種実類」と理解されており、かたい皮や殻に包まれた食用の果実・種子のことを言います。
くるみ、アーモンド、ピスタチオ、カシューナッツ、ブラジルナッツなどが有名ですね。
ナッツに含まれている栄養素のうち、質量の50%以上を占めるのが脂質。
例えば、くるみ(いり)100g中の脂質の量は68.8g、アーモンド(いり/無塩)は51.8g、ピスタチオ(いり/味付け)は56.1g、ピーナッツ(落花生/小粒種/いり)は49.4g、ブラジルナッツ(フライ/味付け)は69.1gの脂質を含んでいます出典[1]。
ちなみに、ナッツに含まれる脂質は、良質な脂質である不飽和脂肪酸が多いことが特徴。
もちろん食べ過ぎは禁物ですが、適量を摂取することで様々な健康効果が期待できるんです。
さらに、ナッツはたんぱく質も豊富である上、ビタミンEやビタミンB群、マグネシウム、セレンなどのミネラル、食物繊維の供給源としても優秀です。
主なナッツの種類
ナッツと言っても、種類によって栄養素の含有量が異なります。
ここでは、ナッツの種類と含まれる栄養素の特徴をまとめました。
ナッツの種類 | 特 徴 |
くるみ | ナッツの中でも高脂質、n‐3系脂肪酸が豊富 |
アーモンド | ビタミンEや食物繊維の供給源として優秀 |
ピスタチオ | ナッツ由来の脂質やミネラルに加え、ポリフェノールも豊富 |
落花生(ピーナッツ) | 安価で入手しやすい、薄皮にはポリフェノールが豊富 |
ブラジルナッツ | セレン含有量が群を抜いて高い |
ナッツの中でも、とくに脂質の含有量が多いのがくるみ。
くるみは、n‐3系脂肪酸が多いことにより、血中脂質の改善や炎症の抑制効果などが期待できます。
また、アーモンドは抗酸化作用の強いビタミンEや食物繊維が豊富です。
アーモンドは栄養豊富なだけでなく、噛み応えがあって美味しく、手に入りやすい面でも親しみのあるナッツでしょう。
そして、ビタミンミネラルに加えてポリフェノールが豊富なナッツといえば、ピスタチオ。
ピスタチオの鮮やかな緑色と薄皮には、カロテノイドやフラボノイドなど多くの生理活性物質が確認されています。
ちなみに、ピーナッツの茶色の薄皮にも赤ワインの成分として有名なポリフェノールのレスベラトロールが豊富に含まれているんですよ。
日本でもメジャーになりつつあるブラジルナッツは、細胞の酸化を予防するミネラルの一種、セレンが他のナッツよりも多く含まれています。
男性に期待できるナッツの効果8選
このように、ナッツは種類によって含まれる栄養素に特徴があることがわかりました。
ここからは、男性がナッツを食べることで得られるメリットを学術的視点から解説します。
1.アンチエイジング
アンチエイジングとは「抗老化」「抗加齢」のことで、近年注目を浴びていますよね。
じつは、ナッツはアンチエイジングにぴったりの食材。
ナッツに含まれるビタミンEやセレンには抗酸化作用があり、酸化ストレスから細胞を保護することで病気や老化のリスクを下げることが期待できるんです。
実際に、ビタミンEとセレンの摂取と皮膚や髪の健康についての研究をまとめた報告では、ビタミンEとセレンを摂取することで過酸化脂質を除去し、皮膚や髪の老化防止に効果的であると結論付けられました出典[2]。
さらに、ピスタチオに豊富に含まれるルテインやゼアキサンチンも疾病予防に効果的。
ルテインやゼアキサンチンは、抗酸化作用のあるカロテノイドの一種です。
人間の体内では目の黄斑部に存在しているため、黄斑変性症や白内障の予防に対する効果が期待されているんです。
1992~1994年にオーストラリアで3,654人の対象者に対して、食事中のルテインとゼアキサンチンの摂取量と加齢黄斑変性症の発症率が調査されました。
その結果、食事によるルテインとゼアキサンチンの摂取量が多いほど、長期発症型の加齢黄斑変性症の発症リスクが低下することがわかったんです出典[3]。
このように、ナッツには抗酸化作用が強いビタミンEやセレン、ルテイン、ゼアキサンチンが豊富でアンチエイジングにうってつけなんですね。
過剰な活動や強いストレスにより酸化ストレスが増えるため、ナッツは忙しい現代人の味方になってくれそうです。
2.テストステロンの増大
テストステロンは男性ホルモンの代表格であり、男性機能、筋肉の発達、メンタル面にも関わる重要なホルモンであることは知っている人も多いでしょう。
ナッツには、テストステロンを増やす効果も期待できるんです。
テストステロン増大の肝となる栄養素が、亜鉛、セレン、マグネシウム。
まず、亜鉛やセレンはテストステロンの分泌を促すホルモン「黄体形成ホルモン(LH)」の合成をサポートする働きが示されています。
実際に、亜鉛が不足するとテストステロンが低下したり出典[4]、不妊男性がセレンを摂取することでテストステロンやLHの血中濃度に改善が見られたりする論文が複数存在します出典[5]出典[6]。
また、マグネシウムについても、いくつかの研究でテストステロン濃度との関係が報告されているんです。
若い健康な男性に4週間の持久力トレーニングプログラムと組み合わせてマグネシウムを補給すると、安静時と運動後に、遊離および総テストステロンレベルが増加することが示されました出典[7]。
詳細なメカニズムは明らかになっていませんが、マグネシウムの抗酸化作用がテストステロンを保護するように働くのではないかとされています。
さらに、ナッツに豊富に含まれる食物繊維もテストステロン増加に関与していることをご存知でしょうか?
食物繊維と言えば、食事で摂取することで血糖値の急上昇を抑える効果がありますよね。
じつは、血糖値の急上昇や急降下(血糖値スパイク)は、酸化ストレスを発生させテストステロン濃度にも影響を及ぼすんです。
実際に、19~74歳の74人の男性に対し、75gの経口ブドウ糖負荷試験を行いテストステロン濃度を測定した結果、血糖値スパイクによりテストステロンの濃度が平均25%低下したことがわかったんです出典[8]。
食物繊維が豊富なナッツを摂取し血糖値スパイクを防ぐことも、テストステロンの維持増大にとって重要であると言えますね。
3.運動効率UP
ナッツには脂質が多いことを解説しましたが、じつは、たんぱく質もまた豊富に含まれているのです。
【食品100gあたりの栄養素(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より)出典[1]】
エネルギー(kcal) | たんぱく質(g) | |
くるみ(いり) | 713 | 14.6 |
アーモンド(いり/無塩) | 608 | 20.3 |
ピスタチオ(いり/味付け) | 617 | 17.4 |
落花生(小粒種/いり) | 607 | 17.4 |
ブラジルナッツ(フライ/味付け) | 703 | 14.9 |
たとえば、落花生(ピーナッツ)には100gあたり26gものたんぱく質が含まれているから驚きです。
もちろん、ナッツを100gもとれば脂質やカロリーの摂り過ぎになりますが、間食に食べることで、不足しがちなたんぱく質が補えるでしょう。
とくに筋トレなどの運動習慣がある人は、たんぱく質の不足が運動効率低下に繋がるため、日々の生活にナッツを取り入れることがおすすめです。
また、抗酸化物質や抗炎症作用のある成分は、運動後の活性酸素の発生を抑え、筋肉痛を軽減したり運動パフォーマンスを上げたりすることも示されています。
例えば、ナッツに豊富なマグネシウムも抗酸化物質のひとつ。
マグネシウムの抗酸化作用により、運動後の疲労を軽減することが示されています出典[9]。
抗炎症作用で言えば、ナッツに豊富に含まれるn-3系脂肪酸も忘れてはいけません。
n-3系脂肪酸の摂取が運動による筋痛にどのような影響を及ぼすかを調査した10件の研究をまとめた結果では、n-3系脂肪酸の補給により、筋肉痛や筋肉疲労の指標となるクレアチニンキナーゼや乳酸デヒドロゲナーゼの量が低下したことがわかりました出典[10]。
ナッツに豊富に含まれるマグネシウムやn-3系脂肪酸は、運動による筋痛を予防することで運動効率を上げることが期待できますね。
さらに、ナッツに豊富に含まれるビタミンB群も運動効率向上に必要不可欠な栄養素。
ビタミンB群はエネルギー代謝に関わっているため、不足するとエネルギー代謝が滞り疲労を感じてしまうんです。
実際に、ビタミンB群の摂取によりエネルギー代謝を効率化することで、疲労回復に役立つことも多くの研究で示されています出典[11]出典[12]。
運動習慣がある人や運動効率を上げたい人は、間食にナッツの摂取はいかがでしょうか?
4.高血圧予防
血圧が気になる人にもおすすめなのがナッツ。
なぜなら、ナッツには血圧を下げる働きのあるカリウムが豊富だからです。
カリウムは、体内で過剰になった塩分を汗や尿として排出することで血圧を正常に保つ作用があり、実際にナッツの摂取が高血圧を改善する効果が示されています。
1958~2013年の間に実施された、ナッツの摂取量と血圧に関する21件の研究をまとめた報告では、ミックスナッツの摂取により血圧が低下することが結論付けられました出典[13]。
さらにこの研究では、ナッツの中でもピスタチオによる血圧低下効果が一番顕著であったこともわかっているんです出典[13]。
血圧が気になる人は、ナッツの中でもピスタチオを選んでみてくださいね。
5.血中脂質の改善
高血圧と並んで代表的な生活習慣病と言えば、脂質異常症。
ナッツは、中性脂肪やコレステロールなど血中脂質の増加をも予防する可能性が示されているんです。
肝になるのが、ナッツに含まれる脂肪酸の代表格であるn-3系脂肪酸。
ナッツの摂取と血中脂質の関係を調べた19件の研究をまとめた報告では、ナッツを豊富に含む食事はそうでない食事と比較して、総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪の低下と関連していることがわかりました出典[14]。
また、コレステロールの低下作用はナッツの種類には関係ない出典[14]ことが示されているため、コレステロールが気になっている人は、種類に関わらずナッツを日常的に適量摂取できると良いですね。
6.食後高血糖の防止
高血糖とは血液中にブドウ糖が増えた状態を言い、高血糖が続くと糖尿病に進展してしまう可能性があります。
健診で高血糖を指摘された人もいるかもしれませんね。
ナッツは食物繊維が豊富であることから、食後高血糖を予防する効果が期待できるんです。
食物繊維は腸の中で糖質を包み込みながら移動するため、糖質の吸収速度が遅くなり、食後の急激な高血糖を防ぐことができるんです。
実際に、糖尿病患者を含む24人の参加者に対し、炭水化物量50gを含む白パンと同時に30、60、90gのミックスナッツを摂取してもらい、その後の血糖値を測定した研究が行われました。
その結果、白パンにナッツを加えると、食事の血糖反応がミックスナッツ30、60、90gの用量で約11%、30%、54%減少したことが示されました出典[15]。
高血糖を指摘された人や食後血糖値が気になる人は、食事と一緒にナッツを食べてみてはいかがでしょうか?
7.血流促進
ナッツに含まれるビタミンEは抗酸化作用がありアンチエイジングに効果があることを解説しましたが、さらに動脈硬化の改善効果も示されています。
複数の研究では、アテローム性動脈硬化の発生原因となるLDLコレステロールの酸化を、ビタミンEが阻害することが観察されているんです出典[16]。
実際に、36名の健康な男性を対象とした研究によると、ビタミンEを十分に摂取したグループは、プラセボグループに比べて動脈硬化の危険因子と考えられている「大動脈の収縮期血圧」が大幅に減少したことがわかりました出典[17]。
つまり、ビタミンEの摂取によって血管へのダメージが軽減されたと言えますね。
ただし、ビタミンEを十分に摂取しても心血管系疾患を予防したり、疾患率や死亡率を低下させたりすることはできないという結果もあります出典[18]。
必ずしも、動脈硬化が原因で起こる心血管疾患をビタミンEで予防できるとは言い切れませんが、血管に良い影響を与える可能性は十分に考えられそうです。
8.肥満の改善
ナッツは「脂質が多くて太りそう」というイメージがあるかもしれませんが、じつはナッツの摂取で肥満の改善ができる可能性があるんです。
なぜなら、ナッツに豊富なn-3系脂肪酸には食欲を抑える効果が確認されており、適量の摂取により満腹感が増加し、全体的な摂取カロリーが抑えられるから。
実際に、n-3系脂肪酸が豊富な食事を摂ることで、食欲を増進させる「グレリン」というホルモンの分泌が抑制され、逆に満足感を生じさせる「コレシストキニン(CCK)」という消化管ホルモンの分泌が増加することが分かっています出典[19]。
また、食後高血糖を予防することも肥満予防には必要不可欠ですよね。
血糖値が急上昇するとインスリンの大量分泌が起こり、体脂肪が合成されやすくなってしまうことは、多くの人が知っているかもしれません。
ナッツに豊富な食物繊維は、糖質の吸収速度をゆっくりにすることで食後高血糖を防ぐ役割があります。
カロリーだけを見ると太りそうなナッツですが、俯瞰的に見るとダイエットに効果的と言えるでしょう。
ナッツの効果的な食べ方とは?
このように、ナッツに含まれる成分には、多様な健康効果が期待できることが分かりました。
しかし、ナッツの効果をより発揮するには、食べる量や選び方に工夫が必要です。
ここからは、ナッツを食べる際のポイントについて解説していきましょう。
1日10~30gを目安に毎日継続
ナッツは100gあたり600kcal程度と高カロリーであり、また全体の約6~7割が脂質から構成されている高脂質食品です。
たんぱく質やn-3系脂肪酸、抗酸化物質など健康効果の高い成分が豊富ではありますが、もちろん食べ過ぎれば余ったエネルギーは脂肪として蓄えられてしまうため、過剰摂取には十分注意しましょう。
ナッツの1日あたりの摂取目安量として、一般に1日30g以下が適切とされています出典[20]。
30gであれば全体のカロリーは200kcal程度であり、間食のカロリーとしても適しています。
アーモンドやピーナッツ1粒を1gと考えると「1日30粒まで」と考えられそうです。
ちなみに、ブラジルナッツは1粒あたり70μg程度のセレンを含むため、1日1〜2粒で十分健康効果を発揮できるでしょう。
つい食べ過ぎてしまうことのないよう、粒で1日の量を数えておくのもよい方法ですね。
期待する効果でタイミングと種類を選ぼう
ナッツを食べるときは、期待する効果でタイミングと種類を選ぶようにしましょう。
ダイエット目的の場合は、食物繊維やn‐3系脂肪酸の多いくるみを間食として食べるのがおすすめ。
食物繊維の摂取によって血糖値の上昇を抑えられることに加え、くるみに豊富なn‐3系脂肪酸には食欲を抑える効果も期待できるからです。
テストステロンの増大を期待するなら、ブラジルナッツ1粒の摂取を習慣にしましょう。
ブラジルナッツはセレンの含有量がダントツで高く、1粒の摂取で十分なセレンを摂取できます。
そして、運動効率アップを目指すなら、運動後に食べるのはいかがでしょうか。
たんぱく質やマグネシウム、ビタミンB群などを補うことができ、筋痛予防や運動効率向上に効果的です。
また、生活習慣病予防には食前もしくは朝食時にナッツを摂取すると、食後高血糖を抑えやすいでしょう。
とくに高血圧が気になる人は、ピスタチオを選んでくださいね。
なお、特定の目的に限定せず広く健康効果を得たい人は、ミックスナッツ30g/日の摂取を習慣にするのがおすすめですよ。
無塩かつ素揚げのものがおすすめ
健康志向の高まりにより、どこでもナッツが販売されており、味や種類も増えていますよね。
そこで注意が必要なのが、味がついていておいしいナッツ。
塩がついているナッツは余分な塩分を摂取してしまう上、しょっぱい味付けで食欲が刺激され、食べ過ぎてしまう可能性があります。
フライされたナッツや糖分がまぶされたナッツも、余計に脂質や糖質を摂取してしまうことになります。
毎日のナッツ摂取には、無塩かつ素揚げのものを選ぶとよいでしょう。
適度なナッツでいつまでも若々しく!
ナッツにはn‐3系脂肪酸をはじめ、たんぱく質、亜鉛やマグネシウムなどのミネラル、抗酸化作用の強いビタミンEやポリフェノール、そして食物繊維など、あらゆる栄養素や機能性成分が含まれています。
毎日の生活に取り入れることでアンチエイジングや生活習慣病予防に加え、男性に嬉しいテストステロンの増大や運動効率向上、血流改善などの様々なメリットが得られるでしょう。
ただし高カロリーかつ高脂質であるため、食べ過ぎは禁物です。
少量を継続摂取して、元気で若々しい体づくりに役立てましょう。
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