プロテインは精力増強に役立つ?効果と飲み方について解説
2024年7月2日更新

監修者

NP+編集長/NESTA-PFT

大森 新

筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

プロテインは性機能向上に役立つ?

筋肉量を増やしたり体を引き締めたりしたい方において、たんぱく質を効率的に補給できるプロテインは非常に重宝します。

一方で、プロテインの「たくましくなる」というイメージから、性機能や性欲を高める「精力剤」としての役割を期待する方もいるようです。

残念ながら、たんぱく質自体に精力剤としての機能はありません。しかしプロテインの活用次第では性機能や性欲の向上に役立つことも考えられるでしょう。

まずはプロテインと性機能や性欲との関係について解説します。

たんぱく質の不足は男性ホルモンを減らす

たんぱく質が不足しすぎると、テストステロンの減少リスクが高まります

テストステロンは男性ホルモンの一種であり、性機能や性欲の向上に加え、やる気や活力、筋肉の合成効率を高めたりする働きがあります。40歳を過ぎると急速に減少するホルモンでもあるため、年齢を重ねた方ほど、テストステロンの減少に注意したいものですよね。

たんぱく質不足によるテストステロンの減少は、複数の動物実験で確認されています。

たとえば2020年にオーストラリアのニューイングランド大学から発表された論文では、8件の研究の分析により、低たんぱく質食は通常量のたんぱく質食と比較して、血清テストステロンが0.37ng/mL低下したと報告されています出典[1]

さらに2018年にブラジルのマリンガ州立大学から発表された論文では、カロリーとたんぱく質の制限により、60日齢のラットでは血清テストステロン濃度が10.8%、120日齢のラットでは16.3%減少していました出典[2]

たんぱく質制限によるテストステロンの減少は、年齢を重ねた方ほど現れやすい可能性も考えられるでしょう。

肉や魚を苦手としている方、ダイエットを続けている方ではたんぱく質の不足が起こりがち。テストステロンの減少を防ぐ方法として、保存性が高く手軽に飲めるプロテインは役立つかもしれません。


運動による精力増強効果をさらに高める

プロテインを飲んでいる人は性欲や性機能が強い、との印象を持たれる方も多いかもしれません。しかし性欲や性機能に関係するプラスの効果は、主に運動による恩恵である点を覚えておきましょう。

プロテインと運動との組み合わせにおいては、次のような効果が期待できます。

  • 運動のパフォーマンスが高まりテストステロン増大効果UP
  • 血流の改善効果が高まり勃起力UP
  • 筋肉量を増やしてEDのリスクを減らす

プロテインで十分な量のたんぱく質を補給できれば、より効率よく筋肉量を増やせます。運動にはテストステロンを高める効果があるため、性欲や性機能の向上にも役立つでしょう。

また運動の効率化により、血流を改善する効果も期待できます。

たとえば2021年に台湾の台北医学大学から発表された論文では、持久力トレーニングとたんぱく質補給を組み合わせた場合、心肺機能のバロメーターとなる最大酸素摂取量(VO2max)が、持久力トレーニングのみの場合と比較して26.4%も増加したとの結果が得られています出典[3]

心肺機能は心臓から血液を送り出す力に、筋肉は手足から血液を戻すポンプ機能に関わります。どちらも運動とプロテインの組み合わせにより増大し、勃起不全(ED)の改善に役立つ可能性が指摘されているのです出典[4]

とくに中~高強度の有酸素運動がEDの改善に効果的であることが、複数の研究により述べられています出典[5]出典[6]。プロテインを合わせて摂取し、性欲や性機能の向上に役立てましょう。

 

肥満を改善して勃起力や性欲UP

プロテインの補給により肥満を改善しやすくなり、テストステロンの減少を防げる可能性があります。

肥満にともない増加する脂肪組織からは炎症性サイトカインが分泌され、テストステロンを減らすように働くことがわかっています。

さらに炎症状態にある脂肪組織からは、テストステロンを女性ホルモンのエストラジオールに変換する「アロマターゼ」が発現するため、テストステロンはさらに失われやすくなるでしょう出典[7]

プロテインによる減量効果として次の2点が考えられます。

  • 運動効率が高まり、エネルギー消費量や筋肉量が増えやすくなる
  • たんぱく質による食欲抑制効果で摂取カロリーが減少する

運動パフォーマンスの向上によりエネルギー消費量が増えるほか、筋肉量を増やして基礎代謝を高め、痩せやすくなる効果が期待できるでしょう。

また、たんぱく質の摂取は食欲を増加させるホルモン「グレリン」の分泌量を減らし、食欲を抑制させる「コレシストキニン」や「GLP-1」を増やすこともわかっています出典[8]

15件の減量試験を分析した論文では、食事療法による9.8%の体重減少で平均2.87 nmol/L、外科的治療による32%の減量で平均8.73 nmol/Lのテストステロンの増加が確認されています出典[7]

運動や食事制限による減量を効率化させるため、プロテインの活用が役立つかもしれません。

合わせて読みたい:ムラムラ大爆発!男性の性欲を高める方法15選

 

精力増強に役立つプロテインの飲み方とは?

このように、プロテインは運動や減量のサポートとして用いることで、性機能や性欲を高める効果が期待できるようです。

性機能や性欲の向上のため、プロテインの使用を検討している方もいるのではないでしょうか。

ただしプロテインの使用においてはいくつか注意点があります。ここからはプロテインの効果を発揮するためのコツを5つ解説します。

運動と組み合わせて飲む

テストステロンの増加や勃起力の改善をはかりたい場合には、運動と組み合わせてプロテインを飲むようにしましょう

プロテインのみの摂取では筋肉量が十分に増えません。またたんぱく質にも1gあたり4kcalのカロリーがあるため、運動により消費しきれない分はカロリーオーバーを招き、太るリスクを高める場合もあります。

運動直後には吸収性に優れたホエイプロテインの摂取が、筋肉痛の緩和には夜間のカゼインプロテインの摂取がおすすめです。タイミングにあわせてプロテインを取り入れ、運動による効果をより高めましょう。

 

不足を防ぐ場合には1日65g以上を目安に

ラットを用いた動物実験により、たんぱく質の不足でテストステロンが減少することがわかりました。では具体的に、どの程度の不足でテストステロンへの影響が生じるのでしょう。

ラットを用いた研究の分析では、1日の摂取カロリーのうちたんぱく質の占める割合が2~10%に制限された場合に、テストステロンの減少が見られました。この2~10%の摂取をヒトの場合に置き換えてみましょう。

たとえば1日2200kcal摂取する男性の場合、たんぱく質で摂るカロリーが44~220kcal、すなわち11~55gのたんぱく質摂取でテストステロンが減少する可能性があると考えられます。

日本人の食事摂取基準(2020年版)において、15~64歳の男性のたんぱく質推奨量が65gと設定されていることからも、11~55gの摂取では不足する可能性が高いことがわかるでしょう。

1日のたんぱく質量を65gと考えた場合、1食あたり20g以上のたんぱく質が必要です。食欲のない朝や、十分な食事を摂る時間的余裕のない昼のタイミングで、不足を補える量のプロテインを取り入れてみましょう。

 

1日の総たんぱく質が3.4g/kgを超えない範囲で調整

たんぱく質の不足はテストステロンを減少させるリスクがありますが、摂りすぎもまたテストステロンに悪影響を及ぼす可能性があります。

2023年、イギリスのウースター大学からの論文では、1日に3.4g/kgより多い摂取を続けた場合、テストステロンが減少したとの結果が得られています出典[9]

テストステロンの合成を抑えるホルモン「コルチゾール」や、たんぱく質の代謝物であり酸化ストレスとして作用する「アンモニア」の増加が、テストステロンに悪影響をもたらしていると考えられているのです。

実際、2022年にイギリスのウスター大学から発表された論文では、摂取カロリー全体に占めるたんぱく質の割合が35%を超えるような極端な高たんぱく質食を3週間摂取すると、コルチゾールが大幅に増加し、テストステロンが約5.23nmol/Lまで低下することが示されています出典[10]

プロテインは増やせば増やすほどよいというものではなく、摂りすぎにより逆効果となる点を覚えておきましょう。

なお、1日に1.25~3.4g/kgのたんぱく質摂取ではテストステロンの減少は見られませんでした出典[9]。筋肉量の増加やダイエットのために積極的にプロテインを取り入れたい場合には、この範囲に収まるように量を調整するとよいでしょう。

 

砂糖や人工甘味料の少ないものを

プロテインには砂糖や人工甘味料が用いられている場合があります。甘く味付けされたプロテインは飲みやすく、運動後のエネルギーチャージにも役立ちます。

しかし運動を伴わない場合のプロテイン補給では、糖分のカロリーにより太るリスクが増す可能性もあるため注意が必要です。

加えて砂糖は血糖値を急激に上げ、酸化ストレスを増やすように働きます。テストステロンの合成場所である精巣は酸化ストレスに非常に弱い組織。

プロテインで精巣がダメージを受けることのないよう、血糖値を急激に上げる砂糖が多いものは避けましょう

また、カロリーを増やさず血糖値を上げない、アスパルテームやアセスルファムKなどの人工甘味料の過度な使用にも注意すべきです。

ラットを用いた動物実験では、アスパルテームの摂取によるテストステロン濃度の低下が、低用量では約4%、中用量では約10%、高容量では約26%に及んだと報告されています。さらに精子への影響も確認されており、低用量でも精子数が9%、運動性が約3%減少したとの結果が得られました出典[11]

また、長きにわたり比較的安全とされてきたエリスリトールにおいても、ヒトにおいて血栓を増やすように働き、心血管疾患のリスクを高めるとの論文が2023年に発表されています出典[12]

血流の低下や生殖機能へのダメージを防ぐため、人工甘味料への頼りすぎにも気を付けましょう。

 

ソイプロテインは1日1杯まで

安価で摂取を継続しやすいソイプロテインですが、男性の過剰摂取には注意が必要。大豆に含まれるイソフラボンの摂取量が増えると、テストステロンが減少する可能性があるのです

たとえば2003年にイギリスのウェールズ大学病院から発表された論文では、男性20名が大豆粉入りスコーン(イソフラボン120mg)を6週間摂取したところ、テストステロン濃度が平均約5.7%低下したと報告されています出典[13]

また、テストステロンとイソフラボンの関係について調査した論文では、イソフラボンを1日100mg以上摂取した8件の研究のうち、6件では減少が見られなかったものの、1件では総テストステロンが約5%、もう1件では遊離テストステロンが約6%、それぞれ減少していました出典[14]

イソフラボンの摂取が必ずしもテストステロンを下げるとは言い切れない部分があるものの、可能性があるソイプロテインの摂りすぎは控えた方がよさそうです。

同論文では、大豆食品を習慣的に摂るアジア人において、75mg/日までの摂取であればテストステロンへの影響リスクが少ないと説明されています出典[14]

国立健康・栄養研究所情報センターで調査された、市販の大豆プロテインパウダー1食分(20g)のイソフラボン含有量は23~44mg出典[15]。ソイプロテインを取り入れる場合には、ほかの大豆食品からのイソフラボン摂取も考慮に入れ、1日1杯までに留めておくとよいでしょう。

 

適度なたんぱく質の摂取で精力を高めよう!

プロテイン自体に性欲や性機能を高める効果は確認されていません。しかしプロテインの摂取は、たんぱく質不足の解消や、運動効率の向上に効果的です。テストステロンの合成量を増やしたり、血流を改善して勃起力を高めたりする効果が期待できるかもしれません。

ただしたんぱく質は摂りすぎてもテストステロンに悪影響をもたらします。15~64歳の男性における推奨量の65gを意識しつつ、1日3.4g/kgを超えないように調整しましょう。

また、糖類や人工甘味料の多いプロテインや、イソフラボンの摂取につながるソイプロテインの摂取にも注意が必要です。味付けや種類にもこだわることで、プロテインの効果を高められるでしょう。

 

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