監修者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。
執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
タウリンってどんな成分?
タウリンと聞いて、皆さんはどのようなイメージを持つでしょうか。栄養ドリンクに含まれる、疲労回復効果に役立つ成分との認識が強いかもしれませんね。
まずはタウリンの概要と、私たちの体内での役割について解説しましょう。
肉や魚に豊富なアミノ酸
タウリンは私たちの血液や組織に存在するアミノ酸です。肝臓にてメチオニンとシステインという必須アミノ酸から合成されることから、非必須アミノ酸に分類されています。
たんぱく質の合成や代謝には関与していないものの、肝臓での胆汁形成や、カルシウムおよび浸透圧の調節、神経伝達物質や神経調節物質として機能することなど、さまざまな作用が確認されています出典[1]
ヒトを対象とした研究で確認できたタウリンの生理機能をいくつか紹介しましょう。
【タウリンの生理機能と有効性】
機能 | 詳細 |
血中脂質のバランス改善 | 魚由来のタウリン、DHA、EPAの摂取で総コレステロールやLDLコレステロールなどが低下出典[2] |
血流の改善 | 2週間のタウリン補給により高強度の筋力トレーニングにおける血管内皮機能が向上出典[3] |
抗酸化作用 | 高齢者のタウリン補給により術後の酸化ストレスが低下出典[4] |
また、動物実験においてはタウリンの摂取で網膜変性を予防したり出典[5]、タウリンの欠乏により心筋症のリスクや生殖機能の低下リスクが高まったりするとの報告も存在します出典[6]出典[7]。
タウリンは肉や魚介類に加え、日本では栄養ドリンクからの摂取が可能です。これらの食品から十分なタウリンを取ることで、健康維持やさまざまな病状の改善に役立つと考えられています出典[1]。
肝臓や男性の生殖器で合成される
タウリンの主な合成場所は肝臓ですが、実はオスの生殖器系でも合成されています。
たとえば2006年に中国農業大学から発表された論文では、タウリンを合成する酵素「システインスルフィネート脱炭酸酵素(CSD)」の遺伝子情報が、精巣周辺、とくに精巣のライディッヒ細胞で多く確認されたと述べられています出典[8]。
また、1992年に実施されたヒトへの調査では、精液中のタウリン含有量は319~1590 μmol/Lと報告されており、血液中の10倍の高いレベルに維持されていることもわかっています。さらにタウリンの前駆体であり、高い抗酸化作用を持つヒポタウリンも精子内に高濃度で含まれていました出典[9]。
このように、ラットやヒトのような哺乳類の精巣ではヒポタウリンやタウリンの合成が確認されています。ヒポタウリンやタウリンは精巣や精子の機能を保護し、生殖機能を維持するために役立てられているようです。
タウリンに期待できる性欲・性機能面での効果とは?
肝臓のほか、精巣でも合成が確認されているタウリン。精巣や精子の機能の維持に役立てられているようですが、具体的にはどのような効果が期待できるのでしょう。
タウリンは抗酸化作用や抗炎症作用を持つことに加え、ホルモン分泌を刺激する作用があることも確認されています出典[1]。
これらの機能と男性の性欲や性機能との関係について、学術的観点から論文を引用しつつ解説します。
男性ホルモンの分泌を促す
タウリンには男性ホルモンであるテストステロンの分泌を促す働きが確認されています。
テストステロンはやる気や活力、筋肉の合成効率を高めるほか、性欲や性機能の向上にも関わる重要なホルモン。タウリンによりテストステロンを増やせれば、性欲や性機能を効率よく高められるでしょう。
体内のテストステロン濃度が低下すると、「視床下部-下垂体-性腺系(HPG)」のフィードバック(テストステロンの分泌量を調節するメカニズムのこと)が起こります。HPG系のフィードバックは次のように働いています。
- テストステロンの低下を感知し、脳の視床下部から性腺ホルモン刺激ホルモン(GnRH)が分泌される
- GnRHが脳下垂体に作用して黄体形成ホルモン(LH)や卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を促す
- LHが精巣に作用してテストステロンの分泌を促す
- FSHが精巣にてテストステロンとともに精子形成を促す
タウリンはこのHPG軸に作用して、GnRHやLH、FSHの分泌を増やすように働きます出典[1]。テストステロンのフィードバックが強化されれば、テストステロンの量も増えやすくなるでしょう。
たとえば2010年に中国の瀋陽農業大学から発表された論文では、タウリン濃度1%の水を30日間与えたラットにおいて、成体では約1.2倍、老齢では約1.4倍、テストステロンの増加が見られたと報告されています出典[10]。
テストステロンの量を増やすため、HPG軸を強化できるタウリンが役立つかもしれません。
抗酸化作用で精巣を保護する
タウリンには強力な抗酸化作用および抗炎症作用が確認されています。
テストステロンや精子の合成場所である精巣は酸化ストレスに非常に弱い組織。過剰な活性酸素の働きをタウリンにより抑えられれば、酸化ストレスから精巣を保護する効果が期待できるでしょう。
タウリンの投与によりテストステロンの低下を抑えられた事例が、ラットを用いた複数の研究で確認されています出典[11]%出典[12]。タウリンの抗酸化作用が、精巣の機能の保護に働いたことがわかるでしょう。
また、タウリンにはビスフェノールA(BPA)のような毒性のある物質による悪影響を軽減する効果も。
ビスフェノールAはプラスチックなどに含まれる化学物質。粉や液体に溶けた状態で体に入ると、多量の酸化ストレスを発生させ精子運動性を大きく下げてしまいます。
動物実験では、ラットにビスフェノールAを添加すると精子の運動性が40~50%ほど低下することが明らかに。
しかし同じ研究において、ビスフェノールAとタウリンを同時に投与すると、精子の運動性の低下はほとんどなくなっていました出典[13]。
活性酸素は毒性物質や高血糖状態(糖尿病)、強いストレスなどにより増加しますが、通常の呼吸や代謝においても日々生成されています。
呼吸や代謝を重ね、活性酸素を多く蓄積している高齢の方ほど、精子の状態やテストステロンの分泌能力も低下します。
精巣を若々しい状態に保つためにも、タウリンのような抗酸化物質の摂取は重要と考えられるでしょう。
血流改善により勃起力UP
勃起は興奮状態により、陰茎に急速に血液が集まることで生じます。勃起力を高めるには血流の改善が重要。サラサラの血液と柔軟な血管を保つことで、立ちをサポートする効果が期待できるでしょう。
タウリンには血中脂質のバランスを整える効果と血管内皮機能を高める効果が、それぞれヒト試験により確認されています出典[2]出典[3]。全身の血液と血管の状態を保つため、タウリンの摂取が役立つでしょう。
さらに2013年に中国の瀋陽農業大学は、とくに陰茎の血流への影響を調べています。
動物実験にて高齢ラットにタウリンを補給したところ、なんとペニスの一酸化窒素(NO)レベルが約4倍増加したのです出典[14]。
NOは血管を拡張させるように働く成分。タウリンの補給によりNOの合成が盛んになれば、加齢や糖尿病などによる血管内皮機能の低下を防ぎ、勃起力のサポートに役立つかもしれません。
タウリンの効果的な摂り方は?
タウリンにはHPG軸を強化する作用や精巣を保護する作用、血流を改善する作用が確認されています。
食品やサプリメントから意識的にタウリンを摂取すれば、テストステロンや精子の状態、勃起力の改善に役立つ可能性がありますね。
ここからはタウリンを摂る際のポイントについて詳しく解説しましょう。
サプリメントは継続摂取が基本
タウリンのサプリメントによる効果を期待する場合、目安量を守った上で毎日欠かさず摂取しましょう。
性欲や性機能は、タウリンの摂取後すぐに高まるものではありません。たとえばヒトを対象にしたタウリンによる血管内皮機能の向上では、タウリン摂取を2週間継続しています出典[3]。
またラットを用いた動物実験においてテストステロンの増加が見られたケースでは、タウリンを含んだ水の摂取が30日間続けられていました出典[10]。
このように、タウリンのさまざまな効果は長期の摂取により見られています。改善を焦ることなく、1か月以上は継続して体の変化をチェックしてみましょう。
カフェインとの併用で効果増強
勃起力を高めたい場合のサポートとして、タウリンのほか、カフェインの摂取も効果的です。
カフェインとタウリンの相互作用により、心臓の収縮力がより高まる可能性があることを示唆しています。心拍出量が高まれば血管を流れる血液の勢いも増すため、血液を陰茎に集める勃起にも役立つと考えられるでしょう。
2012年にアメリカのアーカンソー医科大学で発表された論文では、カフェインとタウリンを含むドリンクでは、カフェインのみのドリンクよりも、収縮期血圧と拡張期血圧がともに5mmHg程度高く測定されていました出典[15]。
また、カフェインとタウリンの同時摂取により、カフェインの摂取による心血管への負担が軽減される可能性も指摘されています出典[16]。
血流を改善する効果をより安全に得るため、カフェインとタウリンの組み合わせが役立つかもしれません。
栄養ドリンクの飲みすぎに注意
海外ではエナジードリンクに含まれているタウリン。しかし日本では、人体に与える影響の強さから、タウリンは「清涼飲料水」であるエナジードリンクへの使用が認められていません。そのためタウリンを飲料から摂る場合には、医薬部外品である栄養ドリンクが主な施主源となるでしょう。
栄養ドリンクは手軽にタウリンを摂れる手段として便利である一方、飲み過ぎのリスクがある点に注意しなければいけません。タウリン以外のカフェインや糖類の過剰摂取にもつながるため、栄養ドリンクに頼りすぎないよう気を付けましょう。
タウリンの毒性試験では遺伝毒性や発がん性、催奇形性などは確認されなかったと報告されている一方で、動物実験では過剰摂取により副作用が生じた例も確認されています。
なお、リスク評価研究では1日3gまでの摂取であれば、ヒト臨床試験での有害な影響は確認できなかったと報告されています出典[17]。
栄養ドリンクを飲む際には、ラベルに記載された1日の摂取目安量を超えないように本数を調節しましょう。ジュース感覚で1日に3本も4本も飲まないよう注意が必要ですね。
まとめ
タウリンは抗酸化作用を持つアミノ酸であり、血中脂質のバランスを整えたり血流を改善したりといった効果が期待できます。
性欲や性機能との関係においては、とくにHPG軸を強化してテストステロンの分泌を促す効果や、抗酸化作用により精巣を保護する効果に注目すべきでしょう。テストステロンの合成能力を高めることで、性欲や性機能、精子の状態の改善にもつながります。
また、血液をサラサラに保ち血管を柔らかくすることによる血流改善効果は、勃起力の改善に役立つ可能性があります。加齢による立ちの弱さに悩む方には、タウリンを含む食品や栄養ドリンク、サプリメントなどの活用が役立つかもしれません。
タウリンは安全な成分とされていますが、サプリメントや栄養ドリンクのように、タウリンを高濃度に含むものからの大量摂取には注意すべきです。安全かつ効果的にタウリンを摂るため、目安量を超えない範囲での継続摂取を心掛けましょう。
出典
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