執筆者
株式会社アルファメイル
NP+編集部
「オトコを科学する」をキーワードに男性の悩みや課題の解決を科学的根拠をもってサポート。運動や睡眠、栄養など、健康に関する正しい知識を提供するためにコンテンツを製作中。
精子の質には運動が重要!3つの関係性
まずは運動が精子の質を向上させるメカニズムについてご紹介します。
精子へのダメージが小さくなる
喫煙や乱れた食事により生じる酸化ストレスや炎症は精子に悪影響を及ぼします。実際に男性不妊患者の30~80%は酸化ストレスによる精子の損傷が原因と言われています出典[1]。
酸化ストレスとは、呼吸や代謝の過程で発生する活性酸素によるダメージのこと。通常は活性酸素と抗酸化能力(活性酸素を取り除くシステム)のバランスがとれています。しかしストレスの増加により多量の活性酸素が生み出されると、活性酸素の処理が追いつかなくなり、精子はダメージを受け、受胎能力が低下します。
そこで運動は抗酸化能力の向上に有効です。運動中は呼吸数が増えるため、一時的に活性酸素の量は増えます。しかし十分な休息期間を取ることで、運動により生じた活性酸素に耐える力がつき、抗酸化能力が向上します。
2012年にウルミア大学で行われた研究では、レクリエーション活動をしている男性の精子は、精液中の活性酸素が少なく、精子DNAの損傷の度合いも低かったことがわかっています出典[2]。
運動不足を感じている人は、適度な運動でダメージへの抵抗力を身につけましょう。
テストステロン向上に伴う精子数増加
テストステロンは男性ホルモンの1種。筋力や骨密度、性欲に携わるホルモンですが、精子の形成にも大きく関わっていると言われています。
そして運動はテストステロンレベルの向上に有効とされています。テストステロンはほとんどが精巣で作られますが、近年の研究から筋肉からも分泌されていることがわかっています出典[3]。
そのため継続的な運動は筋肉を増加させ、テストステロンを向上させる可能性があります出典[4]。
精子を減らす原因の肥満を解消
さらに運動は肥満を解消することで精子の質を高めるかもしれません。
肥満は体内で炎症を引き起こし、精子にダメージを与えます。また肥満の男性は精子形成に重要な役割を果たすテストステロンレベルが低いことも研究で報告されています出典[5]出典[6]。
アラサーに足を突っ込み、腹回りがぽっこりしてきた方は、少しずつ身体を動かす頻度を増やすとよいでしょう。
精子の質を向上させる運動3つ
それではここからは具体的におすすめの運動をご紹介します。ご自身の生活に取り入れられそうなものから始めてみてください。
ランニング
ランニングは全身を大きく動かす有酸素運動。多くの筋肉を動かすため、消費カロリーが大きく、ダイエットに効果的です。特に腹回りが気になる人は肥満の解消につながり、精子の質が改善する可能性があります。
2017年に実施された研究では、体脂肪率35%程度の男性90名を対象に1日40分程度のトレッドミル運動を週3回、16週間実施した結果、体脂肪率が平均2%低下し、精子濃度、精子前進運動率、精子形態、テストステロンが改善しました出典[7]。
研究では1日40分程度のランニングを週3回行っていますが、最初は気負い過ぎる必要はありません。できる範囲から走り始め、徐々に量を増やすとよいでしょう。
筋トレ
長期的な筋トレは炎症や酸化ストレスを抑え、精子へのダメージを軽減する可能性があります。
2018年にドイツのユストゥス・リービッヒ大学ギーセンで1228人の不妊男性を対象に行われた研究では、24週間の筋トレは精液中の酸化ストレス状態を改善し、精子の質を向上させることが示されています出典[8]。
実験では全身の筋肉を満遍なく鍛えられるトレーニング方法が用いられておりました。1つの筋肉を集中的に鍛えるよりも、バランス良く鍛える方が、全体の筋肉量が増加し、効率的でしょう。ベンチプレスやショルダープレス、デッドリフト、スクワットなどは多くの筋肉を動員するためおすすめです。
近年は24Hジムを増えており、トレーニング環境が整っているので、妊活期間は飲み会にかける時間やお金をトレーニングに回してみてもよいしょう。
HIIT
運動の時間が中々取れない人はHIITもおすすめです。HIITとは高強度インターバルトレーニングのこと。短時間の高強度の運動と休憩時間を繰り返す運動で、短いもので4分、長いものでも20分程度で終わるものがほとんどです。
2017年にドイツのユストゥス・リービッヒ大学ギーセンで実施された研究では、週3回24週間HIITを実施することで精液中の炎症が減少し、精子の質が改善したことが示されています出典[9]。
ただし、この研究では、中程度のきつさの有酸素運動を行った群の方が精子の質の改善に有効でした。そのため、本当に時間がない人はHIITをしてみるのもありでしょう。
精子の質を高める運動ガイドライン
それではこれまでに紹介した運動はどのように行えばよいのでしょうか。ここでは運動を行う上で注意すべきことについてご紹介します。
週に1時間30分以上
それではどのくらいの時間、運動をすればよいのでしょうか。231人の男性の精液サンプルと運動量を調査した研究では、週に1時間30分以上運動している男性は全く運動しない男性と比べて42%精子濃度が高かったことが報告されています出典[10]。
もちろん運動の種類により適切な時間は異なりますが、まずは週に1時間30分を目標に身体を動かしてみるとよいでしょう。
疲れすぎない強度で
また疲れすぎない強度で行う事も重要です。運動は意図的に身体に酸化ストレスを与え、ダメージに対する抵抗力を培います。
しかし強度の高すぎる運動は過剰なストレスを与え、抗酸化能力が追いつく前に、精子に悪影響を与える可能性があります。高強度の運動を行う場合は、HIITなどのように短めで済ませるのがよいでしょう。
継続する
精子の質に限らない話ではありますが、運動は継続が重要です。テストステロンレベルに大切な筋肉や酸化ストレスに対処する能力も一朝一夕では身に付きません。
また運動プログラムの実施により精子の質が改善した研究では、運動を止めてから30日後には精子濃度や正常形態率は元に戻ったことが報告されています出典[9]。
妊活は忍耐力が重要です、焦らず根気強く運動を続けましょう。
妊活時におすすめしない運動
中には逆に精子を低下させる可能性がある運動もあります。ここで紹介する運動をしている人は妊活中は一度止めてみるとよいかもしれません。
サイクリング
自転車に乗る機会が多い人は、もしかしたら精子の質が低下しているかもしれません。精巣は体温より2℃低い温度で適切に機能します。
しかし自転車に乗ると精巣が身体に密着し、精巣温度が上昇し、うまく精子を作ることができません出典[11]。また精巣が固いサドルに当たり続けることで物理的にストレスがかかります。
ハーバード公衆衛生大学院によると、週に1.5時間以上自転車に乗っていると答えた男性の精子濃度は、自転車に乗っていない男性の精子濃度より34%低かったことが示されています出典[10]。
したがって18分以上かけて自転車で通勤をしている人は注意が必要です。妊活期間は移動は電車や徒歩を利用するとよいかもしれません。
長距離のランニング
精子の質を高める運動として紹介したランニング。走りすぎると逆に精子の質を低下させてしまいます。
11人の長距離ランナーの精子濃度を調査した研究では、週に108km以上走ると精子濃度や運動性が低下することが示されています。一方で週に40~56km程度のランニングの場合は精子の質に影響はなかったことが報告されています出典[12]。
週に100km以上走る人は稀だと思いますが、マラソンが趣味の人は少し軽くしてみるとよいでしょう。
連泊での登山
高地の低酸素環境は精子にストレスを与える可能性があります。
標高5,600mの山に登った6人のトレッカーでは、精子濃度が平均53mlから平均16mlに、運動率が平均57%から37%に低下したことが報告されています出典[13]。
研究はかなり標高の高い山に長期滞在した結果のため、レクリエーション程度の登山では心配の必要はありませんが、連泊での登山は控えめにした方がよいかもしれません。
適度な運動で精子の質を高めよう!
以上精子の質に有効な運動と妊活男性におすすめしない運動でした。健康のために自転車通勤している人は意外に多いのではないでしょうか。
通常は健康的なエクササイズですが、妊活時には控えた方がいいかもしれません。ランニングや筋トレ、HIITの中から自分に適した運動を実施してみてください。
とはいえ、精子の質に関わる要素は運動だけではありません。食事や睡眠、その他の習慣が大きく影響します。
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出典
- 1.
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Tartibian B, Maleki BH. Correlation between seminal oxidative stress biomarkers and antioxidants with sperm DNA damage in elite athletes and recreationally active men. Clin J Sport Med. 2012 Mar;22(2):132-9.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22246344/ - 3.
Sato K, Iemitsu M. Exercise and sex steroid hormones in skeletal muscle. J Steroid Biochem Mol Biol. 2015 Jan;145:200-5.
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Cano Sokoloff N, Misra M, Ackerman KE. Exercise, Training, and the Hypothalamic-Pituitary-Gonadal Axis in Men and Women. Front Horm Res. 2016;47:27-43.
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Sedliak M, Kralik M, Cvecka J, Buzgo G, Putala M, Ukropcová B, Jozef, Ukropec, Kilinger Z, Payer J, Kollárik B, Bujdak P, Raastad T. Relation between testosterone levels and body composition, physical functioning and selected biochemical parameters in adult males. Vnitr Lek. 2020 Spring;66(2):71-76. English.
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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21561607/
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