執筆者
管理栄養士/分子栄養学カウンセラー
岡かな
大阪市立大学食品栄養科、大学院修士課程修了。医療機関に勤務し、糖尿病や高血圧など生活習慣病の栄養管理に取り組む。その後はヘルスケア事業に移り、年間500人以上のダイエットをサポートする。現在はダイエットサポートの他、特定保健指導や健康に関わる分野の執筆も行っている。誤った情報で10キロ以上リバウンドした自分自身の経験から、科学的根拠に基づく正しい情報の発信を心掛けている。
豆腐ってどんな食品?
高齢者も子どもも食べやすくて、たんぱく質やビタミン、ミネラルが豊富な豆腐。
豆腐は比較的カロリーが低いため、ダイエット中の人にも人気ですよね。
まずは、多様な人々に人気の豆腐の特徴について、詳しく見ていきましょう。
大豆を凝固させて作成
豆腐の作り方を簡単にご説明しましょう。
まず、大豆を水で浸漬し、水分を含んで大きくなった大豆を細かく砕きます。
砕いたものを「生呉(なまご)」といい、生呉を加熱して煮ることで「煮呉(にご)」になります。
煮呉を豆乳とおからに分離し、豆乳ににがりを入れて混ぜ固めると豆腐の出来上がりです。
豆腐には木綿豆腐、絹ごし豆腐、充填豆腐、凍り豆腐など様々な種類が存在しますね。
これは大豆成分の量や凝固法、成型の差によるもの。
例えば、絹ごし豆腐は豆乳を型に入れたらそのまま固めますが、木綿豆腐は豆腐状に凝固した後に一旦崩して攪拌し、型に入れた後に重しを乗せて圧力を加えるんです。
このように、それぞれの豆腐で製造方法が異なりますが、栄養価の違いはそこまで大きくありません。
例えば、「木綿豆腐にだけ含まれる栄養素」というのは基本的には存在しないんです。
ほかの大豆製品との違い
豆腐の栄養価は、他の大豆製品とどう違うのでしょうか?
じつは、豆腐の製造過程で豆乳とおからに分離する際に、豆乳は食物繊維がほとんど取り除かれてしまいます。
つまり、大豆の食物繊維は、おからに多く含まれるんですね。
よって、大豆やおからと比べて、豆乳や豆腐は食物繊維の含有量が少ないのが特徴です。
豆腐は、食物繊維が少ないことで消化がよいことはメリットですね。
【豆類100gあたりの成分量(日本食品標準成分表2020版(八訂)出典[1]より】
エネルギー (kcal) | たんぱく質 (g) | 脂質 (g) | 食物繊維 (g) | |
絹ごし豆腐 | 56 | 5,3 | 3.5 | 0.9 |
木綿豆腐 | 73 | 7.0 | 4.9 | 1.1 |
蒸し大豆(黄大豆/国産/ゆで) | 163 | 14.8 | 9.8 | 8.5 |
おから(生) | 88 | 6.1 | 3.6 | 11.5 |
豆乳 | 44 | 3.6 | 2.0 | 0.2 |
凍り豆腐(水煮) | 104 | 10.7 | 7.3 | 0.5 |
糸引き納豆 | 190 | 16.5 | 10.0 | 6.7 |
エネルギー量を見てみると、豆腐は納豆よりも低カロリーであるためダイエットに適しています。
しかし、大豆を丸ごと発酵させた納豆からは、食物繊維や善玉菌を効率よく摂取できるため、腸活を考えている場合には豆腐よりも納豆がおすすめです。
豆乳は豆腐よりも低カロリーですが、液体であるため満足感を得にくく、飲み過ぎから摂取カロリーが増えやすいため注意が必要です。
総じて、ある程度重量があって食べ応えのある豆腐は、低カロリーでも満足感が高い、ダイエット向きの大豆製品と言えますね。
凍り豆腐とは、豆腐を凍らせて乾かした豆腐のこと。
凍り豆腐は保存性が高いので、日持ちする豆腐を選びたい人におすすめです。
男性が豆腐に期待できる効果6選
ここからは、男性が豆腐を食べることによって期待できる効果を、学術的視点から6つ紹介しましょう。
筋肥大のサポート
「アミノ酸スコア」という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。
アミノ酸スコアとは、必須アミノ酸がバランスよく含まれているかを示す値のこと。
たんぱく質を構成するアミノ酸のうち、体内で生成することのできない9種類の必須アミノ酸は食事から摂取する必要があります。
必須アミノ酸がバランスよく含まれていれば、アミノ酸スコアが100に近くなります。
肉や魚など動物性食品は、アミノ酸スコアが100であるものが多いんです。
一方、アミノ酸スコアが低いのは米や野菜など植物性食品。
しかし、大豆製品は植物性食品でありながら、なんとアミノ酸スコアは最大値の100なんです出典[2]。
大豆製品は動物性食品に負けないアミノ酸スコアを誇るため、実際に筋肉合成効果も動物性食品に匹敵することが示されています。
2018年にアメリカで、大豆たんぱく質と動物性たんぱく質の補給が、筋肉量と筋力にどのような違いをもたらすのかを調べた5つの研究結果をまとめた調査が発表されました。
その結果、大豆たんぱく質の補給は、動物性たんぱく質の補給と同等の筋肉量増加効果や筋力増強効果があることが明らかになっています出典[3]。
このように、大豆たんぱく質は動物性たんぱく質と同等に、筋肥大をサポートしてくれるでしょう。
運動パフォーマンスUP
大豆には「レシチン」という栄養素が含まれています。
リン脂質の総称であるレシチンは、神経伝達物質アセチルコリンの材料として機能し、筋肉の収縮に関わっています。
また、レシチンには抗酸化作用があるため、酸化ストレスが軽減し運動パフォーマンスが向上することも示されているんです。
実際に、リン脂質の補給が運動パフォーマンスに及ぼす影響を検証した実験では、リン脂質の摂取によりコルチゾール濃度が減少し、運動後の筋肉痛が軽減されたことが示されました出典[4]。
また、別の研究では1日750mgのリン脂質を10日間摂取することにより、高強度サイクリング中の運動能力が向上する傾向があることも実証されています出典[4]。
さらに、レシチンは、抗酸化作用によりアルツハイマー型認知症や動脈硬化の予防、肝臓の機能向上などの効果も期待されているんですよ出典[5]。
酸化ストレスを除去し、運動パフォーマンスを上げたり健康な毎日を送るために、大豆レシチンが豊富な豆腐を食事に取り入れてみましょう。
ダイエットのサポート
40代以降に気になってくるのが、お腹まわりの脂肪や体重。
メタボ防止のために運動や筋トレをしている人も少なくないでしょう。
じつは豆腐の摂取は、体重や体脂肪の減少にも役立つことが示されているんです出典[6]。
実際に、肥満ラットにたんぱく質を4週間与えた実験では、カゼインたんぱく質を与えられたラットよりも、大豆たんぱく質を与えられたラットで体脂肪が有意に減少したことが示されました出典[7]。
また、人を対象とした研究では、2003年にヨーロッパで大豆ベースのダイエット食と普通のダイエット食を比較した研究が行われています。
その結果、大豆ベースのダイエット食を続けた肥満患者は、そうでないダイエット食事を続けた肥満患者よりも、体重が2倍以上大きく減少したことが示されました出典[8]。
大豆由来のたんぱく質は、カゼインたんぱく質よりも筋肉量を維持しながら体脂肪を落とす力に優れているようです。
筋肉を鍛えながら体脂肪を落としたい人、有酸素運動や筋トレを取り入れつつ体を引き締めたい人の食事として適しているでしょう。
また、豆腐は水分も多いので、大豆製品の中でもより満腹感を得られますね。
メタボが気になっている人は、たんぱく源に豆腐を選んでみてください。
アンチエイジング
アンチエイジングとは「抗加齢」「抗老化」のことを言います。
「いつまでも若々しい体を維持したい」「長生きしたい」という願望は多くの人が持っているでしょう。
アンチエイジングの天敵であるのが、活性酸素による酸化ストレスです。
体内で酸素を消費しエネルギーを生成する過程で生じる活性酸素は、肌の細胞を攻撃することでコラーゲンやエラスチンの生成に影響し、肌の老化を促進させます。
そこで、美肌やアンチエイジングに欠かせないのが抗酸化作用。
抗酸化作用をもつ成分はいくつかありますが、大豆製品に含まれる有名な抗酸化物質はイソフラボンです。
イソフラボンの抗酸化作用により皮膚の酸化ストレスが抑えられ、アンチエイジングに繋がることが期待できるんです。
実際に、イソフラボンには肌のアンチエイジング効果や抗酸化能力を高める働きが確認されています。
ラットにイソフラボンを週5日間投与した研究では、イソフラボンを投与していないラットと比べて、皮膚表皮の厚さと真皮のコラーゲン繊維、弾性繊維の量が有意に増加したことが示されました出典[9]。
またこの研究では、イソフラボンを投与したラットでは活性酸素を除去する抗酸化物質「スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)」の濃度が37%以上増加したこともわかっています出典[9]。
イソフラボンが豊富な豆腐の摂取により、肌のアンチエイジングや美肌に効果がありそうですね。
血中脂質の改善
コレステロールには、LDL(悪玉)コレステロールとHDL(善玉)コレステロールがありますが、血中で増えすぎると動脈硬化の原因となるのがLDLコレステロール。
酸化したLDLコレステロールが血液中に蓄積し、血管を傷つけることによって血管の弾力性が奪われ、動脈硬化に繋がるのです。
そして、動脈硬化の予防に役立つ可能性があるのが、大豆に含まれるレシチン。
抗酸化作用のあるレシチンは、血中脂質を改善する効果が期待されています。
レシチンの性質である乳化作用によって血液中のコレステロールが溶け、余分なコレステロールが血管壁に溜まるのを防ぎ、血中コレステロールが改善されるんです出典[5]。
実際に、脂質異常症の患者に大豆レシチン500mgを継続摂取してもらう研究が行われました。
その結果、大豆レシチンを継続摂取すると、1か月で総コレステロールが40.66%、LDLコレステロールが42.05%、2か月後で総コレステロールが42.00%、LDLコレステロールが56.15%減少したことが示されたんです出典[10]。
コレステロール値が気になっている人や動脈硬化を予防したい人は、レシチンを豊富に含む豆腐の摂取を習慣にしてみてください。
薄毛やニキビの改善
薄毛やニキビに悩む男性は少なくないでしょう。
じつは、男性ホルモンであるテストステロンの変化が、薄毛やニキビの原因のひとつになっていることをご存知でしょうか?
テストステロンの一部は、体内にある酵素「テストステロン5α-レダクターゼ」の作用を受け、「ジヒドロテストステロン」に変化します。
ジヒドロテストステロンが過剰生成されると、脱毛や薄毛、ニキビなどの原因となることが示唆されています。
そして、大豆製品に豊富に含まれるイソフラボンはテストステロン5α-レダクターゼを阻害する働きがあり、ジヒドロテストステロンの生成を抑制することがわかっているんです。
実際に、ラットから抽出したテストステロン5α-レダクターゼを用いた研究では、イソフラボンの投与によりテストステロン5α-レダクターゼの働きが阻害されたことが明らかになりました出典[11]。
イソフラボンが豊富な豆腐を摂取することで、ジヒドロテストステロンの生成が抑えられ、薄毛やニキビの改善に繋がるかもしれません。
男性が豆腐を食べる際の注意点
このように、豆腐には運動パフォーマンスやダイエット、アンチエイジング、健康においてさまざまなメリットが確認されています。
ここからは、豆腐の効果をより効率的に得るための食べ方のポイントを解説しましょう。
1日1丁までを目安に
大豆製品に豊富なイソフラボンは、女性ホルモンに似た働きをするため、男性ホルモンであるテストステロンに影響を及ぼすという話を聞いたことはありませんか?
イソフラボンが体内のエストロゲン受容体に作用し女性ホルモン様の働きをすることで、テストステロンの合成が抑制されてしまう、という噂があるんです。
結論から言うと、「イソフラボンの摂取はテストステロンに影響を及ぼさない」と結論付けられた研究がほとんど。
ただし、一部の報告ではイソフラボンの”摂りすぎ”によりテストステロンが低下したというデータが存在するのも事実です。
イソフラボンを1日100mg以上摂取した8件の研究のうち、2件でテストステロンが減少していることが明らかになっているんです出典[12]。
どんな栄養素も、摂り過ぎは害になるということですね。
そこで、日本の食品安全委員会は、大豆イソフラボンの安全な1日摂取目安量の上限値を70〜75mg/日と発表しています出典[13]。
豆腐1丁(350g)に含まれるイソフラボン量は約70mg程度のため、豆腐をメインに食べる際は1日1丁までを目安にしましょう。
ソイプロテインや豆乳との飲み合わせに注意
注意したいのが、ソイプロテインや豆乳などのドリンクで大豆製品を摂取するとき。
ソイプロテインや豆乳は、1杯(200mL)あたり50mg近いイソフラボンを含みます出典[14]。
ちなみに、納豆1パック(40g)あたりのイソフラボン量は約30mg、豆腐半丁(175g)あたりは約35mgです出典[14]。
つまり、ソイプロテインや豆乳1杯は、納豆や豆腐1人前と比べて1.5倍以上のイソフラボンを含むんです。
豆乳やソイプロテインは意外と多量のイソフラボンを含むため、豆腐と一緒に飲むときは、量に注意しましょう。
例えば、豆腐1丁と豆乳1杯を組み合わせると、約120mgのイソフラボンを摂取してしまうことになります。
「豆腐1丁を食べた日は、豆乳やソイプロテインを飲まない」「豆乳やソイプロテインを1杯飲むなら豆腐を半丁以下にする」などの工夫を忘れないでくださいね。
筋トレ目的なら動物性食品をプラス
大豆たんぱく質は、解説したとおりアミノ酸スコアが高く、肉や魚に匹敵するレベルでたんぱく質の合成効率が高いとされています。
しかし、大豆たんぱく質は動物性食品と一緒に摂取することで、さらに合成効率が上がる可能性があるんです。
実際に、2013年にアメリカにおいて、19人の成人を対象に高強度の筋力トレーニングの1時間後に、ホエイたんぱく質または大豆と乳製品のたんぱく質ブレンドを摂取してもらい、たんぱく質の合成効率を調べる研究が実施されました。
その結果、ホエイたんぱく質を摂取したグループよりも、ブレンドのたんぱく質を摂取したグループの方が、摂取後4時間におけるたんぱく質合成効率が約13%高くなったことが明らかになったんです出典[15]。
筋肉をつけたい場合には、肉や魚、卵などの動物性たんぱく質とあわせて摂ると良いでしょう。
豆腐を上手く活用して男らしい身体を手に入れよう!
豆腐は、製造過程で食物繊維のほとんどが取り除かれていますが、消化しやすく、低カロリーでも満足感が高いメリットがあります。
また、豆腐に豊富に含まれるイソフラボンやレシチンは健康効果が高く、筋肥大のサポートや運動パフォーマンス向上、アンチエイジング、血中脂質の改善、さらに薄毛やニキビの改善にも効果が期待できます。
一方でイソフラボンには過剰摂取によるテストステロンへの影響が考えられるため、1日あたり70~75mgまでに収まるよう量を調整することをおすすめします。
豆腐を食べるときは1丁まで、ソイプロテインや豆乳と組み合わせるときは半丁までにすると良いでしょう。
出典
- 1.
- 2.
- 3.
Messina M, Lynch H, Dickinson JM, Reed KE. doi: 10.1123/ijsnem.2018-0071. Epub 2018 Oct 26.
No Difference Between the Effects of Supplementing With Soy Protein Versus Animal Protein on Gains in Muscle Mass and Strength in Response to Resistance Exercise. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2018 Nov 1;28(6):674-685. - 4.
- 5.
- 6.
- 7.
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- 11.
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